2018年01月21日

Tumor mutation burdenとPD-L1は、ICIの効果予測に両方とも重要

Molecular Determinants of Response to Anti-Programmed Cell Death (PD)-1 and Anti-Programmed Death-Ligand (PD-L)-Ligand 1 Blockade in Patients With Non-Small-Cell Lung Cancer Profiled With Targeted Next-Generation Sequencing.

Rizvi H et al.
J Clin Oncol. 2018 Jan 16[Epub ahead of print]
PMID: 29337640

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免疫チェックポイント阻害剤(ICI)による進行性非小細胞肺癌の治療では、特定の集団において長期奏効および予後の改善が見られる。ICIの使用を最適化し、分子レベルでの奏効因子を特定する臨床的手段が必要である。特定部位に対する次世代シークエンシンス(NGS)は通常検査に下りては来ているが、ICIの奏効の予測因子としては同定された部位はない。今回は、詳細な臨床データおよび奏効のデータを進行非小細胞肺癌でPD-1阻害薬あるいはPD-L1阻害薬で治療した患者から収集し、特定部位のNGS(MSK-IMPACT)のデータと合わせ解析した。有効性は、RECISTver1.1で評価し、長期の臨床的利益(DCB)は6ヶ月以上持続したPR/SD状態と定義した。DCBあるいは非DCB(NDB)の間で、腫瘍変異負荷(tumor mutation burden:TMB)、コピー数変化ゲノムの割合および遺伝子変化を比較した。さらに49人の患者については、特定部位のNGS結果と全ゲノムシークエンスによるTMBを比較した。NGSによるTMBはWESと良く相関していた(ρ=0.86; P<0.001)。TMBはDCB患者の方がNDBよりも多かった(P=0.006)。TMBの半分で上と下に分けた比較では、DCBを得られた患者は、高い方に多く、無増悪生存期間も長かった(38.6% vs 25.1%;P<0.001; ハザード比1.38; P=0.024)。コピー数が変化したゲノムの割合は、NDBのもので最も高かった。EGFRおよびSTK11の変異では、臨床的利益が見られなかった。ICIの利益に対し、TMBおよびPD-L1発現は独立した因子であり、TMB + PD-L1の複合体も同様であった。本研究から、特定部位のNGSは、TMBを正確に予測し、TMBの増加はICIへの利益が得られる傾向にあった。TMBはPD-L1発現と相関しなかった。両方の変数は同様の予測能力を有していた。TMBとPD-L1発現の両方を多変量予測モデルへの組み込むことは、より大きな予測力をもたらすはずである。

感想
非常に重要な論文です。現在日常臨床ではICIの適否を決めるのにPD-L1染色が使用されています。これがあまり性能の良くないマーカーであり、tumor mutation burden(TMB)の方が良いのではないかと言われつつあります。今回の解析はこの議論に一つの結論を与えるものです。
TMBの測定はコンセンサスがなく、正攻法としては全ゲノムシークエンスを行ったうえで基準を決め、すべての変化を拾っていく方法が考えられます。しかし費用、時間的に現実的ではありません。代替法として、複数の標的遺伝子変化を同定する次世代シークエンサーを使い、その同定部位を極端に多くしてやれば、全部測定したものと相関が見られるだろうと考えられます。ただそれが必要十分となる数はよく分かっていません。今回はその数を341-468とし、49人の全ゲノムシークエンスからのTMBのデータとの相関を見ています。Fig1Aにあるように、その相関係数は0.86で強い相関を示しています。次に臨床応用のため、6ヶ月以上PR/SD状態が持続した場合を利益ありとし、これを鑑別することを試みています。NGSでのTMB評価とこの臨床利益は明確に関係しており、縮小効果もTMBが多い方が得られる傾向にありました。また今回はICIが使われない場合のTMBと予後との関連を別のコホートで見ており、それによるとやはりTMBが高い人は予後不良のようです(FigA6)。つまりICIを使った場合、TMBの高低で明らかに予後が変化すると言えます。またPD-L1染色について言えば、これを連続変数とし、TMBとの関連をプロットした図(Fig3A)が示されています。この中で相関係数は0.1915とほとんど相関が見られませんでした。またPD-L1染色とゲノムコピー数変化との間でも無相関であることが示されています。しかし著者らは、なおPD-L1染色も有用という立場をとっています。それは臨床的利益の有無を見分けるのにROC曲線を適用してみたところ、PD-L1とTMBが同じような形状を示すからです。つまりこの2つは互いに独立しているが、ICIの有用性を見分けていくのに甲乙付け難いということになります。となると両者を組み込んだ多変量解析あるいは予後スコアの作成が有望であることは明らかでしょう。これ以外にNGSで同定した遺伝子変異で特にICIの効果予測に使えるものが見つからなかったこと、ICIによる急速な進行と関係すると報告[Kato S ClinCancerRes2017 PMID:2835193]されたMDM2/4増幅について、今回の解析で認められた8例については特にPFSの差が見られなかったことも書かれています。非常に充実した内容で、この論文はICI効果予測因子としてのTMB測定の方向性と、TMBとPD-L1との関連を明確に示した論文として今後多く引用されるものと考えています。


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2018年01月14日

免疫関連有害事象とirAE、いつどう考える?

Correlation between immune-related adverse events and efficacy in non-small cell lung cancer treated with nivolumab.

Sato K et al.
Lung Cancer. 2018 Jan;115:71-74. 
PMID: 29290265

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ニボルマブ治療は、免疫関連有害事象(irAE)と呼ばれる特有の有害事象を経験することが多い。免疫チェックポイント阻害剤(ICI)のメカニズムを考えると、irAEの発生は抗腫瘍効果を反映している。今回は、ニボルマブで治療した非小細胞肺癌におけるirAEと有効性との間の相関を検討した。2015年12月から2017年2月までに、38人の進行非小細胞肺癌患者を治療した。すべての患者が今回の単施設、前向き、観察コホート研究に登録された。IrAEは、免疫学的背景を有し、頻繁なモニタリングまたは介入を必要とするものと定義された。患者を2群(irAE群または非irAE群)に分け、奏効率(ORR)および無増悪生存期間(PFS)を評価した。中央値年齢は68.5歳[49-86]であった。男/女=28/10であった。扁平上皮癌/非扁平上皮癌=10/28でPS0-1/2/3=7/26/5であった。全体での奏効率は23.7%であり、無増悪生存期間中央値は91日であった。データカットオフ時点で14のirAEが観察された。最も一般的なirAEは間質性肺炎(n=5)であった。他のirAEは、甲状腺機能低下症(n=4)、甲状腺機能亢進症、下垂体機能亢進症、肝機能障害、発疹、および甲状腺刺激ホルモンレベルの上昇(各n=1)であった。irAEを有する患者は、非irAE患者と比較し有意に高い奏効を示した(63.6%対7.4%、p<0.01)。同様に、irAEが出た患者の無増悪生存期間(中央値 未達[91-NA])は非irAE患者(49日[36-127]、ハザード比0.10 [0.02-0.37、p<0.001])に比べ有意に良好であった。PFS≧60daysを達成した患者におけるランドマーク解析でも同様の傾向を示したが、これは有意ではなかった(ハザード比0.28 [0.04-1.46]、p=0.13)。今回の研究では、ニボルマブで治療した非小細胞肺癌患者においてirAEと有効性との間には相関が見られた。

感想
免疫チェックポイント阻害薬の効果を見ていくにあたり、免疫関連有害事象と治療利益との相関が報告されています。以前に取り上げた報告[Teraoka S JTO2017 PMID:28939128]では、治療開始後2週間でのirAEが評価されました。43人の患者が登録され、治療開始2週間後に19人(44%)にirAEが見られていました。主なirAEとして発疹、発熱、下痢があり、奏効率はirAE患者でより高く(37%対17%;P=0.17)、無増悪生存期間の中央値の有意な延長が見られました。今回の研究ではまず評価時期が異なります。irAEの出現中央値は50日で、11/38=28.9%に見られ、内訳は肺臓炎と甲状腺障害が中心となっています。今回irAEとしているのは"having a potential immunological basis that required more frequent monitoring and potential intervention"と定義され、これはメラノーマでの報告[Weber JS JCO2017 PMID:28068177]を元にしています。元論文ではirAE=select AEとしてskin、GI、Endocrine、Hepatic、Pulmonary、Renalと主に内臓障害を規定しています。ここでは発熱は項目に入っていないようで、irAEの取り方が以前紹介のものと微妙に異なっています。また別の後ろ向き研究[Haratani K JAMAOncol2017 PMID:28975219]では、同じ基準のirAEとなっており、これは6週評価で51%にirAEが見られ、奏効率は52.3%対27.9%; P=0.02と今回の結果とよく似ています。繰り返しになりますがirAEの出現の中央値は50日(2ヶ月弱)であり、非扁平上皮癌の既治療例(CheckMate 057[Borghaei H NEJM2015 PMID:26412456])での無増悪生存期間が2.3ヶ月であることからすると、PDとは言えないまでも増大しているといった継続を迷う時の指標としては物足りないと思います。これらの点はdiscussionでも論じられ、また軽微なものは取りすぎの懸念もありますが、発熱も参考にはなるような気がします。PD-L1染色以外に事前の奏効因子がわかっていない現段階では、発熱、発疹を中心とした早期に見られやすいirAEと、甲状腺障害など中長期的に見られるirAEとを区別し、考える材料とし観察し続けることしかないのかもしれません。


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2018年01月07日

オシメルチニブ治療後のT790M消失は予後不良

Outcomes in patients with non-small-cell lung cancer and acquired Thr790Met mutation treated with osimertinib: a genomic study.

Lin CC et al.
Lancet Respir Med. 2017 Dec 14.  [Epub ahead of print]
PMID: 29249325

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オシメルチニブはEGFR-TKI治療後にT790M変異を持つ非小細胞肺癌患者の治療薬として承認された。今回は非小細胞肺癌で一つあるいは二つのTKIで治療後に進行、T790M変異を持ち第三世代EGFR-TKI、オシメルチニブで治療した患者の転帰を評価した。対象となった患者は、AURA研究の一施設で登録され、EGFR-TKIに耐性を示しかつEGFR遺伝子変異を持ち、腫瘍組織または血漿中でT790Mが検出可能であったものである。患者はオシメルチニブ20-240mgを病勢進行あるいは毒性中止まで内服した。血漿サンプルを6週毎に採取し、開始時の生検および、任意で疾患進行後に生検を行った。EGFR遺伝子変異とT790M、C797S変異を含む耐性メカニズムを評価し、全生存期間、無増悪生存および疾患進行後の生存との関連を評価した。AURAに登録された71 人の患者のうち、53人が適格であった。全体の無増悪生存期間の中央値は11.1ヶ月[95%CI 8.4-13.9]であり、全生存期間は16.9ヶ月[11.7-29.1]であった。47人が疾患進行を示し、オシメルチニブ後の全生存期間中央値は5.4か月[4.1-10.0]であった。疾患進行後について40人の血漿サンプルが入手可能であった。これらのうち12例(30%)がT790M変異を有していた(うち4例はC797S変異あり)。治療前の血漿中にEGFR遺伝子変異が見つからない場合、この中では最良の全生存期間22.4ヶ月[15.6-未達]、無増悪生存期間10.8ヶ月[7.2-未達] を示した。T790M変異を喪失するがEGFR遺伝子変異は残っていることが、最短の無増悪生存期間2.6ヶ月[1.3-未達]と関連していた。疾患進行後の22検体について、扁平細胞癌(1例)および小細胞肺癌(2例)への形質転換を見出した。T790Mは9/18(50%)に、またC797Sは2/12(17%)、cMETの増幅は5/10(50%)に見られた。またBRAF変異1/13(8%)、KRAS変異も1/13(8%)が見られた。オシメルチニブ治療後には多様な耐性メカニズムが見られる。このような耐性の違いは、臨床試験におけるオシメルチニブの将来の開発戦略を決定づけるかもしれない。

感想
第三世代TKIの耐性機序についても徐々にデータが出されています。今回は既存のTKI後にオシメルチニブを使用したAURA試験からの報告です。第三世代の耐性機序としてMET増幅、HER2増幅があることが既に報告されており[Ortiz-Cuaran S ClinCancerRes2016 PMID:27252416]、またC797S変異も有名です。また第一世代TKI後に約半数にT790M変異が出現し、かつそれが予後良好因子であることは良く知られています。しかし第三世代TKI後はどうなっているのか全体像がまだわかっていません。一方でliquid biopsyも大きく進歩しています。EGFR遺伝子変異についてliquidは、組織より感度が悪く、陽性例は予後不良であることが知られています。これまでliquidにおける同定は「有無」を見るものが多かったですが、今回は「元々のEGFR遺伝子変異が保持され、T790Mが消えると予後が悪い」といった理解しにくい問題を提起しています。
本文中ではEGFR遺伝子変異あるいはT790M変異が遊離DNAで同定される人のことを"shedder"と称しています。これは「流す人」の意であり、血中に流れている人という理解で良いかと思います。さてオシメルチニブ投与前のshedderとnon-shedderを分けて比較したところ、無増悪生存期間、全生存期間ともnon-shedderが良好でした。これは従来の報告と合致します。またFigure6では、オシメルチニブで病勢進行時にctDNAの情報のあるものを3群に分け比較しています。この3群とはT790Mが消失したもの、PD後にnon-shedderとなったもの、shedderであり続けたもの(新たに出たものも含む)です。それによるとT790Mが消失したものが明らかに無増悪生存期間、全生存期間とも悪くなっています。この機序について詳しい考察はされていませんが、T790Mが本来のドライバーであるDel19やL858Rを抑える働きをしているのであれば理解できるかもしれません。つまり毒を持って毒を制する状態になっている可能性を想像してしまいます。ひょっとするとT790Mは減らしすぎないように大事に持っておくことが最適な戦略なのかもしれません。私の印象ではオシメルチニブの反応は多種多様で、病変により反応が異なるいわゆるheterogenityを実感するものとなっています。もちろん現在では第一、二世代のTKIを使用した後のなのでそう感じるだけかもしれません。以前の記事でもオシメルチニブ後のT790M消失が意味を持つか?と書きました(http://blog.livedoor.jp/j82s6tbttvb/archives/46839173.html)が、今回の論文からも意味を持つという立場で今後の報告を見ていきたいと思っています。


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