2016年06月26日

再発小細胞肺癌に対する3剤併用療法~症例を選べば有効

Combined chemotherapy with cisplatin, etoposide, and irinotecan versus topotecan alone as second-line treatment for patients with sensitive relapsed small-cell lung cancer (JCOG0605): a multicentre, open-label, randomised phase 3 trial.

Goto K et al.
Lancet Oncol. 2016 Jun 13. doi: 10.1016/S1470-2045(16)30104-8. [Epub ahead of print]
PMID: 27312053

Abs of abs.
小細胞肺癌の治療においてエトポシドとイリノテカンはキードラッグである。この2つとシスプラチンを加えた3剤併用がトポテカン単剤を上回る効果があるかどうかを、sensitive replaseに対する2次治療において検証した。試験はオープンラベルランダム化第三相試験として、日本の29施設が参加して行った。初回治療が奏功し、治療終了後90日以上経過してから腫瘍進行、再発を認めたものを適格とした。患者はランダムに1:1に、シスプラチン+エトポシド+イリノテカンのコンビネーション治療か、トポテカン単剤の治療に割り付けられた。ランダム化はECOG-PS、ステージ、施設を考慮したバイアスコインを使った最小化法で行った。試験治療はシスプラチン25mg/m2をday1、8、エトポシド60mg/m2をday1-3、イリノテカン90mg/m2をday8に入れ、G-CSFをday9から開始し2週おき5回投与した。トポテカンは1.0mg/m2をday1-5、3週おき4コース行った。プライマリーエンドポイントは全生存期間で、少なくとも1用量でも治療を受けたものについて安全性評価した。2007年から2012年まで180人が登録され、90人ずつが各群に割り付けられた。打ち切り患者のフォローアップ中央値は22.7ヶ月であった。全生存期間においてコンビネーション治療群がトポテカン単剤群を有意に上回っていた(18.2ヶ月 vs. 12.5ヶ月 ハザード比0.67[0.51-0.88] P=0.0079)。グレード3,4の毒性は好中球減少が83% vs. 86%、貧血が84% vs. 28%、白血球減少が80% vs. 51%であった。グレード3,4の発熱性好中球減少は31% vs. 7%とコンビネーション治療に多く見られ、グレード3,4の血小板減少は41% vs. 28%であった。重篤な有害事象はトポテカン単剤で4%、コンビネーション治療で10%に報告された。治療関連死は、トポテカン単剤で2例(肺臓炎と肺感染症)、コンビネーション治療群で1例(発熱性好中球減少を伴う敗血症)見られた。本試験により、シスプラチン+エトポシド+イリノテカンによるコンビネーション治療は、sensitive relapseの一部の患者の2次治療で標準治療と考えられる。


感想
小細胞肺癌の2次治療は、sensitiveかrefractoryかによって分かれます。これまでsensitive relapseに対しては抗がん剤感受性が良いため、初回レジメンの再チャレンジあるいは、アムルビシン投与を考えられてきました。海外ではトポテカン(日本ではノギテカン)がアムルビシン以外の標準治療ですが、奏効率は2割程度と満足できる結果ではありません。
患者背景を見ると、最初の抗がん剤治療から再発まで中央値でトポテカン群148日、コンビネーション治療群で181日あり、かなり治療反応性の良いグループが登録されています。元々の統計設定では全生存期間の推定値が、トポテカン群が8ヶ月(実際は12.5ヶ月)、コンビネーション治療群が12ヶ月(実際は18.2ヶ月)と見積もっていることからもわかります。同号に掲載されたコメントでもこのことに言及されていますが、このコメントはかなり辛口で、"best of best"が登録されたのだろうと述べています。またsensitive relapseに対して、コントロール群にプラチナ再投与がされないことは "suboptimum therapy"になっている可能性を指摘しています。さらにコンビネーション治療群では50%が減量、22%が毒性中止していることから、この治療をいくらselected patientsであれ、標準治療と位置付けるのは早いだろうと散々です。しかしこの試験はランダム化試験であり、全体としてかなり良い集団が登録されていたのは事実でしょうが、それは両群に言えることであって差は差であると言えます。そうであることを踏まえれば、Sensitve relapseで、プラチナベースの強い治療ができるのであれば、積極的にしたほうが良いことを示すデータとも言えます。ただ投与スケジュールが変わっており、全部で10週間かかり、減量されているとはいえシスプラチンが入るので、入院ということになってしまいそうです。慣れればよいのかも知れませんが、やり易さも大事なポイントです。よってなかなか定着は厳しそうです。標準治療と言い切るには問題があるでしょうが、日本での第Ⅲ相試験であり、状態の良い患者さんを選んでのオプションとして日本のガイドラインに掲載されるべきレジメンと思います。以前に述べたように、これでまた日本の小細胞肺癌治療がガラパゴス化してしまうかもしれません。ただ再発小細胞肺癌の一部とはいえ、第Ⅲ相試験でトポテカンに優越性を示した研究は今までなく、十分にその意義は評価されるべきと思います。


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2016年06月19日

クリゾチニブの中枢神経系での進行パターン

Clinical impact of crizotinib on central nervous system progression in ALK-positive non-small lung cancer.

Yoshida T et al.
Lung Cancer. 2016 Jul;97:43-7.
PMID: 27237026

Abs of abs
ALK陽性非小細胞肺癌においてクリゾチニブによる治療を行った場合、中枢神経系への移行率が悪いため、同部位への転移の頻度は高い。今回はクリゾチニブ治療での中枢神経系の病勢進行について検証した。2006年から2015年に、59例のALK-TKIとしてクリゾチニブが初回治療であったALK陽性非小細胞肺癌を後ろ向きに評価した。評価項目はベースラインでの患者背景、クリゾチニブの効果、脳転移の状態と進行形式である。48例(81%)に初回または2次治療としてクリゾチニブが使用されていた。26例(44%)が脳転移を持ち、うち13例は脳転移未治療であり、13例は放射線治療または外科治療がされていた。クリゾチニブの奏効率は66%、無増悪生存期間は9.7ヵ月、RECIST評価によるPDは48例に起こっていた。中枢神経系での病勢進行がよく見られ、最初の増悪場所として24例が該当した。中枢神経系のみの増悪がうち18例であった。クリゾチニブ前に脳転移を有する症例では、有意に無増悪生存期間が短く、非脳転移例と比較し6.7ヵ月 vs.10.2ヵ月、P=0.037であった。多変量解析ではPS不良(2以上)、未処置の脳転移が無増悪生存期間と関連していた。それぞれPS不良はハザード比3.322[1.402-7.353,P=0.0078]、未処置の脳転移はハザード比2.314[1.153-4.400,P=0.0255]であった。本研究において、ALK陽性患者をクリゾチニブで治療した場合、中枢神経系での病勢進行がよく見られた。また脳転移の有無は無増悪生存期間と病勢進行の両方に有意に関係していた。

感想
PROFILE1014試験における脳内病変の効果について、最近論文化されています[Solomon BJ JCO2016 PMID:2702211]。PROFILE1014試験は、ALK陽性非小細胞肺癌の初回治療におけるクリゾチニブ対プラチナ+ペメトレキセドの比較試験です。その試験では脳転移があっても、治療して落ち着いていれば登録可能な条件で、ベースラインにおいて23%が脳転移を有していました。全患者でみた脳内病変の増悪までの期間は、クリゾチニブ群でハザード比0.60、脳転移がもともとあったものでハザード比0.45、脳転移のないものでハザード比0.69でした。したがって脳内病変にもクリゾチニブはある程度有効とも言えます。しかし今回の実地データの解析から、クリゾチニブを使う症例で脳内病変にすでにある場合、またその後の出現・増悪には十分注意すべきことが示唆されます。
今回の試験のデータで、最も診療に役立つのはFig3で示されている中枢神経系の増悪までの時間の解析です。もともと中枢神経系の病変のないものは中央値で22.1カ月、あるものでは11.1ヵ月でした。日常臨床でTKI治療をする場合、毎月胸部レントゲンを撮ることが多いですが、脳MRIを毎月という施設はないと思います。脳転移に関しては、自覚症状が出る前にガンマナイフなどで治療しておくことが理想的ですが、そのスクリーニングの最適ポイントについてはあまり研究がありません。もともと脳転移がある患者さんは、病変フォローも兼ねて頻回にMRIをとりますが、脳転移がなく腫瘍マーカーも正常化していたりするとついつい間隔が空いてしまいます。今回の「もともと中枢神経系の病変のないものの中央値が22.1カ月」という情報と、カプランマイヤー曲線(本文は逆プロットして表示されています)から、増悪割合が12カ月で約3割、最終的に7割くらいなので大まかに数字を頭に入れておくとフォローに役立つのではないかと思います。
また今回の検討でクリゾチニブで病勢進行後13例にアレクチニブが使われ、奏効率は69%でした。そのうちクリゾチニブで中枢神経系のみの病勢進行、その後アレクチニブを使用した例では6カ月間にわたり病勢進行が認められませんでした。周知の通り、今年の米国臨床腫瘍学会でJ-ALEX試験(初回ALK-TKIとしてのアレクチニブ対クリゾチニブ、#9008)の結果が公表され、クリゾチニブに対するアレクチニブの無増悪生存期間は、ハザード比0.34[0.17-0.71]と素晴らしい結果でした。また5月25日に第3のALK-TKIであるセリチニブが国内発売となり、使用条件が「クリゾチニブに抵抗性又は不耐容のALK融合遺伝子陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌」となっています。ALK-TKIを1剤しか使わないのであれば、アレクチニブで間違いないところですが、EGFR-TKIでも2剤、場合によっては3剤試す方が多いと思います。そうなるとALKでも3剤が出そろったことにより、3剤とも有効に使いたいところです。しかし少し話が複雑です。というのも、アレクチニブの後のクリゾチニブ、セリニチブは期待薄ですので、どう組み立てていくかが難しいです。私はPSがよく、脳転移のない症例ではクリゾチニブから入るという選択もまだ考えられるのではないかと思っています。このあたりは今後の議論、特に肺癌学会ガイドラインあるいはNCCNガイドラインがどう書き換えられるか注目です。


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2016年06月12日

形態からEGFR遺伝子変異の有無を予測する

CT Features of Epidermal Growth Factor Receptor-Mutated Adenocarcinoma of the Lung: Comparison with Nonmutated Adenocarcinoma.

Hasegawa M et al.
J Thorac Oncol. 2016 Jun;11(6):819-26. 
PMID: 26917231

Abs of abs.
2010年から2011年までに施設内で診断された263例の肺腺癌を検討し、特にEGFR遺伝子変異陽性肺腺癌のHRCT所見を解析した。HRCTから腫瘍径、多発肺内転移、辺縁構造の収縮、辺縁のすりガラス陰影、気管支血管束拡大、エアブロンコグラム、ノッチ、胸膜引き込み像、スピキュラ、空洞、胸水について検討を行った。EGFR遺伝子変異陽性は103人(39.2%)に見られ、残りは遺伝子変異のない肺腺癌であった。遺伝子変異のないグループと比較して、遺伝子変異陽性例は多発肺内転移(P=0.0152)、辺縁構造の収縮(P=0.0011)、すりガラス陰影(P=0.0011)ノッチ(P=0.0428)、胸水(P=0.0064)の頻度が高かった。その他のCT所見頻度は同等で、予測式では感度78.4%、特異度70.4%であった。本研究により、EGFR遺伝子変異陽性腺癌においては、多発肺内転移、すりガラス陰影、辺縁構造の収縮、ノッチがHRCTで高い頻度で認められた。逆に空洞陰影や、胸水は遺伝子変異のない例と比較し少なかった。

感想
何となく日常臨床でもEGFR遺伝子変異がありそうと感じる画像があります。その代表的なものが粟粒結核のような無数の多発肺内転移で発症してくる肺腺癌です。これには19Delが多いのではないかと感じていますが、今回は、それも含め画像でEGFR遺伝子変異の有無を予測できないかという研究です。類似研究は過去にもありますが、今回はHRCTで詳細に腫瘍形態を観察したところが目新しいと思います。本文では画像での19delとL858Rの比較も行われています。項目は、両肺の多数の肺内転移、すりガラス陰影の割合、ノッチ、空洞陰影ですが、残念なことに症例数が少なくいずれの傾向も見出せませんでした。今後これらにT790Mが出てくるかどうか、PFSと関係するかどうかが治療前の画像で予測できるかというところも興味あります。EGFRがあればALKの画像形態の検討もすでになされており、その報告によればALK陽性肺癌は中心部に位置し、pleural tailが無い(比較的円形)、胸水があるといった特徴が報告されています[Yamamoto S Radiology2014 PMID:24885982]。また効果との関連性としてクリゾチニブでのPFSが、きれいな円形の方が長かったと報告されています。最近CTの発達により、画像は細かく解析できるようになりましたが、まだ存在診断の方が優先され予後や分子病態との関連は進んでいないように感じます。画像と遺伝子異常では話のレベルが違うのかもしれませんが、今だにPerformance statusという因子が治療方針に大きく影響するように、形態学にも驚くような関係性が潜んでいるかもしれません。


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