うつに悩む人が多い。

 うつから自死に至る悲しい場合も身近に経験した。

 私自身がうつの経験者なので他人事とは思えない。
 人の役に立つならいずれ私の経験を詳しく書きたいと思っているが、いまは少しだけ。

<参考になった本>

笠原 嘉『軽症うつ病』講談社現代新書
 真っ先に勧めたい本。何度も読んだ。とても役に立った。

笠原 嘉『不安の病理』岩波新書
 これは古い本なので手に入れにくいかもしれない。うつに限らず、心の不調に苦しむ人に有益。この著者のものはとてもよいと思う。

竹脇無我『凄絶な生還──うつ病になってよかった』マキノ出版、2003年
 俳優の体験記。人の体験を知ることはすぐに自分の解決にならないとしても支え、慰めになる。

ピート・C・カイパー『うつ、その深き淵より──ある精神科医の闘病記録』創元社
 本格的な本。むつかしいがとても良かった。

これらとは別に聖書。特に旧約聖書・詩編は離せなかった。

また旧約聖書・出エジプト記の次の言葉をずっと頼りにしていた。

「わたしはあなたをいやす主である。」15:26


<病と癒しの三つのレベル>

1. 身体

 散歩、昼寝、ぼーっとすることは大変よい。
 景色を見ること、木、風、光……

2. 心(魂)

 急がないこと。
 精神科(神経科・心療内科)にかかること、薬を服用することを恐れない。腹痛に腹痛の薬を飲むのと同じ。
 精神科では最初は詳しく話を聞いてくれるが、後はたいてい状態を聞いて薬を処方してくれる程度。しかしこれが大事。
 心の深い話を継続的に丁寧に聞いてもらうには精神科ではなく、カウンセリングがよいと思われる。

3. 霊

 これは心と連続しているが、特に信仰と関わる領域。
 信仰者のいやしは最終的にこのレベルが重要になる。これは医師の範囲を超える。

 信仰者の中には「医者にはかからない。信仰でなおす」という人がまれにいるが、それは間違っている。次の聖書の言葉を聞こう。

 旧約聖書続編・シラ書第38章から

「医者をその仕事のゆえに敬え。主が医者を造られたのだから。」
「医者は薬によって人をいやし、痛みを取り除く。」

「子よ、病気になったら放置せず、主に祈れ。
そうすれば、主は治してくださる。」
「その上で、医者にも助けを求めよ。主が医者を造られたのだから。彼を去らせるな。お前には彼が必要なのだ。」

「医者もまた主に祈り求めているのだ。
病人の苦しみを和らげ、命を永らえさせる治療に成功することを。」

 神が人間の破れを引き受け、癒してくださる。聖書からその呼びかけを聞くことができる。
 
 うつ状態のときはその呼びかけを聞くこと自体が困難になるが、それでも聖書の言葉は支えとなる。

「恐れるな、わたしはあなたを贖(あがな)う。あなたはわたしのもの。わたしはあなたの名を呼ぶ。」イザヤ43:1

「わたしはあなたを固くとらえて言った。あなたはわたしの僕、わたしはあなたを選び、決して見捨てない。」イザヤ41:9

「山が移り、丘が揺らぐこともあろう。
しかし、わたしの慈しみはあなたから移らず、わたしの結ぶ平和の契約が揺らぐことはないと、あなたを憐れむ主は言われる。」イザヤ54:10

「わたしは疲れた魂を潤し、衰えた魂に力を満たす。」エレミヤ31:25


<周囲の人への短い助言>

1. 時間は長くかかるが、必ず回復すると信じていること。
 苦しんで忍耐していた年月が長いほど時間を要するのは当然。

2. 励ましは禁物。まして叱ったりとがめたりすることはいけない。「がんばれ」などと言ってはならない。がんばり過ぎてうつになったのだから、それを言われると身の置き所がなくなる。

3. 問い詰めたり、説明を求めたりしない。ゆるやかに、ある程度距離をおいて支えている関係がよい。周りが深刻になりすぎないのがよい。

4. 祈って支えていることが長期的に大きな力になる。

5. 信頼できる人に助言を求めるのはよい。しかし「こうすればなおる」式のものは、宗教・非宗教を問わず危うい。

6. 周りの人自身が思い詰めず、自分のよりどころをもってしっかりしていたい。