岩 崎 建 築 研 究 室 ・ 日 誌

〜京都で数寄屋を学び、建築設計を考える〜

岩崎建築研究室

精華の家

リフォームと茶室のその後

昨年開口部のリフォームをさせていただいたお宅がそろそろ竣工から一年。一度様子を伺おうと事前に連絡してお邪魔してきました。ご夫婦お二人揃ってご在宅で、その後の住み心地やその他たくさんお話を伺いました。竣工当時の様子はこちら

DSCF2211
そもそもの改修のきっかけは、冬寒かったので、断熱性能のある建具、開口部に替えること。そこで真空硝子スペーシアを使ってのですが、改修後は結露もせずに快適に過ごしていただけたようです(逆に言えば、これまで本当に寒い寒い思いをされていたようです)。使用した材は鴨居や柱も、建具枠も吉野桧。赤身と白太のある源平でしたが、一年経って日に焼けてしまうとほとんどわかりません。また日に焼けて落ち着いた色になってきています。杉でも国産材は良い色合いに色づいていきますが、米杉などの外材は変に黒ずんだりします。そうした意味でも、日本人の感性に相応しい国産材を使っていきたいものです。

DSCF2215
濡れ縁の土庇には、明るいイメージに合うよう、乳白色のツインカーボを使用しました。陽があたると、膨張して「プチプチ」と音がするのですが、ご主人曰く、音のテンポで陽射しの加減がわかって面白いですよ、とのこと。こうした感性の方ために仕事が出来て本当に良かったと思います。

DSCF2218
庭にはライラック。

DSCF2219
濡れ縁の様子。床板は青森ヒバ。綺麗に使っていただいて嬉しい限り。

DSCF2222
たくさんお話を伺って失礼したあとは、前から気になっていた近くのお蕎麦屋さんでお昼ご飯。蕎麦の実をそのまま挽いた「玄そば」。挽きたて、打ちたて、茹でたて、で美味しい。

DSCF2225
店内の天井は高く、縦長のハイサイドライトからは、外の緑がが見える。

おそばを食べたあとは、日頃の運動不足解消のため、学研奈良登美ケ丘駅まで徒歩。ちょっと遠くても下り坂、音楽を聞きながらなら足取りも軽くなります。ちなみにiPodで聴いていたのはベートーベンの交響曲第二番。一楽章の冒頭長い序奏に続くアレグロ、ヴァイオリンの早い音階は、颯爽とした風のようで、今の季節にぴったり。学研奈良登美ケ丘から生駒、生駒で乗り換えて富雄へ。途中乗り換えの生駒駅では、前の事務所の時に住宅の設計をさせていただいた建築主さんと偶然ばったり。世間は狭い。

DSCF2226
奈良のお茶室。こちらはまだ竣工してから三ヶ月ほどですが、自在がかかるのが四月だけ、また竣工後に石仏を求められ庭に置かれた、ということでそれらを見せていただこうとお邪魔させていただきました。ちょうど来週に茶事をされるとのこと、棕櫚箒が古くなってきたとのことでしたので、家内の実家の庭から棕櫚を伐って持参。箒にするのは建築主さん自らがされます。

DSCF2235
石のほとけさん。柔和な顔をされています。室町初期のもの。鎌倉時代に仏教が一般民衆に広がり、手頃な材料で出来るということで石仏の造立が盛んになったとか。

DSCF2239
竣工の頃、建築主さん自ら植えられたマルバマンサク。緑の葉が出て、待合いからは、葉っぱ越しに扁額が見えて、よい感じです。

DSCF2242
茶室工事の一部始終を庭で見て来た灯台躑躅(ドウダンツツジ)。鐘状の花も咲き、若葉の新緑も鮮やか。躙口には手掛かりが開けてあります、さあ席入りです。

DSCF2244
簾越しの陽射し。来週の茶事の予行演習にお邪魔して、お茶とお菓子を頂きました。有り難うございました。

DSCF2245
自在。釜を吊る部分は、樫の枝。ご主人が山に入って探されたそうです。二股になった部分が強いのだとか。

DSCF2252
障子に映る簾の影。

DSCF2254
畳に落ちる影がくっきりと綺麗だったので写真を撮ろうとすると、あっというまにぼんやりとなってしまいました。一瞬一瞬の時の大切さ。茶室の中にいると、陽射しの移り変わりや、風や雨の音などが、とても敏感に感じられるから不思議です。

DSCF2260
茶事が終わり、躙口を開けるとこの景色。石の仏さんが「はい、おかえり。おつかれさん。」とさりげなく言っているようです。

開口部と縁側のリフォーム

京都府精華町で、2週間ほどかけて進めてきたリフォームの工事が終了しました。もともとはある設計事務所が設計したお宅で、庭に面して硝子戸とFIXガラスで構成された大きな開口部がありました。シンプルで綺麗なものだったのですが、単板硝子だったため冬は大変寒く、断熱性能の高い硝子に変更しようという改修にあたり、私のブログを見ていただき、ご連絡をいただいた、という経緯。同世代の宮大工さんと、前の事務所のときから大変お世話になっている建具屋さんと、作成した原寸図を元に事前によく打合せをして、工事に臨みました。

DSCF2270
巾5メートル高さ2.4メートルの開口部のリフォーム。鉄筋コンクリート造なので、柱は構造的に制約はなく、見た目たけを考えて見付を60ミリ、鴨居の見付を50ミリとしています。

DSCF9149
ちなみにこちらが改修前の状態。両端に高さ2.4mの片開きの硝子戸があり、中央が腰から上の四枚引違い硝子戸になっていました。

DSCF2272
今回の改修では、中央に巾1300のFIX硝子を入れ、その両脇を片引の硝子戸と同サイズのFIX硝子としています。高さ1800に鴨居を入れることで落ち着きを出し、建具は片引戸とすることで、開け放しにすることができ、硝子戸の奥には同サイズの網戸も設置しています。写真は網戸だけが締まっている状態です。

DSCF2269
使用した硝子はスペーシアという真空硝子。一般的に断熱といえばペアガラスが使われることが多いのですが、厚みが3ミリ+6ミリ(空気層)3ミリ=12ミリと分厚くなり、空気層部分の金具の銀色も目立って美しくない、という事で、今回は0.2ミリの真空層を持ち全体で厚さ6ミリのスペーシアを使用。ただし写真のような真空にするためのキャップが付いてしまうので、建具などは落とし込みができないので、工夫が必要。

DSCF2267
硝子戸は、竪桟の見付が60ミリ、下桟はFIXの窓台に揃えて見付100ミリ。写真向かって左側の竪桟は半柱の向こうにぴたりと隠れる納まり。下桟も同様に隠してしまう納まりもありますが、掃き出しの場合は、足があたったり、掃除機があたっりするので、幅木のように見せるほうが、見た目にも安定するように思います。

DSCF2265
建具を開けた様子。庇の桁を受ける独立柱は、北山磨き丸太。床柱としてはB級品という材木屋の位置づけですが、人工の絞丸太などよりもよっぽど美しく、全体的に清々しい雰囲気を作るのに一役買っていると思います。また縁側の柱の背割れは室内側に向けるのが日本建築のセオリーですが、室内からのこの眺めを重視して、あえて左側に向けています

DSCF2264
縁側の板は青森ヒバ、一等材。巾は145ミリ、間の隙間は五分(15ミリ)弱。自然塗料のリボスを塗布しています。

DSCF2262
北山丸太の柱は、半柱の相手の位置に立っています。縁側に出てゆっくり座り込むのに、ちょうどよい背もたれとなります。

DSCF2110
真空硝子スペーシアには、0.2ミリの真空層をさせるために、ちいさな黒いスペーサーが約2センチほどの間隔でドット状に入っていますが、意外と気にならない。FIX硝子をおさえるヒモは、竪のものは、柱に溝をついて埋め込むという、すっきりとした納まり。内側からスリムビスで留めてあるので、もしものときにもメンテナンスしやすい納まり。

DSCF1960
(工事中の写真でバックがブルーシートになっていますが)半柱には、人が出入りする部分にだけ、面幅三分(9ミリ)の面がとってあります。糸面のままでも問題はないのですが、人の出入りを優しく促す形、としました。人間の動作に呼応した「かたち」。鴨居は糸面のまま。鴨居にも同じように面を取ることもできますが、そうすると工芸品に近いイメージとなり、少しやりすぎな感じ。色々と思案したのですが、出来上がった状態を体験して、やはりこれでよかったように思います。

面取りと言えば、茶室では炉縁や床框、茶道具では面取雪吹や面取風炉など、面取りという加工はよく見かけます。ときんときんでは角が立つけど、かといって丸くしてしまわずに、面を取る、という方法で、きりっとした中にも柔らかさを出す、というのは、日本の造形文化の特長のひとつ、と言えるかも知れません。面の取り方も、面巾、角度によって様々な表情になりますし、そこへ漆を塗るという手法もありますし、また面皮というのも、こうした面取りの文化から出てきた、とても洗練された手法だと思います。


DSCF2255
庇の屋根材はツインカーボの乳白色。

DSCF2254
庭からの眺め。柱や建具の枠は、吉野桧、縁側の床板は青森ヒバ、独立柱は北山杉。清々しい雰囲気。

DSCF2248
網戸は、中桟なしのすっきりとしたものとしました。小さな子供がいる家では、子供が押してすぐにびろびろになってしまいますが、大人だけの家なので、大人な仕上げで。

DSCF2244
柱や鴨居は吉野桧。最初にサンプルを用意して、建具材を吉野桧に決定。そのサンプルを今度は大工さんに渡して、柱や鴨居も同様の吉野桧を準備していただきました。ともに源平ではありますが、赤身が薄いピンクで、とても清々しく、既存の建物とも、建築主さんの雰囲気ともあって、とてもよかったと思います。

ちなみに木材を決定する時に用意したサンプルは、吉野桧、スプルス、米ヒバ。カットサンプルを嗅いでみると、外材のスプルスや米ヒバは匂いに少し癖があり、ちょっと受け付けない。一方、今回使用した吉野桧や青森ヒバは香りがとてもよく、香りを嗅ぐだけで少し癒されるような感じがします。日本人の遺伝子の中に、同じ環境、気候で育ったものに対するシンパシーのようなものが組み込まれているのかも知れません。

DSCF2241
今回の改修で、網戸が掃き出しになったことによって、足元から心地よい風が入るようになりました。

DSCF2202
外観。既存の建物にも違和感なく納まったと思います。

とてもセンスの良い建築主さんとご縁をいただき、腕が良く、気持ちよく仕事をしてくれる大工さん、建具屋さんらに恵まれ、なんとかよい結果が残すことができたのではないかと思います。関係された皆様に改めて御礼申し上げます。ありがとうございました。
profile
岩崎建築研究室
岩崎 泰

住宅,茶室,店舗の設計等について
ご質問,ご相談がございましたら
まずは、電話やメール にて
お気軽にご連絡ください。
TEL 075-724-2354
iwasaki1201@syd.odn.ne.jp
Archives
  • ライブドアブログ