2010年12月04日

泳げない者は不用意に水に入らない

数日前、比良山で遭難事故が発生した。
ダケ道よりルートを逸脱し立ち往生をしてしまったようだ。
夕方16:00過ぎに本人より110番にて連絡が入った。
警察は明朝、ヘリコプターでホイスト救助するとのこと。
就いては遭難者に今夜をどの様に過ごさせれば良いのかと
アドバイスを求められる。

遭難者には怪我も無く、明朝には間違いなくピックアップされるで
あろう事は分っていても、滋賀岳連としては見過しには出来ないと、
4人で救助に向かうことにする。
ビバーク場所は特定されているので、00:55分、イン谷口よりヘッドランプ
を頼りに歩き出す。
だが、ダケ道を辿り遭難場所付近を捜索するが発見できず、朝方4:00に
捜索を打ち切り下山をする。

その日の朝8:30頃、滋賀県警ヘリコプターで救助された男性。
呆れるほどの軽装だけでは無く、必携であるヘッドランプ、コンパス、地図
等は当然持たず、何と午後2時に登り始めたのだと言う。

最近、登山ブームだと言うが、あまりにも安易に山(自然)を捉えている
のではないか。。
装備不足、計画書は出さない、体力、知識、経験も乏しい、遅い行動開始時間
おまけに単独登山とくれば無謀な事この上無し。
登山力(知識、経験、体力等)が無くても、普段着のまま歩き始めたら
いつの間にか頂上に立っていたと言う登山者が増えて来ているようだ。

泳げない者は普通は水を避ける。
何の用意も無しに水に入らないのは溺れるかも知れないと分っているからだ。
登山力が無いとどんな結果を招くかを分ってほしい。
幸運にも歩いていたら登れてしまったと言うこともあるだろうが、
うっかりすると悔やんでも悔やみきれない大変な結果になるかも知れないと
想像してほしい。
特に最近登山を始めた方、これから登山を始めようと思ってる方、また以前は
やっていたが、しばらく遠ざかっていた方々にもどうか自問してほしい。
諸々の準備は整っているのかを。

自然界の厳しさは、ビギナーもベテランも区別をしない。






  

2010年05月21日

・・・思うこと

岳人6月号に、カジタックス廃業のお知らせが掲載されていた。


社長である梶田民雄氏とは、1984年、日本山岳会東海支部の
ガウリサンガール登山隊でご一緒させていただいた。
氏が作り出すアイゼン、ピッケル等の試作品を、何本もテスト用として
使用したり批評したりして、氏が道具に更なる磨きをかける為のお手伝いを
僅少なるもさせていただいた訳であるが、あれから30年近く、国産の本格的な
ピッケル、アイゼンとして最前線で活躍して来たカジタックスそのものが
その一時代に幕を降ろすことになる。

後継者が居ないということも大きな要因ではあるが、それより何より
本格的なピッケル、アイゼンを使用する登山者が少なくなったのでは
ないだろうか。





  

2010年05月09日

ガイドの危険と難しさ

「もろ刃の剱」


ある山岳関係の総会があり、会員Aの起こした事故報告があった。

雪山でガイド中、お客様の滑落によりロープで繋がっていたために、
ガイド自身も引き込まれてお客様と一緒に滑落してしまった。
ガイドは怪我をしたが、不幸中の幸いとも言うかお客様に怪我はなかった。

ガイドの技術で代表的なものにショートロープ技術があるが、この技術は
もろ刃の剱ともなる。
「もろ刃の剱」と言うのは、お客様とロープで繋がっていたために一緒に
滑落してしまったが、上手く行っていたならば滑落を止められたかも知れない。
ガイドにとってショートロープ技術は、強い味方でもあり、反面、大事故に
発展する要因でもある。

ショートロープ技術は、昔よりある登山技術の一つで、古くて最も新しい技術
でもあるが、未だにその結果は見られない。





  

2010年04月30日

救助の前に



さて、プロもアマも山の事故については真剣に考えなくてはいけない。
事故を起こさない為には、どうすれば良いか、時間を割いて考えなければ
いけない。。

皆、考えているはずではあるが、敢えて声を大にしなければならない。





  

2010年04月09日

救助技術について

パラグライダーに於いて、万が一の救助技術は登山に於けるものと全く同じ
技術が必要とされる。

広大な自然をフィールドに展開されるパラグライダー・フライトには、他の
スポーツでは味わえない快感と楽しさがある。
しかし、その反面リスクが伴なうスポーツでもある。

フライトは自己責任のもとで行わなければならない。そのためにはフライト
に必要な総合的技術の習熟はもとより、応急処置法や搬送法を含む救助
技術を身に付けることが肝要である。
また、万が一事故に遭遇した場合「救命と後遺症なき早期社会復帰」を
第一と考え「自助努力と迅速な救助活動」が実践されなければならない。
特にクロスカントリー・フライトを目指すパイロットは、自己脱出や救助
技術が必須である。

「自分自身は自分で守れ」をモットーに、より確実なフライト技術を、更に
救助技術を身に付け、真の自己責任を全うできるパイロットでありたいと
願うものである。


                    <日本山岳レスキュー協会>
                        山本 一夫

                        



  

2010年02月10日

積雪地形調査

雪庇構造調査のために人材が必要です。
興味のある方、お手伝いいただける方がいらっしゃれば
是非ともの参加を、お願いしたいと思っております。

昨年5月の調査に続き、今年4月20日〜23日まで立山室堂にて
巨大雪庇を掘り、断面、層構造の調査を行います。
雪氷学的にも未だ未解の部分を、今回の調査で明らかにさせたいと
考えております。

詳細は、国立登山研修所友の会ホームページを御覧になって下さい。

興味のある方、お手伝いをいただける方がいらっしゃれば
どうかよろしくお願い致します。






  

2010年01月26日

冬山研修再開

大学山岳部リーダー向けの冬山研修が再開されます。
雪庇崩落事故より10年。
訓練中の学生2人が死亡してからずっと休止されていましたが
この3月よりやっと再開されることになりました。
遭難しないための技術を少しでも多くの方がマスターし
より安全な登山が出来ますよう、後輩たちに伝え教え学んでください。
これからの発展を心から願っております。



2010年1月25日の讀賣新聞夕刊14面に
「大学山岳部向け冬山研修再開へ」という見出しを見付けた時は
正直、やっとこれで区切りが付いたか・・・と思いました。

10年。。この間には遺族側と国の損害賠償訴訟が長期化しそして和解
した後、冬山研修会再開に向け安全性構築のための時間が費やされ、
やっとこぎ着けた長い時間でした。

今後は大雪渓崩落のメカニズムを知るために、雪氷学者先生と協同で
大雪庇を掘り起こして研究を続けていきたいと思っています。
また昨年と同じく4月20日過ぎから立山室堂で調査の予定をしております。






  

2009年12月26日

山とは、自然とは・・・

いつだったか、カレンダーにあった”一言”にやたら感銘し
メモってあったのを思い出した。

  山高き故に 貴からず
         樹あるを以って 貴しとなす


地球温暖化が憂慮されだして久しい・・・
そして、時間ばかり取られ大儀掲げ議論をした筈(?)なのに、一向に進展が
見られなかったCOP15。
人間が環境を破壊していることをもっともっと認識しなければならないのに。。

それでなくても各国各地で見られる大小の地震は、地球の歴史規模でいけば
次から次と間断無く起き、まるで地球そのものが悲鳴を上げているのかも
知れないし・・・

なんて、ちょっと憂えてみたりして・・・(゚∀゚)アヒャ Σ( ̄ロ ̄|||) 






  

2008年12月21日

<続> 岳友との出会い

随分ご無沙汰をしてしまったが、前年6月の続編になる・・・(゚∇゚ ;)!?


1978年8月文登研一般山岳団体指導者夏山研修会では
島田靖さん松本憲親さん両氏との大きな出会いがあった。

全日本スキー連盟公認の指導員である島田さんには、講師研修会に於いて
山スキー技術の指導をしていただいた。場所は富山の極楽坂スキー場。
私は出来の悪い研修生であったようだ。が、氏はとても優しく特に女性に人気が
あり、今では日本山岳ガイド協会認定のガイドとして協会の事業を共にしている
仲だが、最長老ガイドとしても活躍中である。

松本さんは大変な理論家で、特に確保理論では山岳会きっての理論を展開
することでその名を馳せている。氏からは随分とご指導をいただき、私が理論家
ぶっていられるのも松本氏のお蔭である。
また氏が開発をした無添加石鹸ピュアポタッシュの販売もさせていただいているが
ここ2年ほどピュアポタッシュシャンプーを使用するようになってからは、いかに
抜け毛が少ないかを体験し、その驚くばかりの効能には目を見張るものがあり
大変感謝している。
  

2007年09月09日

登山の心得

ずっと続いていた腰痛のため、暫く実践(山)から遠ざかっていたが、
先日のっぴきならぬ事情から入山をすることになった。
嬉しいことに懸念していた出来事もなく行動がスムーズにいく。
気付かぬうちにリハビリ効果があったのか、その後も調子が良い。


つい先頃、東京で消防庁消防大学にて山岳救助技術の講義と実技の
講師を担当してきた。全国から入校した消防士の方々に、私の知り得る
山岳救助技術を伝えることが目的である。
さすが消防関係者の集まりだけあって、講義、実技共その飲み込みの
速さとテキパキとした動作にはいつも感心させられる。
ここ何年か消防大学で講師を勤める機会が増え、特筆すべきは
彼らにとって山岳地(自然界)での救助活動が非常に増加している
ということである。またその救助内容は街中であれ山中であれ、
実に多種多様で、自然界では厳しい救助活動が強いられるのである。

自然界の一部である山岳地帯に足を踏み入れる我々登山愛好者は、
山で事故を起こしたらどうなるのかということを、今一度考査すべき
だと思う。
何よりも大事なのは山で事故を起こさないためにはどのような準備を
すれば良いのか、再構築しておきたい。
”ちょっとそこの低い山に登るだけ”とか”ハイキング、トレッキング
に行くだけだから”と言うように軽い気持ちで出発するのではなく、
”事故を起こさないためにはどうすれば良いか”と考えるだけでも
そこには大きな違いが出てくる筈。
時と場所には関係なく事故が起きれば救助関係者はもとより、あなたを
取り巻く多くの方々に多大な迷惑がかかるということになる。

救助関係者の方々に接する機会が増えた今、特に以上のようなことを
痛感している。