April 07, 2012

「桃姐」@華懋廣場戲院

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最近見た香港映画「桃姐」と、
見た映画館が刺激的だった話。





時間が出来るたびにちょこちょこ観てはいるんですが、
最近映画の感想というものをすっかり書かなくなりました。
香港が映画賞シーズンなので、久々に映画の紹介をしてみます。

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「桃姐」(A Simple Life)
監督:アン・ホイ(許鞍華)
主演:デニー・イップ(葉徳嫻),アンディ・ラウ(劉徳華)

映画プロデューサーのRoger、独身で家族は全員アメリカ在住。
一緒に住んでいるのは、13歳の時から60年間住み込みで
働いているお手伝いさんの桃姐。
桃姐が家事全般の世話をしてくれるのは当たり前で顧みたことも
なかったRoger。脳卒中で倒れ、リハビリが必要となった桃姐が
自らの意思で老人ホームに入ってから始まるRogerと桃姐の「家族」
としての交流と老人ホームの出来事を中心に描かれる人間ドラマ。
なお、映画の物語は「桃姐」プロデューサー李恩霖(Roger Lee)
の実体験がもとになっています。

日本人は、もしかしたら住み込みのお手伝いさんがいて、
家族がアメリカ在住という環境から「お金持ち」と捉えられるかも
しれないけど、この家族設定は香港では特別な家庭環境ではないです。

英語タイトルの「A Simple Life」のとおり、
物語の中にあるのは、香港にありふれた地味な日常。
全編を通して映画用に誇張されているようなシーンは全く感じられません。
今日、隣の家でおきているかもしれない、
明日、自分の身におきるかもしれない、
そんな出来事が少ない台詞で淡々と、丁寧に描かれています。
けれど、決して退屈はしないのは
たぶん小さな出来事や小さな感情の動き(だけど個人の人生の中では
大きいことかもしれない)が細かく散りばめられているからだと思います。
大きな事件も、お涙頂戴の台詞も、感情的な場面もないけれど
訴えたいことは十分優しく丁寧に見る者に伝わり、心に染み入ります。
香港が誇る偉大な映画監督のひとりであるアン・ホイ監督は
本当に誰にでもありそうで、誰の心にも小さく残る「心のさざなみ」
を自然に丁寧に、そして「伝わるように」描くのがすごくうまい。
そして、どこにでもいそうな頑固でチャーミングな老人女性「桃姐」を
演じたデニー・イップ(葉徳嫻)、「ごく一般的な一香港市民」を演じた
アンディ・ラウ(劉徳華)は本当に素晴らしい俳優だと改めて思いました。

スリルや爆笑や刺激を求める映画じゃないけれど
ほのぼのとしたくすっと笑えるシーンやしみじみと切ないシーンが
多い人間ドラマ。日本のみなさんにも是非見ていただきたいです!





わたしがこの「桃姐」を見たのは、尖沙咀東にある映画館
「華懋廣場電影城」でした。尖沙咀東に映画館があることすら
初めて知ったのですが、そこがちょっと面白かったのでご紹介します。


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なにこの元夜総會!(笑)

大繁華街の尖沙咀から大通りを隔てたこの尖沙咀東エリアは
今でも夜総會(ナイトクラブ)が多くてちょっと独特の雰囲気。
マカオというよりはシンセンっぽいというか・・・(褒めてない)。
オフィスビルや大きなホテルが多い場所でもあるのですが、
夜になるとどことなく不健全なムードも漂う、香港でも独特のエリアです。
80年代日本バブル時代から香港にいらっしゃる日本人の殿方は
皆様「あの頃は本当に楽しかった…」と遠い目をされます。エッチ♪
日本マネーが元気だった頃(過去形)は、
香港の夜にも日本マネーがガンガン飛び交っていたようです。
ホステス総勢約200名、バブリーでキンキラキンでゴージャスなフロア
をロールスロイスが走っていたという伝説の大夜総會「ボルボ」があった
のもこの地域です。縮小しているとはいえ今も夜総會は点在して
いますが、バブル崩壊後につぶれた店が多かったようです。
現在の日本人はどちらかというと韓国人カラオケ(スナック系)に通う人
のほうが多い印象です。

ということで、場所が場所だったので
「すげー!!夜総會を映画館にして、内装そのままで使ってるんだ!」
と思ったら違いました。ここは、もともと映画館だったようです。
そして、かつてショーを魅せる劇場もここにあったようです。
余談ですが、ここは香港の大富豪女性【故・小甜甜】ビルのひとつ。
なお、書いたか忘れましたが、小甜甜遺産相続争いの結果は
激しい裁判の末、愛人の聰聰が完全敗訴となりました。


興味が出てきて香港ヤフーであれこれ調べていたら
場所柄、平日でも「明け方」まで映画を上映している
ということで有名なようでした。
香港は日本と比べると平日でも遅くまで映画を上映していますが
それでも週末以外は朝まで営業しているところは多くはありません。

そして、歓楽街という場所柄、黒社会のお客様も多いようです。

ネットで調べていくと、こんな体験談がネット上に載っていました。

1)華懋廣場戲院は、いつ行っても、ちんぴら風の客が多い。
特に黒社会がテーマの映画を見に行くと、満席の客もほとんど
「本物」である。


なにそのスリリングな環境w


2)深夜に華懋廣場戲院で映画を見ていたら、
一人の携帯電話がなり、それがどうやら黒社会のボスらしき方で
その方が電話を切って立ち上がった瞬間、
館内にいた20名ほどが同時に立ち上がり、全員出て行ってしまった。


外でなんの抗争が起きたんだよwwwwwwwwwww


そういえば、2009年の尖東ではこんな事件もありました。

http://blog.livedoor.jp/japanavi/archives/51702603.html
(抗争話は台風話に挟まれた真ん中あたり)

ご興味のある方、ぜひ一度「華懋廣場戲院」へ!
一般的に香港では一般人が黒社会の方々にからまれたり
抗争に巻き込まれることは聞かないので、特に心配しなくて
大丈夫だと思います。(自ら望んで巻き込まれる方は別ですが)
ただし、わたしが見た「桃姐」のような文学的な映画を選んでしまうと
「普通の映画観客」しか見当たりません。映画はよく選びましょう。


<<華懋廣場戲院 / Chinachem Cinema Circuit>>
九龍尖沙咀東部麼地道號77華懋廣場地下


DFS Galleriaが入居しているビルです。

ただし、スクリーンは小さめで、音響などはあまりよくありません。
環境など含めて、今主流の最新設備は全くない「古い映画館」です。
映画館の内装がナイトクラブスタイルの理由は未だ不明です。



ここで話を「桃姐」に話を戻します。
「桃姐」の一般公開は今年3月で現在も大ヒット中ですが、
昨年の完成後から今日までにたくさんの賞を受賞しています。

ヴェネツィア国際映画祭: 最優秀主演女優賞

台湾金馬奨: 最優秀監督賞、最優秀主演男優賞、最優秀主演女優賞

アジアン・フィルム・アワード: 最優秀主演女優賞

沖縄国際映画祭: ゴールデンシーサー賞、海人賞


次はいよいよ香港のアカデミー賞ともいわれる
香港電影金像賞です。


そういえば、今年のアジアン・フィルム・アワードに行った話、
ブログに書いてなかった!
時を遡ること3月19日、
「第六屆亞洲電影大奬頒奬典禮 // The 6th Asian Film Awards」
へ行ってきました!
毎年香港で開催されるアジア映画の祭典です。

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(※エア・レッドカーペット)


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華仔ことアンディ・ラウが、我最喜愛的男主角奬を受賞!
訳すと「みんなが選ぶアジアの大好きベスト俳優賞」。
一般ファンによるネット投票の結果だそうです。


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フィリピン映画「The Woman in Septic Tank」の主演女優さん、
Eugene Domingoさんがものすごいエンターテイナーでした。
フィリピンの国民的女優さんだと思いますが、
「我最喜愛的女主角奬」を受賞、プレゼンターとしても壇上へ。
おそらくほとんどの人が彼女を知らなかったであろう香港会場で、
授賞式が終わった頃には全員が彼女のファンになってしまうくらい
惹きつける魅力とパワーがありました。


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去年香港で記録的ヒットをした台湾映画、
「那些年,我們一起追的女孩」。ここでの受賞はありませんでしたが
九把刀監督、主演の柯震東と陳妍希がプレゼンターとして壇上へ。


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途中、
アン・ホイ監督が名誉賞であるライフタイム・アチーブメント賞を
授与されると、会場中がスタンディングオベーション!


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そして、「桃姐」ことデニー・イップさんが最優秀女優賞受賞!

そのほかの香港映画は、「武侠」が技術系の賞で強かったです。

日本映画はノミネートされている作品はいくつかありましたが
残念ながら今年は受賞はなし。


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圧倒的に強かったのは、今年のアカデミー賞で外国語映画賞を
受賞したイラン映画の「A Separation(別離)」。
作品賞をはじめ、主要な賞はほとんどこの作品が持って行きました。


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以上、アジアン・フィルム・アワード2012のご報告でした。
わたしも引き続きジャパナビでがんばります。
応援ありがとうございました!(なんの?)


ということで、世界中で既に数々の受賞をしている「桃姐」。
今月4月15日に控えている「第三十一屆香港電影金像獎」は
アジア映画の祭典である亞洲電影大奬と違い、香港映画の祭典。
もちろん今年の注目は「桃姐」だけではなく、多くの話題作が
ノミネートされていますが、「桃姐」が本拠地の香港でどれだけ
受賞するかも楽しみのひとつです。
香港電影金像獎、去年までの生中継はATVとNOWでしたが、
今年の生中継はTVBとNOWになっています。
TVBは授賞式が延長されても中継を延長せずぶった切ることで
有名ですが(アンディ・ラウ涙の最優秀男優賞受賞スピーチ中に
中継を切って苦情が殺到した過去が・・・)今年はどうでしょうか。
アンディ、もちろん主演男優賞にノミネートされています。
スリリング!!!

【参考】2011年の香港電影金像獎
http://blog.livedoor.jp/japanavi/archives/51981104.html


【追加】2012年の香港電影金像獎、結果!

桃姐、五冠〜〜〜!!!結果はこちらから!

http://blog.livedoor.jp/japanavi/archives/52089271.html


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【追加】日本全国で公開決定!
「桃姐」、2012年の日本公開も決定したそうです。
邦題は「桃(タオ)さんのしあわせ」。いいタイトルだと思います。

ついでに、後日聞いた話です。
「桃姐」でのアンディ・ラウの力が抜けた自然な演技が
とても好きという話をしていたとき、映画関係者さんから
「あれは”演技をするな”という演技指導をされたらしいよ」
という話を聞かせてもらいました。
「ちょっとそこに立ってて。はい、カット!OK!」
「えっ。何もしてないけど」
「それでいい」
みたいな感じで。
なるほど!と思えるところが多々ありました。
桃姐の中でのアンディ・ラウは、
スターの「アンディ・ラウ」っぽさがありません。
素だったのかw
もちろん全てがそうだったわけはありませんが
大スターである人ほど、普通の人を普通に演じるって
すごく難しいと思うので(個人的にはエキセントリックな
演技よりも、普通を演じる方がずっと難しいと思う)
求められるとおりに「普通」を自然に演じていた
アンディラウはすごいと改めて思います。
桃姐役のデニー・イップさんも、オーラを完全に消して
「香港でそこらにいるようなおばあさん」になりきっていて
素晴らしかったです。

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さーて、映画も楽しいですが
イースターホリデー中の今週も日曜日の夜はテレビでジャパナビ!

番組前半、豪雪の北陸特集はいよいよ最終章。
2月、【北陸ロケ中】は本当に連日の大雪でした。
福井のスキージャム勝山のホテルハーヴェストでは窓開けたら

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塊で降ってきた。


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後半の九州編での【最後の鉄道の旅】は九州縦断。
観光列車「指宿のたまて箱」から九州新幹線さくらに乗り換えて
鹿児島中央駅から一気に博多駅へ戻ります。

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鹿児島から福岡、たった1時間半!本当に近くなりました。


今週もテレビもしくは番組公式HPでの配信映像でどうぞご覧ください!


香港製作「JP TIME TV/日語大放送」 ==Enjoy Japan!==
Sun(日) 18:25~ on ATV WORLD/亞視國際台
Sat(土) 20:00~ on ATV HD/亞洲台
Sun(日) 10:00~ on ATV WORLD/亞視國際台

テレビでは見られない方も、番組HPでは24時間放送映像配信中。
毎週日曜日、日本時間20時頃更新されます。今週は4月8日!
毎週見てね!

番組HP: www.jptime.tv

放送週以降の放送映像もHPバックナンバーページで視聴可能です。
http://www.jptime.tv/common/back2012.html


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りえ

2000年〜香港移住。

香港永久居民。

香港TVタレント(電視節目主持)

日本夜景応援大使

関西観光大使

座右の銘は「芸人魂」「騎牛搵馬」

香港最長寿の訪日観光番組、香港地上波Viu TV「日本大放送 Go!Japan TV」レギュラー出演中。


「日本大放送 Go!Japan TV」

*Viu TV 99ch
毎週日曜日11:30放送!
*2012年からは台湾,シンガポール,中国等でも放送開始!


*番組ホームページ
www.jptime.tv


2012年11月番組オフィシャル中文月刊誌「Go! Japan」創刊!
毎月5日香港全域のコンビニエンスストアや新聞スタンドで発売です!20ドル!


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