2017年01月15日

LUX-Lung3/6のリキッドバイオプシー

EGFR mutation detection in circulating cell-free DNA of lung adenocarcinoma patients: analysis of LUX-Lung 3 and 6.

Wu YL et al.
Br J Cancer. 2016 Dec 22. doi: 10.1038/bjc.2016.420. [Epub ahead of print]
PMID: 28006816

Abs of abs.
第Ⅲ相試験のLUX-Lung3/6(LL3/LL6)はEGFR遺伝子変異陽性例に対して行われた。今回は循環遊離細胞DNA(cfDNA)を使ってEGFR遺伝子変異を適切に同定できるか、またcfDNA陽性であることが予後に与える影響を検討した。前向きに腫瘍細胞と血液サンプルを採取し、アレル特異的定量リアルタイムPCRキットを用い遺伝子変異陽性について血清(LL3)と血漿(LL6)で検討した。cfDNAにおけるEGFR遺伝子変異は、血清で28.6%、血漿で60.5%に同定された。血中で遺伝子変異同定されることは、PS不良、転移巣の多さ、骨肝転移など背景として病勢が進行している場合と関連していた。cfDNA陽性群 (LL3:ハザード比0.35; P=0.0009; LL6:ハザード比0.25; P<0.0001) においても陰性群(LL3:ハザード比0.46; P<0.0001; LL6:ハザード比0.12; P<0.0001)においてもアファチニブは抗がん剤と比較してPFS延長を示していた。全生存に関するアファチニブの利益はcfDNA陽性に傾向として見られていた。血漿cfDNAはEGFR検査法として有望である。血中での変異の検出は、病勢進行、予後不良と関係していた。EGFR遺伝子変異陽性例へのアファチニブによる予後の改善は、血中に出る出ないにかかわらず見られていた。

感想
ここ数年で急速に血中循環腫瘍DNA測定(いわゆるliquid biopsy)が、急速に進んできました。現時点ではまだ臨床試験レベルで、これから検査法の標準化が進むのでしょう。つい先日、この1月5日から「T790M血漿検査結果の倫理提供」がアストラゼネカ社から行われるとの発表がありました。今回の論文はアファチニブの臨床試験における血液サンプルでの治療前のEGFR変異同定に関する検討です。ご存知の通り、LL3/6はアファチニブ対シスプラチン+ペメトレキセド/ゲムシタビンの比較試験で、その統合解析が議論されたものです。臨床試験ベースでは、これまでEUROTACでの検討が行われています[Karachaliou N JAMAOncol2015 PMID:26181014]。それによるとDel19とL858Rでは、血中に出るか出ないかで予後が変わり、Del19では血中に出た方が予後が良く、L858Rでは血中に出た方が予後が悪いというものでした。今回は何故か変異別に解析されてはいませんが、全体として血中で出ていると予後が悪くなっていました。今回の検討は、cfDNA陽性と陰性でそれぞれの試験で、アファチニブ群対抗がん剤の比較を行っています。最もハザード比が低いものが、LL6におけるcfDNA(-)でPFSハザード比0.12、OSハザード比0.59となりました。推測ですが、あまりにも腫瘍の勢いが強く血中にまで出てくると、TKIといえども抑えきれない部分が出てくるということでしょうか。この「血中で出ているものは予後が良くない」ことはオシメルチニブでもすでに示されています[Oxnard GR JCO2016 PMID:27354477]。これまでの主だった論文をざっと見ると、血中DNA陽性例はPFSが短く、OSも短い傾向にあるようです。臨床医として注意しなくてはならないのは、血液検査は組織検査に比較すれば、大いに簡便であるものの、それだけに頼ってはいけないということです。報告にもよりますがまだ血中の感度は満足がいくものではありません。組織のみT790Mが出ているものはより予後が良いので、再生検も欠かせないということです。しかしハードルが違いすぎ、一気にliquid biopsyに行くような気もします。


j82s6tbttvb at 01:30|PermalinkComments(0) 論文メモ 

2017年01月08日

既治療例に対しアテゾリズマブもドセタキセルを上回るが、使いどころを絞れるか

Atezolizumab versus docetaxel in patients with previously treated non-small-cell lung cancer (OAK): a phase 3, open-label, multicentre randomised controlled trial.

Rittmeyer A et al.
Lancet. 2016 Dec 12. [Epub ahead of print]
PMID: 27979383

Abs of abs.
アテゾリズマブはヒト化抗PD-L1モノクローナル抗体であり、PD-L1、PD-1阻害およびB7-1相互作用を持ち、抗腫瘍免疫増強作用がある。今回既治療非小細胞肺癌に対するドセタキセルとの比較を行い効果と安全性を評価した。
31ヵ国194施設におけるランダム化オープンラベル比較第Ⅲ相試験(OAK)として行った。患者は扁平上皮肺癌または非扁平上皮肺癌で測定可能病変を持ち、PS0か1の患者を登録した。患者はプラチナを含む1ないし2レジメンの治療をすでに受けている、ⅢBまたはⅣ期の非小細胞肺癌患者である。また自己免疫疾患や過去にドセタキセル、CD137、抗CTLA4、PD-L1、PD-1系統をターゲットとした治療も受けたものは除外されている。患者はランダムに1:1にアテゾリズマブ1200mg、またはドセタキセル75mg/m2を3週毎に投与されるよう割り付けられた。プライマリーエンドポイントはITT解析における生存率とPD-L1発現(これは腫瘍による発現でTC1/2/3、腫瘍浸潤の免疫細胞での発現でIC1/2/3に分けて解析した)である。第1回の解析は1225人中850人でなされた。2014-2015年で1225人が登録され、425人がアテゾリズマブに、425人がドセタキセルに割り付けられた。全生存期間はITT解析、PD-L1発現で分けたものいずれでもアテゾリズマブ群が長かった。ITT解析において、全生存期間中央値はアテゾリズマブ群13.8ヶ月、ドセタキセル群9.6ヶ月でハザード比0.73[0.62-0.87]であった。TC1/2/3またはIC1/2/3のいずれにおいてもアテゾリズマブ群がドセタキセル群を上回っていた(15.7ヶ月 vs 10.3ヶ月)。PD-L1が低発現、または測定できないグループ(TC0/IC0)でも、アテゾリズマブ群がドセタキセル群を上回っていた(12.6ヶ月 vs 8.9ヶ月)。また扁平上皮癌あるいは非扁平上皮癌いずれでも生存期間の改善は同程度であった(扁平上皮癌ハザード比0.73、非扁平上皮癌ハザード比0.73)。グレード3,4の毒性は少なく、アテゾリズマブ群で15%、ドセタキセル群で43%であった。ドセタキセル群で1名呼吸器感染で治療関連死が見られた。アテゾリズマブを使ったPD-L1標的治療において、OAK試験は最初の第Ⅲ相ランダム化試験の結果である。これはドセタキセルと比較して確実に全生存期間を延長し、許容範囲内の毒性であり、しかもPD-L1発現や組織型に依存しないことが示された。

感想
TC/ICのスコアは、TC3は50%以上、TC1は1%-49%となっています。なんとなく従来のニボルマブ、ペンブロリズマブのPD-L1染色の分類と似ています。一方ICのスコアの方は、IC3が10%以上、IC1が1-5%未満と、TCと少し違います。これは元々そんなに染まるものでは無いことに由来するようです。さて一般的にサブグループを細かく分けてしまうと検討が難しくなるのが普通です。今回も結局細かく分けた解析ではなく、TC3 or IC3といった腫瘍側もしくは浸潤細胞側の少なくとも一方に強発現、なんらかの発現、まったく無発現といった大まかなサブグループ解析になっています。どのようなステイタスであってもアテゾリズマブの延命効果があることは見て取れますが、腫瘍側あるいは細胞側のどちらの発現がカギになっているかの情報がありません。またPFSは補遺の方に回されています。これを見るとPFSの曲線は交差し先行薬と同じ傾向であることが示唆されます。これらPFSとOSの乖離は、いわゆるpseudoprogressionで説明されています。最も効果の高かったTC3/IC3のサブセットでもPFSハザード比0.63、OSハザード比0.41でした。殺細胞性抗がん剤の評価では通常PFSの方がハザード比は小さいので、従来のPFSの評価ではそもそも不適切といえます。また今回の染色での奏効率もTC3/IC3で31%、TC0/IC0で8%と、PD-L1発現が強いものの効果が高いという傾向です。しかし、これは従来通りで、目新しいICの染色を評価した結果、新たな情報が付加されたようには見えません。今後、アテゾリズマブも発売されるでしょう。この染色結果はどう生かされるのでしょう、また先行する2剤とどのように使い分けるのでしょうか。今回サブセット解析で、脳転移を有する例と、非喫煙者でもアテゾリズマブが良いことが示唆されており、この辺りで細かい使い分けが議論されるのかもしれません。ICはさておき、今回の試験結果から、PD-L1染色すべきなのか、私にはますますわからなくなって来ました。PD-L1染色は今年本格導入されるのは確実です。高額でリスクもある薬ですので、確実に患者さんの利益にするためにはなによりも臨床経験の蓄積が重要かと思います。これからは効いた症例も大事ですが、例えばPD-L1>50%で全く効かない症例などを持ち寄ると、案外早く「PD-L1以外の陰性予測因子」がよりはっきりとわかるかもしれません。


j82s6tbttvb at 01:30|PermalinkComments(0) 論文メモ 

2017年01月01日

論文を読み書きするのに必要な統計はどう学ぶか(私見) 1

皆さまあけましておめでとうございます。

若手医師にとって、統計を学ぶことは大きなテーマです。私は既に若手とは言えませんが、臨床試験を読む上で統計の知識は必須ですし、ケースレポート以外の論文を書く時に、どうしても必要になります。医学統計家に日常的に相談できる環境にある方はごく一部でしょう。私が見る限り、できるだけExcelで粘って、どうしてもできないものは、できる人に聞くという場合が多いようです。実際私もそうでした。はるか昔、私が学生であった頃、医学統計の講義があったかどうかすら記憶にありません。現在はそれなりにカリキュラムが組まれているようですが、動機の伴わない時でもあり、テスト勉強だけに終わっているようです。私は10年目あたりから必要性に迫られ、独学しました。皆、結局学び直すことになります。では、どう学ぶべきなのでしょうか。

現在はインターネット時代です。一番の近道は、下手な本を読むより、ICR臨床研究入門(https://www.icrweb.jp/)で講義を受けることです。この中の「臨床研究の基礎知識講座」には、講義とともにテストまでついています。これをすると終了証まで発行される丁寧なつくりになっています。これと、「生物統計基礎セミナー」の一部を見れば十分だと思います。現在の登録ユーザーは6万人を超えています。元はJCOGの臨床試験セミナーであることから税金も投入されており使わなければ損です。その他、断片的な情報であれば、youtubeもかなり参考になることがあります。しかしこれを超えるサイトはお目にかかったことがありません。

さて、統計は理解したとしても、実際に使う場面では大きな壁にぶち当たることになります(私はなりました)。高額の統計ソフトは買えないし、医局にあるソフトは使えないし・・・。エクセルではどうしてもできないことがあり、そもそもどの検定を使えば・・・。このあたりのことについてはまたの機会に書くことにしたいと思います。



j82s6tbttvb at 13:30|PermalinkComments(0) 研究する | 臨床から