自分は元々アルコールバーナーとか缶入り固形燃料が好きな人ですが、使うのはもっぱら自宅である場合が多く、外で使う機会は滅多にありません。その滅多にない機会で思い出深いのが、まだバリバリのサバイバルゲーマーであった十数年前の初冬、とある風の強い河川敷で、ドイツ軍のエスビットを使ってアルファ米を炊こうとしたら、一箱丸ごと使って20分経っても炊きあがらず、その場にいたみんなから大笑いされた、というのがありました。いつか雪辱を果たそうと思いつつ、十数年が経ってしまった訳です。
   そんなある日、某SNSで「外でエスビットだけで飯炊いたりパスタ茹でたり出来るのか」という話しが出て、「そんじゃ、固形燃料以外の火器は一切オミットした料理大会をやろう」という話しが盛り上がったのでした。そして企画されたのが、第1回固形燃料オフ“コケネン2012”だった訳です。

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今回、決して侮れぬ性能を発揮したエスビット
参加者装備率100%でしたw



■コケネンアワードの趣旨
   こんだけアウトドアグッズが発展した時代にあって、古色蒼然たる固形燃料だけ使って料理大会やる、なんてのは他で話しを聞いた事がないので、おそらく自分らが本邦初の取り組みだと思うのですが、やるからには失敗しても面白おかしくやるのが自分らの流儀です。むしろ「失敗してなんぼ」と言うべきか。しかし、失敗しようとして失敗するほど世の中は優しくはないので、やってる方は意外に真剣。その真剣さが端から見てると面白い、という感じです。
   まず、大原則として使える火器は、固形燃料だけ。具体的には、エスビットの様なタブレットタイプの物や、よくホムセンなどで見かける缶入り固形燃料、宴会なんかのお一人様用の焼き物や鍋に使う宴会用固形燃料、ジェルタイプの着火剤、等々、アルコール系やパラフィン系の固形燃料に限定しました。ちなみに、ロウソクは有りですが(昔の戦争の本でロウソクで飯盒飯炊いてる写真があったからw)、木炭は禁止としました。
   それ以外の縛りは一切なし。各人好きに何作っても良いし、出来たものはお残し禁止、という約束だけです。大事な事は、固形燃料でどんだけの物が作れるかを検証する事ですから、むしろ探究心やチャレンジ精神の旺盛さが審査の対象となる、という様な話しのノリでしたw

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米を研ぐワタクシ
その奥では、各人料理に励んでいますw



■今回の出し物
   今回エントリーしたのは、自分を入れて6人。遅刻した自分が現地に到着した時には、待ちかねた皆さんが既に料理が始まってて、自分が料理始める頃には試食が回ってきてました。今回、自分はケンミンSHOWでやってた京都市民のソウルフード、衣笠丼を事前に練習してあったので、一人でもどうにかこなす自信がありました。ちなみに、自分は京都市の南にある長岡京市の出身で、ケンミンSHOWを見るまで衣笠丼の存在すら知りませんでしたww(今度帰省したら、本場のを食べてみます)
   まずやらねばならないのは、飯を炊く事。飯盒に2合の飯を入れ、3回研いで浸水を待たずに炊きました。丁度トランポの荷室で水がぬるま湯みたいになっていて、お湯で炊く感じでした。使った火器はエスビット。当初はデカイ天ぷらガードで風よけを作るつもりでしたが、大して風が吹いてないので吹きさらしでやりました。ところが、意外にも火力が強い。ボコボコと沸き始めました。ただし、屋内より燃料消費が激しい様で、無くなる前にポンポンとタブレットを追加する必要がありました。そしてタブレットを2/3箱ほど消費した時点で、イイ感じに炊きあがりました。

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自宅では包丁使いますが、屋外ではハサミの方が使い勝手が良いです


   ご飯を蒸らしている間に、今度は衣笠丼の具の調理に入ります。量目は1人前です。用意したのは、卵、油揚げ1枚、長ネギ1本、めんつゆ(3倍希釈)適当。使う火器は、サバの缶詰に缶切りで穴一杯開けた空き缶コンロにアリゾナストーブ、燃料は宴会用固形燃料です。
   まず、油揚げとネギを料理ハサミで薄切りにして、それにめんつゆ適量と同量の水を入れ、コンロに掛けて温めます。その間に卵割ってかき混ぜておきます。ネギがしんなりしてきたら、固形燃料を新しいのを投下して、沸騰気味にさせて、溶いた卵を入れてフタをします。グツグツイイ感じに卵とじになったら完成です。

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イイ感じにネギがしなしなになった頃合いで卵を入れます

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ささーっと即興で作った割には、結構美味しかったです
まぁ、おそらくソウルフードだけに
安い、簡単、が売りなんでしょうねww



■第1回コケネンアワード
   さて、全ての出し物が終わり、締めは代用コーヒーとなりました。代用コーヒーとは、戦時中などコーヒー豆の輸入が止まった時に、大豆だのタンポポの根だので作られる代用のコーヒーの事で、今回は落花生でやってみた、との事。ピーナッツなどコーヒーになるのか、と思って聞いてみたら、「近所のお婆ちゃんが自家栽培してるのを貰ってきて、干して感想させて、自分で煎って、スリコギで粉にしてきた」との事。恐らく煎るのも固形燃料でやったに違いありません。自分らに比べると、恐ろしく手間が掛かっています。
   で、淹れ方を見てみたら、おもむろに飯盒に湯(といっても、エスビットなのでぬるま湯w)を沸かし、それに粉をドッと入れてかき混ぜるだけ。上澄みを飲むトルコ式コーヒーっぽいです。が、匂いはまんまピーナッツでした。そして出された茶色い液体を飲んでみましたが、ピーナッツ汁だと言われたらそれなりに美味い。もうちょっと濃かったらチベット茶っぽいかも。でも決してコーヒーではないww 作った本人曰く、今回は絶対イケる!(実は以前、大豆で作ってみたら、ただのきな粉汁だと言われて発奮したらしい)と思ったそうなんですが、高い探究心、懸けた努力の割には残念な出来映えで、まさにコケネンアワードを受賞するに相応しい一品となってました。

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見るからにコーヒーではないピーナッツ汁
第1回コケネンアワード受賞作品ww



■技術的報告
   こんな具合で大成功だった第1回固形燃料オフ。今回は雨も降らず風も吹かず、熱中症にならない程度に暑くもなく、固形燃料を使うには条件が非常に恵まれていたと思います。これが雨だの風だのがあれば、相当難易度が上がったに違いありません(まぁ、それはそれで面白い訳ですが)。
   今回やってみて気が付いたのは、エスビットのタブレットは思いの外、火力が強力である、という事です。宴会用固形燃料と比べると、倍とは言わないまでも、それに近い火力の強さを感じました。ただし、燃焼時間は全然短くて、2合の飯を炊くのに2/3箱使ったのは述べた通りです。逆に衣笠丼の具の用いた宴会固形燃料は30gで2個で、しかも出来た時にまだ全然余っていました。
   この違いは、エスビットと缶入り固形燃料の設計思想の違いなんじゃなか、と感じました。つまり、エスビットの方はコーヒー沸かしたりシチュー温めたりと、短時間で高い火力が求められた。ところが缶入り固形燃料の方は飯を炊くのがまず目的でしたから、多少弱めの火力でゆっくり使える様に作られた。そんな感じじゃないかと思います。
   あと、缶入り固形燃料の燃料は、密閉さえされていれば、10年そこら放置されていても性能が全然落ちない様ですが、エスビットのタブレットの方は空気にさらされた状態で時間が経つと、多少湿気るのか火の点きが悪くなる様です。

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大の大人が3人掛かりでやっと火を点けましたww
マッチも古いと先だけ取れたりして厄介です



■まとめ
   「固形燃料は屋外料理に使えるか」という、どうでも良い与太話から始まった今回の企画。結果としては、十分使えるという結論になりました。ガスバーナーやガソリンバーナーは怖くて使えないという山ガールも、マッチ1本で火が点く固形燃料なら、思う存分、山の上で美味しい物が作れますよ、という可能性を示しました。また、防災用品で固形燃料は大抵入ってたりしますが、その使い方に習熟する機会は、やはりこういうイベントしかないなー、と思う訳です。その意味で十分意義深い集まりでした。
   反省点としては、結構真面目にレシピ調べたりして、意外に美味いものを作ってしまった事。不味い物を作ろうとして不味くなるのは当然ですが、美味いものを作ろうとして美味くなるのも、ある意味当然の事です。コケネンアワードを受賞した代用コーヒーの様に、美味いはずと思って頑張ったのに不味かった、という所にドラマと面白みがあると思うので、次回からは予行演習なしとか、レシピ調査なしなどの縛りを設けてみようかー、といった話しが出てましたw

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近所のリサイクルセンターで買った宴会用固形燃料がゴロゴロ
使うのは2個だけですww
鍋の横にあるのが、空き缶コンロです