2018年02月04日
ブログ移転のお知らせ
いつも「肺癌を勉強するブログ」をご愛読いただきありがとうございます。
2018年2月より以下のサイトに移転し、以後の追加はそちらで行っていきます。
肺癌を勉強するブログ
https://hs-life30.com/
移転の理由
これまで2013年1月14日から260余りの記事をupし、20万を超えるPVを頂きました。現在、私の備忘録として十分機能しており、この点ついては問題がありません。
しかし「大分での肺がん診療」様の記事の「ブログとネット広告」(2017/12/12)を拝読し、以前から気付いていたものの、当ブログにも私の忌み嫌う民間療法の広告が入ることが気になってきました。
本来は単なる備忘録であり、気にする必要はないのかもしれません。しかし現在では患者さんおよびご家族がネットで様々な治療を検索されます。一般向けには書いてはいない当ブログではありますが、検索結果として出てきて、そのような治療に結びついてしまった場合、結果として片棒を担ぐこととなり本意ではありません(むしろ止めたい)。
これを避ける手段はいくつかありますが、これを機に独自ドメインを取得し、レンタルサーバーで運営することといたしました。
今後とも当ブログをご愛読いただければ幸いです。
2018年2月より以下のサイトに移転し、以後の追加はそちらで行っていきます。
肺癌を勉強するブログ
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移転の理由
これまで2013年1月14日から260余りの記事をupし、20万を超えるPVを頂きました。現在、私の備忘録として十分機能しており、この点ついては問題がありません。
しかし「大分での肺がん診療」様の記事の「ブログとネット広告」(2017/12/12)を拝読し、以前から気付いていたものの、当ブログにも私の忌み嫌う民間療法の広告が入ることが気になってきました。
本来は単なる備忘録であり、気にする必要はないのかもしれません。しかし現在では患者さんおよびご家族がネットで様々な治療を検索されます。一般向けには書いてはいない当ブログではありますが、検索結果として出てきて、そのような治療に結びついてしまった場合、結果として片棒を担ぐこととなり本意ではありません(むしろ止めたい)。
これを避ける手段はいくつかありますが、これを機に独自ドメインを取得し、レンタルサーバーで運営することといたしました。
今後とも当ブログをご愛読いただければ幸いです。
j82s6tbttvb at 01:30|Permalink│Comments(0)│
2018年01月28日
ペメトレキセドの長期投与に伴う倦怠感
Dynamic change of fatigue of pemetrexed maintenance treatment in the JMEN trial.
Zhang L et al.
Lung Cancer. 2018 Jan;115:121-126.
PMID: 29290253
Abs of abs.
JMEN試験では、プラチナベースの初回治療後の進行非小細胞肺癌(NSCLC)患者の生存延長、無増悪生存期間の延長、ペメトレキセド維持療法開始からの全体的なQOLの維持が示された。しかし、ペメトレキセド群では非血液毒性毒性の中で倦怠感が最も多かった。今回の事後解析では、倦怠感の変化を報告する。扁平上皮および非扁平上皮非小細胞肺癌のサブグループにおいて、主治医報告の有害事象率およびその重症度をサイクル毎に分けて解析を行った。肺癌症状スケールを使い、QoLを100mmスケールでベースライン、さらに15mmごとに倦怠感をスケール化し評価した。倦怠感の悪化および悪化までの時間を分析した。薬物関連の倦怠感は、プラセボよりもペメトレキセドで多く見られた。薬物関連のグレード3,4の倦怠感も、ペメトレキセドにおいてプラセボよりも高かった。導入療法後のペメトレキセド維持療法の間の疲労の発生率は、累積曝露における変化は見られなかった。患者が報告のLCSSスコアに基づいて倦怠感が悪化した患者を見ると、その割合はパーセンテージは、2群間でサイクル1-10の期間同等であった。倦怠感の悪化までの時間は、全体におけるペメトレキセド群とプラセボ群の間で同じであった。しかし、東アジアの患者は、プラセボよりペメトレキセド群でより長い期間倦怠感が生じていた。今回の解析から、進行非小細胞肺癌においてプラセボと比較し、薬物関連倦怠感の発生率はペメトレキセド維持療法で高いものの、QoLは損なわないことが示唆された。
感想
この元研究のJMEN研究[Ciuleanu T Lancet2009 PMID:19767093]は、663人を対象にペメトレキセドの入っていない導入化学療法後、ペメトレキセドの維持療法をするしないを比較した研究です。その後研究は有名なPARAMOUNT試験となり、シスプラチン+ペメトレキセド→ペメトレキセド維持療法と進むわけです。最新のガイドラインでもnon-Sqの初回治療でPD-L1<50%、ドライバー変異がないものでは維持療法を含め標準治療として確立しています。となるとそれだけ実臨床の使用頻度も高く、主題である倦怠感はしばしば治療中断、延期の原因になっています。個人的な経験では、屈強な男性が強い倦怠感を訴え、高齢でやせた女性でも割と平気な人が多いような印象です。ただし今回は性差については言及されていません。
この倦怠感はCTCAEでもなかなか定義が難しく、グレード1,2が日常生活に支障ない程度、日常生活に支障が出ればグレード3と考えるのが通例です。今回の全体のペメトレキセド群ではグレード1,2が19.5%、グレード3,4が5.3%で、プラセボ群のそれは10%、0.5%でした。まt東アジア人のサブグループ解析では、それぞれ29.4%、1%でした。軽度ですが私たち東アジア人(今回は中国、韓国、台湾ですが)では出現頻度が高いようです。ただ回数を重ねるにつてこの頻度は減っていきます。慣れていくのかどうかは定かではありませんが、徐々に増強ということでもないようです。統計を取ったわけではありませんが、現在の非扁平上皮非小細胞肺癌の生存延長の大きな効果は、ペメトレキセドにより得られているのではないかと思っています。この中心となる薬剤についてはもう少しmodifyのデータがあってもよいのではないかと思っています。今回は臨床試験の後解析なので、これ以上はどうしようもないのかもしれませんが、倦怠感の軽減方法あるいは積極的に減量延期などがよいのかどうか、あるいは減量にそもそも倦怠感軽減の効果があるかなど追及すべき課題が多いように思います。
2018年01月21日
Tumor mutation burdenとPD-L1は、ICIの効果予測に両方とも重要
Molecular Determinants of Response to Anti-Programmed Cell Death (PD)-1 and Anti-Programmed Death-Ligand (PD-L)-Ligand 1 Blockade in Patients With Non-Small-Cell Lung Cancer Profiled With Targeted Next-Generation Sequencing.
Rizvi H et al.
J Clin Oncol. 2018 Jan 16[Epub ahead of print]
PMID: 29337640
Abs of abs.
免疫チェックポイント阻害剤(ICI)による進行性非小細胞肺癌の治療では、特定の集団において長期奏効および予後の改善が見られる。ICIの使用を最適化し、分子レベルでの奏効因子を特定する臨床的手段が必要である。特定部位に対する次世代シークエンシンス(NGS)は通常検査に下りては来ているが、ICIの奏効の予測因子としては同定された部位はない。今回は、詳細な臨床データおよび奏効のデータを進行非小細胞肺癌でPD-1阻害薬あるいはPD-L1阻害薬で治療した患者から収集し、特定部位のNGS(MSK-IMPACT)のデータと合わせ解析した。有効性は、RECISTver1.1で評価し、長期の臨床的利益(DCB)は6ヶ月以上持続したPR/SD状態と定義した。DCBあるいは非DCB(NDB)の間で、腫瘍変異負荷(tumor mutation burden:TMB)、コピー数変化ゲノムの割合および遺伝子変化を比較した。さらに49人の患者については、特定部位のNGS結果と全ゲノムシークエンスによるTMBを比較した。NGSによるTMBはWESと良く相関していた(ρ=0.86; P<0.001)。TMBはDCB患者の方がNDBよりも多かった(P=0.006)。TMBの半分で上と下に分けた比較では、DCBを得られた患者は、高い方に多く、無増悪生存期間も長かった(38.6% vs 25.1%;P<0.001; ハザード比1.38; P=0.024)。コピー数が変化したゲノムの割合は、NDBのもので最も高かった。EGFRおよびSTK11の変異では、臨床的利益が見られなかった。ICIの利益に対し、TMBおよびPD-L1発現は独立した因子であり、TMB + PD-L1の複合体も同様であった。本研究から、特定部位のNGSは、TMBを正確に予測し、TMBの増加はICIへの利益が得られる傾向にあった。TMBはPD-L1発現と相関しなかった。両方の変数は同様の予測能力を有していた。TMBとPD-L1発現の両方を多変量予測モデルへの組み込むことは、より大きな予測力をもたらすはずである。
感想
非常に重要な論文です。現在日常臨床ではICIの適否を決めるのにPD-L1染色が使用されています。これがあまり性能の良くないマーカーであり、tumor mutation burden(TMB)の方が良いのではないかと言われつつあります。今回の解析はこの議論に一つの結論を与えるものです。
TMBの測定はコンセンサスがなく、正攻法としては全ゲノムシークエンスを行ったうえで基準を決め、すべての変化を拾っていく方法が考えられます。しかし費用、時間的に現実的ではありません。代替法として、複数の標的遺伝子変化を同定する次世代シークエンサーを使い、その同定部位を極端に多くしてやれば、全部測定したものと相関が見られるだろうと考えられます。ただそれが必要十分となる数はよく分かっていません。今回はその数を341-468とし、49人の全ゲノムシークエンスからのTMBのデータとの相関を見ています。Fig1Aにあるように、その相関係数は0.86で強い相関を示しています。次に臨床応用のため、6ヶ月以上PR/SD状態が持続した場合を利益ありとし、これを鑑別することを試みています。NGSでのTMB評価とこの臨床利益は明確に関係しており、縮小効果もTMBが多い方が得られる傾向にありました。また今回はICIが使われない場合のTMBと予後との関連を別のコホートで見ており、それによるとやはりTMBが高い人は予後不良のようです(FigA6)。つまりICIを使った場合、TMBの高低で明らかに予後が変化すると言えます。またPD-L1染色について言えば、これを連続変数とし、TMBとの関連をプロットした図(Fig3A)が示されています。この中で相関係数は0.1915とほとんど相関が見られませんでした。またPD-L1染色とゲノムコピー数変化との間でも無相関であることが示されています。しかし著者らは、なおPD-L1染色も有用という立場をとっています。それは臨床的利益の有無を見分けるのにROC曲線を適用してみたところ、PD-L1とTMBが同じような形状を示すからです。つまりこの2つは互いに独立しているが、ICIの有用性を見分けていくのに甲乙付け難いということになります。となると両者を組み込んだ多変量解析あるいは予後スコアの作成が有望であることは明らかでしょう。これ以外にNGSで同定した遺伝子変異で特にICIの効果予測に使えるものが見つからなかったこと、ICIによる急速な進行と関係すると報告[Kato S ClinCancerRes2017 PMID:2835193]されたMDM2/4増幅について、今回の解析で認められた8例については特にPFSの差が見られなかったことも書かれています。非常に充実した内容で、この論文はICI効果予測因子としてのTMB測定の方向性と、TMBとPD-L1との関連を明確に示した論文として今後多く引用されるものと考えています。