以前、東京のお客様にお招きいただいたお茶事でご一緒したお茶の先生。茶室の壁が剥がれてきていて困られているとのこと、茶事の翌日に伺い、状態を確認。京都に戻って、いつも一緒に仕事にしている左官屋さんと相談した。

現場近くの職人さんを紹介してもらうということも考えましたが、茶室らしい味のある壁が塗れて、確実な仕事が出来、なおかつ、お茶の先生に対してもきちんとした対応ができる職人さん、ということになると、なかなかいない。結局「僕が行くわ」と言ってくれて、サンプルをいくつか作ってもらい、見積書と一緒にお送りして、その質と金額を確認していただく。小規模な工事で、交通費など経費が少し割高になってしまいますが、ご理解いただき、日程を調整して着工の運びとなりました。

工事前日の夜十一時に京都を出発。私も車に載せてもらい同行。左官屋さんが東京方面の仕事の時は、いつもそうしていると言うように、途中由比SAで少し仮眠をして、現場近くのファミレスで朝食をとって、現場には予定時刻通りに到着。


さっそく作業にかかる左官屋さん。私もできるだけ掃除などをお手伝い。今回事前に現場を見ずに着工してもらっていますが、私が撮った写真などを見てもらい準備をしてもらっている。こうした遠方での仕事の場合は特に、最初に話を聞く設計者の段取りも重要だと改めて思う。


お菓子とお薄を出していただき、腰掛待合で一服(先生ありがとうございました)。左官屋さんにお茶の頂き方をレクチャー。左官屋さんもお茶のお稽古する?なんて話をしながら。


一服後も作業を続けて、


午後一時には、予定通り、作業終了。今回は下塗りまでですが、すっきりして気持ちがよい。上塗りは引き摺り仕上げにする予定。先生にも喜んでいただき、嬉しい限り。出来る人にとっては、なんてことのない工事ですが、出来ない人には出来ないこと。自分が好きで頑張ってきた仕事で、依頼くださった人に喜んでもらう、こうした職人の仕事は本当に素晴らしい仕事だと思う。また、このような場をセッティングする設計者の仕事にもやりがいを感じる。

午後二時頃現場を離れ、午後八時には京都に到着。帰り道の車中、左官屋さんと色々な話をする。左官屋さんとは、以前勤めていた設計事務所の頃からの長いつきあいですが、こうして改めてゆっくり話す機会は意外と少ない。これまでに見たすごい壁の話や、一緒に仕事をした有名建築家の面白エピソード、他の様々な現場の話から、お互いの家族の話まで。互いの理解を深めるということは、これから先も一緒に良い仕事をしてゆく上で大切なことだと思う。