岩 崎 建 築 研 究 室 ・ 日 誌

〜京都で数寄屋を学び、建築設計を考える〜

岩崎建築研究室

伏見の離れ

完成

伏見の離れ新築工事。桜が咲いて一段落してから、と始めた工事もいよいよ今日で終わり。あいにくの雨となりましたが、朝から現場に行ってきました。


大工さんが残工事をしている間、雨の様子を観察。


軒先から滴りおちる雨水。


屋根に当り、はじけ飛ぶ水滴。


水滴の滴り落ちる様。お茶のお稽古では、柄杓の水の切れを意識したり、いかにしたらお茶碗に綺麗にお湯が注げるか、などに意識を集中させたり、「物の挙動を見極める」訓練という一面もあるように感じます。建築設計においては、そうして見つめた物の挙動をもとにディテールを決めていけたらと思います。


室内床はカバサクラ。もともと105ミリ幅でしたが、反ったり状態がよくなかったので、幅を落として挽き直してくれました。わざわざ手をかけてくれたおかげで、綺麗な仕上がりになりました。またカバサクラは、別名バーチ。北欧家具などにもよく使われる材料で、そうしたデザインのものとの相性も良いと思います。


点前座は向切。電熱炉を仕組むところ。


ペンダントの照明器具も取り付けられています。高さは建築主さんに確認していただいて。三浦照明器具製、六角のペンダントの豆腐張り。その佇まいはさすがに上品で、点灯すると上質な雰囲気が広がるように感じます。


建築主さんに無理を言って、掛軸を出していただきました。今回の建物は「古筆が似合う室礼にする」というのがひとつのテーマでしたので、こうして実際に掛けてみて無事しっくり納まってくれて、ほっと一安心です。写真は和漢朗詠集の「早秋」。「秋たちていくかもあらねどこのねむるあさけの風はたもとさむしも」。


床柱は白杉、床框は栗のナグリ。


窓からの光で浮かび上がる陰影。


「せっかくだから季節のものがいいですよね。」と建築主さんが他にもいくつかお軸を出してくださいました。こちらは村雨切。なんだか、まるで画廊か美術館のような感じ。


天井はよしず転がし仕上げ。和紙越しの灯りで照らされて、ざんぐりとして良い感じです。やっぱりヨシベニアのベタっとした感じではこうはならなかったと思います。また、とにかく上質の材料を求めた近代数寄屋の匠ならば、決してしなかっただろうと思われる仕上げでもあります。


両引き分けの硝子障子。うっすらと外の連子の竹の影が映る。


床の間の横に向切の点前座。こちらにも硝子入り障子。すっと開ければ、すぐに涼風が吹き込みます。


ハンス・ウェグナー(1914-2007)のダイニングチェアCH-36(リプロダクト)。アッシュ(タモ)材、オスモクリアオイル仕上げ。18世紀後半から19世紀にかけてアメリカ・ニューイングランド地方のシェーカー教徒によってつくられたシェーカー家具の椅子をリデザインしたもの。
 ちなみに同じシェーカーチェアをモデルとしたボーエ・モーエンセン(1914-1972)のJ-39は、FDB(デンマーク協同組合連合会)からの「一般市民のために安価で質の高い椅子を作って欲しい」という要求に対し、モーエンセンが数々の試行錯誤を重ね、1947年に完成した椅子。コストを抑えるために、パーツを機械加工できる4種類に絞り込み、ペーパーコードは町の人々に呼びかけ、歩合制で作業にあたらせたとか。
 オリジナルと工法の違う安価なリプロダクト製品については是非が問われますが、もともと大衆の為の椅子であるこれらの製品は、リプロダクト製品であっても、デザイナーの意図にも大きく外れることはないのでは、とも思います。


茶道口は火灯口。内法は通常よりもだいぶ高いですが、部屋全体を考えるとよいバランスだったと思います。


点前座からの眺め。畳台は移動可能、いろいろなかたちでおもてなしができそうです。


若い職人さんが一生懸命作ってくれた畳台。底にはカグスベールが取り付けてあって、スムーズに移動できる。


側板はケンドンになっていて、内部は収納になっている。

四月から始めた工事、終盤は他の現場の都合で、少し間が開いてしまいましたが、無事終了することが出来ました。ブログを通じて、同郷のよしみで、とご連絡をいただいたのがきっかけでしたが、工事中の現場監理のあいまに、建築主さんからいろいろなお話を伺ったり、本をお借りしたり、お道具を拝見させていただいたりと、興味深く貴重な体験をさせていただきました。今後、この離れを使って、様々なお客様をお迎えして、楽しい時間を過ごしていただければと思います。Kさんこの度は本当に有り難うございました。

建具建て込み

今日と明日で伏見の離れ新築工事を仕上げる予定。朝現場に向かう大工さんに拾っていただいて一緒に現場へ。


現場に入れられた建具。まだ角が伸びた状態。表からみると紙張障子ですが、


裏はガラス戸。見込みを一寸一分として、紙と硝子の間に一分の隙があります。障子と硝子戸を別々にすると枠廻りがごつくなりますし、引き違いの場合は捻締まりを使いにくい。今回は内外ともに真壁で、予算的にもできるだけ建具工事を減らしたい、ということで、硝子入り障子としてみました。一般の雪見障子は硝子入障子ですので、特別なことではありませんが、意外とこうした窓は少ないかも。


硝子は落とし込み。


今回の建具は大工さんが建て込み。最近は建て込みも建具屋さんがするところが多いと思いますが、昔は、建具屋さんは製作のみ、建て込みは大工さんの仕事だったようです。若い大工さんに、建具建て込み時の注意点を説明する棟梁。どんなところに気をつけながら、どのように調整していくか、後ろで聞いていると勉強になります。


格子越しに窓から見える緑。


今日は電気屋さんの器具取り付けも。土壁部分につくコンセントプレートは利休色。結構目立たない。


妻壁には扁額の代わりに古い瓦を取り付けます。建築主さんに見ていただいて、もうちょっと下、とか、もうちょっと傾けて、と指示をしてもらいます。


建物全景。瓦を支える折れ釘を取付中


瓦が取り付いたところ。妻壁の景色が締ります。


おまけ1。庭のシノブ。


おまけ2。なんだろう?と思って、調べてみるとコケガという蛾の繭らしい。毛虫の時の自分の毛をむしってこんな籠のような繭をつくるのだとか。昆虫の繭や動物の巣は、建築のルーツ。

三和土

伏見の離れ新築工事。左官屋さんが三和土を施工するというので、現場に行ってきました。


現場に着くと、ちょうど材料を塗り込んでいるところでした。


鏝で材料を塗り込んで、スポンジで拭き取り、鏝で叩きます。


型枠を外したところ。


三和土(たたき)は、「土」「石灰」「苦汁」と、文字通り三つをあわせて叩いたもの。昔の民家の土間など、砂埃がたたない程度に固めるにはそれでよかったかもしれませんが、たとえば茶室の犬走りのようなところに使うには、どうしても割れたり、崩れてしまいます。そこで今ではセメントを入れたりしますが、左官屋さんは昔から苦土と呼ばれ肥料に使われている酸化マグネシウムを混ぜることで割れない三和土を作ってくれます。(ちなみに苦汁(にがり)は塩化マグネシウム)。


全体の様子。三和土ができつつあり、ようやく完成の姿が見えてきました。


「隅の丸、五分と一寸あるけど、どっちにしよ」。実際に少し使ってもらって、「じゃあ、一寸のほうで。」


角もこのくらいの丸で、とお願い。


整形したところ。いい感じです。やはりこのあたりは現場に来て職人さんと相談しながらやらなければいけないところ。左奥に見えるのは、ホゾを抜いた土台の出隅の納まり。大工も左官も腕の良い職人が集まってやっていることがわかる景色。


スポンジで拭き取り中。


拭き取ったあとは、鏝で叩いて仕上げ。この風合いは、単に腕が良いだけでなく、いろいろなものを見て感性を磨いた職人さんでなければできないもののように感じます。


作業中の左官屋さんと、左官談義をするのも楽しみのひとつ。今日もいろいろな話題が挙りましたが、待庵の壁について、左官屋さんが「ひょっとしたら、あれ、職人じゃなくて、お百姓さんがした仕事かも。」たしかに奥田さんもあれは荒壁仕上げではなく単なる荒壁だと言っていましたし、昔の職人さんは今ほどあれこれ考えずに、もっとアバウトにやっていたように思います。ただ、だからといって現代における素人仕上げ、というのもどこか違う感じがしますし、結局のところ、腕が良く感性のある職人が技を尽くしながら、それを感じさせない仕事、やはりこれが究極の目標のように感じます。


一段落したところでお昼休み。午後からは内部の仕上げにもかかります。

三和土サンプル

伏見の離れ新築工事。今日は建築主さんと打ち合わせ。現場は左官の職人さんひとり。


左官屋さんが持ってきてくれた三和土のサンプル。大きめの石は入れない、でお願いしました。


飛び石を据えて、三和土の位置、大きさを現場で決定。柱の根石にも赤エンピツで印をつけて高さも決定。


内部は壁の下塗りが終了。いよいよ形になってきました。


床の間付近。


古筆の軸がかかるのが楽しみです!

建具採寸

伏見の離れ新築工事。現場では左官屋さんが内部の下塗りを開始。建具屋さんの採寸もあります。


下塗り前のマスキング中。


茶道口から掃き出しの窓を見る。


窓には硝子の入った紙張障子を入れる予定。採寸に来てくれた建具屋さんと、詳細を打合せ。出来るだけすっきりと納めるため、また予算も押さえるため、硝子戸と紙張障子を一つにしてしまおうという計画。建具見込みは一寸一分。2ミリのトーメイガラスを入れて、それと触れないよう一分空けて紙を張る組子。


入隅に取付けられた桐の仕付棚。反り止めとしてハシバミをいれてもらいました。角は留め。台目構えの茶室の仕付棚のハシバミは留めにせず、木口を見せるのがルール。そういえば廻縁も留めにしませんので、「留め」は侘びの草庵には相応しくない、という感覚なのでしょうか。


天井見上げ。壁が塗られるのが楽しみです。

茶道口のかたち

伏見の離れ新築工事。今日はお施主さんと現場打合せ。


最初は、左官屋さんが用意してくれた壁のサンプルの確認。床の間の壁、光が良くあたる袖壁、正面の壁、影になる入隅など、光の具合の違う何カ所かに実際にあてがってお施主さんと一緒に確認。下が最初に出してもらったサンプルで、錆土に酸化鉄を加えたもの。上は本聚落。少し明るめ、でお願いしたのですが、少し白け気味なので、二つの中間ぐらいか。左官屋さんに電話して配合を確認して、方針を決定。


外壁は予算の都合でジョリパット。こちらは既調合なので、配合で色は変えられませんが、寒水などを調節してもらってテクスチュアを調整。


現場は足場が外れてすっきりしました。


写真は茶道口の壁下地。大工さんがボードを用意してくれて、そこにフリーハンドで曲線を描き、お施主さんに確認していただきながら、かたちを決めていきます。さすがに目の肥えた方で、ここはもう少し丸く、とか、もう少し高く、とか指示をいただき、曲線を決定。それをすぐ大工さんが加工してくれます。


設置するとこんな感じ。今回は小間の茶室、というわけでもありませんので、少しイレギュラーな寸法ですが、全体のバランスでうまく溶け込んでくれると思います。


床の間と点前座の様子。

壁下塗り

伏見の離れ新築工事。今日は外壁の下塗りですが、生憎の雨。葵祭の巡行も延期されるようです。


雨でも工事は決行。


作業中の左官屋さんと世間話。左官屋さんは色々なところで仕事をされているので、情報収集。内部ではお施主さんと仕付棚の大きさや位置、床の間の畳について打合せ。その後は、お施主さんのお道具拝見!まだまだ御道具の勉強は足りませんが、私の知識でもわかる御道具を持ってられるのがスゴイ。こうした仕事は、お施主さんに教えていただくことが多く、本当に有り難いことです。

板金工事

伏見の離れ新築工事。東京へ行っている間に屋根の板金工事が終了しています。


大屋根はガルバリウム鋼板、エバールーフ横葺き。


表の庇はガルバリウム鋼板一文字葺き。事前に端部詳細の納まりもしっかり確認したので、想定通りの出来映えです。


内部は床張りが終わり、断熱材が入ったところ。今後は壁下地をしてから壁塗りです。

板金打合せ

伏見の離れ新築工事。今日は板金屋さんと現場で打合せ。


大屋根はガルバリウム横葺き、庇はガルバリウム一文字葺き。ケラバの唐草の大きさや軒先の納まりについて相談。


庇から室内に入ったところ、見上げ。


庇の軒裏。垂木は大工さんが原木買いした丸太を製材したもの。赤杉というよりちょっと黒。天井板が白太で少しコントラストがきつめに見えますが、直に日に焼けて馴染んでくると思います。


筋交が入れられました。建築基準法では事前に筋交の向きまで決定するようになっていますが、実際は、柱梁を組み上げた状態で多少のゆがみがでるので、それを矯正するような方向に筋交をいれるべきだと思います。


建物のすぐ脇に立つモミジ。建物の輪郭にかかるような位置にあることで、全体に奥行きが出ると思いますし、その枝振りなどの景色によって建物をより引き立てることもあると思います。こんな髪型にすると小顔に見える、なんてのと似てるかも。ファッションやメイクのテクニックは建築設計に応用できることが多いように感じます。


開口部の高さを現場で確認。図面通りで事前に加工しておいていただいてもよかったのですが、重要な箇所なので現場で確認。こうしたことに対応してくれる大工さんに感謝。


壁下地を入れ始めました。

伏見の離れ新築工事。現場が近いので毎日通ってしまいます。今日は大屋根の荒野地まで仕上げ、庇に取りかかる予定。


よしずが並べられた化粧軒裏。桂離宮の月波楼や雅俗山荘の即庵は「葭詰打ち」。通りの通ったまっすぐの葭を選びぬき、隙間のないようにぴっちりと並べたもので、材料も手間もかかります。四君子苑のつばくろ天井は、ざっくりと竹を並べ、うえから漆喰で押さえたもの。今回の化粧軒裏はその中間のような感じ。よくよくみると葭は曲がりのあるざっくりしたものが多いですし、編んである紐の分の隙があったりしますが、それも味ということで。言うならば「よしずころがし天井」かな。


軒先はこんな感じ。


上では大工さんが荒野地を取付け中。垂木上にはパッキンをかませてあり、、


それに荒野地を打ち付けていきます。


松の梁付近の見上げ。


荒野地がいけたら、ルーフィングを敷いていきます。


大屋根がすんがら、表の庇にとりかかります。


庇を支える面皮の柱にはすでに根石が取付けられています。ボルトが下にも延びていて、高さ調整ができるようになっています。


垂木取付け中。


垂木が並べられたところ。全体のかたちが見えてきました。



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よしず

伏見の離れ新築工事、上棟翌日。今日も良い天気。


まず表の破風板の取付け。


そして垂木の取付け。きれいな起くり具合。


今日は垂木や面戸の取付けのお手伝いをさせていただきました。本来なら素人は手を出すべきではありませんが、棟梁の計らいで支障のない範囲の作業をさせていただきました。起くらせた垂木はどれほどの力で押さえつけるのか、面戸の寸法はどの程度の精度で切断し、設置するときにする木殺しの具合はどんなものなのか、実際の作業を経験することは、些細なことであっても設計をする上でとても有意義。こうした経験を次の設計へと活かしていきたい。


とりつけられた面戸。


垂木を切断。


下からの見上げ。垂木は一尺ピッチと少し細かめに設計しています。なぜなら、、


よしずが載るから。今日作業をお手伝いしたのも、よしずが載ったところを早くみたいから(笑)。


広げられたよしず。いい感じです。


よしずの隙間から差し込む陽射し。屋根をガラスで葺いたら、出来上がってもこんな景色が見られますが、今回はガルバリウムで屋根を葺きます。


よしずを踏み抜かないように垂木の上に載っての作業。垂木の上にコンパネなら簡単ですが、よしずを使うと気を使う上に作業が多く手間がかかります。こんな手間のかかる作業をいやがらずにしてくれる大工さんには本当に感謝です。


垂木の上に紐を持って来て又釘で固定。ちょうど垂木の上にくるように、紐をちょっとずつずらす、というジジくさい作業も作業場でしてくれています。


片面が出来上がったところ。やっぱりヨシベニアとは違います。安っぽい小屋になってしまうか、建築主の美意識を表すような建物になるか、が問題。桂離宮/月波楼や雅俗山荘/即庵の葭詰打の天井と、四君子苑の門のつばくろ天井との間くらいの雰囲気になってくれるのでは、と期待しています。その予算では出来ないと言うのは簡単ですが、限られた予算の中で如何に良いものを作るかが設計の仕事、それに答えてくれる職人さんがいることの有り難さ。


今日はここまで。


帰り道の賀茂川。菜の花や月は東に日は西に。三日前が新月なので月も西ですが、綺麗な西日でした。

上棟

伏見の離れ新築工事。今日は上棟。天気が心配でしたが、なんとか持ち直して予定通り上棟です。


小さな平屋なので、柱を建てるなどはさくさくと進みます。


ほぞを抜いて込み栓で固定。


メインの梁、松のゴロンボ。推定150キログラム。今回はクレーンを使いませんので、人力で上げます。


白杉の床柱がゴロンボに刺さります。


無事納まったところ。込み栓で固定。


作業は進み、裏手の破風が取付けられました。わかるかわからないかくらいの起くり。古い建物を見ると、はっきりわかるように、棟で太く、先で細くなっているものがほとんどですが、今回の建物の全体的になイメージにあうよう、あまり元末の寸法を変えずに、スッとした感じになるようお願いしました。


いつもなら、建物を作ってから庭を作りますが、今回はもうすでに庭があるところに建物を建てています。柱梁を組み上げ、形が見えてくると同時に、周囲の植木に引き立てられて、様になっていきます。


名残の桜と新緑の紅葉。こんな絵の具はないのでは、と思うような、美しく爽やかな緑色。

土台伏せ

お茶のお稽古が終わったら、そのまま自転車で伏見の現場へ。お茶のお稽古で一緒だった大工さんも、一旦作業場に戻って、荷物を積んで現場へ。今日は土台伏せです。


午前中に足場屋さんが足場を組み立ててくれています。


運び込まれた土台。


土台伏せの板図。


今回外壁は半分真壁で、土台の出隅の箇所をほぞ抜きの化粧の仕事をお願いしました。以前、神戸相楽園の船屋形や、柴又帝釈天の茶室で見た仕事で、組み上がるのが楽しみ。月曜日が上棟予定ですが、雨でちょっと心配。

作業場打合せ

今日は朝から大工さんの作業場へ行って打合せ。工事の始まった伏見の離れと、計画を進めている加古川の茶室についての打合せ。


作業場には「よしず」が広げられていました。伏見の離れの化粧軒裏に使う予定。建築主さんの求める雰囲気を検討して、今回挑戦するのがこの「よしず」の化粧軒裏。今回の建物は割と単純な「小屋」で、垂木の上に源平の杉板でも並べたら、本当に「小屋」になってしまうので、少し桂離宮の月波楼も意識して、今回はよしずを使うことにしました。ヨシベニアでは、やっぱり味気ないので、国産のよしずを垂木の上に並べます。


といっても、実は準備は簡単ではなく、織ってある紐を垂木の上だけにして、他をはずすというのが、結構手間のようです。予算に制限があり特注品ではなく既製品を使うので、寸法についても現場での裁断もあります。うまくいくかちょっと不安もありますが、出来上がったら、ヨシベニアにはない本物の仕上がりになると思います。


製材された垂木と小舞。大工さんが原木買いした丸太から製材したもの。岡山の茶室の天井材と同じ丸太からとったものです。


硝子戸廻りの原寸図。


庇の根石も柱に取付けられました。


ここからは加古川の茶室の打合せ。建築主さんが倉庫に仕舞われていた松板。もともと須磨の別荘に使われていたものらしく、仕上げてみると、さすが!な松でした。これを床の間の地板に使う予定。


茶室は二帖中板出炉。中板は古材のまま使う予定。同じ松板ですが、道具を置いたり場合によっては人が上を歩く板と、床の間で荘るための板、の違いが出てよかったように思います。床柱に使う丸太は、今から銘木屋さんへ行って選んできます。


仕付棚用の杉板。今回はちょっとイレギュラーな仕付棚をする予定。

遣り方

以前から計画を進めていた伏見の離れ新築工事がいよいよ着工。今日は現場で工事の段取り打合せと遣り方です。


遣り方は、現場のどの位置に建物を建てるのか、を決定すること。


庇の原寸図。実際に建ったときに、周りの植木などとぶつかったりしないかなどを確認します。


杭を打って貫板を打ち付けます。


大矩(おおがね)を使って直角を確認中。


桜の花見も今週末で終わりか。花見客で賀茂川は賑やか。世の中に たえて桜のなかりせば 春の心はのどけからまし。一年365日で桜がここまで注目されるのは一二週間ほど。それ以外は人に注目されなくても、葉を出し、枝を延ばし、根を張り、実をつけ、落葉し、また花を咲かせる、の繰り返し。

作業場打合せ

計画を進めていた伏見の離れ新築工事。大工さんの作業場での工事がある程度進んできたので、作業場打合せに行ってきました。


ざっと加工がすんだ松のゴロンボ。綺麗です。


末の断面。同じ場所から四方に枝を延ばす、松らしい節跡。


株の切断面。十二角形に加工してもらいましたが、表面に節がでず、よい感じです。


大工さんが原木で買った丸太はしばらくテーブルの台になっていましたが、今回垂木をとる用に製材されました。下端が柾になるよう赤身でとってもらいます。


ゴロンボに糸を張って高さを決めます。床柱との取り合い、窓上の高さをいくつにするか、がポイント。


北山磨丸太の床柱の上に松のゴロンボがのり、その上に短い束がのって母屋を支える納まり。束をなしにして母屋を直接ゴロンボの上に載せる方法もあるのですが、床の間、落掛け上の壁の角がじじくさくなるので、やはり束をいれて角をしっかり出したい。でも束が短すぎるのも都合が悪いし、ゴロンボの曲がり具合に合わせて調整が必要。


反対側は窓の間に立つ柱に絡んでくる。低すぎるとうっとおしいので、折置式に柱の上にゴロンボ、その上に桁を載せるような納まりに、ただし外部はほぞを抜いて込み栓、という納まりでお願いしました。


ゴロンボの切れ端で、折置の具合を確認。適当に図面を描いて、あとは大工さん適当にやっといて、でも建物は出来るのですが、建築主さんが求めている雰囲気を実現するには、また、設計者としてこうしたら建築主さんが喜んでくれるのではないか、という建物にするには、隅々にいたるまで神経を行き届かせていきたいところ。ああしようか、こうしようか、と大工さんと相談しながらディテールを決めて行くところは、設計の仕事をしていて「楽しい!」と感じる時のひとつ。


床柱と床框の納まりも確認。床柱は北山磨丸太(白杉)、床框は栗のナグリ仕上げ。建築主さんの求めるスッキリとした数寄屋に相応しいと思われる組み合わせ。茶室や数寄屋と一言で言っても、利休の侘びから遠州の綺麗さびまで、その味わいは色々。明治以降の数寄者達の数寄屋にはまた別の世界がありますし、戦後に活躍した数寄屋の棟梁達もそれぞれに独自の世界を作り上げているように思います。そうした先達の仕事を見た上で、現代において、建築主さんのために何をつくるのか、を設計者は熟考しなければなりません。


床柱の片側、炉の小板の入る部分、炉壇の入れ替えのときには小板を外さなければなりませんので、床柱にタケノコ目を付けます。


使わない部分で、ちょっとつけてみましょうか、と大工さんがカンナをあててくれています。


カンナをあてるとこんな感じ。潜りの敷居との取り合いも意識して、高さを一尺一寸ほど、杢目は九つ、でお願いしました。


ゴロンボと床柱の様子。出来上がりが楽しみです。


大屋根の原寸図。今回は野地板によしずを使う予定。起くりは流れの1%ほど。破風板ももちろん起くらせて、巾は棟で四寸二分、鼻で三寸八分、眉決りは一重、八分でお願いしました。


軒先の広小舞や淀の納まり。


玄関につける庇の桁。きれいな赤身。上等です。


庇の野地板は杉白太。準備万端。


床柱と床框。クリの床框をなぐってくれた職人さんは、ちょうど修復工事中だった桂離宮の土橋のクリもしたようです。

丸太選び

某所離れ新築工事の準備が進んでいるというので、大工さんの作業場へ。


松のゴロンボ。予算の都合で桧の予定でしたが、大工さんが値のあう松を探してきてくれました。やはり梁には、ねばりのある松です。


どのように加工するかを、大工さんと相談します。


元、株の部分は、少し太めに太鼓にしてあります。


ざっとチョークで描いてみます。床柱の丸太がこのゴロンボに刺さり、その取り合いが重要な箇所となるので、詳細は丸太を決定してから、ということに。


作業場の外に出ると一面の雪景色。ここからさらに山に入って、京北にある銘木屋さんへ丸太を探しにいきます。


候補の丸太を見る大工さんと採寸する銘木屋さん。見ているのは「白杉」と呼ばれるもの。もともとは台杉として育てられたもので、これだけの太さになるものは珍しいのだとか。


綺麗すぎない、でも野暮ったくない景色で、こんどの建物、お施主さんが求められている雰囲気によくあいそう。


倉庫の中にはたくさんの北山丸太が。この中から候補となるものを選びだします。


たくさんありますが、太さ、雰囲気などの条件で絞っていくと、数本に限られてきます。それにしても在庫はたくさんあります。写真に映っているような柱に使うもの以外にも、垂木に使う小丸太から、縁桁に使う長〜いものまで。機会があれば、少し規模の大きい建物で、こうした丸太をたくさん使ってみたいものです。出来ればいつか、室内楽用の小規模なコンサートホールを、北山杉や左官壁を使って建ててみたいなぁ。


最終候補の断面。外周部は年輪がとても密になっています。


再び作業場に戻って、再度ゴロンボの検討。こんな感じで十二角形にするのがよさそう。大工さんの手鉋でビシッと仕上げられるのが楽しみです。


土庇の桁は杉の角材。こちらもよい材料を用意してくれました。上手に製材すれば、赤身でいけそう。節が出ないように気をつけながら、現物をみながら最終の寸法を決定。図面を描いているときに、各部材の寸法は決定していますが、出来れば最終は、こうして現物を見ながら決めていくのが理想的です。


こちらの桁は、面皮の柱が支えます。

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岩崎建築研究室
岩崎 泰

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