蛇乃目伍長の「エアフォースの英国面に来い!」 Mk.2

歴史に埋もれたヘンな物偏愛ブログ。ただし基本 拾い食いなので安全性(信憑性)に関しては注意だ!

なに、元気でいればそれで良いさ

「今日はチャーチル工兵戦車くんに大きな段差を乗り越える課題を与えました。するとチャーチルくんは粗朶(そだ)束を持ってきました」
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「なるほど、粗朶束で段差を埋めてしまおうという訳ですね。…ちょっと距離がありますけど大丈夫かな〜?」
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「あっ…」

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「で、でもほらチャーチルくんは頑丈ですから大丈夫です!…あー、律儀に粗朶束を乗り越えていくんだ〜…」

ホルマン機関車Holman Locomotive

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1887年、フィラデルフィアのホルマン・ロコモーティブ・カンパニーが製造した機関車ですが、脚周りがなにか悪い冗談のような様相を呈しています。
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ホワイト式車輪配置表記でいうと一見4-4-0に見えて実は6-12-0(先輪6輪、駆動輪12輪、従輪0)という空前絶後の配置です。
当時これを目にした大抵の人達も何かのジョークではないかと思い、そしてそれは後に疑惑と酷評に変わっていきました。

発明者のウィリアム・ジェニングス・ホルマンWilliam Jennings Holeman(1819〜1904?)はその特許の中で「この発明の目的は鉄道旅客と輸送の速度、安全性そして経済性を高める物である」と述べています。→
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要は大型の駆動輪で小型の駆動輪を動かせば蒸気ピストンの運動速度を上げなくても列車の速度が上がる!というアイディアなのです。
たしかに大きな歯車で小さな歯車を回せば小さな歯車の回転速度は大きな歯車よりは上になりますが…。
ん〜、ギア比の計算とかボク文系だから分かんないけどコレ、このカラクリを付けても付けなくても大きな駆動輪1回転で進む距離は同じじゃないんですか?ホルマンさん。

すいません!
こっちの図だと2段目、3段目は増速ギアとして機能しています。
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回転の伝達系を色分けしてみました。
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1段目から2段目への伝達は紫、
2段目から3段目への伝達は赤、
3段目からレールへの伝達は青、です。

他の引いた図では2段目のD22と3段目のD4、2段目のD24と3段目のD6がそれぞれ噛み合っているように見えたのですがこの図では離れています。
噛み合っているとD22とD4、D24とD6の間には回転速度差による摩擦抵抗(D22とD24がD4とD6の回転を妨げる)が生まれてしまいますけど、離れている場合は問題は生じません。増速装置として完全に機能します。

細かい計算は割愛しますが1段目とD4&D6の回転速度比はおよそ6.1倍。
上の全体像から割り出した1段目とD4&D6の直径比で割ると…。
原理的には1段目が1回転する間にD4&D6が前進する距離は1段目が1回転で前進する距離のおよそ2.19倍になります。つまり2.19倍のスピードアップになる訳です。

コメント欄でご指摘してくださった方、偉そうな事言って本当に申し訳ありません!
現実的には仰って下さったとおりの機械的な問題が起こるとは思いますが、原理的には速度アップが望めることはパテント内でも示されていました。

記事を読んで誤解を与えてしまった方々にも重ねて謝罪いたします。すいません。

実際には駆動輪間の摩擦やスリップによる動力伝達のロスによって効率はかえって悪くなるという指摘が鉄道技術者達から(のみならず他の分野の人達からも)出ました。

ホルマンのアイディアの元になっているのは1881年のグラント社による「フォンティーヌ号」だと思われますが
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やはり上記の指摘通りの問題点を抱えて商業的な成功は収めていません。
この種のアイディアが失敗である事は周知の事実だったのです。

ここまでなら1907年にアンガス・シンクレアが著した「Curiosities of Locomotive Design. Development of the Locomotive Engine」にある通り「機械の基礎原理を知らない者の無害なお遊び(harmless crank)」だったかもしれません。

しかしホルマンは1896年にホルマン・ロコモーティブ・スピーディング・トラック社を設立し、1千万ドル分(!)の株券発行の新聞広告を打ちます。
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そして1897年に試作2号車をボールドウィン社に製造させました。
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(さすがに先輪-前の方の無動力輪-に例の仕掛けはいらないんじゃないですか?と諭されたのか足回りに変更が見られます)

同時に「Locomotive speeding-truck」という特許も申請しています。→
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「これはもはや詐欺なのではないか?」という疑惑の目が向けられました。
広告の仕方が派手(多数の新聞に掲載され、「この方式はすぐに主流になる」との煽り文句がつけられました)だったためもあります。
専門家に問い合わせが殺到したため「このこれ見よがしなマシンは不用心な投資家をおびき寄せるための物で、実際の価値はナイアガラの滝に金貨を投げ込むようなものだ」という見解が発表され、連邦政府の査察が入る事態となりました。

ホルマンさんの真意がどうだったのかは分かりません。
初めから知識の無い投資家をカモる気でいたのか、それとも自分の発明に絶対の自信を持っていたのか…。
わざわざ試作車を2輛も作ったのは詐欺としては非効率すぎる気もしますが実際に走らせてみれば問題点を理解していたとも思うのですが。(この点から「この詐欺は大掛かりな背後関係があるではないか?」とも推測されました)

2号車はサウス・ジャージー鉄道で何回かのデモ試走を行ないましたが後にボールドウィン社で通常の4-4-0の形態に戻されカンサス州の鉄道会社に売却されたそうです。

ロシアパテントに見るテレスコーピング・ウィング

ずいぶん前にマコーニンさんの伸縮可変翼をご紹介しましたが
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このアイディアは絶滅してしまった訳ではなく現在も(細々とではありますが)生き残っています。
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(MITリンカーン研究所で試作された3Dプリント使用のUAV)

USパテントを検索するとやはりいくつもの特許が見つかりますが、ネタ的にスゴいやつはロシアパテントにありました
特許申請者はСиротин Валерий Николаевич(シロチン・ヴァレリー・ニコラエヴィッチ?)さん。

●ガス・ダイナミック・コントロール装置付き超音速機(гиперзвуковои самолет с газодинамическои системои управления)→
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伸縮、とは言っても扇型ですね。…エルロンやフラップはどこに…?
実はピッチやヨーを制御するのが表題にある「ガス・ダイナミックコントロール装置」なのです。
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エンジン排気の流路を切り替えてテイルコーンのノズルから噴出させます。NOTARを発展させたアイディアでしょうか?


前進翼単座超音速戦闘機(одноместный сверхзвуковой самолет-истребитель с обратной стреловидностью крыла)→
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か、カッコいい…!(思い切り的に。伸縮翼に操縦翼面は無く単に低速時の安定・揚力装置となっています)
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主翼の伸縮機構はワイヤー&電気モーターです。図中12の回転方向からするとこの図は翼を縮める時の動作のようです。

ちなみにairwar.ruによるとバクシャエフのRK-I
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の伸縮機構もワイヤー&電気モーターが使用されていました。
(→ 7段落目の「Отсеки крыла могли раздвигаться и сдвигаться, убираться полностью в борта фюзеляжа тросовым приводом от электродвигателя. 」
ググる先生で英訳すると
The compartments of the wing can move apart and move, get out entirely in the side of the fuselage cable operated by an electric motor.)

そして
核弾頭付き無人航空機(беспилотный летательный аппарат с ядерной боеголовкой)→
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主翼の伸縮は単座超音速戦闘機と同じですね。
「核弾頭」は図中6番。
自衛用のAAMまで積んでいるのでやたらと生存性を高めた超オフェンシブな巡航ミサイルという位置づけなのでしょうか。

…しかし無人機で、核弾頭搭載で、自衛武器付きって…
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それフリップナイト!

あ、だから有人型もふくめて前進翼なのか〜。

しかもこれ
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機体下面にスクリュープロペラが付いています(12番)。水上発進なのですよ。欲張り過ぎ!

シロチン・ニコラエヴィッチさん絶対「戦闘妖精雪風」観てますね。
ミドルネームまで一緒の人がヴォロネジ国際空港の航空保安担当にいますが→…。
別人である事を祈ります。

スコット・ソーシャブル

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大丈夫、壊れていません。この車もあなたの視覚も。…たぶん。

スコット・ソーシャブルScott Sociableは1921年から1925年にかけてスコット・オートカー社(ヨークシャー州ブラッドフォード)が製造販売した3輪自動車です。
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3輪自動車のレイアウトは普通、一組の2輪ともう1つの車輪がアキシャルに並ぶものですが、この車の場合は4輪車から左前輪を取り除いた格好となっています。

何でこのようなレイアウトなのかと言うと、実はこれサイドカー付きオートバイを自動車の形にアレンジしたような物で、強引に表すと「キャビン・サイドカー」とでも言える物なのです。

ソーシャブルの元になったのは軍用に提案されたものですが、すでこの時点でオートバイ本体と側車が一体化され、バーハンドルではなく丸ハンドルとなっています。
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軍用としては採用されなかったため民間向けに発表されたのがソーシャブルという訳です。

スコット・オートカー社はスコット・モーターサイクル社から創業者自らが独立して創った会社ですが、ソーシャブルのエンジン(水冷2気筒2ストローク 排気量578cc)はスコット・モーターサイクルから提供されていました。
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(創業者アルフレッド・アンガス・スコット)

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第1次大戦後の疲弊した時期に価格や税制の面で有利だった3輪自動車は庶民の足として人気でした。

…ただソーシャブルは見るからに不安定な印象ですよね。リライアントの製品よりもヤバそうな雰囲気がダイレクトに伝わってきます。
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1925年までに200台が製造されそのうち110台が売れたという実績は頑張った方なのか、「やっぱり」と言うべきなのか…。

そんなソーシャブルですが大西洋の向こう側に模倣者がいました。
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マーティン・エアロプレーン・ファクトリー社が1922年に発表した「スクートモバイルScootmobile」です。
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うん、なんかデザイン的にこっちの方が安心できますね(笑)

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よりスクーター的な小型モデルもあったりします。

開発者のジェームズ・バーノン・マーティンJames Vernon Martin
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が何故ここまで大胆にソーシャブルを模倣したのか、そしてスコットとの法的な闘争があったのかは不明です。
…もっともスコット・オートカーのアルフレッド・スコットは1923年に亡くなってしまうのですが…。

マーティンもソーシャブルのレイアウトに利はないと判断したのか、その後の3輪自動車は常識的な形態となっています。
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Martinette (1932)

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Stationette (1954)

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Tri-Car Surburbanette (1954:Bassons Industriesが製造)


「…勝った!」

20160523

勝ったぞ!フハハハハ…!……はぁ…(複雑な胸中)



道理で自分のPCだけ静かだと思ったんだ。
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