話をしているうちに、部員が次々と行動に入り、元気よく挨拶している。
 部活の開始時間とともに、顧問の平岸が、号令をかけ、生徒は集まった。
「えー、新入生の皆さん、入学おめでとう。そして、北月学院の演劇部にようこそ。高等部の顧問の平岸兵五(ひらぎしひょうご)です」
 口のまわりに生えた不精ひげを触りながら、生徒を見渡すと、すかさず、上級生から拍手が起こり、一年生は釣られるように手を叩いた。
 平岸は、満足そうに笑うと、話を続ける。
「皆さんもご存じかと思いますが、我が北月学院の演劇部は、北海道内でも有数の設備を誇っています。そして、他校の演劇部と違い、役者とスタッフが、各々のポジションで集中できるシステムを取っています。例えば……」
 と、言いかけた時、平岸を呼ぶ校内放送が流れた。
「おっと。大谷地、先生職員室行ってくるから、続きやっておいて。できるだろ?」
「はい」
 大谷地は、さっと立ち上がり、平岸から資料を受け取ると、さっそうと部員の前に出た。

「部長をやらせていただきます、大谷地悠人です」
 一年生の女子から、かっこいい、とささやく声が聞こえる。
「平岸先生の話の続きをします。中学校で演劇部にいたコたちは、すでに経験してきたと思うけど、役者とスタッフは分かれていたものの、スタッフの人も発声練習をしたり、また、役者の人もスタッフの手伝いに入ったり、全員で協力して、ひとつの舞台を作っていたと思います」
 美夜野は、演劇部ってそうなんだと、うなずきながら聞いていた。
「北月学院では、他校とは少し違うところがあるので、まず、そこから説明しますね」
 にっこりほほ笑むと、女生徒からため息が漏れた。

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【74】憧れの演劇部8