2017年02月26日

オシメルチニブ治療中の新規病変、治療継続もあり得る。

Transient Asymptomatic Pulmonary Opacities Occurring during Osimertinib Treatment.

Noonan SA et al.
J Thorac Oncol. 2016 Dec;11(12):2253-2258.
PMID: 27618759

Abs of abs.
オシメルチニブはEGFR遺伝子変異陽性例での治療、特にT790M陽性非小細胞肺癌での治療適応がある。今回はコロラド大学においてオシメルチニブ治療中に頻繁に見られ、報告例のない無症候性の肺病変について報告する。後ろ向き検討でCT所見および臨床背景についてこれらの患者を検討した。オシメルチニブ投与中に一過性の無症候性肺病変(pulmonary opacities)が見られたのは、7/20(35%)であった。画像上のパターンとしてはGGOに結節状の浸潤影を伴うものと伴わないものがあった。このような病変が初めて出るまで中央値で8.7週[1.6-43週]、オシメルチニブを継続し消失までの時間は中央値で6週[1-11週]であった。これらの一過性の肺病変は、以前には認識されておらず、おそらくオシメルチニブ治療に伴う良性変化であり、病勢進行あるいは重篤な肺臓炎の始まりと間違えられやすい病変である。特にこのようなすりガラス陰影で新規肺病変が出現した場合、無症状で限局的かつそれ以外の病勢進行根拠がない場合、オシメルチニブの治療を継続し、改善するかどうか慎重にモニタリングするのが妥当であろう。

感想
本文で取り上げられている画像を見ますと、日本では多くは肺臓炎として扱われるものではないかと思います。当然そのことは言及されており、このような現象は分類上グレード1の肺臓炎とされるだろうとDiscussionで述べられています。ただこれらがすりガラス陰影ではなく円形に近い画像を呈したとき、新規病変の出現すなわち病勢進行と間違われやすいということを指摘しています。私はまだオシメルチニブの使用経験があまりないので、実物を見たことはありません。ただFig2Bを見ると、辺縁に少しすりガラス陰影を伴っており、明らかな肺内転移とは少し違う印象を受けます。
では、このような現象と「本当の肺臓炎」との区別がつくのでしょうか。最新のオシメルチニブの市販後調査の間質性肺疾患を見てみます[http://med2.astrazeneca.co.jp/safety/download/TAG12.pdf]。発症時期が不明、あいまいなものを除いて手計算で集計してみたところ、中央値55日、平均61.2日[4-222]でした。本論文の数字を日にち換算しますと中央値61日[11-301]となります。両者の発症時期は極めて似かよっており、おそらく同じものを見ているのでないかと想像できます。
現状ではこれらを重篤な肺臓炎の始まりと厳密に見分ける手はなく、また病勢進行とも見分ける手段がありません。著者らは他の病勢進行の根拠がなく、無症状であればオシメルチニブの治療を継続し慎重に経過観察するのが妥当だろうとしています。私は少なくとも休薬するだろうと思います。皆さまはいかがでしょうか。
この論文は掲載号のエディトリアル取り上げられ、"Stop or GO"decisionと題し、この病変では慎重な経過観察の下オシメルチニブの治療継続することについては判断していませんが、概ね支持する論調です。



j82s6tbttvb at 01:30|PermalinkComments(0) 論文メモ 

2017年02月19日

ニボルマブによる間質性肺疾患、臨床試験での状況

Nivolumab-induced interstitial lung disease analysis of two phaseⅡ studies patients with recurrent or advanced non-small-cell lung cancer.

Kato T et al.
Lung Cancer 104 (2017) 111–118
PMID; 

Abs of abs.
薬剤性間質性肺疾患(ILD)は時に高い死亡率を示すが、予測と管理は困難である。今回はニボルマブに起因するILDについて、再発進行非小細胞肺癌を対象とした2つの第Ⅱ相試験からの報告例を元に臨床所見と画像の特徴について検討した。日本人における上記対象患者111人中、ニボルマブとの関連が疑われ、関連が否定できないILDの発症率は7.2%(8人:扁平上皮癌2人、非扁平上皮癌6人)であった。グレード3以上の重篤なものは4人(3.6%)に見られ、重篤な有害事象と判断されたものは7人(6.3%)であった。ILDになった患者は全例男性かつ喫煙歴があり、年齢中央値は65歳[52-78]であった。ILDの8人中7人は速やかに自然回復あるいはステロイド投与により速やかに消退した。1人はニボルマブ中止後ドセタキセルを開始し、回復することなく呼吸不全で死亡した。速やかな改善を示した7人はCT画像において、器質化肺炎パターンあるいは牽引性気管支拡張を伴わないNSIP所見を示した。一方死亡した症例では牽引性気管支拡張を呈していた。ニボルマブによる薬剤性間質性肺疾患のリスク因子は明らかではないが、画像診断を含めた入念なモニタリングによりILDの悪化を予防していくことが重要と思われる。

感想
ニボルマブによるメーカー側の副作用情報は迅速にアップデートされています[https://www.opdivo.jp/contents/report/]。それによると最新(2014/7/4-2017/1/31)のニボルマブの間質性肺疾患の発現率は3.5%(428/12195)でした。発症のタイミングは数日よりもやや時間がたった所がいちばん多く、中央値は44日でした。この市販後の調査は、医療側の自己申告の側面もあります。そのため少し緩めに取られている可能性があります。それを考慮すると、実地では5%程度と考えておいた方が良いかもしれません。発症時期の分布は、個人資産の分布に似て「対数正規分布」です。言い換えると非常に幅が広く平均値より中央値のほうが実感に近いということになります。本論文での発症時期は中央値36.5日[16-168]で、市販後調査とほぼ同じですが、範囲が非常に広く、市販後調査よく似ています。時期としては40日後くらいが多いものの、いつ起こるかわからないと思っておく方が良さそうです。画像所見として、器質化肺炎の形が多いのは今まで通りです。最終的に死亡した症例は、牽引性気管支拡張を呈したとのことですが、掲載された画像はが小さく私の目ではよく特徴が確認できません。危険因子についてはゲフィチニブでの検討[Ando M JCO2006 PMID:16735708]との比較で述べられています。ゲフィチニブでのILDの危険因子は、男性、喫煙歴、併存する間質性肺疾患でした。今回は臨床試験なので間質性肺疾患が元々ある人は除外されています。従って男性、喫煙歴が残りますが、すべて当てはまっています。ニボルマブは扁平上皮癌での効果の確実性が高いので、男性、喫煙歴ありはこの背景と重なり、症例を完全に投与から除外するわけには行きません。断定はできませんが、これらをリスク因子として認識しておく必要があるでしょう。一方、ゲフィチニブによるILDと違ってステロイドに対する反応性は良好です。「がん免疫療法ガイドライン」でも画像所見のみのグレード1では、投与を中止し2-3日ごとのモニタリングを行い、回復した場合は再投与検討、とあります。この対処はエベロリムスとよく似ています。ゲフィチニブで怖い思いをしたことのある身からすれば、勇気のいる対処法ではありますが、報告も複数出てきており、症状がなければすぐにステロイドと焦る必要は無く、慎重な経過観察で良いのではないかと思います。


j82s6tbttvb at 01:30|PermalinkComments(0) 論文メモ 

2017年02月12日

ALK肺癌の初回治療としてのセリチニブ、これからの使い分けは?

First-line ceritinib versus platinum-based chemotherapy in advanced ALK-rearranged non-small-cell lung cancer (ASCEND-4): a randomised, open-label, phase 3 study.

Soria JC et al.
Lancet. 2017 Jan 23. pii: S0140-6736(17)30123-X. [Epub ahead of print]
PMID: 28126333

Abs of abs.
未治療ALK転座遺伝子陽性非小細胞肺癌の患者におけるセリチニブの効果ははっきりしていない。今回はセリチニブとプラチナベースの治療とを比較する試験を行った。この試験はオープンラベル、第Ⅲ相ランダム化試験で、ステージⅢBまたはⅣ期の非扁平非小細胞肺癌を対象として28ヵ国134施設で行われた。患者はセリチニブ750㎎/dayまたはシスプラチン75mg/m2(またはカルボプラチンAUC5-6)+ペメトレキセド500mg/m2を3週毎に投与し、ペメトレキセド維持療法を行った。ランダム化層別化因子はPS、術後補助化学療法ありなし、脳転移の有り無しである。また患者と主治医には治療効果はマスクされていない。プライマリーエンドポイントはすべての患者について、独立判定委員会で判定され無増悪生存期間を評価した。効果判定は全例を対象に行われた。安全性評価は一回でも試験薬の投与を受けた患者をすべて含めて行った。2013年~2015年で376人の患者がランダムにセリチニブ(n=189)、抗がん剤(n=187)とに割り付けられた。独立判定委員会による無増悪生存期間中央値はセリチニブで16.6ヶ月、抗がん剤で8.1ヶ月であった(ハザード比0.55[0.42-0.73])。よく見られた有害事象はセリチニブ群において下痢(160/180=85%)、悪心(69%)、嘔吐(66%)、ALT上昇(60%)であり、一方の抗がん剤群では悪心(55%)、嘔吐(36%)、貧血(35%)であった。本試験では、ALK陽性肺癌に対する初回治療のセリチニブは、抗がん剤に比べ有意に臨床的に意味のある無増悪生存期間の延長をもたらした。

感想
セリチニブ関連の研究はASCENDシリーズになっています。ASCEND-1は既治療例への第Ⅰ相セリチニブ投与試験[Kim DW LancetOncol2016 PMID:26973324]でした。ASCEND-2は抗がん剤とクリゾチニブ後のセリチニブ投与の第Ⅱ相試験[Crino L JCO2016 PMID:27432917]、ASCEND-3はALK阻害薬未治療例への第Ⅱ相試験、ASCEND-4が今回の第Ⅲ相試験です。ASCEND-2の結果を出すまでもなく、クリゾチニブ後でもセリチニブの効果があることが知られていました。今回の症例設定は、抗がん剤治療群のPFSを8か月と仮定、セリチニブ群のそれに38%のリスク低下を見込み、ハザード比を0.62とやや強気の設定でした。結果の抗がん剤群でのPFSは8.1ヶ月であり、読みが当たっています。一方単純計算でセリチニブは13ヶ月程度を見込んでいたようですが、結果はそれを上回る16.6ヶ月でした。従ってかなりの差がつく結果となりました。脳転移のある症例でのハザード比は0.7、脳転移のない症例では0.48でした。毒性はやはり消化器毒性が強く、何らかのグレードの下痢が85%、悪心嘔吐が7割弱、また肝機能異常が6割程度とかなりの確率です。それにも関わらず、毒性中止は5%とかなり患者さんに頑張ってもらった試験になっています。これくらいの確率だと副作用のマネジメントがかなりうまくないと継続できないようにも思います。考察をみるとクリゾチニブよりJ-ALEX試験(日本で行われたクリゾチニブ vs. アレクチニブの第Ⅲ相試験)のアレクチニブを強く意識していることがうかがえます。今回のASCEND-4で脳転移が含まれている割合が32%で、一方のJ-ALEX試験ではクリゾチニブ群に27.8%、アレクチニブ群に13.6%であり、今回の試験に脳転移が多く、少し不利であったと言いたいように見えます。またさらにJ-ALEXのサブセット解析で、脳転移のない群のPFSが20.3ヶ月であり、本試験での脳転移のない群のPFSが26.3ヶ月であったことから、セリチニブも決して負けてはいないと暗に主張しています。ALK陽性肺癌の治療において、もはや全生存期間を議論することが難しくなってきています。今回のセリチニブ群の全生存期間は少なくとも30ヶ月を超えており、さらにクロスオーバーや、免疫チェックポイント阻害薬などの登場で見極めが極めて難しくなっています。私はセリチニブを使ったことがないのですが、カプセルの大きいということと消化器毒性が多いという話は耳にします。現在はクリゾチニブ後の使用に限られていますが、今回の結果を受け、いずれ初回治療でも使えるようになると思います。となれば3つの薬が初回治療の候補になります。厳密にはアレクチニブ対抗がん剤の第Ⅲ相試験は無いですが、必要と思う人はいないと思います。では初回治療はどう選択したらよいのでしょうか。周りでは初回治療にアレクチニブを支持する人が多いのですが、クリゾチニブから入る方がまだエビデンスが多く、またクリゾチニブ→セリチニブのデータも多いので、脳転移がなくPSが良い患者さんに限っては、いわゆるシークエンス治療も良いのではないかと思っています。しかしこのように考える人はかなりの少数派です。よく議論されますが、国内外問わずALK陽性肺癌は生存期間がかなり長くなっており、最終的に結論が出ないような気がしています。


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