(監督:佐々部清)
☆☆☆☆

・カテゴリー:
人間>社会>ミステリー
・上映時間:121 分
・制作:日本(2004/1/10)
・ストーリー:
ある日、一人の男が最寄りの警察署に出頭してきた。彼の名は、梶聡一郎。元捜査一課の警部で現在は警察学校の教職に就く彼は、3日前に妻の啓子を自宅で絞殺したと告げ、自首してきたのだ。梶の自供によれば、半年前、若くしてアルツハイマー病を発症した妻・啓子の 「 殺して欲しい 」 という嘆願に、止むに止まれず首を絞めたという。だが全てを自供した、いわゆる < 完落ち > ではなかった。梶が出頭したのは事件の3日後だったのだ。空白の2日間に何があったのか。県警の威信を賭け、取り調べにあたった捜査一課・志木刑事。しかし梶は、自首するまでの2日間について頑なに黙秘を続ける < 半落ち > の状態。現職警官による前代未聞のスキャンダルに県警全体が窮地に立たされる。
・出演:
寺尾聰(現職警官・梶聡一郎)
柴田恭兵(県警捜査一課強行犯指導官・志木和正)
原田美枝子(梶総一郎の妻・梶啓子)
吉岡秀隆(地方裁判所判事・藤林圭吾)
鶴田真由(東洋新聞支局記者・中尾洋子)
伊原剛志(地方検察庁三席検事・佐瀬銛男)
國村隼(弁護士・植村学)
高島礼子(上村学の妻・植村亜紀子)
奈良岡朋子(梶夫婦の息子<俊哉>の主治医・高木ひさ江)
樹木希林(梶啓子の姉・島村康子)
嶋田久作
斉藤洋介
中村育二
豊原功補
西田敏行
本田博太郎
田山涼成
奥貫薫
高橋一生
田辺誠一
石橋蓮司
井川比佐志
笹野高史
・原作:
横山秀夫
『 半落ち 』 ( 講談社刊 )
・脚本:
田部俊行
佐々部清
・撮影:
長沼六男
・美術:
山崎秀満
・編集:
大畑英亮
・音楽:
寺嶋民哉
・照明:
吉角荘介
・録音:
高野泰雄
・主題歌:
森山直太朗
『 声 』
・企画:
坂上順
近藤邦勝
・プロデューサー:
中曽根千治
小島吉弘
菊地淳夫
濱名一哉
長坂勉
・配給:
東映
・コメント:
私にとってこの作品は、キャスティングが印象に残りました。私が < イイナ〜 > と思っていた俳優さんが多数出演。特に男優陣は、素晴らしいの一言です。主演の寺尾聰をはじめ吉岡秀隆・伊原剛志・國村隼と、抑えた演技が光りました。特に柴田恭兵が、決して上手いとはいえませんが、いつものアクション俳優を脱却して良い演技をしていました。ちょっとビックリ。ちょっと感動です。
「 やっぱり映画は、シナリオとキャスティングだなぁ〜 」 と改めて感じました。何の抵抗もなく物語に感情移入できました。では脚本についてはというと、 < ミステリー > としては成立していない気がします。謎解きの部分が物語の骨格を成してはいますが、よりテーマ性を重視したつくりになっています。原作は私は読んでいませんが、傑作ミステリーと呼ばれ、2002年度のミステリー・ランキングを総なめにした作品です。当然ミステリーの部分が前面に押し出されているというのは、想像に難くありません。しかし本作は、ヒューマンドラマの様相を呈しています。それを刑事事件の当事者である容疑者・被害者・被害者家族と、刑事事件に関わる職業である刑事・検事・弁護士・判事そして新聞記者の立場から多面的に映し出しています。これがアンサンブルとなって心に響きます。
微妙な部分はあります。複雑に絡み合う人間関係はありません。だからといって各個人が無関係でもなく、ちょっと知り合いだったりします。また警察内部の組織ぐるみの不正もテーマの一つだったと思いますが、謎解きの部分が弱いので、上手く表現されていません。そしてミステリーの真骨頂であるラストに向かっての盛り上がりにも欠けます。しかしそういった弱点を補って余りあったのが、メインテーマです。アルツハイマー病や急性骨髄性白血病といった医療テーマを掲げたことで、全てが救われています。監督の狙い通り、俳優陣もそれを意識した抑えた演技で応え、社会性の高いテーマを見事に表現しています。
特に現代日本が抱える重要な問題である < 老人介護 > を、老人性痴呆症の代表格である < アルツハイマー病 > に焦点をあてて、 < 尊厳死 > とう問題にまで踏み込んでいるところは立派でした。また < 急性骨髄性白血病 > を通して < ドナー登録 > という、運良く健常である自分にもできる具体的な社会貢献を提示した点も感動しました。こういった問題を扱う作品は、どうしても問題自体をストレートに表現しがちになり、とかく敬遠しがちな作風になってしまいます。しかし本作は、切り口がミステリー調なので分かりやすい、とても良いヒューマンドラマになっています。鑑賞して良かったなぁと素直に思えました。
最後にメインテーマについて、気になった言葉をご紹介します。
≪ 尊厳死 ≫
尊厳死とは、人間が人間としての尊厳を保って死に臨むことです。
本来、病死を含む自然死であれば人間は尊厳を保ったまま死にゆくことができるはずです。しかし医療の発達によって延命技術が進歩したため、死を迎える段階でただ 「 生かされている 」 だけの状態となってしまうことが多くなりました。 こうした状態で死に臨むことを望まない立場から、 「 尊厳死 」 の概念が発生し広まってくることとなりました。また、病気の苦痛にさいなまれた状態から解放されて死を迎えるというのも尊厳死の一部と考えられています。
安楽死は、大別すると 「 積極的安楽死 」 と 「 消極的安楽死 」 に分けられます。
< 積極的安楽死 >
薬物を投与するなどの積極的方法で死期を早めることです。これは医療の名の下に行われる自殺幇助ということになり、社会からの心理的抵抗は大きく、日本を含む多くの国では刑事犯罪として扱われます。
< 消極的安楽死 >
無意味な延命治療、努力をしないで死に致しめることです。尊厳死を保つ意味からも合理的で社会的に認知されていて、実際の医療現場でも広く行われています。自然に死を迎えるという意味でナチュラルコースともいいます。
例としては、呼吸の停止した患者に人工呼吸器を取り付け、その後自発呼吸がないのに取り外すのは積極的安楽死となります。最初から人工呼吸器を取り付けない ( 心肺蘇生法を施さない ) のは消極的安楽死です。ほぼ同等の行為でありながら片方は認められない行為となるため、救命・延命をどこまで行うかは事前によく検討して合意を形成しておく必要性が求められます。
< 安楽死を認めている国 >
・オランダ ・・・ 2001年 「 安楽死法 」 可決。
・ベルギー
・アメリカ ( オレゴン州 ) ・・・ 1994年 「 尊厳死法 ( Death with Dignity Act ) 」 成立 。
< 出典: フリー百科事典 『 ウィキペディア 』 より抜粋しました。 >