2011年03月08日

Kaiser Acoustics Kawero スピーカー

System-Feb2011前回の記事で書いたラスベガスのT.H.E. Show 2011で展示したシステムが、短期間ではあるが、ほぼすべてうちにやってくることになった。直接関与しているConcert Fidelityの機器を預かることは前から決まっていたが、スピーカーもケーブルも、それぞれの会社がヨーロッパまで送り返すには費用がかかるので、「しばらく預かって欲しい」ということになったのである。

Silicon Arts Design(コンサート・フィデリティの姉妹ブランド)のZL-200モノブロックパワーアンプだけは、ある評論家にショウから直接送ったのだが、それを除いても、総額24万ドルのシステムが我が家に来ることになったわけである。こんなことは一生あるまいと思われる、ラッキーなシチュエーションだ。

Kaiser-Kawero-1T.H.E. Showで展示したシステムの花形は、ドイツのKaiser Acousticsによるスピーカー、Kaweroである。比較的スマートな形をしていて、(20Hz〜20kHzまでの可聴帯域をほぼ全てフラットに再生するという意味での)フルレンジ・スピーカーとしてはそれほど大きくないカウェロだが、1本およそ120kgと非常に重く、配送されたうちのガレージから2階のリビングに上げるために友人2人の助けが必要だった。

Kaiser-Kawero-3カイザー・アコースティックは室内音響学や心理音響学の専門家が中心になって立ち上げたメーカーで、カウェロはその最初の製品である。基本は3ウェイだがユニークな構造。ツイーターはセルビアのRAAL製のリボン・ツイーターで、別筐体になっており、本体とはケーブルで接続する。左右の向きを自由に変えられるので、音場の広がりや音像のフォーカスのシャープさを調整できる。

Kaiser-Kawero-2スピーカーの前面上部、ツイーターに近い位置についているのが6インチのミッドレンジ・ドライバー。これだけならそれほど低域が出るはずもないのだが、背面に8インチのウーファーと、9インチのパッシブ・ラディエーターが付いており、底面に向かって開いているポートと相まって、低域の応答は20Hz台まで伸びている。これらのユニットは全てデンマークのAudiotechnologyによる特注品。ちなみにこのオーディオテクノロジー社はスキャンスピークやディナウディオの創業者が興した会社である。

このスピーカーの大きな特徴として、ボディはタンクウッド(tankwood)という特殊素材でできている。合板と樹脂を何層にも重ね合わせて圧力を加え熱処理をしたもので、MDFなど足元にも及ばない密度と強度を兼ね備えている。銃で撃っても貫通せず、この素材で戦車を作ることもできるというのでタンクウッドと呼ばれているらしい(ホンマか?)。だからこのスピーカー、見かけによらずビックリするほど重いのである。ゲンコツで叩いてみても鈍い「コツコツ」という音がするだけで、振動しにくいデッドな素材であることが分かる。これに突き板処理をし、何重にもラッカーを塗装したフィニッシュは高級家具並みの豪華さだ。その美しさはうちに来たピアノブラックでは分かりにくいが、カイザーのウェブサイトで他のフィニッシュを見て欲しい。

内部配線には吟味した高級線材を使い、現在は、後に言及するスペインのFono Acustica(フォノ・アクースティカ)の銀・金・パラジウム合金線材が採用されている。クロスオーバーの部品も吟味に吟味を重ね、Duelund(デュエランド)、Mundorf(ムンドルフ)、WBTの最高級部品を採用。あらゆる面で最高のものを使い、世界最高級のスピーカーを目指して作られているのだ。米国での販売価格はペア6万6000ドルだから、お値段の方も世界最高レベルである。

カウェロの音を、僕はアメリカのディーラーであるHiFi Oneのショールーム、昨年10月のロッキー・マウンテン・オーディオ・フェストでの自分たちの展示部屋、ラスベガスのT.H.E. Showの展示部屋、そして現在は自宅のリビングルームと、4つの異なる部屋で聴いているが、知れば知るほど本当に素晴らしいスピーカーだと断言できる。

もっとも、実際に聴くまでは基本的なデザインについていくつか心配があった。まず、僕はウーファーが正面を向いていないスピーカーを信用していない。理論指向の人は、低音には指向性がないからウーファーがどっちを向いていようと関係ないなどと言うが、そういうスピーカーは低域のつながりに違和感を感じることが多い。ウーファーが後ろを向いている例としてカナダのヴェリティ・オーディオがあるが、Parsifalなどをショウで聴く限り、低域の質感はともかく量感・迫力が不足している。僕は低域の風圧をどしっと胸に感じたいので、ウーファーは正々堂々と正面を向いておいて欲しいのである。

ところが、このカウェロはウーファーが背面にあるにもかかわらず、低域が非常にうまく統合されている。中域からのつながりに違和感がないし、量感・迫力もたっぷり。クロスオーバーをよほどうまく設計してあるのだろう。後ろの壁からある程度離して設置するという原則さえ守れば、部屋とのマッチングも難しくない。友人のRさんは、背面のウーファーとパッシブ・ラディエーターが上下に離れていることが、定在波の低減に役立っているのではないかと言っていた。

このスピーカーを見て多くの人が感じる心配の二つめは、リボン・ツイーターである。反応速度の違いからミッドレンジ・ドライバーとの統合が難しく、出力過多で耳がキンキンすることも多い。ところがこのRAALのリボン・ツイーター、嫌な音を全く出さず、実に自然にミッドレンジ・ドライバーとつながっているのである。たくさんの人から、「今まで聴いたリボン・ツイーターの中で最高の音」との感想を得ているし、僕もそう思う。ツイーターとミッドレンジ・ドライバーが「一つの声」で話しかけてくるのだ。

そして、いちばん大事な中域は艶やかで音楽的。聴いていて「ホ〜ッ」とため息をつきたくなるような、美しい中域なのだ。全体的な印象は、極めて高い解像度と情報量を提供しながら、音楽を音楽らしく、有機的に聴かせてくれる。例えばYG Acousticsのように、解像度とスピード感のみを強調した、ドライで冷たく無機質なスピーカーとは対極にある。

僕のアヴァロン・アイドロンと比べてみると、まず解像度・情報量という点でカウェロが大きく上回る。これは、アイドロンのあった場所にカウェロを設置して音を出した最初の10秒で判明した。低域の量感・迫力という点でも、カウェロの方が1枚も2枚も上である。定価ベースで価格が3倍(アイドロンは新品だった12年ほど前の定価が2万ドル)なのだから、当然といえば当然ではあるが。

組み合わせるアンプとしては、僕のマッキントッシュMC275でも素晴らしい音で鳴っているが、本当の意味での低域(40Hz以下)は量も不足しているしダンピングがきいていないように感じる。ただ、これはアイドロンでも常々感じていたアンプの限界であって、スピーカーの問題ではない。アコースティックなジャズを聴く分には十分なので僕はこれでも満足しているが、電気系の音楽を聴く人、部屋を揺るがすような20〜40Hzの低域をしっかり出したい人は、100W以上の半導体アンプを使った方がいいかもしれない。

外見は突き板仕上げが美しく、すっきりとエレガントなデザインも好ましい。フットプリントが小さく、上に伸びるほど細くなっているので威圧感がない。いわゆるWife Acceptance Factor (WAF、奥さんの許容度)が高いスピーカーだ。実際、うちの嫁さんも、やたらでかいアイドロンよりこちらの方がスマートだと気に入っている。

最後にもうひとつ。どのスピーカーにも「最低音量」というのがあり、一定の音量を超えないと本領を発揮しない。それを下回ると音が痩せてしまい、とたんにつまらない音になるという境目があるものだ。このカウェロは、その最低音量が比較的低いのである。つまり、深夜に隣近所に迷惑にならないような控えめな音で鳴らしても、高品位な音が楽しめるのである。この点、アイドロンよりも使い勝手がいい。

カイザー・アコースティックスのカウェロ。あらゆる点から見て世界で最も優れたスピーカーのひとつであることは間違いない。これさえ持っていれば、スピーカーについては「上がり」で、さらに上を目指す必要はないと思う。そんなスピーカーを自宅でじっくり聴く機会を得られたことは本当にラッキーだ。

なお、このスピーカー、日本の住環境にも馴染みやすい特性を備えているので、資金力があり、世界最高のスピーカーを求めている日本のオーディオファイルにもお勧めである。関心のある方はメールをいただければディーラーに紹介します。

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