2017年09月24日

ペメトレキセド維持療法を中止する理由と予後

Assessment of interfering factors and clinical risk associated with discontinuation of pemetrexed maintenance therapy in advanced non-squamous non-small cell lung cancer.

Shen L et al.
Lung Cancer. 2017 Sep;111:43-50. Epub 2017 Jul 4.
PMID: 28838396

Abs of abs.
プラチナベースの化学療法に続くペメトレキセドによる維持療法は、非小細胞肺癌における標準治療である。しかし実臨床における維持療法の中止は残された課題である。今回はペメトレキセド維持療法の中止に関係するリスク因子について考察した。2011-2015年で非小細胞非扁平上皮肺癌でペメトレキセド維持療法を受けた患者を後ろ向き解析した。患者背景、PS、奏効と毒性についてデータ収集を行った。ペメトレキセド維持療法の中止について原因をまとめ、無増悪生存期間と全生存期間についても検討した。220人が対象となり132人(60%)が病勢進行まで維持療法を継続していた。維持療法開始の時点で、60歳を超えている(P<0.001)、PS2(P=0.005)、維持療法中のグレード3,4毒性の出現が中止と関連していた。中止理由は毒性関連(39.8%)、頻回の来院(17.0%)、費用(13.6%)、患者希望(26.1%)、疼痛コントロールの失敗(3.4%)であった。無増悪生存期間に関係していたのは、単変量解析おいて維持療法開始時のPS0,1(5.6ヶ月対4.3ヶ月; P=0.022)、ペメトレキセド維持療法継続(5.6ヶ月対4.3ヶ月;P<0.001)であった。このペメトレキセド維持療法の継続は活性型遺伝子変異とPS0,1とともに生存期間の改善を示し(19.2ヶ月対16.8ヶ月)、多変量解析でも全生存期間の改善に寄与していた(ハザード比1.486[1.050-2.104; P=0.025])。本研究から、ペメトレキセド維持療法の中止は実臨床でよく見られるが、生存延長の利益があることから、耐えうる患者はペメトレキセド維持療法を病勢進行まで続けるべきであることが示唆される。

感想
実地臨床でペメトレキセド維持療法が広く普及し定着しています。ガイドライン通り、非小細胞非扁平上皮肺癌でドライバー変異が無く、PD-L1<50%でPS良好であれば、シスプラチン/カルボプラチン+ペメトレキセド+/-ベバシズマブが選択されることが殆どです。ペメトレキセド維持療法は実地臨床では、3週間隔が4週間隔になったり、ビタミンB12の間隔が合わなかったりとさまざまな問題が出てきます。それでも継続できますが、中止理由として多いのは貧血、倦怠感との印象を持っています。今回挙げられている理由は、多い順に患者希望、頻回の来院、費用、貧血、倦怠感、好中球減少、肝機能異常の順でした。この「患者希望」については、もう少し詳しく知りたいところです。本文ではtreatement-free "holiday"を希望する人がいると書かれてあります。この理由について、患者教育不足や維持療法の意義を伝えきれていないからと考察されています。しかし背景に倦怠感や費用など、直接的な理由が隠れていないでしょうか。今回のサブグループ解析として、EGFR遺伝子変異/ALK変異が無い、または不明の患者群(n=186)における検討がされており、PFS、OSとも中止していない群が良好となっています。どちらかというとドライバー変異のある症例がどうであったか知りたいところです。生存曲線は全体でもサブグループでも同じような形をしています。ということは症例数が少ないこともあり、おそらく差が見られないと想像されます。これら次に有望な治療が控えている患者群において、毒性が強い場合にペメトレキセド維持療法を早々に切り上げてもよいかどうかは今後の検討課題になります。
さて有名なPARAMOUNT試験の最終解析[Paz-Ares LG JCO2013 PMID:23835707]ではペメトレキセド維持療法を行った群での生存期間中央値は13.9ヶ月と報告されています。今回の全体の結果はわかりませんが、悪かったペメトレキセド維持療法を中止したグループでも16.8ヶ月あり、単純比較で臨床試験より良い結果となっています。今回に限らず、最近比較的状態の良い患者さんがエントリーされる臨床試験より、実地のデータの方が全生存期間が良いのではないか?という仮説を持っています。正式なデータとして示せるものは何もないのですが、実地では状態により減量、延期が容易であること、併用薬に制限が少ないこと、腫瘍評価が甘く、結果として少しbeyond PDで投与する傾向にあることなどが可能性のあることかと思います。また臨床試験で良い結果でも毒性の強いレジメンは選ばれないこともあるかと思います。このようなことが総合して、最近の予後延長につながっているのではないかと考えています。新薬はともかくとして、治療の組み立て方はもっとレトロスペクティブな研究を推進していく必要があるかと思います。臨床的に利益の大きいことは、大規模ランダム化試験をしなくとも少数のレトロ研究ではっきりわかるのではないでしょうか。


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2017年09月17日

抗がん剤+放射線同時併用後のデュルバルマブ

Durvalumab after Chemoradiotherapy in Stage III Non-Small-Cell Lung Cancer.

Antonia SJ et al.
N Engl J Med. 2017 Sep 8[Epub ahead of print]
PMID: 28885881

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局所進行非小細胞肺癌において切除不能例では集学的治療(抗がん剤+放射線同時併用)を行っても多くの患者で再発する。今回の研究はⅢ期非小細胞肺癌で2サイクル以上のプラチナベースの抗がん剤+放射線治療を行い進行が見られなかった患者について、PD-L1抗体であるデュルバルマブとプラセボを地固めで比較した試験である。患者はランダムに2:1にデュルバルマブ(10mg/Kg)かプラセボを2週おきに12ヶ月まで投与された。試験薬は抗がん剤+放射線治療を行った後42日目までに投与開始された。プライマリーエンドポイントは無増悪生存期間(ブラインドされた独立中央判定)と全生存期間(中間解析は規定されない)である。副次項目としては12ヶ月あるいは18ヶ月時点での無増悪生存割合、奏効率、奏効期間、死亡あるいは遠隔転移出現までの時間と安全性である。713人の患者がランダム化され、709人が地固め治療を受けた(473人がデュルバルマブ、236人がプラセボであった)。無増悪生存期間中央値は16.8ヶ月[13.0-18.1]対5.6ヶ月[4.6-7.8]、ハザード比は0.52[0.42-0.65];P<0.001、12ヶ月での無増悪生存率は55.9%対35.3%、18ヶ月での無増悪生存率は44.2%対27.0%であった。奏効率は28.4%対16.0%、奏効持続期間もデュルバルマブが長かった。18ヶ月時点で72.8%対46.8%に反応の持続が見られた。また死亡あるいは遠隔転移出現までの時間は、23.2ヶ月対14.6ヶ月であった。よく見られた有害事象はグレード3,4の肺臓炎(4.4%対3.8%)であった。デュルバルマブで15.4%、プラセボで9.8%が有害事象で治療中止に至った。本研究の結論としてはデュルバルマブがプラセボに比較して有意に無増悪生存期間を延長し、副次評価項目ではデュルバルマブが良さそうであり、安全性の面では同等であった。

感想
WJTOG0105試験では登録時(抗がん剤+放射線治療開始直前)からのPFSがカルボプラチン+パクリタキセル+放射線→2コース追加で、9.5ヶ月でした[Yamamoto N JCO2010 PMID:20625120]。またOLCSG 0007[Segawa Y JCO2010 PMID:20530281]でSplitのドセタキセル+シスプラチン+放射線のPFSは13.4ヶ月でした。地固めまで含めると治療に2-3ヵ月はかかりますので、終了後のPFSとしては7-10カ月程度になるでしょう。
今回のプラセボ群は5.6ヶ月と少し短い印象ですが、放射線終了後の地固めがしっかり入っていない可能性も考えるとこんなものでしょう。そのような状況でデュルバルマブのPFS16.8ヵ月は驚異的です。患者背景は年齢中央値64歳、扁平上皮癌が45.7%、喫煙者が9割以上という構成です。特に日常臨床との乖離もなさそうです。サブグループ解析で目を引くのはPD-L1statusで、25%以上はハザード比0.41、25%未満のそれは0.59でやはりPD-L1は効果予測因子の面を持っていそうです。EGFR遺伝子変異陽性のハザード比は0.76[0.35-1.64]と1を跨いでおり、これもまた従来の傾向を反映しています。PFS曲線を見ると、デュルバルマブは18カ月を超えたあたりで4割強が生存のところから生存率が下がらなくなり、完治に導いている可能性もあります。後解釈ですが、喫煙者、扁平上皮癌が多くそして放射線直後とPD-L1抗体が効きそうな状況がそろっています。この試験の全生存期間も驚異的であることは間違いなく、承認されれば今後抗がん剤+根治放射線照射後にはデュルバルマブが標準治療となるのではないかと思います。


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2017年09月10日

初回治療としてのオシメルチニブの効果 FLAURA試験

Osimertinib vs standard of care (SoC) EGFR-TKI as first-line therapy in patients (pts) with EGFRm advanced NSCLC: FLAURA

S. Ramalingam et al.
ESMO 2017 Abstract LBA2-PR
09 Sep 2017

http://www.esmo.org/Conferences/ESMO-2017-Congress/Press-Media/Press-Releases/Osimertinib-Improves-Progression-free-Survival-in-Patients-with-EGFR-Mutated-Lung-Cancer

Abs of abs,
オシメルチニブは第3世代EGFR-TKIで、中枢神経系にも効果を示す。この薬はEGFR遺伝子変異とT790Mの耐性変異の両方を選択的に阻害する。前臨床あるいは初期の臨床データから、オシメルチニブはEGFR遺伝子変異のある非小細胞肺癌の初回治療として有効であることが期待される。FLAURA試験は、第Ⅲ相、2重盲検のランダム化試験で、EGFR遺伝子変異陽性の進行非小細胞肺癌において、初回治療におけるオシメルチニブと標準治療のEGFR-TKIとを効果と安全性において比較する試験である。適格基準は18歳以上、EGFR-TKI/全身抗がん剤の既往がないこと、19Del/L858Rの変異を持つことである。中枢神経系の病変は治療あるいはステロイドを投与され2週以上安定していれば許容された。患者はランダムに1:1でオシメルチニブ80㎎/dayまたは標準治療(SoC)のTKIとして、ゲフィチニブ250㎎またはエルロチニブ150㎎/dayに割り付けられた。層別化因子は遺伝子変異(19Del/L858R)、人種(アジア/非アジア人)である。プライマリーエンドポイントは無増悪生存期間である。国際共同試験であり556例が割り付けられ、背景因子はバランスが取れていた。内訳は女性64%/62%、アジア人62%/62%、19Del=57%/56%、L858R=35%/32%、中枢神経系転移19%/23%であった。プライマリーエンドポイントの無増悪生存期間はオシメルチニブ群(n=279)で18.9ヵ月[15.2-21.4]、SoC(n=277)で10.2ヵ月[9.6-11.1]、ハザード比0.46[0.37-0.57]; P<0.0001であった。奏効率は80%対76%、全生存期間のハザード比は0.63[0.45-0.88]だが両群とも中央値に到達していない。PFSの差は中枢神経系転移の有無を含めすべてのサブグループ間で認められていた。治療期間中央値は16.2ヵ月対11.5ヵ月で、主治医評価による有害事象はオシメルチニブ98%(G3以上34%)、SoC98%(同45%)、治療中止に至る有害事象は13%対18%であった。よく見られた毒性はオシメルチニブで下痢(58%、G3以上2%)、皮膚乾燥(32%、同1%未満)、一方SoCでは下痢(57%、同3%)、皮疹(48%、同5%)であった。本研究によりEGFR遺伝子変異陽性、進行非小細胞肺癌の初回治療において、オシメルチニブはリスク・ベネフィットで標準治療を上回った。

感想
ESMOのプレスリリースからの情報です。初回治療の小規模試験[Ramalingam SS JCO2017 PMID:28841389]や、先行していた既存のEGFR-TKIでT790M耐性となった[Mok TS NEJM2017 PMID:27959700]試験から十分予想されましたが、初回治療のオシメルチニブの有効性の証明がついになされました。先の小規模の試験では80㎎と160mgが投与され、80㎎群でのPFSは22.1ヵ月でした。それに比べるとやや物足りない感じもありますが、標準治療のTKIの方も10.2ヵ月あった上でハザード比0.46は大きく、決定的な差と言えます。実際の生存曲線など詳しいデータを入手できていないのでもう少し検討することは必要ですが、これでEGFR遺伝子変異陽性例の初回治療が変わることは間違いないでしょう。
話は変わりますが、少し前まではベバシズマブ追加といった「効果も高いが毒性も強い薬」が、生存を延長するか?が焦点でした。しかしALK変異におけるJ-ALEXおよびALEX試験では、「効果が高く毒性が少ない薬」が圧倒的にPFSを延長し、全生存期間も劣ることはなさそうであると示されました。私はALEX試験の発表を見るまで、このような良い薬の投与を後にとっておく「シークエンス治療」の可能性を支持していました。しかしALEX、FLAURAと2つの試験から、肺癌の治療においてはこの"Less toxic"であることが想像以上に重要であると感じます。したがって今は、効果が高く毒性が少ないのであれば先に使う方がよいと考えています。今回のFLAURA試験では年齢の情報がプレスリリースにはありませんが、日常臨床から感じる通り、EGFR遺伝子変異は高齢、超高齢の方も多いです。つまり初回治療のオシメルチニブのインパクトは日本においてさらに大きいものと考えられます。

*昨日(08 Sep)のDurvalumabの結果は、即日NEJMに掲載されていますが、本結果は今のところ出ていません・・・。


j82s6tbttvb at 07:30|PermalinkComments(0) 論文メモ