寒波が容赦なく押し寄せる早朝。
電車のホームには、次の電車を待つ人だかり。
『あぁ…寒い…。まだ来ないのか…』
たった1分が1時間のように長く感じられた。
銀色の電車が到着し、車内の暖かい空気を浴びたときはおもわずため息が出た。
ほころぶ顔を浮かべながら、ドアに身体を預ける。
窓からは、向かいホームで電車に乗り込む人だかりが見えた。
全員が電車に乗った中、電車の前でしゃがみこんでいるボサボサ頭のオバさんがいた。
『具合でも悪いのかな?』
なんとなく様子を見ていると、そのオバさんの足元から大量の液体が流れ出していた。
『駅のホームで飲みかけのジュースでも捨ててんのか?』
『全く迷惑も甚だし…』
そう思ったとき、俺はそのオバさんがケツ丸出しなことに気がついた。
『え?』
頭が混乱したまま、乗っていた電車が動き出した。
オバさんはずり下ろしていた下着を履き直し、何事もなかったかのように、向かいのホームの電車に乗り込んで言った。
そしてホームには、寒空の下、湯気だつ水溜りだけが残されていた。
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