中小企業の法務のポイント

司法書士法人名南経営 岩本直也 公式ブログ

2018年03月

「会社法制(企業統治等関係)の見直しに関する中間試案」(平成30年2月14日)の取りまとめ

http://www.moj.go.jp/shingi1/shingi04900348.html

3.新株予約権に関する登記

【概要】
 新株予約権に関する登記事項のうち、資本金の額に直接影響しない新株予約権の払込金額は登記事項から除外するかを2案から検討されている。

(募集事項の決定)
第238条 株式会社は、その発行する新株予約権を引き受ける者の募集をしようとするときは、その都度、募集新株予約権(当該募集に応じて当該新株予約権の引受けの申込みをした者に対して割り当てる新株予約権をいう。以下この章において同じ。)について次に掲げる事項(以下この節において「募集事項」という。)を定めなければならない。

① 募集新株予約権の内容及び数
② 募集新株予約権と引換えに金銭の払込みを要しないこととする場合には、その旨
③ 前号に規定する場合以外の場合には、募集新株予約権の払込金額(募集新株予約権1個と引換えに払い込む金銭の額をいう。以下この章において同じ。)又はその算定方法
④ 募集新株予約権を割り当てる日(以下この節において「割当日」という。)

⑤ 募集新株予約権と引換えにする金銭の払込みの期日を定めるときは、その期日
⑥ 募集新株予約権が新株予約権付社債に付されたものである場合には、第676条各号に掲げる事項
⑦ 前号に規定する場合において、同号の新株予約権付社債に付された募集新株予約権についての第118条第1項、第179条第2項、第777条第1項、第787条第1項又は第808条第1項の規定による請求の方法につき別段の定めをするときは、その定め

 

(株式会社の設立の登記)

第911条 (省略)

3 第1項の登記においては、次に掲げる事項を登記しなければならない。

⑫ 新株予約権を発行したときは、次に掲げる事項
 イ 新株予約権の数
 ロ 第236条第1項第1号から第4号までに掲げる事項
 ハ ロに掲げる事項のほか、新株予約権の行使の条件を定めたときは、その条件
 ニ 第236条第1項第7号並びに第238条第1項第2号及び第3号に掲げる事項

 

【中間試案】
【A案】
 
会社法第238条第1項第2号及び第3号に掲げる事項(同法第911条第3項第12号ニ参照)は登記することを要しないものとする。
【B案】
 
募集新株予約権について会社法第238条第1項第3号に掲げる事項を定めたときは、同号の払込金額を登記しなければならないものとする。ただし、同号に掲げる事項として払込金額の算定方法を定めた場合において、登記の申請の時までに募集新株予約権の払込金額が確定していないときは、当該算定方法を登記しなければならないものとする。

【法務省による補足説明】
 
試案第3の4は、新株予約権に関する登記事項のうち会社法第238条第1項第2号及び第3号に掲げる事項の登記に関する見直しに関するものである。

 
現行法においては、新株予約権を発行した株式会社は、新株予約権の登記をする必要があり、その登記事項は、(ⅰ)新株予約権の数、(ⅱ)新株予約権の内容のうち一定の事項(新株予約権の目的である株式数、行使期間等)及び行使条件、(ⅲ)払込金額又はその算定方法(いわゆる発行価額)等とされている(会社法第911条第3項第12号)。新株予約権の登記については、実務上、払込金額の算定方法につきブラック・ショールズ・モデルに関する詳細かつ抽象的な数式等の登記を要するなど、全般的に煩雑で申請人の負担となっており、また、登記事項を一般的な公示にふさわしいものに限るべきであるという指摘等がされている。

 部会においては、新株予約権の払込金額は、資本金の額に直接的に影響を与えるものでもなく、会社法第238条第1項第2号及び第3号に掲げる事項を新株予約権の発行の段階から登記事項として公示することは不要ではないかという指摘や、本来的には払込金額のみを登記事項とすれば十分であるという指摘等があったが、他方で、登記事項とすることにより利害関係者が比較的容易にその内容を見ることができるという利点があるという指摘もされている。

 
そこで、このような指摘を踏まえ、試案第3の4においては、会社法第238条第1項第2号及び第3号に掲げる事項(同法第911条第3項第12号ニ)は登記することを要しないものとするA案と、募集新株予約権について同法第238条第1項第3号に掲げる事項を定めたときは、同号の払込金額を登記しなければならないものとし、例外的に、同号に掲げる事項として払込金額の算定方法を定めた場合において、登記の申請の時までに募集新株予約権の払込金額が確定していないときは、当該算定方法を登記しなければならないものとするB案の2案を掲げている。

「会社法制(企業統治等関係)の見直しに関する中間試案」(平成30年2月14日)の取りまとめ

http://www.moj.go.jp/shingi1/shingi04900348.html

 

2.支店の所在地における登記の廃止
(1)支店の所在地における独自の登記は廃止する。
(2)①会社の商号、②本店の所在場所、③その所在地を管轄する登記所の管轄区域内にある支店
   の所在場所が、登記事項でした(会社法930条2項各号)。

 

【コメント】

 平成18年5月1日に施行された会社法前の支店の所在地における登記は、ⅰ本店の所在地において登記した事項(旧商法64条2項、旧有限会社法13条)、ⅱ支店のみで登記すべき事項(旧商法40条)が求められていました。しかし、商業登記のコンピュータ化が図られたことに伴い、支店の所在地から本店の所在地における登記簿に係る情報にアクセスすることが容易になっていることを踏まえ、会社法では、登記を申請する者の負担を軽減する観点から(一問一答 新・会社法[改訂版]257頁)、登記事項を①から③までに軽減した。さらに、これを進めるということです。

 
なお、清算結了の登記(会社法929条)を支店の所在地でも申請しなければならないところ(会社法932条)これを漏らしそうになったことが何回かあったが、今後はこの心配もなくなるということです。

 
廃止される支店の所在地における登記は、職権で抹消(登記簿を閉鎖)されるのでしょうか。



【中間試案】
 
会社法第930条から第932条までを削除するものとする。

【法務省による補足説明】
 
試案第3の6においては、支店の所在地における登記(会社法第930条から第932条まで)を廃止するものとしている。

 
現行法においては、会社は、本店の所在地において登記をするほか、支店の所在地においても、(ⅰ)商号、(ⅱ)本店の所在場所、(ⅲ)支店(その所在地を管轄する登記所の管轄区域内にあるものに限る。)の所在場所(会社法第930条第2項各号)の登記をしなければならないこととされている。これは、支店のみと取引をする者が本店の所在場所を正確に把握していない場合があり得ることを前提として、支店の所在地を管轄する登記所において検索すればその本店を調査できるという仕組みを構築するものであった。

 
しかし、インターネットの広く普及した現在においては、会社の探索は一般に容易となっており、登記情報提供サービスにおいて、会社法人等番号(商業登記法第7条)を利用して会社の本店を探索することもできるようになっている。実際にも、会社の支店の所在地における登記について登記事項証明書の交付請求がされる例は、ほとんどないようである。

 
そこで、試案第3の6においては、登記申請義務を負う会社の負担軽減等の観点から、会社の支店の所在地における登記を廃止するものとしている。


会社法制(企業統治等関係)の見直しに関する中間試案(案)=登記関係その1=
http://blog.livedoor.jp/iwamoto_naoya/archives/51666917.html

最近の商業・法人登記を取り巻く環境は、とても変化が激しいです。
さらに会社法の改正も進んでいます。

「会社法制(企業統治等関係)の見直しに関する中間試案」(平成30年2月14日)の取りまとめ
http://www.moj.go.jp/shingi1/shingi04900348.html

登記関係は、次の3つです。
1.株式会社の代表者の住所が記載された登記事項証明書
2.支店の所在地における登記の廃止
3.新株予約権に関する登記

※中間試案は、3.1.2の順ですが、中小企業に影響しそうな順に1つずつ紹介していきます。

1.株式会社の代表者の住所が記載された登記事項証明書
【概要】
(1)代表者の住所は、登記事項(会社法911条3項14号、23号ハ)からは削除しない。

(2)ただ、登記事項証明書の記載事項(商業登記規則30条)からは原則除外する。
(3)例外的に当該住所の確認について、法律上の利害関係を有する者に限り、当該住所が記載
   された登記事項証明書の交付請求ができる。

(4)インターネットを利用して取得するいわゆる登記情報も同様の当該住所を除くなど、所要
   の措置を講ずるように検討する。

【コメント】
 株式会社の代表者以外にも個人の住所が登記事項になっているものはいくつかあります。これはどう整理されるのでしょうか。
 ・会社の支配人の住所(商業登記法44条2項1号)
 ・有限会社の取締役及び監査役の住所(整備法43条1項)
 ・合名会社の社員の住所(会社法912条5号)、
  社員が法人の場合の職務執行者の住所(会社法912条7号)
 ・合資会社の社員の住所(会社法913条5号)、
  代表社員が法人の場合の職務執行者の住所(会社法913条9号)
 ・合同会社の代表社員の住所(会社法914条7号)

 そもそも代表者の住所をどこで登記しているかしっかり認識していない会社がそれなりにある気がします。今後、登記懈怠が増えないように、特に任期満了による改選登記の際は、今まで以上に住所を確認する意識が必要になりそうです。



【中間試案】
 
登記簿に記載されている事項(株式会社の代表取締役又は代表執行役の住所を除く。)が記載された登記事項証明書については、何人も、その交付を請求することができるものとし、当該住所が記載された登記事項証明書については、当該住所の確認について利害関係を有する者に限り、その交付を請求することができるものとする。
(注)インターネットを利用して登記情報を取得する場合における当該住所の取扱いについても所要の措置を講ずることを検討するものとする。

【法務省による補足説明】
 
試案第3の5において、登記簿に記載されている事項(株式会社の代表取締役又は代表執行役(以下「代表者」という。)の住所を除く。)が記載された登記事項証明書については、何人も、その交付を請求することができるものとし、当該住所が記載された登記事項証明書については、当該住所の確認について利害関係を有する者に限り、その交付を請求することができるものとしている。

 
現行法においては、代表者の住所が登記事項とされ(会社法第911条第3項第14号、第23号ハ)、何人も当該住所が記載された登記事項証明書の交付を請求できることとされている(商業登記法第10条第1項)。部会においては、個人情報保護の観点から、当該住所を登記事項から削除し、又はその閲覧を制限することが妥当ではないかという指摘がされている。

 
もっとも、代表者の住所については、(ⅰ)代表者を特定するための情報として重要であること、(ⅱ)民事訴訟法上の裁判管轄の決定及び送達の場面において、法人に営業所がないときは重要な役割を果たすこと(同法第4条第4項、第103条第1項)などの意義が認められる。

 
そこで、試案第3の5においては、代表者の住所は登記事項としつつも、当該住所が記載された登記事項証明書の交付を一定程度制限するため、登記簿に記載されている事項(代表者の住所を除く。)が記載された登記事項証明書については、何人も、その交付を請求することができるものとするが、当該住所が記載された登記事項証明書については、当該住所の確認について「利害関係」を有する者に限り、その交付を請求することができるものとしている。そして、「利害関係」とは、登記簿の附属書類の閲覧について利害関係を有する者がその閲覧を請求することができるものとする登記簿の附属書類の閲覧の制度(商業登記法第11条の2)と同様に、事実上の利害関係では足りず、法律上の利害関係を有することが必要であると考えられる。もっとも、具体的にいかなる範囲で「利害関係」が認められるかについては、代表者のプライバシーの保護の要請と代表者の住所が記載された登記事項証明書の交付を受ける必要性を考慮して総合的に検討すべきであり、例えば、株式会社の債権者がその債権を行使するに際して当該住所を確認する必要がある場合においては、「利害関係」を認めることができると考えられるが、なお検討する必要がある。

 なお、代表者の住所を含む登記情報については、インターネットを利用して取得することができることとされている。しかし、試案第3の5のような規律の見直しをする場合には、インターネット上で取得することができる登記情報から当該住所についての情報を除くなど、所要の措置を講ずることについて検討する必要が生ずる。そのため、試案第3の5の(注)においては、これについて検討するものとしている。

1.登記申請書の法人名にフリガナを記載
平成30年3月12日から、設立登記に限った取り扱いではありませんが。

法務省HP

http://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_00109.html


・登記事項証明書には記載されません。
・国税庁法人番号公表サイトを通じて公表されます。

・登記官は、登記申請書に記載された法人名の振り仮名が公序良俗に反するものと認められる場合を除き、その記載のとおり、片仮名で登記情報システムに登録するものとする。

・申請人が法人名の振り仮名の記載の求めに応じない場合には、登記官は、最も一般的と考えられる法人名の振り仮名を片仮名で登記情報システムに登録するが、これについては、公表サイトにおける公表を行わない情報として管理する。


2.会社の設立登記のファストトラック化

こちらも平成30年3月12日から。

法務省HP

http://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_00110.html

 
ファストトラック化の対象
・起業の促進等の観点を踏まえ、株式会社及び合同会社の設立登記(新設合併、新設分割及び株式移転によるものを含む。)を対象として、通年、ファストトラック化に取り組むものとする。

登記の完了時期
・補正が必要な場合を除き、書面による申請の場合には申請の受付日の翌日から、オンライン申請の場合には添付書面の全部が登記所に到達した日の翌日から起算して、原則として3日以内に登記を完了するものとする。
 
なお、登記申請件数の多い時期(4月、6月及び7月)であるなど、3日以内に登記を完了することが困難な事情がある場合においても、できる限り速やかに登記を完了するよう努めるものとする。

先順位の商号変更、本店移転の登記申請等に係る留意事項
・会社の設立登記のファストトラック化に当たっては、先に商号変更、本店移転又は組織変更・種類変更・特例有限会社の商号変更による設立の登記申請がされ登記が完了していない会社と、同一の所在場所かつ同一の商号の登記をすることのないよう、登記情報システムの機能を利用するなどし、先順位で受け付けられた未済事件をも確認するものとする。


3.株式会社の不正使用防止のための公証人の活用


法務省HP

http://www.moj.go.jp/hisho/kouhou/hisho08_00980.html

 
株式会社の不正使用防止のための公証人の活用に関する研究会に関する質疑について
【大臣】
研究会のとりまとめは、公証人が定款認証手続において、起業者に対し、実質的支配者等についての申告を求め、申告がなければ認証を拒否するなどの方策により、設立される株式会社の実質的支配者を把握し、暴力団員等の反社会的勢力を排除するというものです。実効性の担保として、公証人が虚偽申告事案を適切に選別することができるように、諸外国や国内の他機関の取組も参考にしつつ、どのような場合により踏み込んだ確認を行うかについて明確な基準を設定することや、警察庁等の関係機関との連携に努めることが非常に大事であると考えています。今回提言があった主な方策は、省令の改正により対応可能であり、会社法の改正は考えていません。


4.今後の動き
規制改革推進会議第5回行政手続部会第2検討チーム
重点分野「商業登記等」

http://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/suishin/meeting/bukai/dai2/20180215/agenda.html


平成29年度

・会社の設立登記の優先的処理(ファストトラック化)の実施

平成30年度
・「オンラインによる法人設立登記の24時間以内の処理の実現及び世界最高水準の適正迅速処理を目指した業務の徹底的な電子化」の実現のためのシステム改修の検討作業
印鑑届出の義務の廃止のための検討作業
商業登記電子証明書の手数料の見直しの検討作業

平成31年度
登記情報システムの更改における二次元バーコードの活用等の開発(平成32年度中の稼働予定)

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