2005年12月11日

Eva Cassidy / Live at Blues Alley5

B000009PO2Live at Blues Alley
Eva Cassidy
Eva Music 1998-07-28

by G-Tools
エヴァ・キャシディはワシントンDCの郊外で生まれ、いつも音楽のある家に育った。ベースを弾いていた父からギターを教えてもらい、弟はフィドル奏者になった。ラジオから流れる曲に合わせて、メロディではなくハーモニー・パートを自在に作りだして歌っていた。知り合いのバンドのレコーディングでバックコーラスを歌っていたところを、スタジオを経営していたベース奏者クリス・ビオンドに見いだされる。

彼女の歌を聴いた者は皆一様に驚き、その才能を確信したが、シャイで野心のないエヴァは、自分が歌手としてやっていけるとは思っていなかった。いくつかのレコード会社に契約の話を持ちこんだが、ジャンルに関係なく自分の好きな歌を歌いたいというエヴァを、レコード会社はどう売り出してよいかわからなかった。

身長が157センチという(アメリカでは)小柄なエヴァは、大柄な黒人女性のようにブルースやゴスペルを歌うことができた。音域が広く、天使の領域と思える高音まで一気に駆け上ることができた。ソウルフルで、ピュアで、エッジの効いた、矛盾をはらんだ声は聴く者の心をわしづかみにした。そして何より、彼女は自分の心をさらけ出し、その深いところから情熱をつかみだして声に乗せることができた。

自分名義の最初のアルバムである本作は、エヴァ自身が資金を出した自主製作盤だった。録音から半年後、96年7月にブルース・アレイで開かれたCD発売パーティに、エヴァは足腰の痛みから杖をついてやってきた。小さなホクロから始まった皮膚癌はその時すでに、エヴァの肺に、そして体中の骨に転移していた。告知されてからわずか3カ月後、その年の11月にエヴァはこの世を去った。33歳だった。

僕が最初にこのアルバムを聴いたのは、彼女が亡くなってから9年後の今年、オーディオ同好会の試聴会でのことだった。かかったのは2曲目のStormy Mondayだ。まったく予備知識がなかったのだが、堂々としたブルース・フィーリング溢れる歌唱にノックアウトされた。「これは誰?」というレベルを超えて、「何ダコレハ?」というリアクションだった。

音楽のジャンルというものにまったく意味を見いださなかったエヴァの選曲は一見節操がないとさえ思える。本作でいえば、Cheek to Cheekなどのスタンダードをスインギーに歌うかと思えば、Autumn Leavesはフォークソング風に大変身させる。ブルースからソウル、ポップの曲も取り上げる。Irving Berlin、Billie Holiday、Paul Simon、Sting、Fats Waller、Pete Seegerなどの作曲者を見るだけで、その多彩さがわかるだろう。

僕が個人的に気に入っているのは、そして鳥肌が立つほど感動してしまうのは、2曲目のブルースStormy Monday、エヴァがアコースティック・ギター一本で弾き語りをした7曲目のフォークソングTall Trees in Georgia、そしてスティングの名曲Fields of Goldである。

エヴァ(曲によってアコースティック・ギターかエレキギターを弾いている)を支えるバンドはきわめて優秀で、特にエレキギターのKeith Grimesは、Stormy Mondayでの強烈なブルース・ソロからFields of Dreamsの繊細なソロまで見事な活躍ぶりを見せる。録音も問題がまったくないわけではないが、かなり優秀で、エヴァのパワフルな声とライヴの雰囲気がよくとらえられている。

亡くなった当時、ほとんど無名だった彼女のアルバムは2枚しか世に出ていなかった。その後友人やバンドメンバーが少しずつ、残された音源を掘り起こし、場合によっては伴奏を新たにつけるなどして完成させ、5枚のCDが発表されている。コンピレーション・アルバムであるSongbirdはイギリスで100万枚のセールスを記録したそうだ。彼女の歌は今も世界中の人々を感動させ続けているのである。

ジャズ・シンガーではない。ブルース・シンガーでもフォーク・シンガーでもない。ただの「ソングバード」。純粋でシャイで正直で、いつも自分のことより他人のことを気にかけていたエヴァ。自分の歌に、人を感動させる力があることをなかなか信じられなかったエヴァ。そんな彼女の魂からまっすぐに出てきた歌の数々を聴くことのできる僕たちは幸せだと思う。

この記事を書くに当たっては、tさんに紹介していただいたファンサイトを参考にした。tさんには御礼を申し上げたい。

Eva Cassidy
Live at Blues Alley


Blix Street Records
1996年1月、ワシントンDCにてライヴ録音
(M13はスタジオ録音)

Eva Cassidy (vocal, acoustic & electric guitar)
Lenny Williams (p)
Chris Biondo (b)
Keith Grimes (electric guitar)
Raice McLeod (ds)
Hilton Felton (organ on M13)

1. Cheek to Cheek
2. Stormy Monday
3. Bridge Over Troubled Water
4. Find and Mellow
5. People Get Ready
6. Blue Skies
7. Tall Trees in Georgia
8. Fields of Gold
9. Autumn Leaves
10. Honeysuckle Rose
11. Take Me to the River
12. What a Wonderful World
13. On, Had I a Golden Thread

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この記事へのトラックバック

1. エヴァ・キャシディ Eva Cassidy  [ Melody Talk ]   2006年07月10日 00:29
Songbird : Eva Cassidy →「allmusic」: wma♪
2. Eva Cassidyを知ってるかい?  [ Jazz Club Net BLOG ]   2009年11月07日 00:20
Eva Cassidyを知ってるかい? 彼女の歌で癒された僕からこの秋の贈り物Autum Leavesです!! http://www.youtube.com/watch?v=XSXYu-3r1S8&feature=related それから彼女はもう天国に行ってしまったので天国からの歌のプレゼント Cheek To Cheekも聞いてください!! ht...

この記事へのコメント

1. Posted by voice and breath   2005年12月11日 22:15
はぁ〜、恐れ入りました!
本当に感動的な話ですね。
もう録音のことなんか、どうでも良いです。
ただただ、このアルバムをご紹介いただいたこと、そして、彼女の歌声を聴くことができることに感謝するのみです。
2. Posted by NIKI   2005年12月11日 22:33
私は、今年の秋に都内某所で「Blue Skies」を結構な音量で聞いて、「ガツン」とやられました。家で鳴らしたとき、「これはいい!」と確信したのでした。

色々なところに持っていくたびに、「なんていう人?」「ジャンルはなに?」と質問攻めされます。
この世に居ないのは非常に残念です。
エヴァさんのCDあと3枚ほど買いましたので、スピーカーが直ってからちゃんと聴きたいと思います。
3. Posted by jazzaudiofan   2005年12月12日 07:44
>voice and breathさん、コメントありがとうございます♪
僕はリサーチをしている間何度も目頭が熱くなりました。もっとも、彼女の歌は、彼女の「ストーリー」を知っているかどうかに関係なく聴く人を感動させる力を持っているとは思います。

>NIKIさん
NIKIさんも「ガツン」とやられましたか^^。この感動を分かち合いたい、他の人にもエヴァのことを知って欲しい、と強烈に思わせる何かがあるんですよね。
4. Posted by Roberto   2005年12月12日 18:29
Evaをさらに3枚買いました。
もう、惚れ込んでいます。
かなうことなら、新譜が聴きたい.....
5. Posted by jazzaudiofan   2005年12月12日 19:51
Robertoさん、コメントありがとうございます♪ 僕もEvaのCDは全部集めたいと思っています。
6. Posted by t   2005年12月13日 06:34
紹介したサイト、お役にたって嬉しいです。
あまり知られていないEva、すこしでも聴く人が増えるのはうれしいですね。
7. Posted by jazzaudiofan   2005年12月13日 21:42
tさん、あらためてありがとうございました<(_ _)> 一人でも二人でも、聴く人が増えてくれればと思います。
8. Posted by misty   2005年12月14日 20:43
hajiさん、こんばんわ♪
Evaの感動的なお話に、試聴してみてまたまた早く聴きたい気持ちに駆られ注文しました♪
いつも興味深いお話を有難うございます。
遅ればせながら、ナット・キング・コールとダイアナ・クラールのクリスマスCDの紹介も、数ある中で2枚を選ぶのにかなり迷っての注文でしたが(懐かしいチャーリーブラウンは今回諦めて)クリスマスCDは毎年2枚と決めて来年を楽しみにしています♪
9. Posted by jazzaudiofan   2005年12月15日 08:51
mistyさん、こんにちは♪
Evaを聴く人の輪がまた少し広がったようで、とても嬉しいです。
「クリスマスCDは毎年2枚」と決めてらっしゃるんですか。それはとても健康的ですね^^。ナット・キング・コールとダイアナ・クラール、どちらも素晴らしいアルバムだと思いますので、楽しんでくださいね♪
10. Posted by misty   2005年12月27日 16:12
5 hajiさん、こんにちわ♪

いま”オータム・リーブス”をリピートしながら聴いてますが、本当に凄いです!あぁー、泣いちゃった・・。
おかげさまで、娘からの「最高のクリスマスプレゼント」となりました。(^_^♪

ご紹介くださったtさんにも、有難うございました♪

あれ〜「禁止ワード設定されている単語が含まれています」とエラー表示されるのですが、なんでなんだろ〜???今度こそ投稿できるかな・・?
11. Posted by jazzaudiofan   2005年12月27日 17:54
mistyさん、コメントありがとうございます♪

お嬢さんからのプレゼントしていただいたんですか。良かったですね♪ 僕もこのCD、涙なしでは聴けません。

禁止ワードの件、ご迷惑をおかけしています。スパムコメント対策なのですが、数を減らしておきます。
12. Posted by yoshi   2005年12月27日 21:15
はじめまして。
私もこのアルバムに出会えて
本当によかった。
英語はまったくといっていいほど
わかりませんが、そんなことは
関係ないんだなと思い知らされました。
このライブを生で聴けた方々は
本当に羨ましい限りです。。。
私も一緒に拍手をしてますけどねw

13. Posted by jazzaudiofan   2005年12月28日 10:39
yoshiさん、はじめまして。
コメントありがとうございます♪
歌詞がわからなくても感動できるのが、歌のいいところですね。
どうしても調べたい場合は、グーグルで「曲名 lyrics」を検索すればだいたいの曲の歌詞が判明します。
(僕は"Tall Trees in Georgia"の歌詞をこれで調べました。)
引き続き宜しくお願いします。
14. Posted by ocean   2005年12月30日 22:41
はじめまして。
当 Blog にて、今年良く聴いた CD をピックアップした際、僕もエヴァ・キャシディのこのアルバムをあげました。
jazzaudiofan さんの Blog を偶然拝見したところ、極めて高い評価をされていたので嬉しく思いました。
エヴァのプロフィールなども詳しく書いていらっしゃいますので、もしよろしければ、当 Blog の http://ocean461.blog23.fc2.com/blog-entry-77.html に TB していただけますでしょうか?
不躾なお願いですが、よろしくお願いいたします。
15. Posted by jazzaudiofan   2005年12月31日 08:55
oceanさん、初めまして♪
素敵なブログを運営しておられますね。
さっそくTBさせていただきました。
引き続き宜しくお願いします。
16. Posted by ocean   2005年12月31日 10:16
こんにちわ。
TB とコメントいただきありがとうございました。お手数をおかけしました。
Jazz は不勉強ですが興味はあるので jazzaudiofan さんのお薦めを参考にさせていただき、ちょっとづつ聴いていきたいと思います。
これからもよろしくお願いいたします(BlogPeopleに登録させていただきました)
良い年をお迎えください♪
17. Posted by 試聴記   2007年09月02日 20:05
はじめまして。いつも楽しく拝見させてもらっています。私も当ブログに感動して、EVAのCDを購入した幸せものです。
ちょっと凄い事になっているので、報告したいと思います。昨日、渋谷のHMVに久しぶりに行ってみると、ナントこのCDが今現在JAZZコーナーの中で最も売れていると、宣伝しまくっていました。何でだかは、分かりませんが、うれしくなったので、思わず報告してしまいました。これからも楽しいお話を楽しみにしています。
18. Posted by jazzaudiofan   2007年09月03日 05:05
試聴記さん、初めまして。
エヴァのCDが売れているというのは嬉しいニュースですね。ありがとうございます♪ これからも宜しくお願いします。
19. Posted by 鉛筆   2008年11月13日 04:03
お初です。音楽愛好者を自称する47歳,の僕ですが、この歌手の名を胸に刻んだのは,恥ずかしながら数週間前、FM放送にて。/即、タワレコで『ソングバード』1枚を購入し,『アメリカンチューン』を2枚入荷注文し買った。(他のタイトルは、問屋が輸入に二箇月かかるし,アマゾンを利用法が解らない故)/都内ライヴハウスでメジャーデビューを夢に頑張っている,ギターを抱いた19歳女子の歌手,に『アメリカンチューン』を(ジャケの美しさも考慮し)贈呈した。その娘には1年前、『カーラ・ボノフ』デビュー盤を渡したので,今回は、これだ!と決めた。〜「カーラもエヴァも歌手としては幸せだと思うょ」の言葉を綴った絵葉書,を添えて。/…彼女は音源を聴いて、どう感じているのかな…。
20. Posted by jazzaudiofan   2008年11月13日 22:15
鉛筆さん、コメントありがとうございます♪ いいお話ですね。その歌手の方もきっとEvaの歌からインスピレーションを得られたことと思います。
21. Posted by 杉ちゃん   2010年03月13日 11:44
5 高録音盤という事で、関連リンクを「ぽちっ」とクリックしたのですが、試聴しますと、高録音盤、云々なんて関係なくなり、身体中のアドレナリンが沸騰するような感じが・・・。やばいなぁ〜と思いつつ、サンプルを聴き終わった時点で、アマゾンに注文しておりました(笑)
ただ、「Live at Blues…」の方は、品切れで、「Song Bird」の残り一枚を幸運にもGetできました。当盤はベスト盤らしく、Eva入門にはこちらの方がベストかと、いずれにしろ、遅まきながらEva漁りが続きます。
22. Posted by jazzaudiofan   2010年03月14日 09:59
杉ちゃんさん、コメントありがとうございます。

エヴァの場合は声と歌のパワーに圧倒されますので、音質なんてどうでもよくなりますよね。たしかに。これは5年前の記事ですが「エヴァとの出会い」のきっかけになったことを嬉しく思います。

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