2015年07月12日
2015年07月12日
Uncommon mutationへのアファチニブ投与は勧められるか
Clinical activity of afatinib in patients with advanced non-small-cell lung cancer harbouring uncommon EGFR mutations: a combined post-hoc analysis of LUX-Lung 2, LUX-Lung 3, and LUX-Lung 6.
Yang JC et al.
Lancet Oncol. 2015 Jun 4[Epub ahead of print]
PMID:26051236
Abs of abs.
EGFR遺伝子変異を持つ非小細胞肺癌では、そのほとんどがexon19欠失か、L858R点変異である。しかし10%の患者では、その他の"uncommon mutation"が見られる。これらに対するEGFR阻害薬の感受性についてはわずかなデータしかない。そこで今回はアファチニブのこれらuncommon mutationに対する活性を見るために事後解析を行った。解析対象となったのはステージⅢB-Ⅳの腺癌で単アームのphase2試験(LUX-Lung2)とランダム化phase3(LUX-Lung3と6)である。すべてのuncommon mutationが含まれた症例をITT解析した。なおこれらのEGFR遺伝子変異の状態(exon19欠失か、L858R点変異またはその他)、人種(アジア人か非アジア人か、LL3のみ)はこれらの試験で層別化因子と規定されていた。解析のために患者を3種類のカテゴリーに分けた。すなわちExon18-21における点変異または重複はgroup1、元からのT790M変異単独、またはその他の遺伝子変異の合併例はgroup2、exon20挿入変異はgroup3とした。さらにuncommonの中でも、比較的よくあるもの、G719X、L861G、S768I単独または他の変異と合併しているものについても評価を行った。奏効については独立した放射線レビューで確定した。3試験において600人にアファチニブが投与されており、75人(12%)がuncommon mutationを持っていた(group1=38人、group2=14人、group3=23人)。Group1においては27例(71%)が奏効し、group2、group3では各2例(14.3%、8.7%)の奏効にとどまった。無増悪生存期間中央値は、それぞれのグループで10.7ヶ月、2.9ヶ月、2.7ヶ月であった。全生存期間はそれぞれ19.4ヶ月、14.9ヶ月、9.2ヶ月であった。uncommonの中でも頻度の高い、G719Xは14例(77.8%)L861Gは9例(56.3%)、S768Iは8例(100%)に奏効が見られた。本試験から、uncommon mutationについて特にG719X、L861G、S768Iに対してアファチニブは効果を持っているが、他の変異には効果が少ないことが知られる。元々あるT790Mやexon20挿入変異に対しては臨床的な利益はあまりない。これらのデータは実臨床においてuncommon mutationを持つ患者の治療選択の一助になるであろう。
感想
これまでDel19とL858R以外のEGFR遺伝子変異は、数が少なく所謂"activating mutation"からは除外されてきました。これらUncommon mutaitonについては、TKIに対する奏効率、PFS、OSとも短いが、中には効く変異もあるというのが大まかな理解かと思います。しかし数が少ない分まとまった報告がなく、臨床現場で困っているのが実情です。
この試験ではちょうど100例のuncommon mutationが見つかっていますが、その中の25例はファーストラインで殺細胞性抗がん剤が使われています。注目はuncommonのなかのcommon、すなわちマイナーのなかで良くあるG719X、L861G、S768Iがどうかについてです。これらの集団は今回の解析ではgroup1に含まれ、その奏効率は71%、PFS10.7ヶ月、全生存期間19.4ヶ月と一見common mutationと見なしても良さそうな成績のように感じられます。本当でしょうか?
従来の報告で、例えばWuらは62人のuncommon mutationに対しゲフィチニブまたはエルロチニブ治療を行った成績を報告しています[Wu JY ClinCancerRes2011 PMID:21531810]。それによると全体で奏効率48.4%、PFS5ヶ月であり、中でもG719とL861が多くを占め、その集団が良好な成績でした。しかし良いとは言え、これらの奏効率でも57.1%、PFS6ヶ月で、common mutationと比較してやや悪かったと結論しています。
さらに、ゲフィチニブと抗がん剤を初回治療で比較した有名なNEJ002試験のサブセット解析[Watanabe S JTO2014 PMID:24419415]では、 G719Xが7例とL861Q 3例が割り付けを受けており、それぞれ5例ずつがCBDCA+PACとゲフィチニブに割り付けられていました。Uncommon vs commonでは奏効率20% vs 76%かつ、全生存期間が12ヶ月 vs 28.4ヶ月で明らかに短い結果でした。さらに症例が少なすぎて、生存曲線が荒いものの、ゲフィチニブ群では明らかにuncommon mutationが下回り、CBDCA+PACでは交差していました。つまりuncommon mutationではTKIより殺細胞性抗がん剤から使った方が良さそうと推測されます。
同じことは今回の解析からも窺い知れます。今回の試験では25人のuncommon mutationの人が初回殺細胞性抗がん剤に割り付けられ、奏効率24.0%, PFS8.2ヶ月、OS30.2ヶ月でした。全生存期間は、最もTKIが期待できそうなgroup1でも19.4ヶ月ですので、明らかに抗がん剤が優れています。Figure3に記載されているgroup別+抗がん剤の生存曲線を見ると、他のgroupよりは良いもののgroup1は抗がん剤と交差しながら、最終的には抗がん剤の方が上をいっています。 これまでuncommon mutationにはどのTKIが効果が高いのかという論点から語られがちでした。しかしそうではなく、NEJ002のデータと今回の結果を総合して考えた場合、uncommon mutationの治療としては、まず抗がん剤治療を優先したほうが良いことが強く示唆されます。効果のあまり期待できないものを先にするとどうなるのか。TKIに対する効果は、exon19del>L858R>uncommon>wildとなることには異論は少ないでしょう。極論かもしれませんが、サブセット解析でEGFR遺伝子変異陰性の人にエルロチニブ→シスプラチン+ゲムシタビンか、シスプラチン+ゲムシタビン→エルロチニブを比較した試験[Gridelli C JCO2012 PMID:22778317]が参考になります。結果はシスプラチン→エルロチニブが全生存期間で9.6ヶ月 vs 6.5ヶ月 ハザード比1.29[0.97-1.71]で、上を行く傾向でした。やはり効果の乏しいものを先に持ってくるのは良くないようです。
以上のように効果に乏しいTKIで始めることは抗がん剤にはるかに劣ることは確実なように思います。Exon19欠失については、ファーストラインはTKIで文句のないところですが、これを、exon19del>L858R>uncommon>wildの順に考えて類推すると、L858Rが抗がん剤から入った方が予後が良い傾向とのLUX-Lung3と6の統合解析[Yang JC LancetOncol2015 PMID:25589191]は、裏を返せば、L858Rへのアファチニブの効果があまり良くないことと整合性を持ちます。今後解析が進むとL858RへのファーストラインでのTKIは見直される可能性が残るように思います。
Yang JC et al.
Lancet Oncol. 2015 Jun 4[Epub ahead of print]
PMID:26051236
Abs of abs.
EGFR遺伝子変異を持つ非小細胞肺癌では、そのほとんどがexon19欠失か、L858R点変異である。しかし10%の患者では、その他の"uncommon mutation"が見られる。これらに対するEGFR阻害薬の感受性についてはわずかなデータしかない。そこで今回はアファチニブのこれらuncommon mutationに対する活性を見るために事後解析を行った。解析対象となったのはステージⅢB-Ⅳの腺癌で単アームのphase2試験(LUX-Lung2)とランダム化phase3(LUX-Lung3と6)である。すべてのuncommon mutationが含まれた症例をITT解析した。なおこれらのEGFR遺伝子変異の状態(exon19欠失か、L858R点変異またはその他)、人種(アジア人か非アジア人か、LL3のみ)はこれらの試験で層別化因子と規定されていた。解析のために患者を3種類のカテゴリーに分けた。すなわちExon18-21における点変異または重複はgroup1、元からのT790M変異単独、またはその他の遺伝子変異の合併例はgroup2、exon20挿入変異はgroup3とした。さらにuncommonの中でも、比較的よくあるもの、G719X、L861G、S768I単独または他の変異と合併しているものについても評価を行った。奏効については独立した放射線レビューで確定した。3試験において600人にアファチニブが投与されており、75人(12%)がuncommon mutationを持っていた(group1=38人、group2=14人、group3=23人)。Group1においては27例(71%)が奏効し、group2、group3では各2例(14.3%、8.7%)の奏効にとどまった。無増悪生存期間中央値は、それぞれのグループで10.7ヶ月、2.9ヶ月、2.7ヶ月であった。全生存期間はそれぞれ19.4ヶ月、14.9ヶ月、9.2ヶ月であった。uncommonの中でも頻度の高い、G719Xは14例(77.8%)L861Gは9例(56.3%)、S768Iは8例(100%)に奏効が見られた。本試験から、uncommon mutationについて特にG719X、L861G、S768Iに対してアファチニブは効果を持っているが、他の変異には効果が少ないことが知られる。元々あるT790Mやexon20挿入変異に対しては臨床的な利益はあまりない。これらのデータは実臨床においてuncommon mutationを持つ患者の治療選択の一助になるであろう。
感想
これまでDel19とL858R以外のEGFR遺伝子変異は、数が少なく所謂"activating mutation"からは除外されてきました。これらUncommon mutaitonについては、TKIに対する奏効率、PFS、OSとも短いが、中には効く変異もあるというのが大まかな理解かと思います。しかし数が少ない分まとまった報告がなく、臨床現場で困っているのが実情です。
この試験ではちょうど100例のuncommon mutationが見つかっていますが、その中の25例はファーストラインで殺細胞性抗がん剤が使われています。注目はuncommonのなかのcommon、すなわちマイナーのなかで良くあるG719X、L861G、S768Iがどうかについてです。これらの集団は今回の解析ではgroup1に含まれ、その奏効率は71%、PFS10.7ヶ月、全生存期間19.4ヶ月と一見common mutationと見なしても良さそうな成績のように感じられます。本当でしょうか?
従来の報告で、例えばWuらは62人のuncommon mutationに対しゲフィチニブまたはエルロチニブ治療を行った成績を報告しています[Wu JY ClinCancerRes2011 PMID:21531810]。それによると全体で奏効率48.4%、PFS5ヶ月であり、中でもG719とL861が多くを占め、その集団が良好な成績でした。しかし良いとは言え、これらの奏効率でも57.1%、PFS6ヶ月で、common mutationと比較してやや悪かったと結論しています。
さらに、ゲフィチニブと抗がん剤を初回治療で比較した有名なNEJ002試験のサブセット解析[Watanabe S JTO2014 PMID:24419415]では、 G719Xが7例とL861Q 3例が割り付けを受けており、それぞれ5例ずつがCBDCA+PACとゲフィチニブに割り付けられていました。Uncommon vs commonでは奏効率20% vs 76%かつ、全生存期間が12ヶ月 vs 28.4ヶ月で明らかに短い結果でした。さらに症例が少なすぎて、生存曲線が荒いものの、ゲフィチニブ群では明らかにuncommon mutationが下回り、CBDCA+PACでは交差していました。つまりuncommon mutationではTKIより殺細胞性抗がん剤から使った方が良さそうと推測されます。
同じことは今回の解析からも窺い知れます。今回の試験では25人のuncommon mutationの人が初回殺細胞性抗がん剤に割り付けられ、奏効率24.0%, PFS8.2ヶ月、OS30.2ヶ月でした。全生存期間は、最もTKIが期待できそうなgroup1でも19.4ヶ月ですので、明らかに抗がん剤が優れています。Figure3に記載されているgroup別+抗がん剤の生存曲線を見ると、他のgroupよりは良いもののgroup1は抗がん剤と交差しながら、最終的には抗がん剤の方が上をいっています。 これまでuncommon mutationにはどのTKIが効果が高いのかという論点から語られがちでした。しかしそうではなく、NEJ002のデータと今回の結果を総合して考えた場合、uncommon mutationの治療としては、まず抗がん剤治療を優先したほうが良いことが強く示唆されます。効果のあまり期待できないものを先にするとどうなるのか。TKIに対する効果は、exon19del>L858R>uncommon>wildとなることには異論は少ないでしょう。極論かもしれませんが、サブセット解析でEGFR遺伝子変異陰性の人にエルロチニブ→シスプラチン+ゲムシタビンか、シスプラチン+ゲムシタビン→エルロチニブを比較した試験[Gridelli C JCO2012 PMID:22778317]が参考になります。結果はシスプラチン→エルロチニブが全生存期間で9.6ヶ月 vs 6.5ヶ月 ハザード比1.29[0.97-1.71]で、上を行く傾向でした。やはり効果の乏しいものを先に持ってくるのは良くないようです。
以上のように効果に乏しいTKIで始めることは抗がん剤にはるかに劣ることは確実なように思います。Exon19欠失については、ファーストラインはTKIで文句のないところですが、これを、exon19del>L858R>uncommon>wildの順に考えて類推すると、L858Rが抗がん剤から入った方が予後が良い傾向とのLUX-Lung3と6の統合解析[Yang JC LancetOncol2015 PMID:25589191]は、裏を返せば、L858Rへのアファチニブの効果があまり良くないことと整合性を持ちます。今後解析が進むとL858RへのファーストラインでのTKIは見直される可能性が残るように思います。