中小企業の法務のポイント

司法書士法人名南経営 岩本直也 公式ブログ

2018年06月

今年は、免許の更新の年でした。
5月31日生まれの私の更新期間の末日はいつになるでしょうか。

平成30年6月30日は土曜日です。

更新のはがきには、7月1日ではなく「7月2日まで」と記載されていました。

【民法】

第142条 期間の末日が日曜日、国民の祝日に関する法律(昭和23年法律第178号)に規定する休日その他の休日に当たるときは、その日に取引をしない慣習がある場合に限り、期間は、その翌日に満了する。

 

【国民の祝日に関する法律】

http://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/viewContents?lawId=323AC1000000178_20160101_426AC0000000043

 

組織再編等の債権者保護手続きの異議申述期間の末日を確認する際に、何百回と見てきた規定で、土曜日は「休日」には当たらないのです。
たとえば、7月1日(日)を吸収合併の効力発生日と定め、5月30日(水)に債権者保護手続きを開始した場合、6月30日(土)24時に満了するため、適法に効力発生日をむかえます。
 

CF:民事訴訟手続

【民事訴訟法】

(期間の計算)

第95条 期間の計算については、民法の期間に関する規定に従う。

2 期間を定める裁判において始期を定めなかったときは、期間は、その裁判が効力を生じた時から進行を始める。

3 期間の末日が日曜日、土曜日、国民の祝日に関する法律(昭和二十三年法律第百七十八号)に規定する休日、一月二日、一月三日又は十二月二十九日から十二月三十一日までの日に当たるときは、期間は、その翌日に満了する。

 

ではなぜ免許の有効期間(=更新期間)の末日が、7月2日になっているのか。

いったい土曜日は何なのか。。。

 

別の法律があるようです。

 

【行政機関の休日に関する法律】

(行政機関の休日)

第1条 次の各号に掲げる日は、行政機関の休日とし、行政機関の執務は、原則として行わないものとする。

1 日曜日及び土曜日

2 国民の祝日に関する法律(昭和23年法律第178号)に規定する休日

3 12月29日から翌年の1月3日までの日(前号に掲げる日を除く。)

2 前項の「行政機関」とは、法律の規定に基づき内閣に置かれる各機関、内閣の統轄の下に行政事務をつかさどる機関として置かれる各機関及び内閣の所轄の下に置かれる機関並びに会計検査院をいう。

3 第1項の規定は、行政機関の休日に各行政機関(前項に掲げる一の機関をいう。以下同じ。)がその所掌事務を遂行することを妨げるものではない。
(期限の特例)

第2条 国の行政庁(各行政機関、各行政機関に置かれる部局若しくは機関又は各行政機関の長その他の職員であるものに限る。)に対する申請、届出その他の行為の期限で法律又は法律に基づく命令で規定する期間(時をもつて定める期間を除く。)をもつて定めるものが行政機関の休日に当たるときは、行政機関の休日の翌日をもつてその期限とみなす。ただし、法律又は法律に基づく命令に別段の定めがある場合は、この限りでない。

 

ということで、土曜日は「行政機関の休日」となり、日曜日の翌日である7月2日が末日となっていたわけです。調べてみれば、しっかりルールが決まっているわけですね。


さて、民法に戻って「その日に取引をしない慣習がある場合のその他の休日」ってどんな日なんでしょうか。
私の田舎(遠州地方)では、山の講という山仕事、畑仕事をしてはいけない日(確か2月5日)があり、子供頃祖父「家で静かにしていなさい。」と言われたことを思い出しました。民法の解説書によれば、取引しない慣習は、ある地方独特のものでも、当事者の一方のみでもよい、とありますが。

「国民にわかりやすい民法」を目指して、債権法の改正が行われましたが、民法142条は対象になっていません。

実務(手続・登記)家の鉄則は、解釈に疑義が生じないようより安全な方法を選択することです。
スケジュール作成には十分注意しましょう。

悪魔は細部に宿る。

この時期特有の登記と言えば、会計監査人のみなし再任による重任登記です。

会計監査人の任期は、選任後1年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までとなっていますが、当該定時株主総会において別段の決議がされなかったときは、再任されたものとみなされます。

会社法338条
(会計監査人の任期)
 会計監査人の任期は、選任後1年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までとする。

2 会計監査人は、前項の定時株主総会において別段の決議がされなかったときは、当該定時株主総会において再任されたものとみなす。

3 前2項の規定にかかわらず、会計監査人設置会社が会計監査人を置く旨の定款の定めを廃止する定款の変更をした場合には、会計監査人の任期は、当該定款の変更の効力が生じた時に満了する。

再任されたものとみなす=再選決議があったものとみなすという意味のため、「重任」登記は必要になります。そして、添付書類は次のとおりです。

1.株主総会議事録 〇
定時株主総会で別段の決議(=後任の会計監査人の選任や現在の会計監査人の不再任決議)がなかったことと登記原因の日付を表すために必要です。

2.就任承諾書 ×

平成18年3月31日民商第782号通達58頁

任期満了の際の定時株主総会において別段の決議がされなかったことにより、会計監査人が再任されたものとみなされる場合(会社法第338条第2項)の重任の登記の申請書には、商登法第54条第2項第2号及び第3号の書面並びに当該定時株主総会の議事録(同条第4項)を添付すれば足り、会計監査人が就任を承諾したことを証する書面の添付は要しない。

3.株主リスト ×
http://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_00103.html#06

Q6 いわゆる会計監査人の自動再任(会社法第338条第2項)の場合には、株主リストの添付は必要ですか。
A6 株主リストの添付は必要ありません。


ただ、会計監査人を設置している会社の多くは、取締役の任期も1年としていることが多く取締役の変更登記として、必要にはなります。


4.資格証明書 〇
ただし、会計監査人が監査法人で、商業登記法19条の3に基づき、会社法人等番号を申請書に記載した場合は、添付を省略することができます。

以上から、実際の書面は株主総会議事録だけになり、しかも当該議事録には会計監査人の名称は記載されていないことになります。

会計監査人の名称を確認していますか。

https://www.shinnihon.or.jp/about-us/news-releases/2018/2018-03-19.html



 「平成」最後の6月を迎えました(5月もそうでしたが。。。)。

 来年の今頃の議事録や契約書に記載する年月日は、新しい元号になっているでしょう。
 もっとも、日本の場合は西暦と和暦の2つの表記方法がありますので、海外との取引が多かったり、株主・役員に外国の方がいる場合は、すでに西暦に統一し、何ら影響を受けない会社もあるでしょう。

 特に今年は、来年6月開催の定時株主総会(3月決算)が、事業年度末日は平成で、招集日は新しい元号となり、統一感のない表記になるおそれがあり、今年のうちから西暦に変更した会社が多かったようです。

 ちなみに、西暦で記載された議事録を添付した登記申請も問題なく受理されます。

 ただ、登記をする際には和暦に引き直することになります。
これは、元号法の制定時に発出された先例(昭和54年7月5日民三3884号・民四依命通知)により和暦である元号を用いることになっているからです(不動産登記に関するものですが。)。

 なお、元号法(昭和54年法43号)という法律は、たったの2「項」だけです。
  1項 元号は、政令で定める。

  2項 元号は、皇位の承継があった場合に限り改める。



 もうひとつ最近多い質問が、契約書に記載する契約期間や社債要項に記載する償還期限を、例えば「平成40年」と記載してよいか、というものです。
 同じ時点をどう表記するかの問題ですので、「平成40年」のままでも、「平成40年(2028年)」と和暦と西暦を併記しても、「2028年」と他の条項を含め西暦に統一しても、社内で管理しやすい記載でよいですよ、と回答しています。
 ちなみに、債権法改正の施行日は、「民法の一部を改正する法律の施行期日を定める政令」で平成32年4月1日と定めらました。実際には平成32年はないわけですが。

法務省のHPは、併記型で施行日の周知をしているようです。

http://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_001070000.html

 

【元号に関する最近のニュース】

 省庁データ、西暦に一本化=証明書など元号継続-政府

https://www.jiji.com/jc/article?k=2018052100883&g=pol

 
富士ソフト株式会社 定款の一部変更に関するお知らせ

https://www.fsi.co.jp/company/news/2018/20180215_6.pdf

(定款附則を変更する実益はほとんどないと思いますが、個人的にはこういう定款変更、好きです。)

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