岩 崎 建 築 研 究 室 ・ 日 誌

〜京都で数寄屋を学び、建築設計を考える〜

岩崎建築研究室

大津京町・鶴里堂

夏障子

大津の和菓子屋さん、鶴里堂さん。少し遅くなりましたが、一年点検後の手直しに行ってきました。


前栽のようす。フタバアオイは虫に喰われてしまったようです。写真ではあまり映っていませんが、モミジも大分伸びてきたよう。造園屋さん、大津に行く都合があれば、ついでにちょっとお願いします。


本木賊のようす。表から皆折釘を打たない本木賊張りの施工例は現代では少ないように思います。次回機会があれば、旅館の玄関や、門の袖など、もうちょっと大きな面でやってみたい。


今日は床の間の張り付け壁の四分一(しぶいち)の取り替え。下地のベニアが動いたからか、四分一に隙間が出来てしまったので、取り替えです。気づくお客さんはほとんどいらっしゃらないかもしれませんが、どちらかといえば、大工さんの職人としての「こだわり」です。


陰陽になった桐の唐紙。選ばれたご主人の趣味の良さが伺えます。


夏障子に入れ替えられたショーウィンドー。紙張障子の書院障子はもともとお施主さんが持ってられたものだったのですが、それと同じ大きさの夏障子の古建具を探すのが一苦労でした。夷川の古建具屋さんの倉庫は、小さな町家一軒の中がすべて夏障子。そのなかから幅、高さの合うものを探すのは大変。結局、ほぼ幅がいけるものを見つけ、部材を追加して高さを調整することに。新しい赤杉で下と上に追加しているのですが、ほとんど気づかないと思います。暑い季節、夏障子はやっぱりいいですね。


裏の押さえはゴマ竹。若い職人さんが建て込みの作業。削りすぎたら元に戻せない、失敗の許されない作業。


最後は軒行灯の電球をLEDに取り替え。大工さん遅くまでお疲れさまでした。

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フタバアオイ

今日は色々な用事を済ませるために外廻り。少し足を延ばして大津の鶴里堂さんへ。改装記念のお菓子を求めにいきましたが、震災の影響で、包装紙が準備できないのだとか。建築の資材や設備にも様々な影響が出ています。

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カッティングシートでお店の名前の入った軒行灯。

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違い棚に飾られた饅頭喰人形。ある人が童児に「お父さんとお母さんとどちらがよいか」と、尋ねたところ、この童児は手に持っていた饅頭を二つに割って、即座に「おじさん、これどちらがおいしいか」と反問したとか。

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無事、葉を出したフタバアオイ。

開店前日

大津の和菓子舗の改修工事。いよいよ明日開店。最後の作業です。

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作業場スペースの棚も大工さん製作。お店の方にもご意見を伺って寸法を決定。使いやすいものになったでしょうか。

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レジ台も製作。腰板と同じ桧板を使用。ちょっとしたことですが、統一感がでます。

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額の取付けも大工さんがしてくれます。壁を塗る前に位置を決定して釘を打ってありますが、あとはそれをどれだけ倒して取付けるか、というのも現場で確認していただいて、裏の銅線を調節してくれます。こうした細やかな対応がとても嬉しい。

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額が取り付けられ、向かいの仮店舗に行っていたショーケースを設置すると、一気にお店らしくなります。それぞれの寸法、位置関係は図面をもとにパースで確認済みなので、設計者としては想定通りなのですが、それでも実際のかたちとなったものを体験するとやっぱり気分が高揚します。

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お店に入って左を向くとこんな感じ。和紙豆腐張りの照明器具も、下のショーケースの位置を事前に決定してから、ちょうどその真上に来るように決定しているので、空間の中での納まりもピタリ。

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床の間は京からかみの張り付け壁。床柱はクリで落掛は三井寺の垂木の古材。床脇にはケヤキの違い棚。壁は錆土の水捏ね仕上げ。

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床の間の板は松。商店建築ではよく張り物が使われますが、こちらは無垢板。使い込めば使い込むほど、時を重ねれば重ねるほど味わいが増してくると思います。

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こちらは腰掛け。包装を待つ間や、お店の方と少しお話をする時などに使っていただければと思います。莨盆の乗っている机は、以前のお店にあったもので、天板をサクラの板にリメイク。サクラはお菓子の木型にも使われる樹種。天袋の紙も京からかみ、引手は分銅型。

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御用達の看板なども事前に掛ける位置を相談させていただきました。

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店舗見返し。もともと大和天井だったところに天井が張られてしまっていた改修前の店舗。今回の改修では、天井を取り去り建築当初のように大和天井を表しとしました。天井高さも高くなりゆったりとして、老舗らしい雰囲気にできたのでは、と思います。

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書家の先生に揮毫をお願いした看板も取付けられました。

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前栽とショーケース。よい感じなのですが、陽の明るいうちはガラス面に余計なものが映り込んでしまうので、夕方再び訪れることに。

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以前カメラマンの方が、薄暮の時間帯はあっというまに、どんどん明るさが変わるから注意が必要、と言っていたのを思い出し、日の入りの時刻を調べて少し早めに来てみるとこんな感じ。まだ少し明るくガラスに少し映り込みがあり、明るさセンサで点灯する軒行灯もまだ暗いまま。それでも全体の様子がよくわかるでしょうか。二階部分の外壁などは今回改修していません。下屋の瓦は葺き直し、一階部分の店構えはガラリと変わったと思います。

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そうしている内に軒行灯が点灯。品の良い存在感。

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向かって右の斜めのガラスの入ったショーケースにはお店の歴史をずっと見て来た「鶴」が鎮座。居心地はいかがでしょうか。後ろに嵌っている書院障子はこちらのお店にあった建具を再利用しています。

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奥行きの浅いショーケースには饅頭喰人形。土壁が乾ききったら小豆を混ぜる櫂を改造して作った短冊掛けがかかる予定。それを見るのも楽しみ。前栽とのバランスもよい感じです。

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入り口の硝子戸は古建具、店舗内奥に見える丸桟戸もお店にもともとあった古建具。すべてを古色塗りにしてしまうのでもなく、すべてを白木のサラにしてしまうのでもなく、新旧を織り混ぜた「かたち」に、永い伝統をしっかりと受け継ぎながらも、現代において誠実にかつ繊細に和菓子作りに向かわれているお店の姿勢というものが、表れてくれるとよいなあと思います。

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全体の夜景。写真では夜景が綺麗ですが、お昼の様子もよいと思いますし、そして何より和菓子が素敵で美味しいですので、お近くにお越しの際は是非お立ち寄りください。

大津菓子御調進所 鶴里堂(かくりどう)さん
滋賀県大津市京町1-2-18
電話番号 077-523-2662
営業時間 9時〜18時30分
定休日 日曜日

のれん

大津の和菓子舗、今日から大工さんが最後の作業にはいります。いよいよ完成が近づいてきました。

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完成した前栽の様子。(海の中の石がまだ撒かれていませんが)

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現場で製作した青竹の袖垣も素敵です。やはり買って来たものをポンと置くのとは違い、全体に調和があります。

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少しわかりにくいですが、フタバアオイの芽があります。

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万年青(おもと)。「おもと」は古典園芸植物で、古くは徳川家康が江戸城へ入る時、万年青を献上した家臣がいたり、江戸時代は主に大名のもとで栽培が行われ、ブームのような時期もあったり専用の植木鉢が作られたりと人気の園芸種。明治十年頃にも京都を中心に大きなブームがあり、一鉢千円(現代の一億円に相当)という例があったとか。現在も「社団法人日本おもと協会」というのがあるそうです。

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のれんを下げてみたところ。一枚の布がお店に風格を与えます。

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とても感じはよいのですが、ひょっとしたらお客さんにとっては、ちょっと入りづらいかも。難しいところです。

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取付けられたのれん掛け。ビスで留めてしまえば早いのですがそれでは無粋なので、蟻継ぎのような加工をしてはめ込んで天井に取付けられています。ちょっとしたことですが、こうしたところに大工の腕、心意気が現れるように感じます。

庭工事とからかみ

大津の和菓子舗の改修工事、今日は造園屋さんが前栽の工事です。

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ショーケース前に棗の蹲踞を据えて、袖垣を作り、植栽を植えていただきます。

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銅の軒樋の取付けも終了。京風あんこうが上下揃っていて綺麗。

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下屋のあんこうは、水平距離の短い「たつあんこう」。

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先日付けていただいた軒行灯は雨による腐食がもう始まっています。

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庭ができてきました。植えられるのは、万年青(おもと)、木賊、ツワブキ、モミジ、寒椿、フタバオアイ、苔。

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サザンカによく似ていますが「寒椿」。北向きで直射日光も当たらず、軒下なので夜露もつかない場所ですが、お店の方に水を撒いていただければ大丈夫でしょう、とのこと。

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青竹の筧から落ちる滴。

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ショーケース内の土壁、杉皮の腰壁、庭、と良い感じでまとまりそうです。ショーケースにお菓子や短冊が飾られるのが楽しみ。

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アプローチ部分全体の様子。

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店舗内では床の間の張付壁が出来ています。床柱はクリ、落掛は三井寺の垂木の古材、地袋には杉の舞良戸が入る予定。床の間中の壁は張付壁、からかみが張られています。

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近づくとうっすら文様が見えるでしょうか。

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生成りの鳥の子紙に雲母摺り。文様は「影日向小桐」。桐が陰と陽になっているのは違い棚の透し板も同じ。見本帳にのっていない文様で、版木が古く少しかすれが出ますよ、と言われましたが、建築主さんこだわりの文様で、出来上がりを見ると、とても上品でやっぱり良いものです。

軒行灯取付け

大津の和菓子舗、今日は軒行灯の取付け。

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軒行灯。下で見ると大きくみえますが、立派な建物の下屋の上に上げるとちょうどよく見える予定。銅製ですべて手作り。板金職人「現代の名工」の作品です。

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取付けは支持金物を作っていただいた鍛冶屋さんと大工さんで。

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電球のソケットの接続は電気屋さんの担当。

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取付け完了。大屋根の軒樋もそうですが、銅なので取付時はまだピカピカですが、直に馴染んできます。

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お施主さんからの要望で飾りの唐草も取付けられました。ガラス部分にはお店の名前が入りますが、書家の先生の作品待ち。

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看板の吊り金具も鍛冶屋さんに作っていただきました。表面は梨地でよい感じです。

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車石、瀬田の寅石、太閤石を使った庭の現状。後は土曜日に、棗の蹲踞を据え、袖垣・筧を付け、寒椿・フタバアオイなどの植栽を植えていただきます。

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古建具の勝手口。

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内部では扇風機を回して土壁乾燥中。丸桟戸はお店に以前からあったものを再利用。

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三井寺の垂木の古材を使った落掛。床柱はクリ、壁は錆土の水捏ね仕上げ。

左官工事最終日

お茶のお稽古は早めに失礼して大津の現場へ。今日は日曜日ですが、左官屋さんの工事が今日で最終日です。

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正面の様子。木部すべてを古色塗りにするという方法もありますが、今回は磨き丸太を使ったり、唐紙を使ったり、全体的にお施主さんの希望は茶味のある数寄屋。ということで木部は白木のまま、ところどころ、杉皮を使ったり古建具を使ったり、内部の天井、老舗の歴史を感じさせる大和天井とのバランスを考えたつもりです。

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内部では左官屋さんが、土壁水捏ね仕上げの上塗り中。日曜日、お休みの日にお疲れさまです。

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銅板で根巻をした既存の柱と三和土。

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額を載せる釘も事前に打ち付けられています。

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塗りたて、ひたひたの状態。

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表の様子。

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ショーケースの内部、角は塗り回し。

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お店入り口の古建具と竹の木賊張り。

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今日は事情により、うちのちっちゃいスタッフも同行。職人さんの仕事を眺める後ろ姿、腕を後ろに組んで、なんだかちょっと偉そう。

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コンセントの位置を指差し確認中。図面も見せて、コンセントが図面通りになっているかすべてチェックさせました。図面通りに現場が出来ているかを見るのが現場監理の基本。

ちなみに今日は嫁さんは名古屋で演奏会。現代日本人作曲家の合唱曲。木下牧子作曲「たいようオルガン」と千原英喜作曲の「カンタータ洪水」。よりによってこのタイミングで洪水というタイトルはどうかと思いますが、それでも彼女の仕事は音楽を届けること。良い演奏が出来るとよいのですが。

三和土

大津の和菓子屋さんの改修工事。現場では引き続き左官工事。今日は外部アプローチの三和土。

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いよいよ改修の全容がわかりつつあります。

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斜めのショケース付近。木部は幕板や道路側の柱のみ古色塗りとしましたが、白木の部分もじきに日に焼けて馴染んでくると思います。

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店舗内の様子。アプローチ部分が明るめの色の三和土になったことで、外光が反射し、店舗内の大和天井を柔らかく照らします。

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アプローチの様子。板石のバランス、竹の木賊張り、鞍馬石の根石の見え加減、三和土、とよい感じです。

左官工事開始

大津の和菓子屋さんの改修工事。今日から左官工事開始です。

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通路と作業スペースはモルタル塗り。朝一で生コン車が来て打設。

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店舗部分は既存タイルの上に三和土仕上げ。少し埋まってしまう既存の柱の足下は銅板で根巻き。

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外壁は土壁糊差し仕上げ。看板を吊り下げる折れ釘は、壁を塗った後に釘を打つと壁を傷めてしまう可能性があるので、事前に取付けられています。

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奥行きの浅いショーケースの中の壁も土壁塗り。ガラスがはまってしまったので、ちょっと塗りにくい。「左利きのちっちゃな子連れてこなあかんなあ(笑)」載っても大丈夫なように大工さんが補強をしてくれています。

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大屋根の軒樋が取付けられています。

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手作りの銅製の「あんこう」。

ガラスのはめ込み

大津の和菓子屋さんの改修工事。今日はガラスはめ込み。

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ショーケースのガラスをはめ込み中。

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懸案だった斜めのショーケースのガラスのはめ込み。大工さんも一緒にはめ込みにかかります。

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結局ヒモを打ったりすることなく、スッキリと納めることができました。

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内側から見たところ。見るひとが見たら、どうやって嵌めたの?と思うかも知れない納まりです(まあそんな人はほとんどいないと思いますが、、)。細かなことですが、繊細なお菓子が飾られるショーケース。細部までこだわり、お菓子が少しでもよりよく見えるようにしたいと思います。

ガラスの納め方

大津の和菓子屋さんの改修工事。今日は建具屋さんとガラス屋さんが現場に来て、ショーケースのFIXガラスの納め方などについて打合せ。

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斜めになったショーケースのガラスの留めの部分をどう納めるかで議論が白熱。できるだけシンプルにすっきり納まるように、大工さん、建具屋さん、ガラス屋さんとで、ああでもないこうでもないと意見を出し合い、なんとか妙案を発見。

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店舗内では三井寺から拝受した古材の束が取付けられました。

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販売スペースの天井は杉の白太。

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作業スペースはの天井は杉一等材。

水捏ねの壁と京からかみ

大津の和菓子舗の改修工事。今日は建具屋さんが現場に採寸に来てくれます。

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大工さんは杉皮を張っているところ。

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先に庭石が仕上がっているので仕事がしにくそう。車石の後ろは釘打ちに難儀してました。

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杉皮完成。背景が出来て庭の石組みが引き立って見えます。平竹の押えは八分のものを六分に挽き割ってもらって、上下は二三分透かせて。釘は巻頭、一本80円。

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左官屋さんがサンプルをたくさん持って来てくれたので、建築主さんと相談。写真は三和土のサンプル。外部は石が引き立つように薄い色のもので、内部は全体の色味とあうように、また汚れがめだたないように濃い色のもので。

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内部の土壁のサンプルも左官屋さんがたくさん持って来てくれたので迷っちゃう。今回は一部張り付け壁で京からかみ(丸二版)を使うのでそれとの取り合わせも重要。唐紙の色も同時に決定しながら壁の色を決めていきます。写真は錆土の水捏ね仕上げ。サンプルで水捏ねと糊差しを説明させていただくと「そりゃこっち(水捏ね)のほうがええわ」と即答。さすがに和菓子職人さんの感性は繊細です。からかみは違う文様ですが、このサンプルの紙、摺りの色で行く予定。

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こちらは外部の組み合わせ。黄土の土壁と影日向小桐文様のからかみ。サンプルは糊差しですが、ショーケース内部は水捏ねにする予定。比べてみると糊差しはやはり少し押さえつけた感があり、水捏ねのあのふんわりした肌合いは、上品なお菓子をきっと引き立ててくれると思います。左官屋さんの腕の見せ所、楽しみです。

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内部では天井張りが進んでいます。バックヤードの天井は杉一等材。予算調整の時にはベニアにする案もありましたが、結局杉板に。

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玄関戸の古建具をあてがってみたところ。古建具は傷が多くちょっと不評だったのですが、実際にあてがってみて全体の雰囲気とのバランスを見ていただいてご理解いただけたようでほっと一安心。傷は塗装屋さんに綺麗にしていただくことになりました。こうして並べてみると、竹の木賊張りが、まるで昔の棟梁がした仕事のようにも感じます。今回は店舗内の天井を古い大和天井としますし古い柱も残します。建具までサラにしてしまうと少し晴れがましくなりすぎるように感じていて、年月を経て味の出た古建具を使ったほうが100年続いている老舗の風格が出るのではと考えています。「古びて味が出ている」と「みすぼらしい」は結構紙一重、その見極めが難しい。

違い棚

大津の和菓子舗の改修。着々と工事が進んでいます。

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店舗内、床の間あたりもかたちが見えてきました。違い棚も設置されました。

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欅の違い棚と桐の透かし板。一般的な座敷では、床の間側が高くなるのが違い棚の定石ですが、今回は商品の展示棚としてより自然なように、あえて床の間側を下げました。こうしたほうが入り口から入ったお客さんが自然な流れで商品を見る事ができますし、透かし彫りの板もさりげなく見せたい。銀閣寺の東求堂もこのようなかたちになっていたりします。日本建築で一般的に定石とされるものでも歴史を遡るとそうでなかったりするものも結構多く、例えば、竿縁天井の床刺しは現在ではタブーとされますが、古い桃山期や江戸初期の建物では床刺しの建物は多くあります。躙口の大きさも利休の作った待庵のものはその後の常識から考えれば随分大きなものですし、表千家不審庵の茶道口の、点前座先から入る片開きなんてのは随分とイレギュラーだと思います。設計者は定石を知るのはもちろん、その歴史背景までも理解した上で、現代の感覚でどのような形をつくるか、ということをしなければならないと考えます。

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もともと欄間の透かし彫りの板だったもの。ちょっとしたことですが、こうした意匠があるかないかで、空間の質も変わってくると思います。

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袖壁の足下。左官屋さんが差石を上手に加工して根石のようにしてくれました。改修工事において既存部分とのとりあいは難しい箇所。もともとは葛石まで柱を延ばしておいてもらったのですが、そうすると差石が綺麗に納まらない。東京出張中に電話がかかって来たので、こうした納まりがいいけど手間がかかるし、綺麗にできますか?と聞くと「まかせとけ!」。出来上がりはこの通り。さすがです。

ショーケース

東京出張から早朝に戻り、一休みしたら午後から大津の現場へ。

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ショーケースが出来ていました。事前にきっちり準備しているので現場での仕事が速い。

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違い棚の部材。板と海老束は欅の新材オイルフィニッシュ、陰陽の桐の透かし彫りのある板は材種も桐で、欄間の古材。建築主さんと高さを確認して、これから取付けてもらいます。

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床の間の落し掛けは、三井寺の野垂木の古材。

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柱の乗る根石は鞍馬石で、庭石の一部のよう。大工さんと造園屋さんの見事なコンビネーション。

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奥行きの浅い、もうひとつのショーケースも、かたちが見えてきました。

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夕方になり、辺りが暗くなってくるとこんな感じ。空いている部分にはガラスが入ったり、格子が入ったり、障子が入ったり。出来上がったときの夜景も楽しみです。

車石

大津の和菓子屋さんの改修工事、午後から現場へ行くと、入り口の柱梁が既に建てられていました。

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入り口が出来ると急に店らしくなります。

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大工さんの横で造園屋さんの工事も進行中。

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竹の木賊張りも既に嵌められています。

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新しい柱を建てているところ。ジャッキをかませて、既存の梁を少し浮かせて、位置や垂直に気をつけて慎重に建てられていきます。

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庭の石工事が一段落。中心の石の上に棗の蹲踞が乗る予定。右側の前石は太閤石。丸い溝のついた石は「車石」。お店は大津・札の辻のすぐ近くで、昔札の辻から京都三条大橋まで敷き詰められていた「車石」を持っておられて、どこかに使えればとおっしゃられていたのを、造園屋さんが上手に使ってくれました。その昔大津から京都への峠は交通の難所で、江戸後期の心学者、脇坂義堂(?-1818) が文化二年(1805)に嘆願書を出たのをきっかけに、街道全体を御影石で舗装した上で、歩道と車道を分けたそうです。往来する大八車や牛馬車の車輪の幅に合わせて溝が掘り込んだものが「車石」。ちなみに大八車の語源は「大津八町」で使われていたから、という説もあるようですが、八人分の運搬ができるから「代八車」という説も。

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竹の木賊張りと石の景色。大工さんの仕事と造園屋さんの仕事。あとは三和土に左官屋さんの仕事が加わります。

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竹の木賊張りの詳細。一見さらりとした表情ですが、その裏には大変な手間がかかっています。手間をかけて、最期にその手間を消すという美学。和菓子の世界も同じかも知れません。見た目に美しく食べて美味しいお菓子も、声高に主張することはありませんが、その裏には繊細な気配りと想像もしない手間がかけられていることと思います。そんなお店の仕事を、建物が盛り立ててくれればと思います。

板石張り

大津の和菓子屋さんの改修工事。今日はアプローチの板石張り。

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石を据えてくれるのは造園屋さん。ビシャンで叩いて角を取ってくれています。建具のレールが入ったり、柱が乗ったり壁が付いたりする「葛石」は左官屋さんに据えてもらいましたが、大きな「板石」は造園屋さん担当。造園屋さんは大きな重い石の取り扱いに慣れていますし、何より石の種類に詳しく、その表情を的確に捉えて、それが生きるように据えつける技術や感性はさすがです。

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仮にざっと並べて様子を見ます。石の表情を見たり、大きさのバランスを見たり。造園屋さんとこうしようか、ああしようかと相談して決定していくのが、仕事の醍醐味でもあり楽しみでもあり。

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高さに注意しながら据えているところ。あとは少しおまかせして、ちょっとお茶のお稽古へ。

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お茶のお稽古から戻ると、こんな感じ。実際に歩いてみると、石を渡り歩く歩幅の間隔もよく良い感じ。厚みのある使い込まれた石を踏む感じは、重厚な中にもどこか柔らかさがあり、やはり薄いタイルを張った床とは踏み心地、歩き心地が違います。

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板石の目処がついたら、こんどは蹲踞廻り。写真は太閤石。棗の蹲踞の前石として使います。

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大工さんは幕板の取付中。長い無目の取付けの時には造園屋さんにもちょっと手伝ってもらったりして。

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御陰さまでピタリと納まりました。幕板が付くと、とたんにお店らしい表情になります。大津祭の時に取付ける提灯の金具は、幕板に穴をあけて取付ける予定。

石据付け

大津の和菓子屋さんの改修現場。今日は葛石の据え付け。

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運び込まれた石を発注通りかどうか確認して、番号をわかりやすいように養生テープに明記。職人さんが作業をしやすいように、間違えないように。

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据付けはいつもの左官屋さんがしてくれます。まかせて安心、の職人さんですが、現場で現物を見ながら注意することをお互い確認することでより確実な仕事になります。

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石据付けの図面。新築ならば、きちんと図面を描いておけばそのまま出来上がりますが、改修の場合は現場にあわせて多少のズレが出てきます。そのズレをどこで解消するか、どこを基準に、どこを守って行くかを、現場で相談しながら決定。

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基準を揃えたところは図面通りピタリ。現場で切ったりする作業が少ないほうが、早く、しかも綺麗に仕上がります。

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正面の間仕切り壁の葛石が完成。溝がついてある部分には建具のレールははめ込まれます。原寸図で検討した通り。

壁下地

大津の和菓子屋さんの改修現場。今日は両袖壁の壁下地。

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東側は杉板張り。寸三(だけど36×36)で立ち(垂直)を直して、横に胴縁を流してその上に杉板張りの予定。

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西側は店舗内は一部土壁塗り。板を張る部分と壁を塗る部分で胴縁のピッチが違う。

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床に書かれた墨。

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整然と並ぶ寸三と胴縁。

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今日はここまで。明日は奥の壁の壁下地。

墨出し

大津の和菓子屋さんの改修現場。今日は墨出し。解体が済み、ガランとした改修現場のどこに柱を建てるかを細かく決めて行きます。

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まず基準となる線を決定。既存の柱にどのような地をして壁をするかも、全体の計画に影響するので、慎重に検討。

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既存の柱はやはり真っ直ぐ立っているわけではなく、そのズレも確認した上で寸法を決定してゆきます。

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既存の梁に柱を建てる箇所については、梁からの「さげふり」で位置を決定。基準線からの「矩(かね)」と設計寸法で追い出した寸法との食い違いがどのくらいなのかも確認しながら。一応事前に詳細に採寸した上で設計図を作成しているので、全体的に大きな違いはなく一安心。大工さんの求める寸法の精度はさらに一段と細かいので、場面場面で優先するべき寸法を大工さんと一緒に確認しながら、最終の位置出しを決定していきます。改修工事の墨出しは、歪んだ現状の中に、設計図に基づいた三次元ユークリッド空間をはめ込んでいく作業。

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既にあるものに何かを付け足して新しいものにする、という時、念頭に思い浮かぶ曲は、シャルル・グノーのアヴェ・マリア。美しい旋律でとても有名な曲ですが、すべてがグノーの作曲ではなくて、バッハの『平均律クラヴィーア曲集』第1巻第1曲の前奏曲を伴奏に見立てて、そこへ自身が作曲した旋律を重ねたもの。清澄な連続する分散和音だけて美しい曲を作ったバッハもすごいですが、それにメロディーを付け足して、はじめからそんな曲だったとしか思えないような曲にしてしまうグノーもすごい。規則正しく並ぶ梁、そこに新しい柱を建て壁を作り、以前からあったかのような調和した空間にすることができれば、と思います。ちなみにグノーの父は設計士だったとか。

跳ね木

お茶のお稽古が終わったら大津の和菓子屋さんの改修工事の現場へ。

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大工さんが下屋に跳ね木を入れているところ。

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詳しく調べていただいたところ、鉄骨で補強した梁は中央でたわんではおらず、全体そのまま、西側が少し沈んでいたようです。軒先は中央でたわんで下がっていましたので、跳ね木をいれて持ち上げます。

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下屋を上から見るとこんな感じ。

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今回の改修では軒先に一文字瓦を使いますので、軒先のラインがビシッと真っ直ぐになっていなければなりません。

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軒裏も綺麗であれば昔のように表しにする方法もあったと思いますが、やはり前回の改修の吹き付けが飛んでついてしまった部分もあるので、今回は梁下に杉板を張って平天井とします。

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三五角(105×105)の角材をもう一本いれて、ボルトを締めることで、軒先を跳ね上げるという算段。軒先が下がらないように跳ね木をいれる手法は、数寄屋建築でも寺院建築でも昔からよく見かける手法です。

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ボルトを締めて跳ね上げていきます。

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水糸を張って、寸法を確認しながら微調整。写真は調整前ですが、調整後は誤差一分以内で納まったとのこと。さすが。あとは鼻隠しは新規でいれますので、まったく問題はないと思います。

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跳ね木設置終了。最終的には天井裏に隠れてしまいます。

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室内はほぼ解体が終了してガランとしています。

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場当たり的にいれられた補強の梁はジャッキをかますと自然と外れたようで、ジャッキ近くに柱を建てる予定なので問題はなさそうです。

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大黒柱付近。大黒柱に刺さる梁がわざとズラされているのは、おそらく大黒柱をより見せるため。梁が刺さり壁がついてしまうと柱がよく見えませんから、わざとずらし、柱の二面が良く見えるように棟梁が工夫をしたものだと思います。民家建築でも近代に近づくほど意匠的に大黒柱を見せるような工夫が見られるように思います。

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造園屋さんが葛石を持って来てくれました。

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掘り起こした景色石も確認してもらいます。もともと立ててあった寅石ですが、寝かせたほうがよさそう。
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岩崎建築研究室
岩崎 泰

住宅,茶室,店舗の設計等について
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