岩 崎 建 築 研 究 室 ・ 日 誌

〜京都で数寄屋を学び、建築設計を考える〜

岩崎建築研究室

面巾と中柱廻り

加工が進む二帖台目の茶室。今日は大工さんの作業場を訪れて、午前中いっぱいかけて、詳細な寸法を確認してゆく。


まずは床柱の面巾。床柱は神代杉の角柱、三寸二分角。これにいくつの面をつけるか、目の前で鉋をかけて面を付けてくれる。まずは一分、一分半、二分とすこしずつ面巾を広げてゆく。


面をつけないとこんな感じですが、


面巾二分を付けたところはこんな感じ。面にも杢目が出て印象が随分と変わる。落とし掛けとの取り合いも確認し、床の間のできあがりを想像しながら、面巾は二分に決定。


垂木の面巾も確認。


垂木は赤杉の下端柾。大工さんが数年前に購入した丸太から、製材してとったもの。原木を買って製材して材料をとるのは、魚市場でマグロを仕入れて解体して刺身をとるのにも似て、難しそうですが、面白そう。


私の描いた図面と大工さん自らが描いた原寸図を並べて作業が進められている。


天井板の並びも確認。杉板の天井板は、うづくりをして柿渋を塗っている。うづくりをしてから柿渋を塗ると、水分を吸って膨らんでうづくりが戻ってしまったとか。


床柱の切れ端を置いてもらって様子を確認する。実際の仕上がりは上下反転した状態、体を反り返して見ればその状態になりますが、それも大変なので、頭の中で反転して、できあがりを想像しながら。


竿縁も置いてみる。竹が使われることもある茶室の竿縁としては、ちょっとヴォリューミーだなあと思っていると、大工さんも「ちょっと大きいですよね」。じゃあちょっと削りましょうか、ということに。


設計では七分×九分でしたが、六分×八分に。並べてみると、すっと納まる。ほんのちょっとのことで印象が変わるので寸法決定は難しいですが、ご亭主がここでお茶をすることを想像しながら、こうして大工さんと微調整をしながら、茶室をまとめてゆく過程は本当に楽しい。


次は中柱。まずは立ち。レーザーをあてて垂直を確認しながら、どちらにどの程度傾けるかを決定する。実際に何度か中柱のある出炉の席で点前をして感じるのは、炉の季節、濃茶で蓋置きに柄杓を引いて総礼、という場面、点前座で礼をすると、中柱が迫ってくる。中柱の曲がりはその圧迫感を和らげる効果があるように感じる。


次は横木の高さを決定。曲がりに対して、どのあたりに横木がはいっているか、名席の写真も見ながら、また過去見てきた茶室の記憶もたどりながら、塩梅を考える。曲がりのカーブ、ラインはそれぞれ違うので、決まりはなく、最後は感覚で決めるしかない。また今回横木に使うのは古材で、古材による寸法の制約もいくつかあるので、それらも確認しながら。


中柱足下の位置にちょうど節があるので、それとの取り合いで、床位置を決定。横木あるいは引竹の高さには諸説あり、北尾春道著の「茶室の材料と構法」によれば、

「中柱は利休の創意と伝え、台子の曲尺割の寸法を各所に封じ込めて、侘草庵の席にあっても真の台子の厳然たる態度を忘れないというのである。すなわち中柱の太さは台子の四本柱を一束に集めてその規矩をあらわして径二寸の丸太としたのである。また引竹または横木の高さを二尺二寸五分としたのは台子の高さに準じたものであり、引竹の径や横木の厚さを六分にしたことは台子の天板の厚さで、中柱を立てるヌメ板の厚さを一寸五分とし、その巾を二寸としたのも台子の巾や柱の太さから割り出したものである。こうした中柱もはじめは直木であったが、極侘の意味で原叟(六世宗左)の時代に曲り柱を用いたと伝え、この曲り柱を用いるときは引竹や横木を取付ける高さ二尺二寸五分までは直木で、その上から曲がったものを選ぶことになっている」

ただ、実際にいろいろな茶室を見ると様々で、横木の高さについても色々。実際には、二尺一寸から二尺二寸五分あたりに分布しているようで、台子の高さ云々は後付けなのでは、という気がしないでもないが、台子の高さ自体も様々なのかも。ちなみに不審庵蔵の利休好みの真台子の高さは、資料によれば67.0センチ。尺寸にすると二尺二寸一分。(できればこうした寸法は尺寸で採寸した上で、尺寸で表示して欲しいなあと思う。)

主な席の横木の高さ(岡田孝男著「京の茶室」より)
聚光院 閑隠席   二尺一寸(直/一寸七分/赤松皮付)
金地院 八窓席   二尺二寸(曲/二寸五厘/不明)
建仁寺 東陽坊   二尺一寸六分(曲/一寸七分/樫皮付)
水無瀬神宮 灯心亭 二尺二寸(直/二寸/櫟)
慈氏院 看雲席   二尺一寸四分(曲/一寸六分/北山丸太)


落ち天井の壁留にはコブシを使う予定。節は景色になりますが、重なるとうるさいので、使う位置を調節して、全体をまとめる。


親方と若い大工さんと私の三人で相談をして、各寸法を決めながら感じたのは、ひょっとしたら、大工さんにとっては、こうして寸法を誰かに決めてもらったほうが、作りやすいのかも、ということ。大工さんの中には自ら設計をしないと気が済まないという人もいるかもしれませんが、各寸法に悩みながら作っていると、仕事も捗らないかもしれない。寸法の責任は設計者が請け負い、施工者は加工やその仕上がりに専念する、というやり方が、案外良い仕事に繋がるのかもしれない、という気がしている。

百日紅の家

四月に竣工引き渡しをした大阪の家。引越をして三ヶ月がすぎ、そろそろ落ち着かれたかな、ということで久々に訪れてみました。


青竹で作った御簾垣はすっかり色が変わり、ピンクのサルスベリが咲いている。


別の角度より。道を行き交う近所の方にも、サルスベリの花はよく見え、その長い花の時期を楽しんでもらえているのでは、と思う。


建築主さんによると、花の盛りを少し過ぎた頃、とのこと。建物とのバランス的には、もう少し大きくなっても大丈夫。ご近所のシンボルツリーになってくれれば、と思う。


反対側は、黒い板塀に松、とまた違った雰囲気。塀沿いには植木鉢が並べられ、建築主さんご丹精の季節の草花が目を楽しませてくれる。


玄関には少し前に咲いたという蓮の花が飾られていた。


玄関ホールには朝顔の扇子。素敵に活用していただいて嬉しい。


ダイニングから見える庭もよい感じ。建築主さんにも大変気に入っていただいたようで、嬉しい限り。


お風呂の窓からはひょうたんの蔓。月が見える時もあるのだとか。


沓脱石の上には下駄、そして銅製の如雨露。

渉成園の蘆菴

東本願寺の飛地境内地(別邸)の枳殻邸(渉成園)の茶室、蘆菴が特別公開をしている、というので行ってきました。


蘆菴は、二階建ての煎茶室。昭和三十二年(1957)の再建。写真は特別公開の看板より。


背の高い門を潜って園内に入る。


園林堂の脇、丸窓が印象的。


飛び石の様子。最近露地の飛び石の図面を描くことが多かった。実例を多く見て、それなりの図面を描けるようになっておきたい。


一階は二方に縁側のついた七帖。三和土から縁側天で二尺一寸。縁側の巾も二尺一寸。


縁側から灯籠を見る。


ぼてっとした灯籠だなあと思ったら、雪が積もった状態を表現しているものだった。


雨戸の鴨居の内法は五七。軒の出は、柱芯から垂木先で三尺。


隅木の見上げ。


中門と蹲踞。


沓脱石は白川。二番石は鞍馬。


床の間、床框は黒柿、地板は松。


墨蹟窓は、ゆったりした下地窓。


床の間の天井は網代。


天井は、吹き寄せの竿縁天井。内法は五七、鴨居から天井板までが一尺八寸五分だったので、天井高さは七尺五寸五分(2287)


廻縁は指し廻し。


二階へ。二階は四帖半。天井は葭の葉の糸編?これが盧菴の由来という説明だった。


竿縁は竹。廻縁に彫り込んで。


廻縁はこちらも指し廻し。ただし台目三帖の次の間は留めになっていた。


北側の床。地板は松。巾二尺五寸で長さ一間半。丸窓前の棚板、下は高さ一尺六寸五分、上はさらに八寸四分上。右端に見える障子、窓下の壁は一尺。内法は五七だったので、障子の内法は四尺七寸。鴨居より天井板は一尺五寸五分で、天井高さは七尺二寸五分(2196)


赤松皮付の柱。抹茶の茶室で中柱に使うもの。反対側に壁をつけている。


天井は籐網代。


丸窓の直径は三尺六寸(1090)。障子は引違なので、開けると半円、園林堂の屋根が見える。


棚を支える枝。


棚板はケヤキ。下は厚み七分で巾一尺一寸、上は厚み五分で巾九寸。



窓からの見下ろし。


屋根の隅部分。


中門と蹲踞をも見下ろす。平面図は無限遠方からの見下ろし。


障子は素組の薄桟。竪桟の見付は八分、見込みは一寸。


西の窓からの眺め。


印月池のアオサギ。シンクロナイズド羽根乾かし。


京都タワーが見える。


アオサギと漱沈居。漱沈居は一度入ってみたい建物ですが、周囲は少し荒れていた。


回棹廊。


枳殻邸の由来のからたち。


















大炉工事

継続的に色々な手入れをさせていただいている香芝の茶室。今回は大炉を別の部屋へ移設する、という工事。


大炉を取り出すと、めちゃめちゃ重い!とのこと。中の灰を出したら?ということで、中をみると、、、


底上げにレンガが入れてある。


取り出してみると、ナマが11丁、半割が3丁。重たいはずです。


それでも重いが、ずいぶんマシ、とのこと。


炉の深さを測ってみると、天端から底まで一尺二寸。以前製作したときもこの寸法で作成、これが一般的な寸法だと思いますが、


レンガで上げ底したあとの寸法は、八寸五分ほど。雪輪瓦があたるため、一部下げてありましたが、それでもおそらく九寸あれば、問題ないのではないでしょうか。以前他の建築主様も、大炉はとてもたくさん灰が要った、とおっしゃっていた。使う釜、五徳が決まっているなら、それにあわせて炉壇の深さを設定して作ったほうが、無駄に灰を入れなくてもよいし、床組にも無駄な荷重がかからなくてよいのでは、と思う。
 普段、炉壇を作るときは、大工さんが箱を作って左官屋さんに土を塗ってもらって、いわば特注をしている。深さを調節することは、製作上何の問題もないのだから、無駄のないような寸法を決定するところに、設計者が関わる意味があるのでは、と思う。


畳下の板に穴をあけて、受け材を取付けてゆく。床下は高基礎で、高さのある床下収納になっていて、作業はやりやすかったかも。


朝からかかって、昼過ぎには設置完了。段取りよく準備を進め、腕の良い慣れた大工さんにお願いすれば、驚くほど早く仕上がるものです。


床下の様子。重いので念のため補強を入れてもらっています。


夕方には畳屋さんが現場に来て、採寸をして大炉の鍵畳を製作。あわせて他の畳も表替えをする予定。丸目の位置を確認して。

亀廣保

お茶のお稽古、造園班。造園屋さんは遠方の仕事も多く、今日は少し遅めのスタート。月一回ですが、一日暑い中での仕事で疲れているだろうに、お茶のお稽古に来てくれるのは、有り難いこと。先生も頑張らなきゃ。お稽古は、薄茶平点前。先月のお稽古が、今月の頭になったので、それほど間を開けずにお稽古、となりましたが、皆忙しいからか、簡単な手順につまずくことが多かった。教える方もちょっとバタバタと忙しく、一年半を過ぎたお稽古はちょっと中だるみかも。いまいちど、何のためにお茶のお稽古をするのか、そのためには何をするべきなのかを、考えないといけない。

今日のお菓子を買いに亀廣保さんへ行ってきました。


烏丸御池から二本西に行って北に上がったところにある。


床は、素焼きのレンガタイル?変わったプロポーション。いまこの商品があるなら使ってみたい。


ショーケースの柱の足下は洗い出し。靴下かブーツみたい。


壁はひしぎ竹。大分変色してしまっているが、まだ大丈夫そうだ。


ショーケース。右には短冊、左にはお菓子。


上の小壁には店名が入れられている。亀屋、


廣保。字は陶器?素材がちょっとわからない。


陳列されたお菓子。左の壁は土が落ちて木摺りが見えてしまっている。左官屋さんを紹介したい。


門をくぐったところ。お店というより、自宅の玄関先の一室で商いをしている感じ。出入り口の戸は珍しく片開き。


店内に飾られていた額。行った事のないお店がまだまだある。


お稽古に使ったのは、「宵山」と「団扇」。団扇のフォルムがカワイイ。


「宵山」は間にすはまが挟まれていて、うまい。「団扇」は、硬くなく、かといって柔らかすぎず、絶妙な噛み応え。味も深みがあり、見た目が素敵なのはもちろん、味もきちんと美味い、のはさすが。この店は基本、干菓子だけを作っている。それで商いが成り立つ、というのが京都のすごいところ。大きなお店が繁盛するのもよいですが、こうしたお店がきちんと存続してゆくことも、京都の文化として大切なことだと思う。





床柱と古材

水辺の茶室。大工さんの作業場で加工が進んでいる。電話で床柱について打合せ。ラインで写真も送ってもらいましたが、やっぱり現物をみないと、ということで、急遽翌日朝一で作業場へ。


作業場で咲いていた蓮。事務所に籠っていては見られない。


床柱と床框の組み合わせ。今回の床柱も床框も建築主さんの持っていたもの。床柱は神代杉の角材。四寸角で本来なら広間に使うようなものですが、小間の茶室に使うにあたって三寸二分に落としてもらいました。四方柾、というわけにはいかず、一番良い杢目の面に少し節のようなものが出てきた。大工さんは柾目だから、綺麗に埋木をすれば、ほとんどわからなくなりますよ、と言ってくれたのですが、小細工をせず敢えてこれを見せるほうがよいのでは、と考える。小間に角材の床柱、ということ自体が、そもそもイレギュラーですし、綺麗すぎる柾の角材を小間に使うのは、どうなんだろうかと感じていた。こうして古材の床框と取り合わせると、そうした節も景色になるように感じる。はっきりとした正解がなく難しい問題ですが、いまできる精一杯で考えてみる。


エンジュの落掛もあてがってくれた。これに味わいのある土壁がつき、障子越しの柔らかな光が射し込めば、多分大丈夫だ。


若い大工さんは土台の刻み担当。着々と作業が進んでいる。


庇を支えるあて丸太。


造園屋さんが根石を用意してくれた。さすがにいいものを用意してくれる!しかも寸法ギリギリ、大工さんに向けた挑戦状のよう(笑)。柱の左右を入れ替え、使う高さを工夫すれば、なんとかいけそう。根石の向きはこうかな、置いてみる、と大工さんから「造園屋さんもそう言っていました」と聞き、ほっとするような、嬉しいような。共通の美意識を持って、同じ方向を向いて、一緒にものづくりの出来る仲間がいる、というのは本当にありがたい。


R君は天井板の加工。


和室の天井のほとんどが、誰でも張れる練り付けやプリント合板になってしまった現代、無垢板の天井板を使う、ということは、貴重でぜいたくな事になってしまっているが、職人が技を磨き、自然のものを感謝しながら、使いこなしてゆく、というのは、現代考えなければいけない問題が多く含まれているように感じる。






沓脱石

水辺の茶室。今日は建築主さんのご実家から、茶室に使用する沓脱石を搬出する。


ユニックで吊られた沓脱石。今回の茶室は、コンクリート造の住宅の中庭にある池(水盤)の近くに建てられる。沓脱石は、水の中に据えられる予定。


立蹲踞も水盤に立てられる予定。三つ又で少しずつ移動させてゆく。


ユニックに積み込まれた沓脱石と立蹲踞。沓脱石は、40センチほどの厚さ。このまま据えると茶室の濡れ縁に干渉してしまう。大工さんには、場合によって濡れ縁の高さや床の高さを変更する旨を伝えてありますが、造園屋さんと相談して、カットして薄くする事に。


大谷石の切石は、水屋の入り口に据える予定。


その後、造園屋さんの作業場に戻って、水盤に打つ飛び石の仮組を見てもらう。浅い水盤なので、厚い石は使えず、使える材は限られますが、その中で納得していただけるものを検討する。作業場に置かれたたくさんの他の石も見てもらい、別の石で仮組をお願いして、今日は終了。

エンジュと古材の框

大工さんの自宅でのお茶のお稽古の前に、茶室に使う材料の打合せ。


廊下に天井板が並べられ、板目を見て張り順を大工さんと相談する。柿渋の匂いがしたので、「もう柿渋塗ったんですね」と言ったら「違うんです。エンジュの匂いなんです」とのこと。今回、落掛で使う予定のエンジュ。鼻を近づけて匂いを嗅いでみると、本当に柿渋のような匂いがする。
 エンジュ(槐)はマメ科エンジュ属の落葉高木。正確には、イヌエンジュとエンジュがあり、日本でエンジュの名で流通しているものは、ほぼイヌエンジュなのだとか。中国原産のエンジュはほとんど流通していない。
 杢目は、ケヤキとキリを併せたような感じ。色味や艶のよさはクワに似ているとも。硬く粘りがあるので、昔からチョウナの柄として使われてきた。心材と辺材の色味の違いを生かした高級な床柱も人気があったとか。
 落掛の見付の寸法は難しくいつも悩むところですが、とりあえず一寸三分まで落としてもらうようにお願いしました。


こちらの古材は床框に使う予定。割れや節などを見ながら、どこを使用するか検討する。床柱、床框、落掛け、それらが組み上がったところを想像し、建築主さんの茶室として相応しいかどうかに注意をしながら、詳細な寸法などを決定してゆきたい。




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岩崎 泰

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