2011年12月01日

Soka BluePort Jazz Festival 2011

うちから車で30分ほどのところにあるSoka University of Americaに新しいコンサート・ホールが完成したのは今年の春。4月8日に非公式なこけら落とし(?)としてケニー・バロンのソロピアノ・コンサートが開催されたことはこの記事で述べた。このホールが正式にオープンし、2011/12年のシーズンが始まったわけだが、その大きな催しとして、Soka BluePort Jazz Festivalが10月28日から30日にかけて開催された。

BluePortは同大学の教授でもあるJim Merod氏が主宰しているマイナージャズレーベルで、過去6年にわたってJazz Monstersと題したコンサートを学内で開催し続けてきた。彼が数十年にわたって築き上げてきた人脈と企画力が新しいコンサート・ホールという場所を得て、一気に花開いたわけである。(ちなみにBluePortのCDは筆者が運営しているオンライン・ショップEastwind Importで販売している。)

フェスティバルは3日間にわたって開かれたが、僕は金曜と土曜の2日のみ参加した。主催者から「音が一番いい」ときいたセクションで2日間たっぷりとジャズを楽しむことができた。

(写真提供: Photos by Greg Weaver)

10月28日
Geoffrey Keezer - Peter Sprague Band

01-Keezer-Sprague-Bandジェフリー・キーザーがNYからサンディエゴに引っ越してきたのは5〜6年前のことで、彼がサンディエゴ〜LA近辺の優れたジャズミュージシャンと活動し始めるのに時間はさほどかからなかった。女性歌手のデニース・ドナテッリの2010年のアルバムWhen Lights Are Low(グラミー賞2部門ノミネート)などはその例だが、ギタリストのピーター・スプレイグとも意気投合し、双頭コンボを結成。今年に入って同グループのデビューCD、Mill Creek Roadを発表した。

02-GeoffreyKeezerこのバンド、通常のメンバーはドラムがDuncan Moore、ベースがHamilton Priceだが、今回のコンサートではDarek Olesがベースを担当し、Mill Creek Roadから6曲を披露した。スプレイグのニューエイジ的なリラックスした感覚とキーザーのやや先鋭的な感性がうまい具合に化学反応を起こしているようだ。当日のスプレイグは調子が今ひとつだったのか、ソロに切れがなかったが、爽やかなコンテンポラリー・ジャズ系の曲に乗ったキーザーの超絶テクを駆使したホットなインプロビゼーションがスリリングだった。

会場で購入したMill Creek RoadのCDをその後も聴いているが、なかなか爽快だ。トラディショナルな4ビートの曲はほとんどないが、けっこう聴かせる。

Trio da Paz with Maucha Adnet

03-TrioDaPaz-MauchaNYで長年活動しているブラジリアン・トリオ、トリオ・ダ・パズを見たのは初めてだったが、実に素晴らしいバンドだ。ホメロ・ルバンボは間違いなく世界最高レベルのギタリストで、その超絶技巧、枯れることを知らない泉のように湧き出る流麗なアイデア、クリーンで美しい音色にノックアウトされた。ベースのニルソン・マッタはパワフルでぶっとい音と強靱なテクニック、ドラムのドゥドゥカ・ダ・フォンセカもテクニシャンだが、時と場合によって繊細なリズムキーパーに徹することもドラマーの役目だと心得ている。

このトリオの演奏にはとにかく口をあんぐり開けて驚嘆しっぱなし。後半に歌手のマウシャ・アドネットが出てきた時は、この素晴らしいトリオが歌伴になってしまったのでがっかりした。マウシャもボサノバ歌手として悪くはないかもしれないが、このトリオの超人的なレベルではない。

10月29日
Tierney Sutton with Mike Garson

04-TierneySutton-MikeGarsonティアニー・サットンはここ十数年同じバンドで活動しているので、クリスチャン・ジェイコブ以外のピアニストとの組み合わせは珍しい。ジャンルを超越する天才ピアニスト、マイク・ガーソンとのデュオで、ビル・エバンス・トリビュートとして、エバンスが作曲もしくはよく演奏した曲を披露した。サットンの声と歌唱は鳥肌が立つほどの美しさで、ガーソンも美麗なトーンと、時には先鋭的なタッチも交えてスリリングな歌伴を務めた。

興味深かったのは、"Waltz For Debby"と"Tiffany"のメドレー。ティファニーというのはエバンスの最後のドラマーだったジョー・ラバーバラの娘で、エバンスが当時小さな女の子だった彼女のために書いた愛らしい曲だ。そこまでは僕も知っていたが、サットンによるとそのティファニーさんが後に成長して自分で歌詞をつけたという。本人から許可を得てその歌詞を教えてもらい、今回のステージで披露することにしたらしい。

その他、マイク・ガーソンが作曲しサットンが詩をつけた曲なども披露。後半はハンガリーのフリューゲルホーン奏者Kornel Fekete-Kovacsが参加し、「枯葉」はサットンが全編スキャットで唄い通すなど、スリリングな場面もあった。最後はジャムセッション的なブルースで、サットンはホレス・シルバーの"Doodlin'"のメロディをスキャットで唄った。後で彼女にそのことを指摘したら、「そう、私ブルースはうまく唄えないので"Doodlin'"を借用したの。歌詞までは覚えていなかったから…」と言っていた。類い希な美声と完璧なテクニックを持つ彼女にはブルースが苦手という弱点があった!そう言われてみればそうだよな…。

ちなみに会場で購入しサインをしてもらったTierney Sutton Bandの最新CD、American Roadは実に素晴らしい。スタンダードの現代的な解釈を続けてきたこのバンド、今回は「アメリカーナ(アメリカ的なるもの)」をテーマに間口を広げ、黒人霊歌からガーシュウィン、バーンスタイン、第2のアメリカ国歌といわれる"America The Beautiful"なども取り上げている。創造力豊かなアレンジは健在で、より大きなリスクをとって大胆なアレンジにも挑戦している。最近のダウンビート誌で極めて珍しい5つ星を獲得していた。Telarc亡き後BFM Jazzというマイナーレーベルに移籍を余儀なくされたが、大いに健在振りを示したと言っていいだろう。

Charles McPherson Quintet with Gilbert Castellanos

05-CharlesMcPherson5ベテラン・アルト奏者チャールズ・マクファーソンは2008年にライブを体験したが、その時と比べて全くパワーダウンしていない。バリバリのビバップ・スタイルで、「ほんとにこのテンポでいくの?」と心配になるほどの超高速もしっかり吹きこなしていた。

06-McPherson-Castellanos感心したのはトランペットのGilbert Castellanosで、リー・モーガンを思わせる豊かなトーンと素晴らしい技術の持ち主。端正かつアーティキュレートな演奏に大いに好感を持った。LAで活躍している若手ドラマーのKevin Kannerはしばらく見ないうちに随分成長していて、実に素晴らしい、アグレッシブで切れ味の鋭いドラミングを披露していた。ベーシストのJeff Littletonは初めて見たが、グループの構成上、あまり目立つ活躍がなかった。ピアニストのRandy Porterも知らない人だったが、なかなかいい感性を見せていた。オレゴン在住とのこと。心に留めておきたいピアニストだ。

Trio da Paz and Anat Cohen

07-AnatCohen今回のフェスティバルで僕が一番楽しみにしていたのは、最近注目されている若手クラリネット/サックス奏者、アナット・コーエンである。数年前からCDを何枚か買っており、最近はWest Coast Jazz Partyなどストレート・アヘッド系の西海岸のミニ・ジャズフェスなどにも登場していることは知っていたが、ライブをまだ見たことがなかったのだ。

トリオ・ダ・パズが単独で数曲(何と前日演奏したのと同じ曲!連続で来ている人もたくさんいるんだから曲目は変えろよ…)演奏した後、コーエンが登場。明るく気取らず、演奏するのが楽しくて仕方がないという感じが伝わってくる、気持ちのいいミュージシャンだ。見ていてこちらも思わず微笑んでしまう。

ショーロ、ボサノバなどのブラジル音楽を数曲に、Jimmy Rowlesの名曲"The Peacocks"を演奏。クラリネットは僕が敬愛するケン・ペプロウスキのウッディでウォームなトーンと比べると、軽い音色で、音の重みというか、エモーショナルな訴求力ではペプロウスキのような名手にはまだかなわないな、と感じた。もっとも実力は十分で、エネルギッシュでエンターテイニングなミュージシャンであることは間違いない。CDを聴く分にはテナーサックスよりクラリネットの方がいいと思っていたのだが、今回のライブではテナーの演奏が予想以上に良かったので感心した。

僕が行けなかった10月30日は、7弦ギターのRon Escheteのトリオと、Mike Garson Sextet (Kornel Fekete-Kovacs-フリューゲルホーン、Tierney Sutton-ヴォーカル、Lori Bell-フルート、Bob Magnusson-ベース、Duncan Moore-ドラム)が出演。

今年が第1回となったSoka BluePort Jazz Festival、まだ認知度が低く、会場は満杯にならなかったが、音楽的な内容はとても良かった。これから毎年、どんどん充実し、この地域のジャズシーンで大きな存在になっていくことを期待したい。

(参考アルバム)
Mill Creek Road
Geoffrey Keezer & Peter Sprague Band
B004MFOAGE

American Road
Tierney Band Sutton
B005D1IFY4

Clarinetwork-Live at the Village Vanguar
Anat Cohen
B003A06196

Live at Jazzbaltica
Trio Da Paz
B0013D8JT2

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