「maestoso」楽譜に記載される音楽用語です。
意味は「荘厳に」「堂々と」。

対馬の海を見る時、いつもこの言葉が浮かびます。
奄美や五島の海とは、違う雄々しさを持っているように感じます。
リアス式海岸がそう思わせるのかもしれません。

対馬に来て6ヶ月が経ち、今日島を出ました。
対馬に来た時は、初めて地元を離れて暮らす不安と寂しさに(年甲斐もなく)泣きながら来ましたが、対馬を去る今日は対馬に一緒に来た仲間や対馬で出会った方々、そして島から離れるのが寂しくてたまりません。


憧れていた離島での研修でしたが、初めは新しい場所に戸惑いうまく動けない自分の不甲斐なさを感じる事や、今までの経験が役に立たず悔しく辛い思いもしました。コロナ禍の中、会食禁止となり誰にも会えず話せず孤独を感じ落ち込んだ時期もありました。

行き詰まったり気分を変えたい時には宿舎近くの海で散歩をしたり、波の音を聴いて過ごしました。いつもこの荘厳な雄々しい海が私のぐずぐずした感情を大きく包んでくれていました。
もうこの海が見れないのかと思うと寂しさが増します。

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私たち57期は、カンボジア渡航に向けて準備を進めていましたがコロナの影響で渡航が延期となりました。今後3ヶ月の予定として、4つの選択肢を提示されました。延期となった時、大きく動揺しましたが数日のうちに答えを出さなければならなかったので焦りながらも、今の自分と今後の自分、目指す姿は?と自問自答を繰り返しました。同期とも話し、お互い納得できる答えが出せますようにと悩み眠れぬ数日を過ごしました。

 事前研修は全てオンラインだったので、対馬空港で初めて会って6ヶ月、同期とは濃い日々を過ごしました。辛い時は、買い物に行きながら話をしたり、一緒に山や海に行ったり。病院ではオペ室研修に先に入っていた同期の後を焦って追い、時に仲間として時にライバルとして切磋琢磨できました。この半年、同期の存在に本当に沢山支えられました。同期が居なければ乗り越えることができなかったのではないかと思います。悩みぬいた結果、私は島を出る選択をし、同期は島に残る選択をしました。今日3ヶ月離れるけど、お互い別の場所で頑張ってまたカンボジアで会う約束をして別れました。



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渡航延期となった時、病棟スタッフから「対馬に残るっちゃろ?」「残って一緒に夜勤もしよ!」と声をかけてくださる事が増えました。島を出る選択肢と悩んでいることを知っていた大先輩から「病棟100%があんたに残って欲しいと思っとる。これは誇りに思っていい。だけどあんたの人生やりたい事をやりなさい、ここの事は気にせんでいい。」と背中を押してくれました。

人員不足で忙しい中、残留を選ばない自分が申し訳なくその選択を伝える時には涙が溢れました。それを聞いて師長さんも一緒に泣きながら「分かったよ、頑張っておいで。あなたが対馬に来てくれてよかった。身体だけは大事にせないかんよ。」と送り出してくださいました。
対馬に来て私は島の為に何かできてるのだろうか...
ただ居るだけになっていないか?とよく考えていましたが、先輩方の言葉で私がここに来た意味があった事を感じました。


 オペ室研修では、通常病棟では経験できない事も指導してくださいました。出来るところは経験させてくれようと厳しくも丁寧に指導してくださった外科・整形外科の先生方、忙しい中指導して下さったオペ室の方々、長崎県対馬病院には感謝しかありません。少しでも自分の存在が貢献できていたら嬉しいです。

ここで出会った仲間や先輩、先生方、他所から来た私を受け入れてくれた患者さんの存在に感謝を忘れずに次に進みたいと思います。辛くなったら、「maestoso」「荘厳に」「堂々と」した対馬の海を思い出します。

最終日、病棟に挨拶に行ったらみんなが「いってらっしゃい」と送り出してくれました。

ありがとう、対馬。
行ってきます!!


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長くなりましたが読んでくださった方ありがとうございました。

JH57期 Y.A