
風が吹いて
風がどこから吹いてきて
どこへ吹かれていくのか。
風が吹いているが
わたしの苦しみには理由がない。
わたしの苦しみには理由がないのか。
ただひとりの女を愛したこともない。
時代を悲しんだこともない。
風がしきりに吹いているが
わたしの足は岩の上に立っている。
川の水が絶え間なく流れているが
わたしの足は丘の上に立っている。
바람이 불어
바람이 어디로부터 불어와
어디로 불려 가는 것일까,
바람이 부는데
내 괴로움에는 理由가 없다.
내 괴로움에는 理由가 없을까.
단 한 女子를 사랑한 일도 없다.
時代를 슬퍼한 일도 없다.
바람이 자꼬 부는데
내 발이 반석 우에 섰다.
강물이 자꼬 흐르는데
내 발이 언덕 우에 섰다.
1941.6.2
(韓国語本文は『天と風と星と詩』初版(1948)による。)
理由なく苦しんでいるような自分がいます。
時代を悲しまず、時代に責任を持って生きていないように感じる自分がいます。
けれども彼は問い直します。「わたしの苦しみには理由がないのか。」
むしろ彼は、時代の風にさらされつつ、時代に抗い、自分の使命に忠実に生きようと決意しています。
自分に対する不足感、不充足感を持ちつつ、しかし後半の4行で転換が起こります。彼は確固として岩(盤石)に立っているのです。
直訳すれば「(岩の上に、丘の上に)立った」なのですが、決意して立ち、現在しっかりと立ち続けているという印象を受けたので、「立っている」と訳してみました。
尹東柱、延禧専門学校4年、満23歳。
(訳・井田 泉)