>秋に聴きたいジャズ

2006年09月23日

Shahida Nurullah / The Ruby and the Pearl4

Shahida_NurullahThe Ruby and the Pearl
Shahida Nurullah
Alembic Arts 2004-06-29

by G-Tools
南カリフォルニアでもにわかに気温が低下して、本格的に秋を感じるようになった。「秋に聴きたいジャズ」約1年ぶりの追加作品として、Shahida Nurullah(シャヒーダ・ヌルラー??)という女性歌手のデビュー・アルバムを紹介したい。デトロイトで活躍しているらしいが、全国レベルで名前が知られているとはいいがたい。リアルタイムでアーティスト名が表示される便利なネットラジオ「radioio Jazz」がなければ、僕も知らずに終わったかもしれない。

この「秋ジャズ」コーナーで紹介するアルバムは、秋にちなんだ曲を取り上げていることを条件にしているが、本作は冒頭に「Autumn in New York」が収録されているのでバッチリ合格である。ヴァースから丁寧に唄っているのが好ましい。「Lullaby of the Leaves」も正確には秋の歌ではないけれど、何となく秋っぽい雰囲気があると思う^^。

Shahida Nurullahの歌声はとても素直で、サラ・ヴォーンやカーメン・マクレェ系の発声である。技量も立派なものがあるけれど、それをみせつけるようなところはなく、アドリブさえも控えめである。でも、その素直で、シンプルで、オプティミズムに溢れる歌唱には何ともいえない魅力がある。生きていることへの喜び、とでもいえばいいだろうか。
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2005年11月03日

ステファノ・ボラーニ・トリオ/愛の語らい4

B00009VGKE愛の語らい
ステファノ・ボラーニ・トリオ
ヴィーナスレコード 2003-06-25

by G-Tools
3枚連続で、アントニオ・カルロス・ジョビン曲集を紹介することになった。「秋に聴きたいジャズ」11枚目はしかし、れっきとした<ジャズ>アルバムだ。イタリアの若きピアニスト、ステファノ・ボラーニのトリオ作品である。

若いといっても1972年生まれで、15歳でプロ入りしたというから経験に不足はない。エンリコ・ラヴァ(トランペット)のバンドでも活躍しているが、ヴィーナス・レコードの原哲夫プロデューサーに見いだされ、2002年の『ヴォラーレ』を始めとする自己名義のトリオ作品をいくつか発表している。

そのうち、秋に聴きたいのはなんといってもこの『愛の語らい』につきる。僕が大好きな秋の曲、「三月の水」(CDでは「三月の雨」と表記されている)が収録されているほか、アルバム全体の雰囲気が秋らしい。

僕はボラーニのピアノに大変な魅力を感じている。まずトーンとタッチが美しく、表情が豊かである。同じイタリア人ピアニストのエンリコ・ピエラヌンツィほどリリカルではなく、アントニオ・ファラオほど硬質ではない。両者の中間という感じで、ロマンチックな歌心と、知的なアレンジやソロを構築する能力、遊び心がちょうどいい塩梅にバランスしている。

アルバムはタイトル曲「愛の語らい」で幕を開けるが、最初の数小節、ピアノのイントロで僕はノックアウトされてしまった。哀しくも美しいメロディはジョビンの才能によるものだし、さらっと弾いているようだが、なかなかこうは弾けないと思う。まずピアノの音が美しい。細かいところまでよくコントロールされたフレージングと、両手のバランスも絶妙。クラシカルな香りを漂わせた優雅なアレンジである。

そして2曲目は、一転して軽快なボサノヴァ・リズムだが、これも弾むようなイントロから一気に引き込まれてしまう。トム・ジョビンの曲を集めたピアノ・トリオの作品というのは多くないが、編曲という点でもこのアルバムは大変優れていると思う。

注目の「三月の水」は9曲目に収録されていて、ちょっとつっかかるような、ロックを思わせる不思議な8ビートがおもしろい。メロディが現れるまでの、ちょっとアウト気味のインプロビゼーションに、ボラーニの遊び心がよく出ている。2分23秒とみじかく、ちょっとした小品の趣だが、インスピレーションに溢れた演奏だ。

その他にも、ピアノの弦を直接叩く手法を効果的に使ってミステリアスな要素を加えたソロ・ピアノによる「白と黒のポートレイト」、これまたアレンジが見事な「おいしい水」や「ワン・ノート・サンバ」など、聴きどころがいっぱい。ピアノトリオによるジョビン作品集は珍しいが、ボラーニはジョビンの音楽性をしっかり消化したうえで、ときには大胆なアレンジを導入し、優れたジャズアルバムに仕立て上げたと思う。このアルバムはまた、さまざまな編成やアプローチで料理されても輝きを失わない、ジョビンの曲自体のすばらしさ、力強さを再確認させてくれる。

ところで、ブラジルを代表する作曲家の書いた曲をイタリアのピアノ・トリオが演奏し、日本人がプロデュースしたこの作品、「音楽は国境を越える」ことを体現したようなアルバムである。こんな素敵なアルバムを手に入れられる日本のジャズファンは、恵まれていると思う。
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2005年11月02日

Morelenbaum2/Sakamoto / Casa5

B00005LK4Cカーザ
MORELENBAUM2 / SAKAMOTO
ワーナーミュージック・ジャパン 2001-07-25

「秋に聴きたいジャズ」シリーズの10枚目も、前回のElis & Tomと同様「番外編」と呼ぶべきかもしれない。ジャズではない。アントニオ・カルロス・ジョビンの作品集なのだが、ボサノヴァというカテゴリーにも入りきらない。ジャンルを超越した、どこまでも美しい音楽。10年に1枚出るかどうかという傑作アルバムである。

坂本龍一がジョビンのバンドで活躍していたモレレンバウム夫妻と組み、ジョビンの家で、生前ジョビンが弾いていたピアノを使って録音した(「カーザ」はポルトガル語で「家」を意味する)。大半は坂本のピアノ、ジャキス・モレレンバウムのチェロと、パウラのヴォーカルというシンプルな構成で演奏される。

数え切れないほど繰り返し聴いているのに、聴くたびに新たな発見があり、泣きたくなるほど感動してしまうのはなぜだろう。僕はこの音楽の素晴らしさをうまく言葉にする自信がない。

いえるのは、とてつもなく美しいということ。哀しさと寂しさと愛に満ちているということ。

メロディが美しい。ハーモニーが美しい。パウラの透き通ったまっすぐな声が、豊かなチェロの音が、静かなピアノの音が身震いするほど美しい。

ジョビンの哀しさと寂しさが僕を打つ。打たれることで僕は癒される。

ジョビンの愛がやさしく僕をつつむ。ミュージシャンたちの、ジョビンへの愛が伝わってくる。

優れたミュージシャンが優れた素材を得ただけではない。敬愛する巨匠の家で、彼の魂を感じ、普通では考えられないインスピレーションを得て作られた音楽。同じメンバーを集めても、おそらく二度と再現できない高みに達した、奇跡的な音楽だと思う。録音もすばらしい。
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2005年10月20日

Elis & Tom5

エリス&トム「秋に聴きたいジャズ」シリーズの9枚目は、ボサノヴァのアルバムである。決してボサノヴァがジャズの一部だと思っているわけではないが、ボサノヴァとジャズは互いに大いに影響しあった、いわば従兄弟のような関係で、僕は垣根を意識せずに楽しんでいる。

ここで注目するのはアントニオ・カルロス・ジョビンの名曲、"Aguas de Marco"である。英語では"Waters of March"、日本語では「三月の雨」もしくは「三月の水」と呼ばれる。三月というのは南半球のブラジルでは秋(もしくは夏の終わり)に当たる。「秋らしい曲」を考えたときに、僕の頭にすっと浮かんでくる名曲のひとつなのである。そして、この曲の名演を収めた忘れられないアルバムが、今回紹介するElis & Tomというわけ。

Elisというのは、ブラジルを代表する女性歌手エリス・レジーナのこと。Tomは御大アントニオ・カルロス・ジョビンの愛称。ふたりの巨匠が1974年にロサンゼルスで録音した、記念すべきコラボレーション・アルバムで、そのタイトルや全体的な雰囲気から、Ella & Louisを彷彿とさせる。ふたつのファースト・ネームを並べただけでその価値が充分に伝わる、という点でもこの2枚のアルバムは共通していると思う。

編曲はエリスの夫君でもあったセーザル・カマルゴ・マリアーノ。ピアノやエレピの演奏だけでなく、名アレンジャーとしての才能を存分に発揮している。ちなみに、1982年に惜しくも亡くなってしまったレジーナとマリアーノの娘さんが、2年前にCDデビューしたマリア・ヒタ(Maria Rita)。びっくりするほどお母さんに声が似ていて、これからの活躍が楽しみである。

さて、注目する「三月の水」は冒頭1曲目。エリスとトムのデュエットである。ふたりがほんとうに楽しそうに歌っているのをきいているだけで、思わず頬がゆるみ、心がふんわり温められる。少しもの哀しさを感じさせつつも、ソフトで軽快なリズム。冒頭のワンコードから半音ずつ降下していくベースラインが見事なコード進行。単純なように見えて、こういう曲はなかなか書けるものではない。

さらに、歌詞もユニークで実に味わい深い。

 棒、石、道の終わり
 切れ株の残り、ちょっとひとりぼっち
 ガラスのひとかけら、命、太陽
 夜、死、投げ縄、釣り針
 ・・・

こういう具合に、短い言葉を延々と並べていく形になっている。ブラジルでは3月に、夏の終わりを告げるかのように雨が降り続けるらしい。そんな情景や心象のスナップショットを並べた写真アルバム、とでもいうべきだろうか。その言葉たちが積み重なった結果出現する雰囲気というか、ムードが実に「秋」なんですね。そして唯一、単なる名詞や形容詞の羅列でない箇所が印象的なパンチラインになっている。

 夏を閉じる三月の水
 君の心には生きる希望

(上記日本語訳は、ジョビンについての本を書かれている岩切直樹さんのブログ、その名も『三月の水』に公開された「新訳」から引用させていただいた(ただし改行位置を変更)。この歌詞のすばらしさを知るため、岩切さんのこの記事で、ぜひ歌詞の全文を読んでいただきたい。)

このデュエットでは、この歌詞をふたりが交互に歌ったり、ユニゾンになったりと、息のあった掛け合いが大きな魅力になっている。曲の終わり近く、ふたりがおそらくアドリブで掛け合いをする場面がある。レジーナが笑い出すのをかろうじてこらえている様子が微笑ましいのだが、おそらく意味のないコトバのキャッチボールをしているのだろう。そのままスキャットに流れ込んでこの曲は幕を閉じる。

マリアーノの編曲とレジーナの歌唱も見事な、傑作アルバムである。すべてジョビンのペンによる、サウダージあふれる名曲の数々をじっくり味わって欲しい。
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2005年10月03日

Tierney Sutton / Blue in Green4

B00005N581Blue in Green
Tierney Sutton
Telarc 2001-07-24
「秋に聴きたいジャズ」シリーズの8枚目。地元ロサンゼルスで活躍する女性歌手、ティアニー・サットンが「枯葉」を歌った2001年のアルバムである(録音は2000年)。サットンは東海岸出身でバークリー音楽院を出ており、University of Southern Californiaでジャズ・ヴォーカルを教える知性派。最近Telarc Jazzレーベルの花形アーティストになった感があり、次々と意欲的なアルバムを発表している。

サットンの声はどちらかといえば線が細く、声量もあまりある方ではないが、繊細でクールな魅力にあふれている。「スタジオ歌手」としてコマーシャルや映画音楽の録音も手がけた経歴からもわかるように、音程やディクションといった技術面は完璧で、どんなに難しいメロディもさらりと歌いこなしてしまう。地元ライブハウスで一度見たことがあるが、声を使った器楽奏者といいたくなる内省的なアプローチで、エンターテイナーとして観客を惹きつける力に欠けていた印象がある。その時たまたま調子が悪かったのかもしれないが・・・。

バックを務めるのはクリスチャン・ジェイコブ(p)、トレイ・ヘンリー(b)、レイ・ブリンカー(ds)というフレッシュなピアノトリオ。サットンは90年代半ばにロサンゼルスに移住したのだが、ニューヨークに行こうかロスに行こうか迷っていた彼女がロス行きを決断したのは、当時ジャック・シェルダン・ビッグバンドのリズムセクションを務めていた3人に惚れ込んだからだという。それ以来ずっと共に活動しているグループの一体感は素晴らしく、ピアノトリオ+歌手ではなく、カルテットと呼びたくなるほどだ。サットンの最新作であるライブ盤のタイトルが"I'm with the Band"というのも、彼らの絆の強さを表していると思う。

紹介するアルバムBlue in Greenは、ピアノのビル・エヴァンスにゆかりのある曲を集めたトリビュート作品で、僕はサットンの諸作の中でいちばん気に入っている。エヴァンスの演奏で有名になった曲や彼のオリジナル曲を、現代的かつ知的なアレンジでみごとに料理した会心のアルバムだ。

まず、季節柄注目されるのは3曲目のAutumn Leaves。演奏され尽くされ、歌い尽くされている曲なので、こちらは当然どんなアレンジをぶつけてくるかに興味がある。この曲はブラシによるドラムソロから始まる。Telarcらしい録音の良さで、ドラムが良く「歌って」いるところが素晴らしい。そして意表をつく急テンポとベースによる印象的なフレーズが現れ、サットンが駆け抜けるようにメロディを歌っていく。リズムも刻々と変化するが、4ビートになるところのスイング感は見事だし、サットンのスキャットもエキサイティングだ。

他にも注目曲は多い。なごやかにスイングする1曲目Just Squeeze Meは、コケティッシュな歌唱が印象的。アルバムのオープナーにふさわしく、このバンドの魅力がよく出ている。2曲目のBlue in Greenはマイルス・デイヴィスにクレジットされているが、実際の作曲はエヴァンスだといわれている。「green=嫉妬」という英語の連関を軸にMeredith d'Ambrosioがつけた哀しい歌詞を、抑制された調子でサットンが歌う。ブルーでミステリアスな雰囲気に引き込まれてしまう素晴らしい出来だ。

バラードのVery Earlyは鳥肌モノで、特に前半部、ピアノだけをバックにしたサットンの声の美しさと歌唱の見事さにノックアウトされてしまう。Waltz for Debbyは超有名曲だが、ここではTiffanyというあまり知られていない曲がメドレーとして中間部に挿入されているのがポイント。これは最後のビル・エヴァンス・トリオのドラマーを務めたジョー・ラバーバラの娘さんのためにエヴァンスが作曲したもので、後に成長したティファニーさん自身が詩をつけたという。現在ロスで活躍するラバーバラ自身がゲスト参加したことで、この演奏はさらに特別なものになった。

14曲も収録されていて、つまらない曲がひとつもない秀作。秋の夜長に、エヴァンスの生涯と、彼が残した美しい音楽を思い出しながら楽しんで欲しい。

(参考:Tierney Suttonの最新作)
B000A8AXHMI'm with the Band
Tierney Sutton

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2005年10月01日

Nat King Cole Sings / George Shearing Plays4

B00004U9MQNat King Cole Sings/George Shearing Plays
Nat King Cole & George Shearing
Capitol 2000-08-01
「秋に聴きたいジャズ」シリーズの7枚目。暖炉の火のように暖かいナット・キング・コールのバリトンと、ジョージ・シアリングのまろやかなワインのようなピアノ、そして流れるようなストリングスは雰囲気的に秋にピッタリ。しかも1曲目は前回Johnny Hartmanのアルバムで紹介した"September Song"。(いま、9月のうちに書いておくべきだったとひじょ〜に後悔しているのだが、その点は突っ込まないでいたきたい^^;)。

ロサンゼルスはハリウッドにあるキャピトル・レコードは、現在ブルーノートの傘下にあり、名プロデューサーのマイケル・カスクーナが最近積極的にジャズのCDを復刻している。キャピトルのジャズといえばフランク・シナトラだが、他にもナンシー・ウィルソン、キャノンボール・アダレイ、ペギー・リー、ジューン・クリスティなど、なかなか魅力的なアーティストが在籍していた。

人気の面でその筆頭ともいえるのがナット・キング・コールとジョージ・シアリングだ。アラバマ州で牧師の息子として生まれた黒人のコールと、生まれながらにして盲目、イギリスで生まれ育った白人のシアリング。これほど遠く隔たった出自をもつふたりだが、洗練されて耳当たりのよいジャズという音楽性や、ポップスの要素を取り入れて広く大衆にアピールしたという共通点がある。ふたりの個性が見事に融合して、1+1が2以上になったアルバムだと思う。

じつは、僕はストリングス入りのジャズアルバムはあまり好きではない。かっちりアレンジされるのでどうしてもジャズの自由度が制限されるし、趣味の悪いストリングスのアレンジはすぐに時代臭を帯びて古くなってしまう。しかしこのアルバムについては、シアリング自身がストリングスの編曲にも参加していてかなり趣味が良く、古さを感じない。

また、このアルバム、全体的にはポップス寄りで、「ジャズ度」はあまり高くない。曲自体が2分とか3分と非常に短いし、シアリングはほとんどソロも取らず、コールの後ろで(小音量で)オブリガートを弾く程度。しかしジャズ度が少し低いことを差し引いても十分に楽しめる、上質のアルバムである。

まず聴いて欲しいのは、当然ながら1曲目のSeptember Song。シアリング・クインテット(ベースのアル・マッキボンがいい音出している!)にストリングスがちらっと顔を見せるイントロは、なかなかしゃれている。そしてコールの暖かい声が切なくもロマンチックな歌詞を歌い始めると、僕などは「ふにゃ〜」と、良い意味で脱力してしまう。

Johnny Hartmanほどストイックではなく、少し「甘い」歌い方だが、それがコールの魅力なんだから仕方がない。彼の歌の前にはもう、「参りました」と降参して、身も心も任せてしまった方がよいのである^^。

他の曲で僕が特に楽しんだのは、まず4曲目のLet There Be Love。これは聖書の「光あれ(Let there be light)」という有名な神の言葉を題材にしたユーモア溢れる歌詞が大好きな歌なのだが、これをゴスペル調のいかしたアレンジ(ドラムのシェリー・マンのシンバルを使ったバックビートが最高!)で見事に料理している。シアリングもちゃんとソロを取るし、アルバムの中で一番「ジャズ度」が高い曲だと思う。

他にも、通常より遅いテンポでじっくり聴かせるPick Yourself Up、「こんな歌詞だったんだ」と感心させられるAzure-Te、珍しくヴァースを歌うことでロマンチックになったFly Me to the Moonなど、魅力的な曲が満載だ。洗練されたロマンチックな雰囲気にひたりたい方にオススメしたい。続きを読む
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2005年09月28日

Stan Getz Plays5

B00008KKT8スタン・ゲッツ・プレイズ+1
スタン・ゲッツ デューク・ジョーダン ジミー・レイニー
Verve 1952年録音
秋に聴きたいジャズ6枚目は、僕がこよなく愛するテナーサックス奏者、スタン・ゲッツの初期の名盤。ロマンチックなミディアム〜スローテンポのスタンダードを集めたもので、1年中いつ聴いてもすばらしいアルバムだが、3曲目に'Tis Autumnが収録されているので、僕の中では「(特に)秋に聴きたいアルバム」という位置づけになっている。

スタン・ゲッツはいうまでもなく、1940年代から1991年に亡くなる直前まで、長い間第一線で活躍し続けたテナーサックスの巨星である。数多くのレコードを残したが、これ以上ないほど美しいトーンと、イマジネーション溢れるメロディアスなソロで、誰にも真似のできない高みに到達した人だと思う。

先日紹介したジョニー・スミスのアルバム"Moonlight in Vermont"に参加して重要な役割を果たしていたが、本作もオリジナルの12曲は1952年12月と、ほぼ同じ時期に録音されたほか、バックにギター(ジミー・レイニー)が加わっているという編成上の共通点がある。他にもデューク・ジョーダン(p)、ビル・クロウ(b)、フランク・イソラ(ds)という名手が脇を固める。

季節柄というわけではなく、3曲目の'Tis Autumn('TisはIt isの短縮形)はこのアルバムの中でも白眉の演奏だと思う。ベースのアルコとギターのコードワークをバックに展開されるイントロの甘美なこと。そしてゲッツのトーンのなんと豊かなこと。僕はこの曲には、いつも「ホワ〜ン」と聴き惚れてしまう。原曲の美しいメロディをさらに美しくするゲッツのアドリブはまさにマジックとしかいいようがない。

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2005年09月13日

Johnny Hartman / Songs from the Heart5

B000046PW2Songs from the Heart
Johnny Hartman
Bethlehem
1956年(オリジナル)発売
ジョニー・ハートマンはジョン・コルトレーンとの共演盤でジャズ史に永遠に名を残すことになったが、ベツレヘム・レーベルに残した実質的なデビューアルバムである本作も、勝るとも劣らない傑作だ。彼の深いバリトンは男性的な力強さとビロードのような滑らかさが絶妙にバランスしており、バラードを唄わせたら彼の右に出る男性歌手はいない。ラルフ・シャロン率いるピアノトリオの繊細なバッキングとハワード・マギーのミュート・トランペットも絶妙にマッチしている。

今回注目したい曲は、名スタンダードだけれどもそれほど頻繁に取り上げられないSeptember Song。もの悲しくも美しい名曲だが、これ以上の名演・名唱を僕は知らない。アメリカでは(おそらくヨーロッパでも)、9月という月は人生の黄昏どきを連想させるようで、そのイメージを重ねた歌もいくつかある。フランク・シナトラで有名なSeptember of My Yearsなどはその典型だが、このSeptember Songの方が歌詞も洗練されているし、メロディも美しい。少し甘酸っぱい思いで昔を振り返るけれども、残り少ない日々を嘆くのでも苦々しく思うのでもない。この貴重な日々をあなたと一緒に過ごしていこう、というなかなか素敵なラブソングなのである。

他にもWe'll Be Together Againや<僕的には秋の曲>Moonlight in Vermontなど、聴きどころは多い。男性ジャズシンガーに少しでも興味のある人はぜひ、このアルバムでハートマンの至芸に触れてほしい。男女を問わず、ロマンチックなムードを盛り上げたいときにはピッタリのアルバムでもある^^。

なお、上記のリンク先は僕が持っているアメリカ盤CDだが、日本のアマゾンではどういうわけか中古がプレミアム価格で売られているようだ。入手しやすい日本製CDへのリンクも貼っておく。
ソングス・フロム・ザ・ハート(紙ジャケット仕様)
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2005年09月12日

Johnny Smith / Moonlight in Vermont5

B0001BKANUMoonlight in Vermont
Johnny Smith
Roulette Jazz

1952-53年録音
僕はMoonlight in Vermontという曲は、秋の曲だと思いこんでいた。しかし、俳句のような単語数の少ないみごとな歌詞を確認してみると、秋の情景で始まるのだけれど、そのあと冬春夏と季節が移っていくんですね。でも、洗練された柔らかめのハーモニーにあふれ、心地よいミドルテンポの曲が多いこのアルバムは全体的に「秋」の雰囲気を濃厚に漂わせていると思うので、ここで紹介させていただきたい(ちょっと強引?^^)。

Moonlight in Vermontといえばすぐに思い浮かぶのがこのアルバム。ジョニー・スミスという天才ギタリストがスタン・ゲッツやズート・シムズといったテナーサックスの名手を迎えて、スタンダードを中心に演奏した珠玉の名作である。僕はスタン・ゲッツの大ファンでもあるので、これは大の個人的愛聴盤になっている。

ジョニー・スミスも優れた技巧を持つジャズギターの名手である。先日紹介したタル・ファーロウよりも高音が少しきらびやかな美麗なトーンの持ち主で、なによりもハーモニー感覚がすごいと思う。Moonlight in Vermont, Stars Fell on Alabama, Tenderlyといったバラード演奏の、シルクのようなトーンと真珠のようなハーモニーは何度聴いても感動させられてしまう。そしてTabuやJaguarといったアップテンポな曲でみせるモダンな感覚には、ほんとうに52〜53年の録音かと耳を疑うような先進性がある。たとえば僕が今日、現代のジャズクラブに行って、同じ編成のグループがJaguarをこの通りに演奏したとしたら、僕は古くさいなどとは少しも考えず、やんやと喝采するだろう。

LPには収録されていなかった曲がたくさん含まれていて、全部で19曲もあるが、どれも名曲・名演。木の葉が落ちて少し寒くなってきた頃に、部屋を暖かくしてココアでも飲みながら(お酒が飲める人はワインでも^^)、好きな人と一緒に聴いてほしい。
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2005年09月11日

Buddy DeFranco / Autumn Leaves3

B00000891Y枯葉
バディ・デフランコ
Norgran/Verve
1954年録音
秋の定番スタンダード「枯葉」がそのままタイトルとなったアルバム・・・と書こうと思ったが、これには注釈が必要だ。おそらく日本でしかCD化されていないこのアルバムのタイトルは、日本語では「枯葉」、英語ではAutumn Leavesと書いてある。しかしジャケットを見てみるとThe Artistry of Buddy DeFrancoとしか書いておらず、Autumn Leavesの文字はどこにも見えない。

ここでちょっと調べた結果、おもしろい法則を発見した。原題がちがうのに日本で「枯葉」と呼ばれるアルバムが異常に多いのである。有名なところでは、サラ・ヴォーンの"Crazy and Mixed Up"、ウィントン・ケリーの"Wynton Kelly!"、キース・ジャレット・トリオの"Still Live"、ドン・ランディの"Where Do We Go From Here?"など、原題がこれほど多様なのに日本でのアルバム名はすべて「枯葉」である^^:。

日本人が異様に「枯葉」好きであることを利用したマーケティング戦略だろうが、"Wynton Kelly!"のようにまったく工夫がないばかりか、他のアルバムと区別しにくいタイトルの場合はまぁ大目に見よう。(ちなみに同種のものにはエマーシーの"Helen Merrill"と"Sarah Vaughan"があるが、それぞれ邦題では名前の後に「ウィズ・クリフォード・ブラウン」が追加される。)しかし、ちゃんとした原題がついているのに、曲が収録されているというだけでタイトルを「枯葉」に変えてしまうのはいかがなものか。とくにドン・ランディの例などは気合いの入ったタイトルだけに、「ハァ? なんで?」という感じである。

しかし、バディ・デフランコの掲題のアルバムにはまだひねりがある。Norgranレーベルのディスコグラフィによれば、このアルバム、最初は"Buddy DeFranco and His Clarinet"(MGN 1012)として発売され、その後"Autumn Leaves"(MGN 1096)として再発売されたようなのである。つまり、このアルバムについては日本のレコード会社が勝手に改名したわけではないということですね。しかしこのリストやその他のデータに、"The Artistry..."が載っていないのはなぜだろう? このタイトルで、このジャケットで、MGN 1012という番号で売られていたLPが存在することは明らかである。同じ12インチ盤のMGN 1012にふたつ名前がつけられたのか? このあたりの事情は不明である。

さて、話がぐーっと横道にそれてしまったが、バディ・デフランコの「枯葉」である。ピアノに当時22歳のソニー・クラークを迎えたワンホーン・カルテット。タイトル曲(5曲目)は、あまりひねりのないストレートな演奏だが、リーダーのソロは哀愁に満ちていてさすがである。もう一曲のバラードYou Go To My Headもいい雰囲気だし、1曲目のラテン・ナンバーやビバップの名曲Now's The Timeなどではデフランコの超絶技巧に支えられたブリリアントな演奏を楽しめる。

なお、このCDについても最近紙ジャケ限定盤が出ているようで、こちらはどうやら再発盤のMGN 1096のジャケットを再現したようだ。内容は同じなので、選ぶポイントはジャケットのデザインと、紙ジャケかそうじゃないかということになるが、男性ファンなら迷わずこちらを取るだろうなぁ^^。
B0000W3OOM枯葉(紙ジャケ仕様)
バディ・デフランコ
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jazzaudiofan at 20:33|この記事のURLComments(7)TrackBack(0)
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jazzaudiofan
ジャズとオーディオが好きで、アメリカに住んでます。Audiogon等を通じてアメリカからオーディオ機器を個人輸入したい方をサポートしています。詳しくはこちらをご覧下さい。