先日、新設分割のご相談を受けました。
新設分割とは、ある会社(=分割会社)がその事業に関して有する権利義務の全部又は
一部を分割により設立する会社に承継させることをいいます(会社法2条30号)。
そして、新設分割を行う場合は、原則として株主総会の承認が必要となります
(会社法804条1項、会社法309条2項12号)。
しかし、承継させる総資産額が、分割会社全体の総資産額の20%以下の場合は、株主総会
の承認が不要となるのです(会社法805条、一定の例外(株主総会が必要となる場合)もあります。)。
この方法は「簡易分割」と言われ、上場会社の分社でよく利用されています。
さて、今回のご相談もこの簡易分割に該当するものでしたので、税理士の先生もお客様も、
株主総会は必要ではないという前提で話が進んでいました。
ところが、会社の謄本を見てみると、、、
議決権のある株式(以下、普通株式)と議決権のない株式(以下、完全無議決権株式)という
内容の異なる2種類の株式が発行されていました。
会社法では、内容の異なる種類の株式を発行する会社を種類株式発行会社(会社法2条13号)
といい、種類株式発行会社が一定の行為をする際は、(ある種類の株式の種類株主に
損害を及ぼすおそれがある場合、)種類株主総会(株式の種類ごとの株主総会)の承認が
必要になると規定されています(会社法322条1項)。
ただ、定款の定めによって種類株主総会の承認を排除する、不要とすることが認められています
(会社法322条2項)。
今回のような新設分割は、この一定の行為に該当し、さらにお客様の定款には種類株主総会を
不要とする定めがありませんでした。
つまり、(「全体の」又は「通常の」)株主総会は不要でも、「普通株式を所有する株主による
種類株主総会」と「完全無議決権株式を所有する株主による種類株主総会」での承認がなければ、
新設分割を行うことができないことになります。
実際のところは、株主の数もそれほど多くなく、無事それぞれの承認を得て、完了しています。
「完全無議決権株式」や「株主総会での議決権がない」という表現から、種類株主総会の承認が
必要になる場合があることを想定することは、なかなかできません。
なぜなら、専門的すぎるからです。
議決権の制限に限らず、種類株式は検討すべきことがたくさんあります。
種類株式の導入を検討されている方は、お気軽にご相談下さい。
導入の目的がしっかり達成されるよう一緒に考えていきましょう。