2006年10月27日

Diane Hubka Live!4

B0002VEO2M先日来楽しみにしていたDiane Hubka(発音は「フブカ」ではなくて「ハブカ」と判明)のライブに行ってきた。平日の夜ということで、客数が気の毒になるくらい少なかったけれど、その分最前列の席で、「現在のロサンゼルス・ジャズ・シーンのオールスター」ともいえるミュージシャン達の演奏を堪能してきた。

ダイアン・ハブカはメリーランド州出身で、しばらくニューヨークで活躍していた。3年前にロサンゼルスに引っ越してきたそうだ。僕は2001年の"You Inspire Me"(現時点では最新アルバム)を聴いてファンになったのだが、彼女がロサンゼルスに移ってきたことはつい最近まで知らなかった^^;。

写真通りのきれいな女性で、透明感のある素直な声と正確な音程、誠実で楽観的な人柄がにじみ出てくるような、伸び伸びとして屈託のない歌唱が魅力的だ。彼女をの歌を聴いていると、ウキウキと楽しくなってきて、元気が出てくる。声量や音域には恵まれていないかもしれないが、自分の強みを活かす選曲やアレンジが成果を上げていると思う。他の歌手がなかなか取り上げない曲、現代のジャズ・ミュージシャンが作った曲や、器楽曲に詩をつけた歌などを発掘してきて披露してくれるのも楽しみのひとつである。

今回バックを務めたバンドを紹介しよう。トランペットはビッグバンド等で活躍し、もうベテランの域に入っている超絶技巧のCarl Saunders。ピアノは、これもニューヨークから移ってきたバップ・ピアニストJon Mayer。ベースは知名度こそ低いがリーダー・アルバム"2 Trios + 1 Live!"で僕をノックアウトしたChris Colangelo。ドラムだけはちょっと実力・経験不足だが、Sara Gazarekのバンド等で活躍している若手Matt Slocum。

セットの冒頭に、このカルテットだけの演奏が1曲ずつあったのだけれど、これがもう最高だった。この後で出てきたハブカが「客席でずっと聴いていたかった」といったのはお世辞じゃないと思う^^。

ハブカの歌唱はCDで聴いていたのとまったく同じ印象で、意外性はあまりなかったけれど、例のきれいな声で比較的丁寧に歌っていて、とても心地よい。最近、映画音楽の曲ばかりを歌った新アルバムを録音した(ただしレーベルはまだ見つかっていない)そうで、今回のライブではその中からいくつかの曲が披露された。

僕などは歌に関する知識があまりないので、I'm Old FashionedやThe Look of Loveなど、「へ〜、これも映画音楽だったんだ」という発見があった。また、『ティファニーで朝食を』のテーマ曲(インスツルメンタル)に歌詞をつけたり、メジャーとはいえないロバート・アルトマン監督の"A Long Goodbye"の曲(Jack Sheldonが担当したらしい)を取り上げるなど、さすがの選曲眼を発揮していた。それ以外にも、3枚のアルバムに収録されていない新たなレパートリーをたくさん聴くことができたのが嬉しい。

バンドの印象も書いておこう。Saundersはテクニックが凄く、超高速フレーズが次から次へと途切れずに溢れ出てくる。どんな曲でも速吹きに流れるクセがないでもないが、とにかくウマイ。Jon Mayorはバリバリのバッパーで、安易なクリシェに頼らない、ちょっとユニークでイマジネーション溢れるかっこいいフレーズをどんどん繰り出してくる。バラード曲Never Let Me Goでのバッキングは息を呑むほど強力で美しく、感動的ですらあった。

Chris Colangeloについては、僕はCDで彼のベースの「音」に惚れ込んでいたのだが、生で聴くのは初めて。ピックアップを使わず、生のベースの前に持参のマイクを1本立てて音を拾うという近頃珍しい方法で、やはり素晴らしい音を奏でていた。強靱な右手の指でビンビンと弦を弾いて楽器全体をしっかり鳴らす、僕の好きなタイプのベーシストということがわかり、あらためて惚れ直した^^。

若いドラマーのMatt君はこれだけのメンツに囲まれて頑張っていたけれど、やっぱり実力不足が否めなかったかな。もうちょっとライドシンバルをしっかり叩いてバンドをドライブして欲しいし、曲の途中で叩き方やリズム形式を変えて、もっと変化をつける必要もあると思う。

注文ついでにもうひとつ。ハブカは7弦ギターも弾く人で、2曲ほどソロをやったのだが、正直いって、ギターの腕前はプロとして人前で演奏するレベルには達していないと思う^^;。緊張していたのかもしれないが、ちょっとお粗末でした。

ギターといえば、第2セットで、客席にいた同じ7弦ギターの名手Ron Escheteが飛び入り参加したのも嬉しいハプニングだった。僕が彼の演奏を聴くのは初めてだったけれど、Steamersに毎月のように出演している常連だ。飛び入りで、他の人のギターを渡され、曲名とキーだけをきいてすぐにカッコイイ演奏を決めるというのは、本当に凄いことだと思う。

休憩を含めて2時間半ほど、ダイアン・ハブカの素晴らしい歌唱と魅力的な曲、そして強力なバンドの充実した演奏を楽しんできた。最近録音したというアルバムを発表してくれるレーベルが、早く見つかるといいな、と思う。

Diane Hubka Quintet
2006/10/25
@Steamers

Diane Hubka (vo, g)
Carl Saunders (tp)
Jon Mayer (p)
Chris Colangelo (b)
Matt Slocum (ds)
Ron Echete (g) on 2nd set (7) & (8)

First Set
1. Close Enough for Love
2. I'm Old Fashioned
3. The Look of Love
4. Haven't We Met?
5. It's Always 4pm
6. O Pato
7. Miss Harper Goes Bizarre

Second Set
1. Lovers in New York (Theme from Breakfast at Tiffany's)
2. Never Let Me Go
3. He's a Tramp*
4. A Long Goodbye
5. Agua de Beber
6. Manha de Carnival
7. Alone Together
8. Wild Is the Wind

*この曲はディズニーのアニメ映画『わんわん物語(Lady and the Tramp)』で、声優としても活躍したペギー・リーが作詞(作曲?)して歌った曲らしい。知らなかった!

<参考アルバム>
You Inspire MeYou Inspire Me
Diane Hubka
Be Bop Big BandBe Bop Big Band
Carl Saunders
Full CircleFull Circle
Jon Mayer
2 Trios + 1 Live2 Trios + 1 Live
Chris Colangelo

☆1日1度のクリック、ポチっとお願いします☆
人気blogランキング
jazzaudiofan at 06:21│Comments(3)TrackBack(0)Jazz etc. Live! 

トラックバックURL

この記事へのコメント

1. Posted by stardust   2006年10月29日 15:18
初めまして。いつも楽しみに読ませていただいています。早速Diane Hubka さんにメールをしCD3枚東京に送ってもらいました。可愛らしい彼女の写真入のネームカードにthank youの裏書があり、なんか得した気分でした。私も40年来のJAZZ好きで一時期はJAZZ雑誌にも関わっておりました。今後とも楽しい記事をよろしくお願いいたします。
2. Posted by poco   2006年11月01日 21:21
はじめまして。私もこちらのブログでDiane Hubkaを知り、先日CDをオーダーしたところです。まだ手元に届いていないのですが、とても楽しみにしています。これからも色々なアーティストの紹介をお願いします。
3. Posted by jazzaudiofan   2006年11月02日 10:08
pocoさん、コメントありがとうございます♪ これからも「ジャズ&オーディオ通信」を宜しくお願いします!

この記事にコメントする

名前:
URL:
  情報を記憶: 評価: 顔   
 
 
 
Welcome!
1日1度のクリック、
ポチッとお願いします<(_ _)>↓
人気blogランキング
Profile

jazzaudiofan
ジャズとオーディオが好きで、アメリカに住んでます。Audiogon等を通じてアメリカからオーディオ機器を個人輸入したい方をサポートしています。詳しくはこちらをご覧下さい。