進展型小細胞肺癌に対する予防的全脳照射、日本での結果ドライバー変異とPD-L1強発現の重複はどの程度か

2017年04月16日

古くて新しいP53、EGFR-TKIの効果を減弱

Mutations in TP53, PIK3CA, PTEN and other genes in EGFR mutated lung cancers: Correlation with clinical outcomes.

VanderLaan PA et al.
Lung Cancer. 2017 Apr;106:17-21.
PMID: 28285689

Abs of abs
EGFR遺伝子変異陽性例のTKIへの反応の程度と期間は多様である。共存している遺伝子変異、つまり最近広く知られつつあるが意義のよくわかっていない遺伝子変異がEGFR-TKIへの反応性、あるいは耐性メカニズムに関与しているのではないかと考え今回の研究を行った。自施設でEGFR変異を持つ腫瘍のデータベースを見直した。これらについてより詳細な分子プロファイリングを行い、EGFR-TKIの反応性と合わせて評価した。171例のEGFR遺伝子変異症例のうち、20例に詳細な分子検討が可能であった。50%にTP53変異が確認され、10%にPIK3CA、5%にPTEN変異が確認された。TKIへの反応をみると、PFSとT790M耐性の発現頻度と生存期間においてEGFR変異/TP53野生型が、EGFR変異/TP53変異陽性に比べ高い傾向にあった(P>0.05)。また19Del/TP53野生型に有意なPFS延長が見られた(P=0.035)。本検討からEGFR遺伝子変異陽性肺癌にはTP53変異の共存がよく見られ、それが予後を変えている可能性が示唆される。このような単一の遺伝子変異情報の追加が、本当に臨床に還元されるのかどうかは更なるコホート研究が必要である。

感想
過去の研究として非小細胞肺癌の15人の原発転移巣のペア検体を使って、次世代シークエンサーで詳細に遺伝子変異を調べた研究がありました[Vignot S JCO2013 PMID:23630207]。それによるとTP50変異が高頻度(12/15)で見られていました。このような併存する遺伝子変異が、お互いにどのように作用しているのかはあまりよくわかっていません。いままではドライバー変異とされる一つの遺伝子変異を標的として治療を組み立てていました。ドライバー変異とまでは言えなくとも、いくつかの変異が重なった場合、治療への反応あるいは耐性メカニズム、予後が違うのかは次の関心事です。TP53の研究の歴史はEGFR遺伝子変異よりずっと古く、また多様な癌種に染色で高発現しており、特に肺癌では喫煙と関係があるとされています。またTP53遺伝子変異には様々なタイプがありますが、主にはエクソン5-8に発生する変異が調べられています。これもEGFR遺伝子変異よりははるかに昔から知られていますが、変異部位も多く研究成果がまとまらない一因のようです。
今回の研究のポイントは、TP53変異があると、TKIでのPFSが半減し、T790M変異出現も1/4になってしまうということです。全体での生存期間中央値はTP53変異なしが32ヶ月、変異ありが25ヶ月でした。類似研究も出されており、同じくEGFR遺伝子変異陽性にTKI治療を行った場合のTP53変異、なかでもエクソン5-8の変異別に比較されており、特にTP53のエクソン8変異があるとのPFS、OSが短かったという結果でした。中でも19Delに加えて、TP53のエクソン8変異あり/なしでの差が大きく見られました[Canale M ClinCanRes2016 PMID:27780855]。
これらTP53変異とEGFR遺伝子変異の共存に関する研究はもっと直接的なものもあります。TP53変異をもともと起こしているLi-Fraumeni症候群での、EGFR遺伝子変異陽性肺癌の報告がすでに複数出されています。それらをまとめた総説[Ricordel C LungCancer2015 PMID:25433984]では、EGFR-TKIはこの症候群でない人と同じように効くようであるとしています。しかしこれらの症候群の人は若年発症であり一律に比較できるものではないかもしれません。今後はこれらがん関連遺伝子変異を一網打尽に調べた上で、最適な治療を考える時代になるでしょう。これらの変異の組み合わせを一つ一つ取り上げた前向き試験はすでに時代遅れで、今回のような後ろ向き研究から手がかりを得ていくことになると思います。



j82s6tbttvb at 01:30│Comments(0)論文メモ 

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