最近のメディアの交通事故関連の記事で目立つのがブレーキを踏んだつもりでアクセルを踏んで店や建物に突撃してしまう事故、そして高速道路等で逆走してしまうものだ。

ブレーキの踏み間違えの事故の場合は至近距離から突っ込むので結構派手に近くのものを破壊してしまうことが多い。
コンビニは建物のすぐ正面、横に駐車場があるので踏み間違えは重大な物損事故、また人がいれば死亡事故にも直結しやすい。

同様に立体駐車場で踏み間違えて下に落下してしまう事故も相次いだ。
この種の事故を少しでも防止する術はないのか?


 
高齢者ばかりが起こす事故ではない
高速道路逆走を起こすのは統計的にも高齢者が多いが、踏み間違え事故は必ずしも高齢者の割合が高いわけではない。
踏み間違え事故で共通するのは、まず車がAT車であること。多くの場合運転者が何らかの理由で「焦っていたか」「パニックに近い状態」だったこと。そして停止するためにブレーキをベタ踏みしようとして実際にはアクセルベタ踏みとなって事態はより悪化。急発進&衝突という結果になっている。

AT車のドライバーになら誰にでも起こり得る話だ。

些細なことも踏み間違えのきっかけに
駐車場から出る際、R(後退)するつもりが、間違えてD(前進)にシフトを入れてしまい、焦る・・・・
あるいは前進して駐車場から出るつもりで間違えてRに入れてしまい、通常発進して衝突・・・・
出発時にコンビニでの釣り銭を床に落として焦ってアクセルベタ踏み・・・・
タバコの灰を落として焦ってアクセルベタ踏み・・・・
スマホを床に落として焦ってアクセルベタ踏み・・・・

こうした「焦るきっかけ」は踏み間違え事故を起こしていない多くの一般ドライバーが一度や二度経験しているだろう。
しかし、こうした些細な「きっかけ」を防ぐのはかなり困難だ。

むしろ「焦ったとき」にどうするか? また、些細な不注意をどう防ぐか? に焦点を当てた方が実効性が高そうに思える。焦りにつながる行動を未然に防ぐには限界があるので、焦った際の手順を体に覚えさせた方が効果的かと思われる。

発進の際に最初はクリープ現象だけを利用する癖をつける
AT車はほとんどの場合ブレーキから足を離すとアクセルペダルを踏まずとも、ソロソロ・・・と動き出す。これはAT車特有のクリープ現象と言われるものだ。
ステアリングを左右どちらかにフルに切っている場合や、駐車ブレーキがかかっている場合、上り坂ではクリープ現象のパワーが足りずに動かないこともある。

このクリープ現象を利用すれば、車を停止状態から移動状態に移す「初期動作」では通常はアクセルペダルは踏む必要がない。これを駐車場から移動する際、駐車場内ではできるだけ活用することを「クセ」にするということだ。

コンビニ等、駐車場の多くではコンクリート製の輪留が置かれている場合が多い。
アクセルを目一杯踏めば、車はこの輪留も乗り越えてお店に突っ込んでしまうが、クリーピングのみで輪留を超えることはかなり難しい芸当なのだ。
前進と後退を間違えても、クリープ現象のみで動いた車なら対応する時間的余裕もできる。
万が一人や物に当たっても深刻なダメージに至る可能性はぐっと下がる。

右足は基本的にブレーキペダルの上に
ブレーキペダルから足を離すとゆっくりと車が動きだす。
ここで右足をアクセルペダルに移してしまうから間違いが起きてしまう。
何か予想しない事態が起きた時に咄嗟にアクセルペダルに乗りかかっていた右足をすぐにブレーキペダルに移動して、停止作業を進めるのは実際にはさほど簡単ではない。
だからこそ踏み間違えが起きる。

踏み間違う前に最初からブレーキに足が乗っていれば、間違う確率は格段に下がるだろう。
アクセルペダルを踏むつもりでブレーキペダルを踏んでも事故になることはあまりないのだ。

走り屋向テクニックとして、両足ブレーキというのがある。アクセルは右足で、ブレーキは左足で・・・場合によってはコーナーリング時はアクセル踏みながらブレーキを軽く使う・・・というテク。
これは駐車場などでは全く不要のテクニック。むしろ危険であるからやめたほうが良い。

声出し確認はさらに効果を高める
電車の運転士、車掌、駅員の仕事ぶりを見ていると、「声出しによる確認作業」をしているのがよくわかる。電車利用者なら多くの人が一度くらいは見たことがあるだろう。
飛行機のパイロットも一つ一つの作業を声出しして、機長と副操縦士が相互確認している。
これは踏み間違い事故を防ぐ上でも大いに効果を発揮するだろう。
何も大声に出して言う必要はない。小声で「後ろ安全よし」「ギアはリバースOK」「少し移動」と言いながらブレーキを緩める・・・・この作業を一人の時なら声を出して。誰か同乗していて発生がためらわれる時は、「心の声」で復唱すれば、かなり効果があるだろう。

MT車ならではの事故も少数ながらある
踏み間違え事故は車の構造上、ほぼ100%近くがAT車によるものだ。 
MT車では発進時にはクラッチ操作で、動力をギアに伝える・・・という作業が加わるため、踏んでいたクラッチをゆっくりと戻す作業が発生する。一方停止時にはクラッチを離すより、踏んで動力を遮断することの方が多い。このため、ブレーキを踏んだつもりでアクセル踏んでも動力が伝わらないから、勢いよくエンジンを空吹かしする・・・ということで終わるので実害が少ないのだ。

しかし、MT車ならではの事故もある。
MT車を止めておく場合、多くの人はN(ニュートラル)にして駐車ブレーキをかけて止めておくが、これが結構急な坂道で止める場合などはあえてギアを1速か、後退(R)に入れて止める人もいるだろう。
上り坂の場合は車がズルズルと降っていかない様に1速。下り坂の場合はRに入れておく・・・といった具合だ。

こうして止めておいた車を再始動する際には、まずギアをニュートラルに戻してエンジンをスタートさせるか、あるいはクラッチペダルを踏んで動力伝達を遮断してエンジンをスタートさせることになる。
ここで、ギアが入っているにもかかわらず、エンジンをスタートさせたらどうなるか?
ギクシャクした動きながら車は入っているギアに忠実にドタドタといった感じで動いてしまうのだ。
駐車ブレーキが効いているので、コンビニの店の中まで突撃・・・といったところまでは通常いかないが、前に止めてある車に当たったり、壁や自転車に当たったり・・・といったことは簡単に起きてしまうのだ。

ここでもAT車同様の「声出し確認」は効果を発揮するだろう。
慣れないうちは面倒であるが、慣れてしまえば苦にならず「恥ずかしい事故」を防げるだろう。