伏見の離れ新築工事。桜が咲いて一段落してから、と始めた工事もいよいよ今日で終わり。あいにくの雨となりましたが、朝から現場に行ってきました。


大工さんが残工事をしている間、雨の様子を観察。


軒先から滴りおちる雨水。


屋根に当り、はじけ飛ぶ水滴。


水滴の滴り落ちる様。お茶のお稽古では、柄杓の水の切れを意識したり、いかにしたらお茶碗に綺麗にお湯が注げるか、などに意識を集中させたり、「物の挙動を見極める」訓練という一面もあるように感じます。建築設計においては、そうして見つめた物の挙動をもとにディテールを決めていけたらと思います。


室内床はカバサクラ。もともと105ミリ幅でしたが、反ったり状態がよくなかったので、幅を落として挽き直してくれました。わざわざ手をかけてくれたおかげで、綺麗な仕上がりになりました。またカバサクラは、別名バーチ。北欧家具などにもよく使われる材料で、そうしたデザインのものとの相性も良いと思います。


点前座は向切。電熱炉を仕組むところ。


ペンダントの照明器具も取り付けられています。高さは建築主さんに確認していただいて。三浦照明器具製、六角のペンダントの豆腐張り。その佇まいはさすがに上品で、点灯すると上質な雰囲気が広がるように感じます。


建築主さんに無理を言って、掛軸を出していただきました。今回の建物は「古筆が似合う室礼にする」というのがひとつのテーマでしたので、こうして実際に掛けてみて無事しっくり納まってくれて、ほっと一安心です。写真は和漢朗詠集の「早秋」。「秋たちていくかもあらねどこのねむるあさけの風はたもとさむしも」。


床柱は白杉、床框は栗のナグリ。


窓からの光で浮かび上がる陰影。


「せっかくだから季節のものがいいですよね。」と建築主さんが他にもいくつかお軸を出してくださいました。こちらは村雨切。なんだか、まるで画廊か美術館のような感じ。


天井はよしず転がし仕上げ。和紙越しの灯りで照らされて、ざんぐりとして良い感じです。やっぱりヨシベニアのベタっとした感じではこうはならなかったと思います。また、とにかく上質の材料を求めた近代数寄屋の匠ならば、決してしなかっただろうと思われる仕上げでもあります。


両引き分けの硝子障子。うっすらと外の連子の竹の影が映る。


床の間の横に向切の点前座。こちらにも硝子入り障子。すっと開ければ、すぐに涼風が吹き込みます。


ハンス・ウェグナー(1914-2007)のダイニングチェアCH-36(リプロダクト)。アッシュ(タモ)材、オスモクリアオイル仕上げ。18世紀後半から19世紀にかけてアメリカ・ニューイングランド地方のシェーカー教徒によってつくられたシェーカー家具の椅子をリデザインしたもの。
 ちなみに同じシェーカーチェアをモデルとしたボーエ・モーエンセン(1914-1972)のJ-39は、FDB(デンマーク協同組合連合会)からの「一般市民のために安価で質の高い椅子を作って欲しい」という要求に対し、モーエンセンが数々の試行錯誤を重ね、1947年に完成した椅子。コストを抑えるために、パーツを機械加工できる4種類に絞り込み、ペーパーコードは町の人々に呼びかけ、歩合制で作業にあたらせたとか。
 オリジナルと工法の違う安価なリプロダクト製品については是非が問われますが、もともと大衆の為の椅子であるこれらの製品は、リプロダクト製品であっても、デザイナーの意図にも大きく外れることはないのでは、とも思います。


茶道口は火灯口。内法は通常よりもだいぶ高いですが、部屋全体を考えるとよいバランスだったと思います。


点前座からの眺め。畳台は移動可能、いろいろなかたちでおもてなしができそうです。


若い職人さんが一生懸命作ってくれた畳台。底にはカグスベールが取り付けてあって、スムーズに移動できる。


側板はケンドンになっていて、内部は収納になっている。

四月から始めた工事、終盤は他の現場の都合で、少し間が開いてしまいましたが、無事終了することが出来ました。ブログを通じて、同郷のよしみで、とご連絡をいただいたのがきっかけでしたが、工事中の現場監理のあいまに、建築主さんからいろいろなお話を伺ったり、本をお借りしたり、お道具を拝見させていただいたりと、興味深く貴重な体験をさせていただきました。今後、この離れを使って、様々なお客様をお迎えして、楽しい時間を過ごしていただければと思います。Kさんこの度は本当に有り難うございました。