岩 崎 建 築 研 究 室 ・ 日 誌

〜京都で数寄屋を学び、建築設計を考える〜

岩崎建築研究室

茶室の仮組

マンションフルリノベの茶室計画。工事が進む現場監理の後、仮組が進む大工さんの作業場へ。建築主さん、全体設計者、現場監督さんとともに。

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作業場の中に、三畳の茶室が組み上がっている!

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床柱、床框、落掛、相手柱はすべて古材。床柱、床框は栗、相手柱は松。栗と思われていた落掛は、削ってみると栗ではなさそう。はっきりとわからないがエンジュかもしれない。

昔からエンジュは厄除けの力があるとされ、敷地の一角に植えらることも多かったとか。中国、周代の朝廷では、三公(臣下で最高位の三人の官吏)が位置する所には三本の槐(エンジュ)を植え、九卿(九人の大臣)の位置する所には九本の棘(いばら)を植えたことから、国政の最高幹部のことを槐門棘路(かいもんきょくろ)と呼んだ。ちなみに三公は日本では太政大臣、右大臣、左大臣にあたり、源実朝の歌集「金槐和歌集」の「金」は「鎌倉」の鎌の字の「かねへん」を表し「槐」は大臣を表し、鎌倉の右大臣であった実朝の歌集であることを表している。近衛家熙の言行を、その侍医であった山科道安が記した日記は、はじめは「槐下与聞」と題され、のちに「槐記(かいき)」とされるが、これも家熙が太政大臣であったことによる。

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栗古材の床柱と芽付竹の垂木の取り合い。

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掛け込み天井。天井材はゴギョウの予定。マンションのスラブギリギリに設計をしていて、うまく施工できるか検討が必要。

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垂木は芽付竹、小舞は女竹の吹寄、間垂木も女竹だが、小舞よりわずか細い手にしてみた。

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客座より点前座を見る。壁留は赤松の皮付き。落ち天井の竿は煤竹。天井材は、現場より生け捕りした網代の予定。

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一般的に、茶道口は方立口、給仕口は火灯口とすることが多い。今回は茶道口と給仕口を一つで両方を兼ねるので、方立口にしても火灯口にしても良いかと思うが、ご亭主と相談の結果、火灯口に。

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茶室露地大事典によれば「火灯形の曲線には、茶人の好みが現れ、例えば千利休は頂部を抑えるような曲線を、小堀遠州は袴腰に近い輪郭か、やや尖り気味の形を好んだ」のこと。今回のご亭主は小堀遠州流ということもあり、袴腰で。ただし尖り気味ではなく、隅切りに近い形の方が良さそう、ということでこんな形に。

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引手は、最近入手した真向兎。真向き兎(まむきうさぎ)は兎の姿を正面から見たもので体を桃の形に描く。家紋などで古くから使われていた意匠だと思いますが、大工頭中井家関係資料には、遠州の伏見奉行邸所々釘隠引手之図として真向兎の絵があり、釘隠や引手にこの意匠を使ったのは遠州のアイディアなのでは。

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廊下部分の天井、掛け込み天井が続き一体感を出す。






















作業場打ち合わせ

マンションフルリノベの茶室計画。今日は埼玉の大工さんの作業場にお邪魔して詳細打ち合わせ。京都から送った銘木、銘竹を開封、確認して、使い方の詳細を相談する。

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京都の銘竹屋さんから送ってもらった竹の数々。落天井の竿縁用の煤竹、掛け込み天井の垂木用の芽付竹、間垂木や小舞用の女竹、藤蔓など。

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銘木屋さんからは面皮の柱、北山丸太の桁、敷居の松、鴨居の杉など。

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壁留用の赤松。節の様子や太さ、曲がり具合を見ながら、使う場所を決める。

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桁の元末を大工さんと相談。セオリーがあるようなないような。毎回悩みながら、その場所にふさわしいものを考えます。

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ほぼまっすぐに見える北山杉でも、やっぱり元は太く、末は細い。

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元で三寸五分。

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末で三寸ほど。

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敷居用の松。

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メインとなる敷居をとった残りも有効に使えるよう考える。

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垂木掛け用の赤杉。竹は彫り込むのかイモにするのか、も大工さんと相談。

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掛け込み天井の垂木用の芽付竹。一本一本よく見て、使う場所を決める。壁際の垂木の回転具合も確認。

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芽の切る具合も確認。

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藤蔓の編み方も確認。

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現場から生け捕りした網代の上に竿縁を置いて見る。

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当初図面では落天井の竿縁は女竹吹寄としておいた(写真は天井に見えるよう上下反転してあります。)

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古材の床柱などが決まってきて、そうなるとここの竿縁は煤竹の方が良いのではと思い始めた。

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煤竹も、よくある色の濃いものではなく、「蔵さび」と呼ばれるような浅い色合いのものが合うのでは。このあたりはご亭主の趣味にもよるので、写真をお送りしてご相談。


マンションフルリノベの茶室

計画を進めていたマンションフルリノベの茶室工事。全体の計画はハクアーキテクツスタジオさんが、茶室部分は岩崎建築研究室が担当で計画を進めてきましたが、この度無事契約も済み、いよいよ着工。今日から解体工事です。

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建築主さんは小堀遠州流のお茶をされていて、以前にもマンション内にお茶室を作られていましたが、今回のフルリノベにあたり、より本格的な三畳の茶室を作ることとなりました。

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既存の網代天井。へぎ板が本当に貴重になってきた昨今。この天井を再利用すべく、大工さんに来てもらい、生け捕りする計画です。

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吹寄の竿縁の女竹はフィニッシュネイルで止められていて(本来なら巻頭釘などで打ち上げ)引っ張ると簡単に取れる。

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回縁にもトン付けで彫り込まれておらず取り外しが容易。

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墨の跡はありますが、焼けもほとんどなく、竿縁のピッチが変わっての再利用もできそう。

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竿縁を全部取ったところ。2050×2500の網代天井。全体そのまま外すのは難しそうなので、、

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二つに切断することに。新しく作る落天井は京間一畳分なので、それが余裕を持って取れる大きさと、その残りに切断。

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丸ノコで切断して、桟を手ノコで切断すると、

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無事、生け捕り成功。落天井に使わない方ですが、きれいに捕れました。

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釜蛭釘は栓差で、栓を抜かないと天井が取れないかと思いましたが、そうではなく、、、

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あらかじめ天井に付けたものを設置したようで、蛭釘を外さずとも天井が取れました。下で網代を編んで釜蛭釘も取り付けたパネルを、ボンドとフィニッシュで施工したようです。

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5.5mmのメーターサイズのベニアに桟をつけて、釜蛭部分には板が入れてありました。

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無事、釜蛭釘も生け捕り。こちらも再利用します。

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時間を経て色艶を増した網代の天井。手間をかけて外して再利用する価値のあるものだと思います。建築主さんのこれまでの思い出も一緒に。

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ベニアに挟んで養生。この大きさではエレベーターには載らないので、

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階段でおろします。踊り場も周りきらないので、

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ここからは、上下で受け渡し。

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落とさないように気をつけて、

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渡したらすぐ下に降りて受け取り。

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無事下ろせたら、車に積んで大工さんの作業場へ。

八勝館後編

八勝館後編、庭の手入れをされている八勝館の方の案内で庭を散策。

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松の間と梅の間は茅葺き。

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残月の間に入る躙口。もちろん本歌の残月には躙口はない。広間に入るのに躙口というのは少し違和感。

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御幸の間は見学できず。8月の見学会に参加しよう。

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苑内にはいくつも鉄灯篭がある。雨ざらしで大丈夫だろうかと思ってしまう。これまで建築主様がお持ちの鉄灯篭は軒下に置くようお勧めしてきた。

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光悦寺垣。八勝館には元庭師の従業員がいるらしい。

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御幸の間棟と鉄灯篭。

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田舎家の内部。400年ほど前のものを昭和初期に滋賀県甲賀郡より移築。

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田舎家のかまど。

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田舎家の水屋。左側に釜据と底洗いがあるので、表千家か。

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瓦小端立て。

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印の押された瓦。

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再び御幸の間を外から見る。

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屋根は銅板葺き。昭和二十五年(1950)築なので、73年。しっかりと緑青となっているが、最近は酸性雨で変色する前に穴が空くのではとも。

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なぜか鬼がいない。南蛮漆喰が塗られている。

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遠くから見たら「八」に見えるのかと思ったが、勝手な思い込みだった。こちらも鬼瓦なし。

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再度詳細。鬼が落ちたわけでもなさそう。

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窓ガラスはおそらく真空ガラスに変えられているのだと思う。Low-e膜のミラー効果で庭がきれいに映っている。

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美しいハマグリ。

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庭を一段上がって菊の間を見る。

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白い棗形の立蹲踞。

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竹の間。欄間も竹(笹)、引手も竹。

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杉皮の網代に下地窓。

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六角の鉄灯篭。

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緑の瓦。

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ベタ万十と切落の瓦。

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外腰掛け待合。

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銅板一文字葺き、素丸の棟。

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渡り廊下の潜り。

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八勝館の鬼瓦。

八勝館前編

人生の先輩、社中の後輩のOさんにお誘いいただき八勝館へ。Oさんにはこれまで高麗橋吉兆や八日市招福楼など、自分ではいけないような名店に連れて行っていただき、設計者にとって大変貴重な経験をさせていただいています。今はそのご厚意に甘え、ただただ感謝申し上げるだけですが、せめてその経験をしっかりと自分のものとし日々の設計に活かし、いつかは次の世代に同じようなことをしていければ、と考えています。

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向かい鳩の軒瓦。熊谷次郎直実が源頼朝から授かった紋。鶴岡八幡宮の鳩は向かいあっていない。

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かつてバイオリンのレッスンに通った八事の街(かれこれ30年以上前!)。当時は鬱蒼とした森でしたたが、イオンができ、大きなマンションが建ってしまっている。

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八勝の扁額。八勝館は創業大正十四年。明治十年代に材木商が別荘として建てた屋敷にて旅館業を開始、その後料亭となる。八勝館の名は、禅語「八勝道」に由来、また八事の丘陵地にあり八方に山々が眺められた景勝地であった頃から、とも。

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梅の間に案内された。

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床の間の天井。ラインライトとスポットの併用。花蛭釘は決まりに縛られず、実際に吊った時の景色を吟味したと思われる位置に設置されている。

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スポットの当たった掛軸。

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庭に見える外腰掛け待合。

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光悦寺垣。

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お料理は雛祭りの趣向で。旧暦で考えると今年の上巳の節句は4/22。今日は2/16。季節の先取りとはいえ、ちょっと早すぎない?桃の花も添えられていますが、本来の開花時期は3月下旬から4月中旬。

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魯山人がいた部屋から庭を眺める。

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灯篭と待合。

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トイレの腰は木賊張り(本木賊ではありませんが)

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渡り廊下。床は磨きこまれた栂。

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魯山人好みの鉄行灯。

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衝立屏風の唐紙。

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障子は薄桟。

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太極図の引手。

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瓢の捻り締まり。

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雛留の無目。

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栂の廊下。

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玄関棟から見る中庭。

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玄関脇にある鉄灯篭。庭のあちこちに鉄灯篭がある。

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庭に至る道脇の景石。何石?

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渡り廊下をくぐる。

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ひしぎ竹と栗の押さえ。

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庭へと入っていく。後編に続く。




千葉のマンション茶室リフォーム、三日目。

千葉のマンション茶室リフォーム、三日目。

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柱が立てられ敷居鴨居の取り付けが進む。

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昨日立てられた床柱に床框、落掛、相手柱がつけられ、床の間周りが組み上った。

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床框は松の古材。建築主さんとは柳釘について相談。決まりがあるようではっきりしないので、毎回建築主さんと相談して決めています。

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踏み込みと茶室の間には三枚引き違いの障子を入れる予定。

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今回の現場監理はここまで。今週末で大工工事は終了予定、来週クロス工事、再来週に畳、建具を入れて完成の予定です。



千葉のマンション茶室リフォーム、二日目。

千葉のマンション茶室リフォーム、二日目。

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床組みが進む。

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スライド式炉壇が納まる部分。

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動かせない火災報知器と、よりによって釜蛭釘の位置がドンピシャ。小間の茶室で掛け込み天井の垂木に丸太を渡して釜蛭を取り付ける例をヒントに解決策を考える。

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スイッチも移設。

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床柱が立った。赤松皮付き。

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鎌継ぎ。マンションリフォームの場合。長い部材が持ち込めないこともあるので注意が必要です。

千葉のマンション茶室リフォーム。

2022年8月末にメールをいただき、計画を進めてきた茶室リフォーム。マンションの和室六畳を、30cm床を上げ四畳半と踏み込みにする計画。図面作成、見積書作成、大工さんの日程調整を経て、いよいよ今日着工です。

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名古屋で別現場の現場監理の後、15:00頃到着。現場に到着すると、リビングとの間の壁が解体されていた。

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今回は床を30cm上げる予定。炉壇は特注の深さ24cmを使います。

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ストックしてあった玉子型の古引手を持参。ちょっとずつ違うので、建築主さんと見ながら使う場所を決定。
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岩崎建築研究室
岩崎 泰

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