中小企業の法務のポイント

司法書士法人名南経営 岩本直也 公式ブログ

2018年01月

吸収合併の手続は、次の通りです。
 
(1) 吸収合併契約(法第58条、施行規則第35条)
 
(2) 吸収合併契約の総社員の同意(法第58条の2第1項)
 
(3) 吸収合併の都道府県知事の認可(法第58条の2第4項)
 
(4) 債権者保護手続(法第58条の4第1項)
 
(5) 吸収合併の効力の発生(法第58条の6)

株式会社の合併手続との違い(認可を除く)
1.債権者保護手続の時期
医療法人:
(3)の認可の通知のあった日から2週間以内に、その債権者に対し、異議があれば一定の期間(2月を下ることができない。)内に述べるべき旨を公告し、かつ、判明している債権者に対しては、各別にこれを催告しなければならない。」(法第58条の4第1項)
株式会社:
公告・催告の開始時期については制限がない。早期に債権者異議申述手続を完了させるか、効力発生日に近づけて手続を開始するか任意である。」(論点解説 商業登記法コンメンタール283頁)

2.債権者保護手続の公告方法
医療法人:

「…異議があれば一定の期間(2月を下ることができない。)内に述べるべき旨を公告し、」

株式会社:

「…次に掲げる事項を官報に公告し、」(会社法第789条第2項等)

 

3.債権者保護手続の異議申述期間

医療法人:

「…異議があれば一定の期間(2月を下ることができない。)内に述べるべき旨を公告し、」

株式会社:

「…第四号の期間は、1箇月を下ることができない。」(会社法第789条第2項等)

4.吸収合併の効力の発生

医療法人:
「吸収合併存続医療法人が、その主たる事務所の所在地において政令で定めるところにより合併の登記をすることによって、その効力を生ずる。」(法第58条の6)。

株式会社:
「吸収合併存続株式会社は、効力発生日に、吸収合併消滅会社の権利義務を承継する。」(会社法第750条第1項)

1.3.4について
 
株式会社の合併手続き以上に、スケジュールの起案・管理が大切になります。

2.について

 医療法人は、合併公告を当該医療法人が定款に定める公告方法で行うことになります。

 なお、医療法人の公告方法は、登記事項ではありません。
 
そのため、合併による変更登記の添付書類として「公告をしたことを証する書面」として、登記官の視点からは当該医療法人の公告方法が何であるか登記事項から明らかではないため、定款も添付することになるように思われます。
 
この点、登記の通達(平成28年9月1日法務省民商第132号)からは明らかではなく、書籍等でも触れられておらず、定かではありません。ただ、都道府県知事への認可申請に各医療法人の定款も添付書類となっているため、実際には認可書に綴じ込まれているでしょうから、あまり問題になることはないでしょう。

内閣府HP

特定非営利活動促進法(NPO)の平成28年改正について

https://www.npo-homepage.go.jp/kaisei

 

改正NPO法の説明資料「平成28年改正法に関するQ&A(平成29年12月)」より

https://www.npo-homepage.go.jp/uploads/201703-kaisei-qa-1.pdf

 

8 電子公告の方法として、LINEを使用する方法は含まれますか。

 

(答) SNSをはじめインターネットを利用して情報を発信できるサービスが近年増えていますが、提供されるサービスの内容や利用規約等はそれぞれ異なっています。電子公告にあたっては、個々のサービスごとにその内容等を踏まえて電子公告の掲載場所としてふさわしいかどうかを判断してください。

例えば、あるNPO法人がLINEのトークに貸借対照表を投稿した場合、他の人がその貸借対照表を閲覧するには、サービスを利用するために登録行為をしなければなりません。これは、「事前に登録したパスワード等を入力することなしに閲覧できる状態」とは言えませんので、LINEは電子公告の方法としてふさわしくないと考えられます。

昨年改正された特定非営利活動促進法(NPO法)のうち、未施行であった貸借対照表の公告の規定(NPO法第28条の2)の施行日が決まりました。

https://www.npo-homepage.go.jp/kaisei#housei-2-2


貸借対照表の公告について


 貸借対照表の公告は、平成29年4月1日からではなく、別途政令で定める日(平成30年10月1日)以後に作成された貸借対照表から対象になります。
 
ただ、政令で定める日(平成30年10月1日)以前に作成した貸借対照表のうち直近のもの(特定貸借対照表)についても公告をする必要があるため(改正附則第4条)、資産の総額の登記の有無とあわせて注意が必要そうです。
→(1)平成30年10月1日までに公告する、(2)平成30年10月1日以後遅滞なく公告する、のいずれかを選択することになります。

 
「官報に掲載する方法」又は「日刊新聞紙に掲載する方法」での掲載の場合、貸借対照表の「要旨」で足ります(NPO法第28条の2第2項)。

 
「電子公告」の場合は貸借対照表の作成の日から起算して5年間が経過した日を含む事業年度の末日までの間(NPO法第28条の2第4項)、「公衆の見やすい場所に掲示する方法」の場合は公告開始後1年を経過する日までの間(NPO法施行規則第3条の2第3項)、継続して公告する必要があります(官報や日刊新聞紙の場合は、一度掲載すれば足ります。)。


公告方法について


 
貸借対照表の公告を現行定款で規定されている公告方法とは別の方法にしたい場合は、定款変更をすることになります。
 
上記(1)又は(2)の特定貸借対照表の公告までに、定款を変更する必要があります。

今年は、例年に増して変化の激しい1年になりそうです。

ざっと業務に関連しそうなものだけでも、、、結構あります。

【民法改正 債権譲渡と資金調達】
http://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/suishin/meeting/wg/toushi/20171208/agenda.html

【戸籍事務とマイナンバー】
http://www.moj.go.jp/shingi1/shingi04600013.html

【所有者不明土地問題】

http://www.mlit.go.jp/report/press/totikensangyo02_hh_000105.html

【会社法施行規則改正のパブコメ】

http://search.egov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=300080160&Mode=0

【会社法改正 登記事項】

http://www.moj.go.jp/shingi1/shingi04900889999.html

【成年被後見人と役員の欠格事由】

http://www.cao.go.jp/seinenkouken/iinkai/index.html

【法人設立のワンストップ化】

http://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/hojinsetsuritsu/index.html

【外国人起業家の受け入れ拡大】

http://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/miraitoshikaigi/suishinkaigo2018/koyou/dai2/index.html


【裁判事務とIT化】
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/miraitoshikaigi/suishinkaigo2018/index.html#kisei

【特別養子のあり方】

https://www.shojihomu.or.jp/kenkyuu/youshi

 

環境の変化から目を背けることなく、向かう方向をしっかり定める1年にしたいと思います。

本年もよろしくお願いいたします。

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