先月末、私はジャパンハートこども医療センターから車で約40分ほど離れたバティエ病院というところに「一人っ子」と言われる研修に行ってきました。

「一人っ子」とは、カンボジア人しかいない病院に一人でいって、そこで一緒に働くという研修です。

私が行ったバティエ病院は、KOICA(韓国国際協力団)の支援で建設された病院です。
以前にジャパンハートの産婦人科医が帝王切開の手術を教えに入った場所で、今では現地の医師だけで帝王切開ができるようになりました。

病院の外来は午前のみで、昼からはとても穏やかな空気が流れます。

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ここで私が見た日本の病院との大きな違いをいくつかお伝えします。

まず、彼女たちのシフトです。

ここではチームが交代で夜勤をします。ここでの夜勤は日本でいうDrの当直のようなもので、朝から翌日の午前中まで働きます。
だからでしょうか、患者さんがいない時には、昼寝をしているスタッフを良く見かけます。実際私も「ここに寝ていいよ」と声をかけられました。夜勤の日はみんなで一緒にご飯を食べて、夜は並んで一緒に寝ます。

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次に看護師や助産師がほかの業務をしているということです。ある助産師は午前中は事務のスタッフとして働いて、当直の午後からは看護師として働く、といった感じです。薬剤、受付、支払、など様々な業務を看護師が行っています。

三つ目に患者さんの世話をするのは家族というところです。
カンボジアでは家族が付き添うのが通常の入院で、清拭をしたり、ご飯を用意したり、食べさせたりするのは家族が行います。ナースコールはないので、点滴がなくなったり、何かあると家族がナースステーションに来ます。家族がいない患者さんは、隣の患者さんの家族がナースステーションに伝えにきてくれます。

家族が一生懸命に世話をしている光景や、患者さんの家族同士が助け合っている姿にカンボジア人の温かさを感じます。私はこういうカンボジア式の家族看護がいいなと思っています。

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助産師のBLOGなので、分娩の事もちょっと話します。
ここの分娩台はこんな感じです。

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足を乗せる所がありますが、2週間いて足をのせたことはありません。
分娩の時には魚屋さんが来ている様なエプロンと、長靴を履いて介助します。

分娩の中身は、、、興味がある人はぜひ現地で実際に見に来ていただくのをお待ちしています!!!

分娩後は、赤ちゃんが元気であれば、胸の上で抱っこして、2時間後に病棟に移ります。いつみてもこの光景はかわいいですよね。


さて、最後に私が一人っ子で感じた一番大きな事を話したいと思います。

この2週間、もちろんこの病院に日本人は私しかいません。病院で働く助産師や看護師の多くは英語を話すことができず、一部に英語を少しだけ話せる人がいるくらいです。

最初に困ったのはやはり言葉の壁です。クメール語の本を持って、一つずつ発音しながら話しますが、なにせ、クメール語の発音はとーっても難しいので、ほとんど伝わりません。

内容的には数秒で終わる質問も、指さしで見せながら行うので長ければ5分以上かかります。そして質問の返事を理解するのも当たり前ですがとても難しいです。
絵を描いたり、ジェスチャーを使ったり、工夫をしながらのコミュニケーションです。

コミュニケーションをとっていると、どこかで「言葉が通じないから言っても無駄かな」とか「聞くのは時間がかかるし、相手もいやだろうな」とかコミュニケーションが取れないことを言葉のせいにしている自分に気づきました。

ですが、ある日勇気を出して、話をしに行くと、彼女たちは一生懸命になって聞こうとしてくれて、ちょっと話せる英語とクメール語の本を使って、何とか話をすることが出来ました。

コミュニケーションを諦めるということは、自分が得られる情報を諦めるということ。それは患者さんの為にできることを諦めるということにつながります。自分が伝えたいこと、聞きたいこと、それを諦めないことの大切さをここで気づかされました。

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研修あと4か月、まだまだ私のコミュニケーションへの努力は続きます・・・・・

国際助産師研修生  西川 美幸