聖公会生野センター『ウルリム』42号
2007年02月
キリスト者詩人・尹東柱（ユンドンジュ）は、1942年春、海を渡って立教大学に留学した。24歳であった。2ヵ月ほどしてノートに記された「たやすく書かれた詩」は次のように始まる。
「窓の外には 夜の雨がささやいて
六畳部屋は ひとの国」
「六畳部屋」は東京の彼の下宿であろう。しかしこれはただ故郷を離れた青年の孤独を歌ったものではない。自らの名前、歴史、文化、精神を葬ることしなければ生きること自体を許さない日本という国を、「ひと（他人）の国」と感じ、認識した言葉である。「ひとの国」は、異なるものを同化するか、それとも「よそもの」として排除するか、その二つしか知らなかった。
彼は詩の終わり近くで次のように言う。
「灯火をともして 闇を少し追いやり
時代のように来る朝を待つ 最後のわたし」
「最後のわたし」。彼はすでに死を予感し、覚悟していた。この詩から1年と少しで彼は逮捕され、治安維持法違反で懲役2年の判決を受けた。そして1945年2月16日、福岡刑務所の独房で獄死した。それから62年が過ぎた。
尹東柱の死後2年、1947年3月に施行された教育基本法は、罪なき人々のおびただしい血と涙を流させた植民地支配と戦争を悔いて、「これからは絶対に戦争しない。国家に戦争をさせない。子どもたちを戦いに行かせない」という切なる決意をこめて定められたものである。その前文は次のようにうたわれていた。
「われらは、さきに、日本国憲法を確定し、民主的で文化的な国家を建設して、世界の平和と人類の福祉に貢献しようとする決意を示した。この理想の実現は、根本において教育の力にまつべきものである。われらは、個人の尊厳を重んじ、真理と平和を希求する人間の育成を期するとともに、普遍的にしてしかも個性ゆたかな文化の創造をめざす教育を普及徹底しなければならない。」
ここには異なるものを排除し多様性を認めない「ひと（他人）の国」ではなく、さまざまな人が違いを越えて一緒に生きることのできる国が目指されていた、少なくともその可能性に大きく道を開いたものであった。
ところが昨年12月22日に公布・施行された「改正」教育基本法は、1947年の基本法の文言を巧みに残しつつ、教育の目的・目標の重点をすっかり変えるものとなってしまった。
一点のみを挙げる。「教育行政」について1947年の法は次のように規定していた。
「教育は、不当な支配に服することなく、国民全体に対し直接に責任を負つて行われるべきものである。」
教育は、主権者たる国民全体に対して責任を負うものとされていた。「不当な支配」とは国家や行政、軍、財閥などが意識されていたはずである。
ところが新法はこうである。
「教育は、不当な支配に服することなく、この法律及び他の法律の定めるところにより行われるべきものであり、教育行政は、国と地方公共団体との適切な役割分担及び相互の協力の下、公正かつ適正に行われなければならない。」
「法律の定めるところ」、国家、行政の権限が強大化した背後に、「主権在民」は隠されてしまった。
尹東柱のいのちを奪った「ひとの国」の闇が、ふたたび深まりつつある。この国を「ひと（他人）の国」にしてはならない。この時代に私たちが必要とするのは、主イエスが見ておられた「神の国」の幻を見ること、その実現を信じ、希望をもって歩むことである。
「ついに、我々の上に、霊が高い天から注がれる。荒れ野は園となり、園は森と見なされる。そのとき、荒れ野に公平が宿り、園に正義が住まう。正義が造り出すものは平和であり、正義が生み出すものは、とこしえに安らかな信頼である。」イザヤ32：15‐17
「神の国のしるし」を見出し、それとつながり、互いに励まし合いたい。違いを尊重しつつ共に生かし合って生きることを目指す働きは、時代の闇の中の光である。聖公会生野センターの働きがさらに祝福されることを心から願う。
(聖公会生野センター『ウルリム』42号 2007/02/20)
「窓の外には 夜の雨がささやいて
六畳部屋は ひとの国」
「六畳部屋」は東京の彼の下宿であろう。しかしこれはただ故郷を離れた青年の孤独を歌ったものではない。自らの名前、歴史、文化、精神を葬ることしなければ生きること自体を許さない日本という国を、「ひと（他人）の国」と感じ、認識した言葉である。「ひとの国」は、異なるものを同化するか、それとも「よそもの」として排除するか、その二つしか知らなかった。
彼は詩の終わり近くで次のように言う。
「灯火をともして 闇を少し追いやり
時代のように来る朝を待つ 最後のわたし」
「最後のわたし」。彼はすでに死を予感し、覚悟していた。この詩から1年と少しで彼は逮捕され、治安維持法違反で懲役2年の判決を受けた。そして1945年2月16日、福岡刑務所の独房で獄死した。それから62年が過ぎた。
尹東柱の死後2年、1947年3月に施行された教育基本法は、罪なき人々のおびただしい血と涙を流させた植民地支配と戦争を悔いて、「これからは絶対に戦争しない。国家に戦争をさせない。子どもたちを戦いに行かせない」という切なる決意をこめて定められたものである。その前文は次のようにうたわれていた。
「われらは、さきに、日本国憲法を確定し、民主的で文化的な国家を建設して、世界の平和と人類の福祉に貢献しようとする決意を示した。この理想の実現は、根本において教育の力にまつべきものである。われらは、個人の尊厳を重んじ、真理と平和を希求する人間の育成を期するとともに、普遍的にしてしかも個性ゆたかな文化の創造をめざす教育を普及徹底しなければならない。」
ここには異なるものを排除し多様性を認めない「ひと（他人）の国」ではなく、さまざまな人が違いを越えて一緒に生きることのできる国が目指されていた、少なくともその可能性に大きく道を開いたものであった。
ところが昨年12月22日に公布・施行された「改正」教育基本法は、1947年の基本法の文言を巧みに残しつつ、教育の目的・目標の重点をすっかり変えるものとなってしまった。
一点のみを挙げる。「教育行政」について1947年の法は次のように規定していた。
「教育は、不当な支配に服することなく、国民全体に対し直接に責任を負つて行われるべきものである。」
教育は、主権者たる国民全体に対して責任を負うものとされていた。「不当な支配」とは国家や行政、軍、財閥などが意識されていたはずである。
ところが新法はこうである。
「教育は、不当な支配に服することなく、この法律及び他の法律の定めるところにより行われるべきものであり、教育行政は、国と地方公共団体との適切な役割分担及び相互の協力の下、公正かつ適正に行われなければならない。」
「法律の定めるところ」、国家、行政の権限が強大化した背後に、「主権在民」は隠されてしまった。
尹東柱のいのちを奪った「ひとの国」の闇が、ふたたび深まりつつある。この国を「ひと（他人）の国」にしてはならない。この時代に私たちが必要とするのは、主イエスが見ておられた「神の国」の幻を見ること、その実現を信じ、希望をもって歩むことである。
「ついに、我々の上に、霊が高い天から注がれる。荒れ野は園となり、園は森と見なされる。そのとき、荒れ野に公平が宿り、園に正義が住まう。正義が造り出すものは平和であり、正義が生み出すものは、とこしえに安らかな信頼である。」イザヤ32：15‐17
「神の国のしるし」を見出し、それとつながり、互いに励まし合いたい。違いを尊重しつつ共に生かし合って生きることを目指す働きは、時代の闇の中の光である。聖公会生野センターの働きがさらに祝福されることを心から願う。
(聖公会生野センター『ウルリム』42号 2007/02/20)
京都聖三一教会ではこの大斎節に「ルカによる福音書」を読もうということになり、そのための通読表をつくりました。
下記のサイトにＰＤＦファイルとして掲載しましたのでご自由にご利用ください。
http://www002.upp.so-net.ne.jp/izaya/
なお2月25日（大斎節第1主日）は9時30分から聖餐式を行い、10時30分から交代で「ルカによる福音書」の連続朗読を行います。
ご関心のある方はご参加ください。
（通読表の一部）
2月21日（水）から大斎節が始まります。イースター（今年は4月8日）までの期間、主イエスが40日40夜、荒野で試練を受けられたことを思いつつ、毎日ルカによる福音書を読んで過ごしましょう。
今年は3年サイクル聖書日課の＜C年＞にあたり、主日聖餐式の福音書は主としてルカによる福音書から選ばれています。この表によって、大斎始日から復活前日まででルカによる福音書全体を通読することができます。その日の箇所を読んで黙想し、できれば右側の空欄にその箇所の言葉（１単語でもよい）、あるいは気づき、感想を一言メモしてみましょう。
聖霊が聖書をとおして、主イエスの言葉と姿をわたしたちの胸に刻んでくださいますように。そしてイースターに、十字架に死んで復活された主イエスにお会いすることができますように
ルカによる福音書について
○ルカによる福音書は紀元80年頃成立。著者（医者ルカとされる。コロサイ4：14参照）は、すでに知られていたマルコによる福音書を元に、「イエスの言葉資料」およびルカが独自に集めた資料を用いてこれを執筆した。
○ルカによる福音書と使徒言行録は同一著者による元々一続きの文書。
○ルカは、イエスがユダヤ人だけではなく全人類の救い主であることを広く知らせようとしてこの福音書を書いた。イエスの系図をアダムにまでさかのぼって記している（3：23−38）
○弱い者、貧しい者、女性、子どもへの関心が深い。「マリアへのお告げ」（1:26‐）、「善いサマリア人」（10：25‐）「放蕩息子」（15：1‐32）、などの有名な話はルカ福音書のみに記されている。
○神の霊（聖霊）の働きが強調されている。救い主イエスは聖霊によってマリアに宿った（1:35）。主の霊はイエスの上におられた（4:18）。聖霊の降臨によって宣教する教会が誕生した（使徒言行録2:4）。
月 日 内容・箇所 聖句または感想
2/21（水）大斎始日 1:1-38 イエス誕生の予告
2/22（木） 1:39-80 マリアの賛歌
2/23（金） 2:1-21 イエスの誕生
2/24（土） 2:22-52 シメオンとアンナ
下記のサイトにＰＤＦファイルとして掲載しましたのでご自由にご利用ください。
http://www002.upp.so-net.ne.jp/izaya/
なお2月25日（大斎節第1主日）は9時30分から聖餐式を行い、10時30分から交代で「ルカによる福音書」の連続朗読を行います。
ご関心のある方はご参加ください。
（通読表の一部）
2月21日（水）から大斎節が始まります。イースター（今年は4月8日）までの期間、主イエスが40日40夜、荒野で試練を受けられたことを思いつつ、毎日ルカによる福音書を読んで過ごしましょう。
今年は3年サイクル聖書日課の＜C年＞にあたり、主日聖餐式の福音書は主としてルカによる福音書から選ばれています。この表によって、大斎始日から復活前日まででルカによる福音書全体を通読することができます。その日の箇所を読んで黙想し、できれば右側の空欄にその箇所の言葉（１単語でもよい）、あるいは気づき、感想を一言メモしてみましょう。
聖霊が聖書をとおして、主イエスの言葉と姿をわたしたちの胸に刻んでくださいますように。そしてイースターに、十字架に死んで復活された主イエスにお会いすることができますように
ルカによる福音書について
○ルカによる福音書は紀元80年頃成立。著者（医者ルカとされる。コロサイ4：14参照）は、すでに知られていたマルコによる福音書を元に、「イエスの言葉資料」およびルカが独自に集めた資料を用いてこれを執筆した。
○ルカによる福音書と使徒言行録は同一著者による元々一続きの文書。
○ルカは、イエスがユダヤ人だけではなく全人類の救い主であることを広く知らせようとしてこの福音書を書いた。イエスの系図をアダムにまでさかのぼって記している（3：23−38）
○弱い者、貧しい者、女性、子どもへの関心が深い。「マリアへのお告げ」（1:26‐）、「善いサマリア人」（10：25‐）「放蕩息子」（15：1‐32）、などの有名な話はルカ福音書のみに記されている。
○神の霊（聖霊）の働きが強調されている。救い主イエスは聖霊によってマリアに宿った（1:35）。主の霊はイエスの上におられた（4:18）。聖霊の降臨によって宣教する教会が誕生した（使徒言行録2:4）。
月 日 内容・箇所 聖句または感想
2/21（水）大斎始日 1:1-38 イエス誕生の予告
2/22（木） 1:39-80 マリアの賛歌
2/23（金） 2:1-21 イエスの誕生
2/24（土） 2:22-52 シメオンとアンナ
2007年2月25日（日）大斎節第1主日
人は心で信じて義とされ、口で公に言い表して救われるのです。ローマ10:10
2月26日（月）
主の慈しみに生きる人はすべて、主を愛せよ。主は信仰ある人を守られる。詩編31:24
2月27日（火）
わたしたちはキリストのお陰で、今の恵みに信仰によって導き入れられ、神の栄光にあずかる希望を誇りにしています。ローマ5:2
2月28日（水）
「御言葉はあなたの近くにあり、あなたの口、あなたの心にある。」これは、わたしたちが宣べ伝えている信仰の言葉なのです。ローマ10:8
3月1日（木）
実に、信仰は聞くことにより、しかも、キリストの言葉を聞くことによって始まるのです。ローマ10:17
3月2日（金）
希望の源である神が、信仰によって得られるあらゆる喜びと平和とであなたがたを満たしてくださるように。ローマ15:13
3月3日（土）
いかに幸いなことか、主に信頼をおく人は。詩編40:5
人は心で信じて義とされ、口で公に言い表して救われるのです。ローマ10:10
2月26日（月）
主の慈しみに生きる人はすべて、主を愛せよ。主は信仰ある人を守られる。詩編31:24
2月27日（火）
わたしたちはキリストのお陰で、今の恵みに信仰によって導き入れられ、神の栄光にあずかる希望を誇りにしています。ローマ5:2
2月28日（水）
「御言葉はあなたの近くにあり、あなたの口、あなたの心にある。」これは、わたしたちが宣べ伝えている信仰の言葉なのです。ローマ10:8
3月1日（木）
実に、信仰は聞くことにより、しかも、キリストの言葉を聞くことによって始まるのです。ローマ10:17
3月2日（金）
希望の源である神が、信仰によって得られるあらゆる喜びと平和とであなたがたを満たしてくださるように。ローマ15:13
3月3日（土）
いかに幸いなことか、主に信頼をおく人は。詩編40:5
2007年2月18日（日）大斎節前主日
あなたがたはキリストの体であり、また、一人一人はその部分です。�汽灰螢鵐�12:27
2月19日（月）
イエスは悪魔から誘惑を受けるため、“霊”に導かれて荒れ野に行かれた。そして四十日間、昼も夜も断食した後、空腹を覚えられた。マタイ4:1‐2
2月20日（火）
「『人はパンだけで生きるものではない。神の口から出る一つ一つの言葉で生きる』と書いてある。」マタイ4:4
2月21日（水）大斎始日 (灰の水曜日)
あなたたちの神、主に立ち帰れ。主は恵みに満ち、憐れみ深く、忍耐強く、慈しみに富んでおられる。ヨエル書2:13
2月22日（木）
神は真実な方です。あなたがたを耐えられないような試練に遭わせることはなさいません。�汽灰螢鵐�10:13
2月23日（金）
神は試練と共に、それに耐えられるよう、逃れる道をも備えていてくださいます。�汽灰螢鵐�10:13
2月24日（土）使徒聖マッテヤ日
事実、イエス御自身、試練を受けて苦しまれたからこそ、試練を受けている人たちを助けることがおできになるのです。ヘブライ2:18
あなたがたはキリストの体であり、また、一人一人はその部分です。�汽灰螢鵐�12:27
2月19日（月）
イエスは悪魔から誘惑を受けるため、“霊”に導かれて荒れ野に行かれた。そして四十日間、昼も夜も断食した後、空腹を覚えられた。マタイ4:1‐2
2月20日（火）
「『人はパンだけで生きるものではない。神の口から出る一つ一つの言葉で生きる』と書いてある。」マタイ4:4
2月21日（水）大斎始日 (灰の水曜日)
あなたたちの神、主に立ち帰れ。主は恵みに満ち、憐れみ深く、忍耐強く、慈しみに富んでおられる。ヨエル書2:13
2月22日（木）
神は真実な方です。あなたがたを耐えられないような試練に遭わせることはなさいません。�汽灰螢鵐�10:13
2月23日（金）
神は試練と共に、それに耐えられるよう、逃れる道をも備えていてくださいます。�汽灰螢鵐�10:13
2月24日（土）使徒聖マッテヤ日
事実、イエス御自身、試練を受けて苦しまれたからこそ、試練を受けている人たちを助けることがおできになるのです。ヘブライ2:18
「ヨハネによる福音書」は他の三つの福音書とはまったく趣きが異なっています。ギリシャ思想の影響のもとにある人々に対してイエス・キリストの意味を説き明かしていくことにこの福音書の目的があったようです。
ヨハネ福音書は難解な謎の書のようですが、その謎がひとつ解けるたびにイエス・キリストからの恵みの光が差し込み、自由の息吹が私たちのうちに起こります。
「マタイのイエス像が人間的に描かれているのに対して、ヨハネのイエス像は超越したものとして描かれ……」と説明されることがありますが、そのような割り切り方はできません。
ヨハネ福音書における、人を超越した存在としてのイエスは、同時に肉体を持った、悲しみ、憤り、愛し、心を騒がせ、血を流して死ぬ存在、人間そのものです。
「まことの神でありまことの人である」イエス。語り聞き、呼びかけ、生きて働くイエスさまと私たちが人格的に出会うことが、ヨハネ福音書の願いです。
「あなたたちは聖書の中に永遠の命があると考えて、聖書を研究している。ところが、聖書はわたしについて証しをするものだ。それなのに、あなたたちは、命を得るためにわたしのところへ来ようとしない。」ヨハネ5:39‐40
今回は「わたしは〜である」「わたしはある」「わたしである」というヨハネ福音書に特徴的な言葉に焦点をあててみます。これはいずもギリシア語原典では「エゴー エイミ」なのです。
１. 11:25‐27「イエスは言われた。『わたしは復活であり、命である。
２. 8:28「あなたたちは、人の子を上げたときに初めて、『わたしはある』ということ、また、わたしが、自分勝手には何もせず、ただ、父に教えられたとおりに話していることが分かるだろう。」
8:24、8:58も同じです。
３. 18:5「彼らが『ナザレのイエスだ』と答えると、イエスは「わたしである」と言われた。」
○「わたしは〜である」「わたしはある」「わたしである」はいずれも「エゴー エイミ」であってまったく同じです。日本語では訳し分けられていますが、本質的に同じ言葉、同じ内容です。
これはモーセへの神の名「ヤハウェ ＹＨＷＨ（わたしはある）」の啓示（出エジプト記3:14）につながります。
「神はモーセに、『わたしはある。わたしはあるという者だ』と言われ、また、『イスラエルの人々にこう言うがよい。『わたしはある』という方がわたしをあなたたちに遣わされたのだと。」出エジプト記3:14
「神は、更に続けてモーセに命じられた。『イスラエルの人々にこう言うがよい。あなたたちの先祖の神、アブラハムの神、イサクの神、ヤコブの神である主（ヤハウェ）がわたしをあなたたちのもとに遣わされた。これこそ、とこしえにわたしの名。これこそ、世々にわたしの呼び名。』」3:15
イエスが、かつてモーセに語られた神の言葉を引用された。もっとはっきり言えば、モーセに語られた神ご自身がいま、イエスの中に、イエスとして存在し、語っておられる。
かつてモーセに対してご自分を現された神は、いま、イエスにおいてご自分を現しておられるのです。
イエスを捕らえようとしてやって来た人々は、「わたしである」というイエスの言葉に圧倒されて地に倒れました（ヨハネ18:6）。
「わたしはある」と言われる神、「わたしである」と言われるイエスは、私たちを無力と失望から救い出し、しっかりと立たせ、主とともに歩ませてくださいます。
（2007/02/11）
ヨハネ福音書は難解な謎の書のようですが、その謎がひとつ解けるたびにイエス・キリストからの恵みの光が差し込み、自由の息吹が私たちのうちに起こります。
「マタイのイエス像が人間的に描かれているのに対して、ヨハネのイエス像は超越したものとして描かれ……」と説明されることがありますが、そのような割り切り方はできません。
ヨハネ福音書における、人を超越した存在としてのイエスは、同時に肉体を持った、悲しみ、憤り、愛し、心を騒がせ、血を流して死ぬ存在、人間そのものです。
「まことの神でありまことの人である」イエス。語り聞き、呼びかけ、生きて働くイエスさまと私たちが人格的に出会うことが、ヨハネ福音書の願いです。
「あなたたちは聖書の中に永遠の命があると考えて、聖書を研究している。ところが、聖書はわたしについて証しをするものだ。それなのに、あなたたちは、命を得るためにわたしのところへ来ようとしない。」ヨハネ5:39‐40
今回は「わたしは〜である」「わたしはある」「わたしである」というヨハネ福音書に特徴的な言葉に焦点をあててみます。これはいずもギリシア語原典では「エゴー エイミ」なのです。
１. 11:25‐27「イエスは言われた。『わたしは復活であり、命である。
２. 8:28「あなたたちは、人の子を上げたときに初めて、『わたしはある』ということ、また、わたしが、自分勝手には何もせず、ただ、父に教えられたとおりに話していることが分かるだろう。」
8:24、8:58も同じです。
３. 18:5「彼らが『ナザレのイエスだ』と答えると、イエスは「わたしである」と言われた。」
○「わたしは〜である」「わたしはある」「わたしである」はいずれも「エゴー エイミ」であってまったく同じです。日本語では訳し分けられていますが、本質的に同じ言葉、同じ内容です。
これはモーセへの神の名「ヤハウェ ＹＨＷＨ（わたしはある）」の啓示（出エジプト記3:14）につながります。
「神はモーセに、『わたしはある。わたしはあるという者だ』と言われ、また、『イスラエルの人々にこう言うがよい。『わたしはある』という方がわたしをあなたたちに遣わされたのだと。」出エジプト記3:14
「神は、更に続けてモーセに命じられた。『イスラエルの人々にこう言うがよい。あなたたちの先祖の神、アブラハムの神、イサクの神、ヤコブの神である主（ヤハウェ）がわたしをあなたたちのもとに遣わされた。これこそ、とこしえにわたしの名。これこそ、世々にわたしの呼び名。』」3:15
イエスが、かつてモーセに語られた神の言葉を引用された。もっとはっきり言えば、モーセに語られた神ご自身がいま、イエスの中に、イエスとして存在し、語っておられる。
かつてモーセに対してご自分を現された神は、いま、イエスにおいてご自分を現しておられるのです。
イエスを捕らえようとしてやって来た人々は、「わたしである」というイエスの言葉に圧倒されて地に倒れました（ヨハネ18:6）。
「わたしはある」と言われる神、「わたしである」と言われるイエスは、私たちを無力と失望から救い出し、しっかりと立たせ、主とともに歩ませてくださいます。
（2007/02/11）
2007年2月11日（日）顕現後第6主日
「祝福されよ、主に信頼する人は。主がその人のよりどころとなられる。」エレミヤ17：7
2月12日（月）
イエスは言われた。「一粒の麦は、地に落ちて死ななければ、一粒のままである。だが、死ねば、多くの実を結ぶ。」ヨハネ12:24
2月13日（火）
「わたしに仕えようとする者は、わたしに従え。わたしに仕える者がいれば、父はその人を大切にしてくださる。」ヨハネ12:26
2月14日（水）
「わたしは地上から上げられるとき、すべての人を自分のもとへ引き寄せよう。」ヨハネ12:32
2月15日（木）
「聖霊が、あなたがたにすべてのことを教え、わたしが話したことをことごとく思い起こさせてくださる。」ヨハネ14:26
2月16日（金）
「わたしは、平和をあなたがたに残し、わたしの平和を与える。心を騒がせるな。おびえるな。」ヨハネ14:27
2月17日（土）
「わたしにつながっていなさい。わたしもあなたがたにつながっている。」ヨハネ15:4
「祝福されよ、主に信頼する人は。主がその人のよりどころとなられる。」エレミヤ17：7
2月12日（月）
イエスは言われた。「一粒の麦は、地に落ちて死ななければ、一粒のままである。だが、死ねば、多くの実を結ぶ。」ヨハネ12:24
2月13日（火）
「わたしに仕えようとする者は、わたしに従え。わたしに仕える者がいれば、父はその人を大切にしてくださる。」ヨハネ12:26
2月14日（水）
「わたしは地上から上げられるとき、すべての人を自分のもとへ引き寄せよう。」ヨハネ12:32
2月15日（木）
「聖霊が、あなたがたにすべてのことを教え、わたしが話したことをことごとく思い起こさせてくださる。」ヨハネ14:26
2月16日（金）
「わたしは、平和をあなたがたに残し、わたしの平和を与える。心を騒がせるな。おびえるな。」ヨハネ14:27
2月17日（土）
「わたしにつながっていなさい。わたしもあなたがたにつながっている。」ヨハネ15:4
コリント�機。隠押В横供升横�
今日の旧約聖書（ネヘミヤ記8:2‐10）と福音書（ルカ4:14‐21）には一つの共通したところがあります。それは、聖書が朗読された、ということです。ネヘミヤ記では、聖書の朗読を聞いた人々は泣いていました。ルカ福音書では、イエスがナザレの会堂礼拝で聖書を朗読されました。朗読されたイエスに、会堂にいるすべての人の目が注がれました。聖書が、自分たちにとって特別なことを告げていると人々が感じたからです。
聖書の言葉が、それを聞いた人々の心を動かす。
聖書を目で読むことは大切です。けれども同時に、口で朗読し、耳で聞くことはとても大切です。本来聖書の言葉は、朗読され、耳で聞いて記憶され、体に刻みつけられて伝えられてきたものだからです。
イエスさまの心と体には聖書の言葉が浸透し、刻みつけられていたので、その言葉が、あの荒野の試練の時に生きて働いてサタンを退けたのです。
聖書の中には、神さまの言葉が詰まっています。それは伝えられ、聞かれることを待っています。
聖書の言葉は、朗読者の目にとまり、心に振動を起こします。その振動は朗読する人の声になって空気を動かします。空気の振動が聞く人の耳に達し、鼓膜を振動させます。それが、人の鼓膜を振動させるだけではなく、心を振動させるものとなってほしい。聖書の言葉が、私たちの口と耳をとおして、私たちの心に宿るものとなってほしい。
神の言葉は、私たちのうちに宿ることを願っておられます。それがクリスマスの出来事でした。
「言は肉となって、わたしたちの間に宿られた。」ヨハネ1:14
そこで今日は、いま、もう一度使徒書の言葉を聞きましょう。
「一つの部分が苦しめば、すべての部分が苦しみ、一つの部分が尊ばれれば、すべての部分が共に喜ぶのです。あなたがたはキリストの体であり、また、一人一人はその部分です。」コリント�� 12:26‐27
わたしたちはキリストの体。わたしたちを、キリストはご自分の体としておられる。キリストがわたしたちをご自分の体としておられる。するとどういうことになるのでしょうか。わたしたちが痛いとき、キリストが痛まれる。わたしたちが苦しいとき、キリストが苦しまれる。わたしたちが病をかかえるとき、キリストが病んでくださるのです。
わたしが尊ばれれば、キリストはご自分が尊ばれたと感じられる。わたしたちが屈辱を受けたとき、キリストは自分が屈辱を受けたと感じられる。
わたしたちがキリストの体であるとは、そういうことです。キリストのわたしたちに対する愛があまりに深いので、キリストとわたしたちは一体になってしまわれたのです。
俗説にこういうのがあります。「新約聖書の神は愛の神であり、旧約聖書の神は恐ろしい審判の神である」と。たしかに強調点の違いはあります。しかし新約聖書の神は愛の神であるとともに厳しい神であり、旧約聖書の神は厳しい神であるとともに限りない愛の神です。
旧約聖書・ゼカリヤ書にこういう神の呼びかけがあります。
「あなたたちに触れる者は、わたしの目の瞳に触れる者だ。」2:12
わたしたちは神さまにとって、ご自身の目のように大切なもの。わたしたちを損い傷つける者があるとすれば、それは神の目の瞳を傷つける者なのだ、と言われるのです。今日のコリントの手紙に通じます。
「一つの部分が苦しめば、すべての部分が苦しみ、一つの部分が尊ばれれば、すべての部分が共に喜ぶのです。あなたがたはキリストの体であり、また、一人一人はその部分です。」
わたしたちはそれぞれがキリストの体の部分部分です。キリストがおられなければ、わたしたちは赤の他人です。気の合う人もいれば気の合わない人もいる。通じる人もいれば通じない人もいる。けれども、わたしたちがキリストの体であり、一人一人がその部分部分なのであれば、助け合うことができるし、事実助け合う。一つの部分が苦しめばすべての部分が苦しむ。一つの部分が尊ばれれば、すべての部分が共に喜ぶ。部分部分であるわたしたちをキリストが組み合わせて、一つにして協力させてくださるのです。
キリストなしではこれは起こらない。キリストがわたしたちの中心に存在してくださるので、わたしたちは痛みと労苦と喜びを分かち合うのです。
この体は何をするのでしょうか。この体は生きて働く。キリストの体は生きて働くのです。何のために何を目指して働くのか。神の国の実現に向かって働くのです。平和の実現に向かって働くのです。キリストが働かれるので、わたしたちも働く。キリストの体であるわたしたちは、愛と正義と平和の神の国のために働きます。
この1年のわたしたちの教会の歩みが、神の国の実現に向けて働くキリストの体としての歩みとなりますように。
（2007/01/21 京都聖ステパノ教会）
今日の旧約聖書（ネヘミヤ記8:2‐10）と福音書（ルカ4:14‐21）には一つの共通したところがあります。それは、聖書が朗読された、ということです。ネヘミヤ記では、聖書の朗読を聞いた人々は泣いていました。ルカ福音書では、イエスがナザレの会堂礼拝で聖書を朗読されました。朗読されたイエスに、会堂にいるすべての人の目が注がれました。聖書が、自分たちにとって特別なことを告げていると人々が感じたからです。
聖書の言葉が、それを聞いた人々の心を動かす。
聖書を目で読むことは大切です。けれども同時に、口で朗読し、耳で聞くことはとても大切です。本来聖書の言葉は、朗読され、耳で聞いて記憶され、体に刻みつけられて伝えられてきたものだからです。
イエスさまの心と体には聖書の言葉が浸透し、刻みつけられていたので、その言葉が、あの荒野の試練の時に生きて働いてサタンを退けたのです。
聖書の中には、神さまの言葉が詰まっています。それは伝えられ、聞かれることを待っています。
聖書の言葉は、朗読者の目にとまり、心に振動を起こします。その振動は朗読する人の声になって空気を動かします。空気の振動が聞く人の耳に達し、鼓膜を振動させます。それが、人の鼓膜を振動させるだけではなく、心を振動させるものとなってほしい。聖書の言葉が、私たちの口と耳をとおして、私たちの心に宿るものとなってほしい。
神の言葉は、私たちのうちに宿ることを願っておられます。それがクリスマスの出来事でした。
「言は肉となって、わたしたちの間に宿られた。」ヨハネ1:14
そこで今日は、いま、もう一度使徒書の言葉を聞きましょう。
「一つの部分が苦しめば、すべての部分が苦しみ、一つの部分が尊ばれれば、すべての部分が共に喜ぶのです。あなたがたはキリストの体であり、また、一人一人はその部分です。」コリント�� 12:26‐27
わたしたちはキリストの体。わたしたちを、キリストはご自分の体としておられる。キリストがわたしたちをご自分の体としておられる。するとどういうことになるのでしょうか。わたしたちが痛いとき、キリストが痛まれる。わたしたちが苦しいとき、キリストが苦しまれる。わたしたちが病をかかえるとき、キリストが病んでくださるのです。
わたしが尊ばれれば、キリストはご自分が尊ばれたと感じられる。わたしたちが屈辱を受けたとき、キリストは自分が屈辱を受けたと感じられる。
わたしたちがキリストの体であるとは、そういうことです。キリストのわたしたちに対する愛があまりに深いので、キリストとわたしたちは一体になってしまわれたのです。
俗説にこういうのがあります。「新約聖書の神は愛の神であり、旧約聖書の神は恐ろしい審判の神である」と。たしかに強調点の違いはあります。しかし新約聖書の神は愛の神であるとともに厳しい神であり、旧約聖書の神は厳しい神であるとともに限りない愛の神です。
旧約聖書・ゼカリヤ書にこういう神の呼びかけがあります。
「あなたたちに触れる者は、わたしの目の瞳に触れる者だ。」2:12
わたしたちは神さまにとって、ご自身の目のように大切なもの。わたしたちを損い傷つける者があるとすれば、それは神の目の瞳を傷つける者なのだ、と言われるのです。今日のコリントの手紙に通じます。
「一つの部分が苦しめば、すべての部分が苦しみ、一つの部分が尊ばれれば、すべての部分が共に喜ぶのです。あなたがたはキリストの体であり、また、一人一人はその部分です。」
わたしたちはそれぞれがキリストの体の部分部分です。キリストがおられなければ、わたしたちは赤の他人です。気の合う人もいれば気の合わない人もいる。通じる人もいれば通じない人もいる。けれども、わたしたちがキリストの体であり、一人一人がその部分部分なのであれば、助け合うことができるし、事実助け合う。一つの部分が苦しめばすべての部分が苦しむ。一つの部分が尊ばれれば、すべての部分が共に喜ぶ。部分部分であるわたしたちをキリストが組み合わせて、一つにして協力させてくださるのです。
キリストなしではこれは起こらない。キリストがわたしたちの中心に存在してくださるので、わたしたちは痛みと労苦と喜びを分かち合うのです。
この体は何をするのでしょうか。この体は生きて働く。キリストの体は生きて働くのです。何のために何を目指して働くのか。神の国の実現に向かって働くのです。平和の実現に向かって働くのです。キリストが働かれるので、わたしたちも働く。キリストの体であるわたしたちは、愛と正義と平和の神の国のために働きます。
この1年のわたしたちの教会の歩みが、神の国の実現に向けて働くキリストの体としての歩みとなりますように。
（2007/01/21 京都聖ステパノ教会）
出エジプト記３４：９
新しい年を、神さまへの礼拝をもって始めることができることを感謝します。
今日、心に刻みたいのは、本日主イエス命名の日の旧約聖書日課に選ばれた出エジプト記第34章9節の言葉です。
「主よ、わたしたちの中にあって進んでください。」
この新しい年。私たちの歩みとともに神さまが歩んでくださいますように。
「主よ、わたしたちの中にあって進んでください。」
この言葉はモーセの祈りの言葉です。
遠い昔、イスラエルの民は奴隷の家と言うべきエジプトを脱出し、約束の地を目指して荒野の旅を続けました。シナイ山、別名ホレブというところで、神はご自身を現し、イスラエルの民に対して「わたしはあなたの神、あなたがたの神である」と宣言し、「今までそうであったようにわたしはあなたがたを愛して、必ず守り導く」と約束されました。そして「あなたがたは必ずわたしに聞き従いなさい」と命じられました。イスラエルの民は「あなたは私たちの神。必ずあなたに聞き従います」と約束しました。これが神とイスラエルの間の契約です。これは命をかけた真実の約束だったはずでした。
モーセは神に呼ばれて、十戒を神からいただくためにひとり山に登りました。
ところがモーセの帰りが遅いためにイスラエルの人々は疑いを起こし、「モーセはどうなったか分からないから自分たちの神をつくってくれ」とモーセの兄、アロンに要求し、アロンはその要求を飲んで金の子牛の像をつくりました。人々はこれを拝み、飲んで戯れました。
そこにモーセが神からいただいた十戒を刻んだ石の板を手にして戻ってきます。モーセは憤りのあまり、神からいただいた石の板を砕き、また金の子牛の像を粉々に砕きました。
モーセは、イスラエルの民の犯した罪は死に値すると感じて神の前に行き、切なるとりなしの祈りをしました。
「ああ、この民は大きな罪を犯し、金の神を造りました。今、もしもあなたが彼らの罪をお赦しくださるのであれば……。もし、それがかなわなければ、どうかこのわたしをあなたが書き記された書の中から消し去ってください。」出エジプト記32:31‐32
モーセは人々の罪を、自分の命でつぐなおうとしたのです。
神はモーセに、このイスラエルの民を約束の地に導いて行くように言われました。けれども「わたしはあなたがたの間にあって上ることはしない」と言われました。一緒に行けば、イスラエルがまた大きな罪を犯せば、イスラエルを滅ぼしてしまうことになるだろうから、と言われるのです。
神が、「約束の地まで旅するイスラエルの人々と一緒には行かない」と言われたことが伝わると、人々は嘆き悲しみました。神さまに見捨てられることがどんなに恐ろしいことかがやっと分かったのです。人々は身につけていた飾りをはずして、身を慎みました。
モーセは、ふたたび神の前に出て、嘆願しました。どんなことがあってもこの民を見捨てないように、どうしても神さまに一緒に行ってほしいと切に祈りました。
「もし、あなた御自身が行ってくださらないのなら、わたしたちをここから上らせないでください。一体何によって、わたしとあなたの民に御好意を示してくださることが分かるでしょうか。あなたがわたしたちと共に行ってくださることによってではありませんか。」33:15‐16
神はもう一度、モーセにただひとりで山に登るように言われ、そこでもう一度十戒を刻んだ石の板を授けられました。
そのときの言葉が今日の旧約聖書日課です。
「モーセは急いで地にひざまずき、ひれ伏して、言った。『主よ、もし御好意を示してくださいますならば、主よ、わたしたちの中にあって進んでください。確かにかたくなな民ですが、わたしたちの罪と過ちを赦し、わたしたちをあなたの嗣業として受け入れてください。』」34:8‐9
こうして神はモーセの命をかけたとりなしの祈りを受け入れ、40年の間イスラエルの民を守り導かれたのです。
「主よ、わたしたちの中にあって進んでください。」
この祈りを、今年の初めの私たちの祈りとしたいと願います。神さまが私たちの中におられて、一緒に歩んでくださるように。
でも、もし私たちが大きな過ちを犯して、「神さまが一緒に行かない」と言われるようなことはないでしょうか。そのようなときに、だれが私たちのためにモーセに代ってとりなしをしてくれるのでしょうか。
それがイエス・キリストです。
イエス・キリストが私たちのためにとりなしてくださる。ご自分のいのちをかけて、私たちのがわに立ち、私たちのために祈ってくださるのです。イエス・キリストのとりなしはモーセにはるかにまさります。事実この方は、十字架の上でご自分の命を差し出してくださったのです。
今日は主イエス命名の日です。降誕の後、8日目に割礼を受けてイエスと名づけられた、その記念日です。
イエスは「主は救い」という意味です。わたしは神の救いをもって、必ずあなたがたと共にいて、あなたがたと一緒に進む──この約束をその名が現しています。天使が告げた「インマヌエル」とはこのことです。
イエスの名を呼んで歩みましょう。この年、この名を心に刻んで進みましょう。神さまが喜ばれる歩みをしましょう。
イエスの名を呼んで進む私たちの道は天国に至る道です。この混乱と闇の世界の中に、私たちは一筋の道を通す。神の国に至る道を私たちはこの世界の中に通すのです。
主イエスが一緒に行かれる。私たちも、主イエスとともに歩むことを決意して言いましょう。
「主よ、わたしたちの中にあって進んでください。」
（2007/01/01 京都聖三一教会）
新しい年を、神さまへの礼拝をもって始めることができることを感謝します。
今日、心に刻みたいのは、本日主イエス命名の日の旧約聖書日課に選ばれた出エジプト記第34章9節の言葉です。
「主よ、わたしたちの中にあって進んでください。」
この新しい年。私たちの歩みとともに神さまが歩んでくださいますように。
「主よ、わたしたちの中にあって進んでください。」
この言葉はモーセの祈りの言葉です。
遠い昔、イスラエルの民は奴隷の家と言うべきエジプトを脱出し、約束の地を目指して荒野の旅を続けました。シナイ山、別名ホレブというところで、神はご自身を現し、イスラエルの民に対して「わたしはあなたの神、あなたがたの神である」と宣言し、「今までそうであったようにわたしはあなたがたを愛して、必ず守り導く」と約束されました。そして「あなたがたは必ずわたしに聞き従いなさい」と命じられました。イスラエルの民は「あなたは私たちの神。必ずあなたに聞き従います」と約束しました。これが神とイスラエルの間の契約です。これは命をかけた真実の約束だったはずでした。
モーセは神に呼ばれて、十戒を神からいただくためにひとり山に登りました。
ところがモーセの帰りが遅いためにイスラエルの人々は疑いを起こし、「モーセはどうなったか分からないから自分たちの神をつくってくれ」とモーセの兄、アロンに要求し、アロンはその要求を飲んで金の子牛の像をつくりました。人々はこれを拝み、飲んで戯れました。
そこにモーセが神からいただいた十戒を刻んだ石の板を手にして戻ってきます。モーセは憤りのあまり、神からいただいた石の板を砕き、また金の子牛の像を粉々に砕きました。
モーセは、イスラエルの民の犯した罪は死に値すると感じて神の前に行き、切なるとりなしの祈りをしました。
「ああ、この民は大きな罪を犯し、金の神を造りました。今、もしもあなたが彼らの罪をお赦しくださるのであれば……。もし、それがかなわなければ、どうかこのわたしをあなたが書き記された書の中から消し去ってください。」出エジプト記32:31‐32
モーセは人々の罪を、自分の命でつぐなおうとしたのです。
神はモーセに、このイスラエルの民を約束の地に導いて行くように言われました。けれども「わたしはあなたがたの間にあって上ることはしない」と言われました。一緒に行けば、イスラエルがまた大きな罪を犯せば、イスラエルを滅ぼしてしまうことになるだろうから、と言われるのです。
神が、「約束の地まで旅するイスラエルの人々と一緒には行かない」と言われたことが伝わると、人々は嘆き悲しみました。神さまに見捨てられることがどんなに恐ろしいことかがやっと分かったのです。人々は身につけていた飾りをはずして、身を慎みました。
モーセは、ふたたび神の前に出て、嘆願しました。どんなことがあってもこの民を見捨てないように、どうしても神さまに一緒に行ってほしいと切に祈りました。
「もし、あなた御自身が行ってくださらないのなら、わたしたちをここから上らせないでください。一体何によって、わたしとあなたの民に御好意を示してくださることが分かるでしょうか。あなたがわたしたちと共に行ってくださることによってではありませんか。」33:15‐16
神はもう一度、モーセにただひとりで山に登るように言われ、そこでもう一度十戒を刻んだ石の板を授けられました。
そのときの言葉が今日の旧約聖書日課です。
「モーセは急いで地にひざまずき、ひれ伏して、言った。『主よ、もし御好意を示してくださいますならば、主よ、わたしたちの中にあって進んでください。確かにかたくなな民ですが、わたしたちの罪と過ちを赦し、わたしたちをあなたの嗣業として受け入れてください。』」34:8‐9
こうして神はモーセの命をかけたとりなしの祈りを受け入れ、40年の間イスラエルの民を守り導かれたのです。
「主よ、わたしたちの中にあって進んでください。」
この祈りを、今年の初めの私たちの祈りとしたいと願います。神さまが私たちの中におられて、一緒に歩んでくださるように。
でも、もし私たちが大きな過ちを犯して、「神さまが一緒に行かない」と言われるようなことはないでしょうか。そのようなときに、だれが私たちのためにモーセに代ってとりなしをしてくれるのでしょうか。
それがイエス・キリストです。
イエス・キリストが私たちのためにとりなしてくださる。ご自分のいのちをかけて、私たちのがわに立ち、私たちのために祈ってくださるのです。イエス・キリストのとりなしはモーセにはるかにまさります。事実この方は、十字架の上でご自分の命を差し出してくださったのです。
今日は主イエス命名の日です。降誕の後、8日目に割礼を受けてイエスと名づけられた、その記念日です。
イエスは「主は救い」という意味です。わたしは神の救いをもって、必ずあなたがたと共にいて、あなたがたと一緒に進む──この約束をその名が現しています。天使が告げた「インマヌエル」とはこのことです。
イエスの名を呼んで歩みましょう。この年、この名を心に刻んで進みましょう。神さまが喜ばれる歩みをしましょう。
イエスの名を呼んで進む私たちの道は天国に至る道です。この混乱と闇の世界の中に、私たちは一筋の道を通す。神の国に至る道を私たちはこの世界の中に通すのです。
主イエスが一緒に行かれる。私たちも、主イエスとともに歩むことを決意して言いましょう。
「主よ、わたしたちの中にあって進んでください。」
（2007/01/01 京都聖三一教会）
2007年2月4日（日）顕現後第5主日
ギデオンはそこに主のための祭壇を築き、「平和の主」と名付けた。士師記6：24
2月5日（月）
イエスは言われた。「わたしの言葉にとどまるならば、あなたたちは真理を知り、真理はあなたたちを自由にする。」ヨハネ8:31‐32
2月6日（火）
「わたしたちは、わたしをお遣わしになった方の業を、まだ日のあるうちに行わねばならない。ヨハネ9:4
2月7日（水）
「わたしが来たのは、羊が命を受けるため、しかも豊かに受けるためである。」ヨハネ10:10
2月8日（木）
「わたしは良い羊飼いである。わたしは自分の羊を知っており、羊もわたしを知っている。」ヨハネ10:14
2月9日（金）
「わたしは復活であり、命である。わたしを信じる者は、死んでも生きる。」ヨハネ11:25
2月10日（土）
「わたしは地上から上げられるとき、すべての人を自分のもとへ引き寄せよう。」ヨハネ12:32
ギデオンはそこに主のための祭壇を築き、「平和の主」と名付けた。士師記6：24
2月5日（月）
イエスは言われた。「わたしの言葉にとどまるならば、あなたたちは真理を知り、真理はあなたたちを自由にする。」ヨハネ8:31‐32
2月6日（火）
「わたしたちは、わたしをお遣わしになった方の業を、まだ日のあるうちに行わねばならない。ヨハネ9:4
2月7日（水）
「わたしが来たのは、羊が命を受けるため、しかも豊かに受けるためである。」ヨハネ10:10
2月8日（木）
「わたしは良い羊飼いである。わたしは自分の羊を知っており、羊もわたしを知っている。」ヨハネ10:14
2月9日（金）
「わたしは復活であり、命である。わたしを信じる者は、死んでも生きる。」ヨハネ11:25
2月10日（土）
「わたしは地上から上げられるとき、すべての人を自分のもとへ引き寄せよう。」ヨハネ12:32
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井田 泉
奈良基督教会牧師
親愛幼稚園園長
富坂キリスト教センター・日韓キリスト教関係史研究会主事
聖公会平和ネットワーク共同代表
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