2016年12月04日

RET融合遺伝子陽性肺癌の臨床的特徴

Clinicopathologic characteristics, genetic variability and therapeutic options of RET rearrangements patients in lung adenocarcinoma.

Song Z et al.
Lung Cancer. 2016 Nov;101:16-21.
PMID: 27794403

Abs of abs.
RET融合遺伝子は非小細胞肺癌の一部に見られる新しいドライバー変異である。しかしながらその頻度、臨床病理学的特徴、遺伝子変化の種類、治療選択肢についてはよくわかっていない。今回は615人の肺腺癌をもとにRET変異をRT-PCRで同定し、陽性例については次世代シークエンサー(NGS)解析とFISHを行った。またチミジル酸合成酵素(TS)mRNAレベルもRT-PCRで測定し、生存期間解析も行った。まずRT-PCRで12人のRET陽性患者が同定された。しかしそのうち1名はNGSとFISHでRET融合遺伝子が同定できなかった。従って11名(1.8%)が3種類の検査法でRET融合遺伝子を確認できたこととなった。内訳は6名が女性、5名は男性、年齢中央値は54歳で、lepedic優位の組織型が5例に見られた。RET融合のパターンとして9名がKIF5B-RETで、2名がCCDC6-RETであった。さらに4名は次世代シークエンサーで共存する他の遺伝子変異がみられ、それぞれ1名ずつにEGFR、MAP2K1、CTNNB1、AKT1変異を認めた。RET融合遺伝子陽性群と陰性群を比較すると、生存期間に大きな差はなく(58.1ヵ月 vs 52.0ヵ月 P=0.504)、4名の再発例に関しては初回のシスプラチン+ペメトレキセドの無増悪生存期間が7.5ヵ月であった。TSのmRNA解析はRET陽性例のほうが低かった(239±188×10^{-4} vs. 394±457×10^{-4}, P=0.019)。本研究から、中国人の肺腺癌において約1.8%にRET融合遺伝子変異が見られ、lepedic優位の組織型を示しTSレベルが低いといった特徴を示していた。おそらくRET陽性患者はペメトレキセド主体の化学療法の利益があるように思われる。

感想
RET陽性は約1%くらいといわれています。これまでRET融合遺伝子は、女性、非喫煙者に多いのではないかと言われてきました。ヨーロッパでの先行研究[Michels S JTO2016 PMID:26762747]では、KRAS/EGFR/ALKすべてに野生型の腺癌の2.2%に見つかり、喫煙者でも割と見られた上に、他の遺伝子変異(最多はTP53)との共存が多く見られたと報告されています。今回の結果でも性差は無さそうで、TSと組織型の検討が加えられているところが新しい点です。過去には胸水を使ったRT-PCRでRET陽性と判明した症例の検討から、7例中6例に組織型としてsolid優位が見られたとの報告があります。今回のlepedicは、肺胞置換型の発育を示す腺癌のパターンで、切除例においては比較的予後良好とされる群です。まだ症例数が少なく確定的とは言えませんが、私は次世代シークエンサーを使った解析に触れられる立場ではないので、既知の臨床背景を使った手がかりを大切にしたいと考えています。また臨床背景から標的分子を想像することはコスト面からも合理的です。
さてRET融合遺伝子は背景因子の解析よりも治療の方が進んでいます。日本のRET陽性肺癌に対するバンデタニブの第Ⅱ相試験(LURET試験)[Yoh K LancetRespirMed2016 PMID:2782561]では19名が登録され、奏効率47%、PFS4.7ヵ月と報告されています。またマルチターゲットであるカボザンチニブでの第Ⅱ相試験も行われ[Drilon A LancetOncol 22016 PMID:27825636]、26名が登録され、奏効率28%、PFS5.5ヵ月と報告されています。
最近、KRAS以外のドライバー変異の治療の進歩が加速していますが、まだまだ多くの患者が取り残されています。また最終的にすべての肺癌にドライバー変異が見つかるとも思えません。殺細胞性抗がん剤、放射線は究極のマルチターゲット治療とも言えます。まだまだ殺細胞性抗がん剤治療を使いこなす力が当面求められそうです。


j82s6tbttvb at 01:30|PermalinkComments(0) 論文メモ 

2016年11月27日

アファチニブ耐性後のT790M出現頻度は他薬と同じ

Acquired Resistance to First-Line Afatinib and the Challenges of Prearranged Progression Biopsies.

Campo M et al.
J Thorac Oncol. 2016 Nov;11(11):2022-2026.
PMID:27553514

Abs of abs.
不可逆的EGFR阻害薬であるアファチニブの耐性機序はよくわかっていない。今回は前向き臨床試験として、アファチニブ耐性機序のうちT790Mが占める割合を明らかにすることを目的に行われた。EGFR遺伝子変異陽性で、EGFR-TKIの投与歴がない患者をアファチニブ40mg/dayで投与した。登録時において、耐性獲得時の再生検のインフォームドコンセントが行われている。24人の患者が登録され、奏効率は58%[37-78]であった。無増悪生存期間中央値は11.4ヶ月、全生存期間中央値は20.8ヶ月であった。24人のうち23人に進行が見られ、14人に再生検が行われ、そのうち11検体で分子解析が可能であった。この11人のうち4人(36%[10.9-69.2])に、T790Mが見られた。本研究からT790Mは初回治療のアファチニブの耐性機序としてT790Mは、commonであるようだ。獲得耐性を鑑別していく上で、再生検は重要だが、本研究では同時に臨床状況あるいは手技的な問題により実現可能性に問題があることも示唆している。非侵襲的な遺伝子解析の方法の確立が望まれる。

感想
有名施設で行われた小規模な前向き研究です。研究仮説として、アファチニブにおけるT790M出現が少ないことを予想しています。通常のTKIでは50%程度であるのに対して、それより低いことを証明するためにサンプルサイズ設定を行っています。当初18例の設定で20%の出現率であったとしたら、その95%信頼区間は[6.4%-47.6%]となります。今回は思ったほど再生検ができず、予定より症例数を増やし24例にしたのですが、それでもうまく取れず結局少ない症例数で検討したようです。その内訳は、24人中2人がPDになる前に治療中止、1人は継続中でした。残りの21人中4人は中枢神経系のPDで、3人は病状が重すぎて再生検不適、そして残った14人のうちまともに組織が取れたのが11人という結果でした。つまり評価できる再生検組織が得られるのが、11/24=46%とほぼ半分、これが現実にかなり近い形であると思います。その意味では以前取り上げた日本の先進施設でのデータ[Nosaki K LungCancer2016 PMID:27794396]は7割と非常に良い成績といえます。さて当初の仮説「アファチニブでのT790Mの出現頻度は低いのか?」です。今回の結果は36%で、引用されているもう一つの検討[Wu SG Oncotarget2016 PMID:26862733]でも47.6%(20/42)と、極端に50%から離れることはないようです。現在、再生検の主な目的はT790Mを証明して、オシメルチニブの適応かどうか判断することにあります。私も何人かやってみましたが、なかなかうまく行きません。到底50%には届かないので気に病んでいましたが、今回のデータを見ると、そう簡単にはいかないことを痛感します。


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2016年11月20日

アファチニブの減量と効果、過量か過少か?

Effect of dose adjustment on the safety and efficacy of afatinib for EGFR mutation-positive lung adenocarcinoma: post hoc analyses of the randomized LUX-Lung 3 and 6 trials.

Yang JC, et al.
Ann Oncol. 2016 Nov;27(11):2103-2110.
PMID: 27601237

Abs of abs.
EGFR遺伝子変異陽性の非小細胞肺癌に対する初回治療として、アファチニブ40mg/dayが承認用量である。グレード3以上あるいはグレード2の遷延する治療関連毒性が出た場合、10㎎づつ減量し最低20㎎まで減量することが行われている。今回は2つの第Ⅲ相試験(LUX-Lung3/6)において、このように毒性に対し減量したことによる薬物動態と無増悪生存期間への影響を調査した。この2つの試験とはEGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺癌に対するLL3(グローバル)、LL6(中国、タイ、韓国)で、アファチニブ対抗がん剤治療の比較試験であった。すべてのアファチニブ治療患者(LL3,n=229;LL6,n=239)が事後解析に入れられている。アファチニブ減量前後での毒性の頻度と重症度が評価され、アファチニブ40㎎で継続されている症例と、30mgに減量された症例との血中濃度を比較した。無増悪生存期間については、最初の6カ月間で減量されている患者と、そうでないものとを比較した。この期間で減量が行われていたのはLL3で53.3%(122/229)、LL6で28%(67/239)であった。減量により毒性の頻度が減り、この傾向はアファチニブ血中濃度が高い集団に大きい傾向があった。Day43における30mg内服患者の計算上のアファチニブ濃度平均値は23.3ng/mlであったのに対し、40㎎継続群は22.8ng/mlであった。無増悪生存期間中央値は減量、非減量群とも同じであった(LL3=11.3ヵ月対11.0ヵ月(HR1.25[0.91–1.72])、LL6=12.3ヵ月対11.0ヵ月(HR1.00[0.69–1.46])。本研究から、薬剤耐性による用量調整をしても治療効果を落とすことはなく、アファチニブの毒性を減らす良い指標と考えられる。

感想
最近のTKIの話題は第Ⅲ世代の方へ移っていますが、今回は初回治療のアファチニブの減量についての重要なデータです。アファチニブは毒性(特に下痢)が強くなかなか使いにくい薬と言われています。今回は毒性により減量しても、効果は落ちないというデータですが、PFSを見ると、LL3では最初の6カ月の時点で減量した群のほうがずっと上にいます。またLL6では何回か交差していますが、差があるようには見えません。減量されやすい集団は体重が少ない(50Kg未満)で、特にLL3で日本からの登録患者は半分以上が減量されています。BMIはあまり減量される因子ではないように見えました。肝心のトラフの血中濃度は、day22の時点で、40㎎で維持した群と増量した群は平均値がほぼ同じで、減量した群の方がむしろ高くなっています。day43の時点ではほぼ同じです。つまり毒性は、アファチニブの血中濃度が高くなったことにより生じている可能性がうかがわれます。この血中濃度がむしろ高まっていることと、LL3において減量群がむしろPFSが良い傾向にあるということから、は毒性による減量が許容されることは当然ですが、毒性が出ない患者の場合、治療効果が十分出ていない可能性もあると考えることができます。薬は違いますが、NEJ002試験でのゲフィチニブ群での検討が過去に報告されており、減量した群の方がPFS、OSとも良い傾向にありました[Satoh H JTO2011 PMID:21681118]。現在、EGFR-TKIは耐性克服の方に関心が移っていますが、まだまだ足元で検討すべき課題がたくさんあるように思います。初回治療のアファチニブ用量についても、40㎎が多いのではないかという意見もあります。しかし今回の論文を見ると、毒性が少ない例についてはunder doseの可能性もあり個人差が大きいと思っておく必要があるかもしれません。遺伝子解析による薬剤選択は確かに大きいですが、選んだ薬のさらに個人の最適量の検討も重要な個別化医療と言えるでしょう。


j82s6tbttvb at 11:30|PermalinkComments(0) 論文メモ