COPDの気腫化の激しい部分に肺癌ができやすい抗がん剤 vs. EGFR-TKIの試験のメタアナリシス

2014年06月22日

(私見)ガラパゴス化する日本の小細胞肺癌治療

今年もASCO2014の報告が聞こえてくる時期となりました。以前にも書いたように、私自身は速報を追いかけることはあまりしておりません。今年は小細胞肺癌の治療で、いくつか重要な報告がありました。今までも海外と違うことはあったのですが、今後治療に迷ってくると思うので、備忘録も兼ねて、現時点で海外との相違点を整理したいと思います。

1、進展型小細胞肺癌の初回治療
これは以前も書きました通り、日本で行われた臨床試験がCDDP+CPT>CDDP+ETP[Noda K NEJM2002 PMID:11784874]であったため、現在のところCDDP+CPTが標準治療とされています。その後複数回の追試では差がなく、海外ではCDDP+ETPが標準治療とされているようです。NCCNガイドラインではCDDP+ETPだけでなく、CDDP+CPT11も一応併記されています。ただ投与方法はCDDP+ETPが3種類、CDDP+CPT11が2種類、さらにそのCDDPをCBDCAに置き換えたものが1種類ずつとすっきりしない形になっています。

2、再発小細胞肺癌の治療
海外ではトポテカン単剤(特にsensitive relapseについてはカテゴリー1)が標準となっています。日本ではアムルビシンが広く使われ、大規模phaseⅢで比較されているわけではありませんが、複数のphaseⅡ試験からアムルビシンがいいだろうといわれています。肺癌学会のガイドラインには両者が併記されています。海外で比較試験が行われ、2次治療としてのアムルビシン対トポテカンは生存に有意差がなく終わっています(Jotte R ASCO2011 #7000)。この試験のsensitive relapseのサブグループ解析では、OSがアムルビシン群9.2ヶ月、    トポテカン群10ヶ月でハザード比0.94[0.72-1.21,P=0.62]と差がなかったことが報告されています。今回、CDDP+ETP+CPT11が毒性が強くなりつつも、トポテカンより優れるとの結果が報告されました(Goto ASCO2014 #7504)。全生存期間はCDDP+ETP+CPT群18.2カ月、トポテカン群12.5カ月、ハザード比は0.67(90%信頼区間:0.51-0.88,P=0.0079)。毒性軽減のため投与法は工夫されていますが、進展型かつ2次治療で3剤併用というのは、特に高齢者の多い地方の一般医療で受け入れられるでしょうか? 少なくとも日本のガイドラインには加えられるでしょうが、あくまでも症例を選んだうえでオプションとしてということになりそうです。話がややこしくなりますが、sensitive relapseに対する、初回レジメンのre-challenge対アムルビシンの報告(Nakamura ASCO2014 #7250)もされており、こちらはアムルビシンが奏効率とPFSで少し良かったとの結果になっています。このようにアムルビシンの有効性が日本だけ、あちこちで再現されると日本ではアムルビシンの位置づけが高くなりますが、海外ではあまり変化せずということになってしまいます。

3、進展型小細胞肺癌の予防的全脳照射(PCI)
数年前、進展型小細胞肺癌の奏効例に予防的全脳照射をすると予後が改善される[Slotman B NEJM2007 PMID:17699816]と報告されました。実臨床でもおそらくそうなのかなと思っていましたが、今回日本からそれに否定的な比較試験が報告されました(Seto ASCO2014 #7503)。この試験でOSはPCI群10.1ヶ月、経過観察群15.1ヶ月(ハザード比1.38[0.95-2.01, P=0.091)で、有意差までに至らなかったものの、予後改善効果がおそらくない、もしくは逆効果であることが示されました。原因としてはいろいろ考えられるかと思いますが、一つには限局型のデータではありますが、予防的全脳照射のdoseを高めると逆に死亡率が高まるという報告[Le Péchoux C LancetOncol2009 PMID:19386548]があります。また多少見当違いかもしれませんが、進展型小細胞肺癌に対するCDDP+CPT vs CDDP+AMRも治療を強くすると逆効果になっていました[Satouchi M JCO2014 PMID:24638015]。つまり進展型小細胞肺癌に対しては、私達が考える以上に治療強化には極めて慎重に臨まなくてはならないことを示しています。現在のところ進展型小細胞肺癌に対してのPCIは、NCCNガイドラインでカテゴリー1で「高レベルのエビデンスがあり、コンセンサスがある」ことになっています。医療事情の異なる国で単純比較は難しいのはわかっていますが、今回の日本の報告でこれが書き換えられるかどうか注目されます。

以上の3点を見ても、少しずつ海外と違ってきており、日本の小細胞肺癌が独自の進歩を遂げつつあることを感じております。世界をリードしているのか、ガラパゴス化かは海外が評価することですが、日本人に対する治療の論争はエビデンスを作ることで決着していきますので、次々と臨床試験の結果が日本から発信されるのは有り難いことです。集団から個別化医療へというのが今の癌治療の流れですが、それ以前に国別の医療を組み立てる必要もあるのかもしれません。

j82s6tbttvb at 01:30│Comments(0) 臨床から 

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