デイヴィッド・ハルバースタムが亡くなってから、もう3年が経つ。
ついこの間のことのようだが・・・。

遺作を読み始めるのは、つらいものである。
ようやくのことで、遺作の「朝鮮戦争」(文藝春秋)を読んだ。
ザ・コールデスト・ウインター 朝鮮戦争 上
文句なしの傑作であった。
73歳にして日本語版で1000P以上の著作、その体力、そして頭の体力に改めて恐れ入る。

これまでのハルバースタムの財産がすべて投入されている本といってよい。
「朝鮮戦争」では、さまざまな視点からストーリーテリングが進んでいくが・・・
●アメリカの内政
●アメリカの外交
●官僚、および軍司令部
●戦場
内政、外交に関して言えばハルバースタムは「ベスト&ブライテスト」、「静かなる戦争」などを書いてきたし、戦場の描写については「ベトナムの泥沼から」という特派員時代の財産がある。
特に感心したのは外交部分で、アメリカが第二次世界大戦前から中国に対する複雑な感情を抱いていること、孤立主義対国際主義の争いなどなど、現在の外交政策を理解するのに格好のテキストとなっている。
また、マッカーサーの幼年時代からたどってきた道も、たいへん興味深い。
友人はいなかった・・・とハルバースタムは描写する。

そして何より感動的なのは、戦場の兵士たちである。
丹念に退役軍人をインタビューしたハルバースタムの功績は大きいと思う。
アメリカでも朝鮮戦争は「忘れられた戦争」と捉えられているほどだから。
特に下巻168Pに出てくるエピソードには、泣けた。
"Summer of '49"でのテッド・ウィリアムズの言葉を読んだときくらい、気持ちが揺さぶられた。

ハルバースタムの新作は、もう世に出ることはない。
それでも、体系的に読み返したいと強く思う。
たとえば発表順ではなく、歴史の順番に。
「朝鮮戦争」
「フィフィティーズ」
「ベスト&ブライテスト」
「ベトナムの泥沼から」
"The Children"
「静かなる戦争」
順番に読んでいけば、アメリカの戦後史のひとつの流れは把握できると思う。

野球ものは、また別に読んでみたい。