飯盒掛というのは、シベリア出兵時に日本陸軍が開発し、試験的にシベリアに送った飯盒炊爨用の器具です。その後、大々的に使われた様子がないところをみると、試験だけで不採用だった可能性が大なのですが、史料は「飯盒掛具他調弁方の件(「JACAR(アジア歴史資料センター)Ref.C03010089300、大正07年 「西密受大日記 10月」(防衛省防衛研究所)」)しか見当たらず、その後どうなったかという事については史料が見つからず、謎の装備です。

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上が純正のアルミ版、下がステンレス製のデラックス飯盒掛
棒の先は、バイク屋さんでサンダーで削ってもらいました


■製作
   飯盒掛は上記史料に図面と寸法が記載されていますので、その気になれば誰でも作る事が出来ます。ただし、寸法が尺寸法なので、その単位での材料は売ってないので、ミリ単位で近似のものを買うより他ありません。寸法表によると、棒の長さは一尺四寸、太さは二分五厘とあります。この飯盒掛を政策した時点では、違う計算をしてしまって、長さ42cm、太さ7mmと計算していたのですが、正しい太さ8mm(正確には7.938mm)の様です。
 棒の材質はアルミという事で、ホームセンターで調達しました。また、3本のアルミ棒を連結するチェーンや輪っかは、まったく同じ物を再現するというのも無理なので、適当なチェーンやキーリングで代用する事としました。ところで、飯盒掛を作成する時点で、「焚き火で使うのにアルミ棒で大丈夫なのか?」という疑問があり、そこで別個にデラックス版という事でステンレス棒でも製作する事にしました。

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アルミ棒は柔らかいので、ワイヤーカッターで切る事が出来ました

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ステンレス棒の方はどだい無理なので
注文した業者さんに予め42cmで切って送ってもらいました

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鎖は適当なクロームメッキのもの
輪っかはキーチェーンのものを代用

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チェーンを少し広げて、カシめて付けます
棒が短いのは、サイズを42mmと間違えて注文した奴です

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重さは、純正版が159g、デラックス版が415mm
火で曲がらないなら、純正版の方が担ぐのには良いです


■運用
   飯盒掛は、上記の史料によると「飯盒掛は糧秣本廠森計手考案にして結氷期および土地を掘開し得ざる場合飯盒炊爨を容易ならしむる為使用するもの」と書かれています。ここに出てくる森計手というのは、森悦五郎さんという陸軍の経理部の軍人さんで、現在ではまったく知られてない(当時も知られてたかどうか不明)の人ですが、ネットで調べてみると、「衣食経済実地養兎指南」という本を書いてた事が分かります。家畜としてのウサギの飼い方の本ですので、興味のある人は読んでみて下さい。
   さて、飯盒掛ですが、上記の史料によるとある種のトライポッドとして使う様で、3つの飯盒を引っ掛けて使います。「結氷期および土地を掘開し得ざる場合」という訳ですので、炊事壕を掘れない時(つまり、地面が凍ってる時)に使う訳です。ついでに言うと、運搬する時は背嚢に差し込んで持ち運ぶ様に書いてあって、ぱっと見た目、非常にモダンで格好良く見えます。

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飯盒は腹をこちらに向けて引っ掛けます

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持ち運ぶ時は、こんな感じで背嚢のストラップに刺します


■使ってみた感想
   さて、実際に焚き火で使ってみたのですが、まず分からなかったのが、3本の足をどの程度の角度で開くのか、という事。地面には突き刺して使うのは前提としてなかったのでしょうが、庭の畑の土は全然しまってなくて、仕方なく5cmほど刺さざるを得ませんでした。ともあれ、飯盒の底と地面の隙間が10cmくらいになる様にセットしました。
   その後は、普通に焚き火をしたのですが、ファイヤーボックスよりも吹きさらしで効率が良くないのか、薪が白くなるほど燃え尽きず、炭になって積み重なる様で、次の薪を入れるのに難儀しました。まぁ、これが普通の焚き火なんでしょうが、後発のファイヤーボックスの優秀さを改めて感じました。何のかんので20分近くかかって、やっとこさ炊き上がったのですが、出来映えは意外にも中の上くらいの出来映えでした。察するに、飯盒の下半分全体に火が当たり、いい感じに熱が加わったからでしょう。
   しかし、やはり場所は取るし、地面に直接炊き火する格好になるし、吹きさらしには違いないので、あまり使い勝手が良いとは言えません。ブッシュクラフトとしても、違う道具を使いたいところです。

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絵的には、これぞ飯盒炊爨、といった感じです

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ともあれ、風がなければ、それなりに炊けると思います


   この飯盒掛が結局のところ、陸軍で普及しなかった理由については定説がないのですが、使ってみた感想としては、おそらく、クソ寒いシベリアでは、こんなもん使ってメシなど炊けなかったのだろうと思います。炊いたところで、直ぐに凍って食べられなかったのでしょう。おそらく、アイデア倒れだったのではないでしょうか。これを上手に使いこなすチャレンジは、シベリア出兵リエナクトをやってる人たちにお任せしたいと思います。