【遺産の一部分割】

 共同相続人は、民法908条(遺産分割の禁止)の規定により被相続人が遺言で禁じた場合を除き、いつでも、遺産の全部又は一部を協議により分割することができます(改正法907条1項)。

 遺産分割について、共同相続人間に協議が調わないとき又は協議をすることができないときには、各共同相続人は、その全部又は一部の分割を家庭裁判所に請求することができます(改正法907条2項)。

 

現行法では、一部分割の明文規定はありませんが、共同相続人の協議で遺産の一部分割を行うことはできます。

遺産分割審判(大阪高決昭和46年12月7日)における一部分割の要件は、

(1)遺産の一部を他の部分とは分離して分割することに合理的な理由があること(必要性)

かつ

(2)遺産の一部分割をすることによって遺産全体についての具体的相続分と民法906条の基準に照らした適正公平な分割が不可能とならないこと(許容性)です。

 

改正法では、(1)の必要性は不要になるようです。

改正法907条2項ただし書

「遺産の一部を分割することにより他の相続人の利益を害するおそれがある場合におけるその分割については,この限りでない。」

 

 

【遺産分割前の財産処分と遺産の範囲】

 遺産分割前に遺産に属する財産が処分された場合であっても、共同相続人は、その全員の同意(処分者は除く。)により、処分された財産が遺産分割時に遺産として存在するものとみなすことができます(改正法906条の2)。

 

要件

(1)処分財産が相続開始時に被相続人の遺産に属していたこと

(2)処分財産を共同相続人の一人又は数人が処分したこと

(3)処分者以外の共同相続人全員が、処分財産を遺産分割の対象に含めることに同意していること