>HE2006

2006年07月15日

HEレポート20:レコードプレス工場見学記(5)   検品・梱包編

5回にわたってお届けしてきたプレス工場見学記もいよいよ最終回。プレスした後の検品と梱包である。

packing_1ここが検品デスク。プレス・ルームのすぐ隣にあって、できたてホヤホヤのLPがすべてこのデスクを通過する。

packing_2お姉さんたちがときどき圧縮空気を吹きかけてホコリをとばしつつ、LPの両面を素早くチェックしていく。はねられたLPは写真手前のスピンドル行き。合格したものは紙製のスリーブに入れられる。なお、写真に写っているのはハリウッドにあるClassic Recordsが最近手がけている、クラシックのEverestレーベルの再発盤である(35mmテープを使って録音)。

手際よくパッパッと見ていくのだが、社長のドン・マッキニス氏によると、彼女たちもこの仕事に長年携わっているベテランである。彼女たちが一瞬で判断する不良品を彼が見ても、どこが悪いのか全然分からないことが多いという。「ほらココ」と指をさしてもらって、じーっと見て初めて「あー、確かに」ということになるそうだ。

この後は、ジャケット(レーベル側が用意する)に入れ、さらにポリバッグに入れ、必要に応じてシール等を張り、最終チェックを経て40枚入りの段ボール箱に詰めて出荷する。

余談その1。これだけの手間がかかるプレス工程の請負価格は、レコード1枚当たりいくらくらいだと思いますか? RTIのウェブサイトに掲載されているので秘密でも何でもないのだけれど、通常のLPがなんと約1ドル、180グラムの重量盤でも2ドル30セントにすぎない(紙のインナースリーブ付き、マスタリング・カッティング工程やジャケット、センター・レーベルは除く)。

重量盤はだいたい、LP1枚当たり25〜30ドルくらいで売られているので、「レーベルの利ざやが大きいのでは」という質問も出たが、マッキニス社長は「そんなことはない」と答えていた。再発ものの場合、オリジナルのレーベルに払うライセンス料だけで、1枚当たり8ドルとか9ドルとかいう額になる。それにジャケットやセンター・レーベルの印刷代、輸送費、広告費等を加えていくと、どうしてもそれくらいの値段になってしまうのだそうだ。

余談その2。アメリカではアナログの復権が言われて久しい。有名な再発レーベルClassic Recordsの社長は、市場に出回っているアナログ再生機器の多様さという点では、過去20年間で最高の「ブーム」が起きていると言っていた。今回のオーディオ・ショウ(HE2006)も、アナログ系統をデジタル機器と共に展示しているブースが非常に多く、アナログの復権を強く印象づけるものだった。

だから、この工場のビジネスも上り調子なのだろうと思っていたのだが、マッキニス社長によると、それがそうでもないらしい。オーディオファイル向けのレコード自体は注文の規模が小さいし、新たな顧客がついたと思ったら、長年付き合いのある顧客を失うこともあったりして、全体的な業務量は横這いだという。「アナログ復権とは言われるけれど、アナログが少数の趣味人を対象とするニッチ製品の枠を超えることはない」というのが彼の意見である。納得。

僕は(残念ながら)アナログをやらないので、レコードに関する知識はまったくなかったのだけれど、今回の見学はとてもおもしろく、勉強になった。レコードがかなりの手間暇をかけて作られる製品だということがよく分かったし、特にオーディオファイル向けと言われる高音質レコードは、レーベル関係者やマスタリング/カッティング・エンジニア、プレス工場のオーナーなど、音楽とオーディオを愛する人々のこだわりと情熱の結晶だと思う。

次回からは「今日買ったディスク・特別編」として、HE2006の会場で手に入れた高音質ソフトを順次紹介していきます。お楽しみに♪

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2006年07月14日

HEレポート19:レコードプレス工場見学記(4)  プレス編

1_pressing_roomメッキ工程の次に案内されたのは、レコードをプレスする工場の心臓部。広い部屋に、巨大なプレス機が8台、凄い音を立てながら稼働している。すぐ近くに寄って大声を出さないと、人と話すことはできないくらいの騒音である。注文の状況にもよるが、1日13時間くらい稼働することはざらにあるそうで、実際、僕たちが訪問した午後9時にもまだフル稼働していた。

2_pressing_machineプレス機はSMT(Southern Machine Technology)製で、ざっと見ると幅2m×奥行き5m×高さ2.5mくらいはあるだろうか。メッキ工程でできたスタンパーとセンター・レーベルをセットし、原料となるビニール・コンパウンドを一方から入れると、後はすべて自動運転、レコードが次から次へと出てくるという、とても複雑かつ巧妙な機械である。

以下、工程の流れに沿って説明していこう。ちなみに、以前Shaolinさんに紹介していただいた、このビデオの2分45秒くらいからが、プレスの工程になっている。機械は違うのだが、このビデオを先に見ていただくと、以下の話が分かりやすくなると思う。

3_material(1) まず、原材料のコンパウンドは固形のペレット状。通常は黒だが、赤や青の色つきもある。このコンパウンドの組成はサプライヤーに依存するので、同じものをずっと安定して仕入れることはできないそうだ。


(2) この固形のコンパウンドは、まず電熱管の中を通る間に柔らかくなり、スクリューのようなもので押し出され、適当な大きさにカットされる。この時点の大きさは、センター・レーベルと変わらず、数センチの厚みがあるので「ビスケット」と呼ばれる。

4_center_label(3) センター・レーベルは機械の裏側(レコードが出てくる方を表とする)にセットされている。A面、B面のレーベルは、それぞれ1枚ずつ小さな吸盤をもつアームに吸い付けられて移動する。そこへビスケットがやってきて、レーベルによって上下をサンドイッチする形になる。

5_biscuitこの写真の手前に見えているのが、レーベルによってサンドイッチされたビスケットだ。ちなみに、レーベルに接着剤は使わない。むしろ、水分が少しでもあると、プレスの際に熱せられて水蒸気となり、レーベルがボコボコになってしまうので、事前にオーブンで熱して水分を完全に飛ばしてしまうそうだ。接着剤などなくとも、レーベルは熱圧着されて、レコードと完全に一体化してしまう。剥がすことは不可能なので、不良レコードの材料を再利用する場合でも、レーベル部分は切り離して捨てるしかないという。

(4) これがさらに、プレス台にある上下(A面・B面)のスタンパーの間に移動する。上下からスタンパーがやってきて、ビスケットを押しつぶす。この際、スタンパーには外から蒸気による熱が加えられ、コンパウンドはふにゃふにゃの状態になって、スタンパーのグルーヴにぴったりと入り込んでいくわけだ。

(5) プレスが終わると、蒸気の代わりに今度はスタンパーの外側に冷たい水が流れ、冷却が始まる。

(6) レコードが固まったら、周りにはみ出した余分なビニールがカッターでくるくると切断され、できあがったレコードが所定のスプールにすぽんと収まる。余分な部分をカットされる前の未完成品が、上の写真の後ろの方にある。

6_pressing_machine_2とにかく、この(1)〜(6)の工程をすべてひとつの機械でやってしまうというのがスゴイ! 動力は電気と蒸気と水と空気なのだけれど、様々なパーツが完璧にシンクロして動いているところは壮観である。ストップウォッチで測ったわけではないけれど、1〜2分に1枚くらいの割合でLPができるような印象だった。

ちなみに、こうしたプレス機が最後に生産されたのは1980年代のことで、もう20年以上、新たなプレス機は1台も作られていない。当然、その当時(あるいはそれ以前)の機械を修理・メンテしながら使い続けるしかないわけで、RTIでも、この維持管理にかなりの能力・労力と費用がかかるという。

また、オーディオファイル向けの180gとか200gとかいう重量盤は、材料が分厚いためにプレスする際の圧力や温度を上げる必要がある。スタンパーの寿命が短くなるほか、誤差が許されるマージンがほとんどないので、技術的に難しいそうだ。

7_Mari_Nakamoto最後にオマケの写真。意外なLPがプレスされているのを見てしまった。アルバムは中本マリの「マリ」。レーベルは日本のThree Blind Mice。発売元は、日本の優秀録音盤を米国に紹介しているCISCO Musicで、しかも45回転。12インチの片面にわずか2曲、約10分しか録音されていないという、思い切り音にこだわったレコードのようだ。Three Blind Miceはアメリカのオーディオファイルの間でも知られているけれど、こんなレコードを見かけるとは正直思わなかった。売れるのかな?^^?。

次回は見学記の最終編、検品と梱包の工程を紹介する。

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2006年07月11日

HEレポート18:レコードプレス工場見学記(3)  メッキ編

ずいぶん時間が空いてしまいましたが、ウィンブルドンとワールドカップが終わったので、プレス工場見学記を再開します^^。

前述のカッティング工程でできあがったラッカー・マスターは、材質がとても柔らかいため、そのままではレコードのプレスに使うことはできない。そこで、何回かのメッキ工程を経て、高温・高圧でのプレスに耐えるニッケル製の「スタンパー」を作る。この工程を総称して一般に「メッキ(plating)」という。

ただし、電気メッキ(electroplating)は、素材に対して簡単には取れない金属の薄い皮膜をくっつける工程なので、この呼称は厳密にいえば正しくない。ここでは、元の素材に向き合って表面の凸凹を忠実になぞるけれども、後で剥がすことのできる別の金属体を作り出すことが目的である。その工程は、電気鋳造(electroforming)と呼ばれる。以下、工程に沿って写真を見ながら説明していこう。

1_washing_lacquer_masterラッカー・マスターがメッキ室に到着して最初に行うことは、洗浄である。洗剤を入れた容器の中で回転させ、ホコリや油といった不純物を取り除く。最後は人の手で徹底的に水洗いされる。

2_silver_coating_before次は、電気鋳造の前準備。ラッカー・マスターに薄い銀の被膜をつける工程である。これは機械で行われ、右の写真にあるように黒いラッカー・マスターを装着して機械を運転すると・・・。

3_silver_coating_afterこの写真のように、あっという間に銀のコーティングが完了する。うーん、美しい^^。

4_nickel_plating次に、レコードのお祖父さんにあたる「マスター」(ラッカー・マスターと区別してメタル・マスターと呼ばれる)を作る。銀コーティングの施されたラッカー・マスターをニッケル溶液に入れて電気を流し、銀コーティングにぴったりくっつく(しかし後で剥がすことのできる)ニッケル板を鋳造するのである。

5_mother数時間〜一晩たってニッケル板ができたら、隙間にナイフを入れて、メタル・マスターをラッカー・マスターから剥がす。長髪のお兄ちゃんがチャッチャッとやっていくのだけれど、もちろん熟練を要する仕事だそうだ。何といっても、ふにゃふにゃしたラッカー・マスターからメタル・マスターを作るチャンスは1度だけ。ここで失敗したら、ラッカー・マスターのカッティングからやり直さなければならない。

さて、この世界で1枚しかない保存用のメタル・マスターは「ネガ」、つまり、凸凹がラッカー・マスターと反対になっている。ここから、再度の電気鋳造工程を経て「マザー」が作られる。これは「ネガ」の反対だから「ポジ」。針を落として再生できるので、この段階で音質チェックが行われる。

6_stamper音質チェックで合格点が出たら、いよいよマザーから実際のプレスに使われるスタンパーを作る。これも先ほどと同じ電気鋳造で、1枚のマザーにつき何枚かのスタンパーが作られる。左の写真は、マザーから剥がされたスタンパー。12インチのLPだが、作業用の縁がついているので、この時点の直径は14インチほどある。このスタンパーが、この工程の最終製品ということになる。

数について言えば、1枚しかないマスターから数枚のマザーが作られ、さらに1枚のマザーから数枚のスタンパーが作られる。1枚のスタンパーでプレスすることのできるレコードは、ちょっと記憶が定かでないが、たしか数百枚〜千枚程度ときいたように思う。ニッチ商品であるRTIのオーディオファイル向けレコードは、千枚とか2千枚とかいうオーダーが普通で、1万枚は「相当デカイ注文」に当たるそうだ。

ちなみに、ここで「レコード・コレクターが言うファースト・プレスとかセカンド・プレスというのは、どういう違いなのか」という質問が出たのだが、社長のドン・マッキニス氏は、「それは市場に出た後であれこれ言われるだけのもので、作っている側ではそのような区別はしていない」と言っていた。

次回は、このようにしてできたスタンパーを使って、実際にレコードを作る「プレス編」をお届けする。

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2006年07月03日

HEレポート17:レコードプレス工場見学記(2)  マスタリング・カッティング編

レコードプレス工場の見学記、本編の第1弾をお届けしよう。
まず、レコード製造過程は、大きく以下の4つに分けられる。

1. マスタリング・カッティング
2. メッキ
3. プレス作業
4. 検品・梱包


ATM_big_pictureマスタリングは磁気テープ等のメディアに収められた音源に、レベル調整やイコライジングなどの最終的な微調整を加える過程。カッティングは、音を物理的なモノに変換する過程で、「ラッカー盤」と呼ばれる柔らかい素材にグルーヴ(溝)を刻み込んでいく。その後、いくつかのメッキ工程を経て作られた「スタンパー」を使って、最終製品であるレコードがプレスされる。

先日も書いたこのサイトで、大ざっぱな工程のイメージがつかめると思う。また、MICROGROOVE.JPというサイトを運営しておられるShaolinさんが、その製造過程を見ることのできる貴重な映像の数々を紹介しておられるので、そちらもぜひ参考にしていただきたい。(Shaolinさん、遅ればせながら相互リンク先に加えさせていただきました。)

さて、本編の第1弾は、上記の1. マスタリングとカッティングである。実は、レコードのプレス工場とマスタリング・カッティング施設が同じ場所にある必然性はない。実際には、別の施設となっているところが多いはずだ。

ATM_wall_of_fameしかし、RTIはAcoustic Soundsとの共同出資で、敷地内にAcousTech Masteringというマスタリング/カッティング・スタジオを作ってしまった。この過程の最終製品であるラッカー盤はかなり脆いものなので、輸送の手間を省き、「できたてホヤホヤ」の状態ですぐに次の工程にかかることができるのがメリットなのだという。この段階から品質管理を徹底することで、オーディオファイルの厳しい要求に応えるという狙いもあるだろう。(左の写真はスタジオの入り口近くにある"Wall of Fame"。これまでにマスタリング/カッティングを行ったアルバムのジャケットが誇らしげに展示されている。)

ATM_KevinそのAcousTech Masteringを仕切っているのは、70年代から活躍しているベテラン・エンジニア、Kevin Grayだ(写真左)。このスタジオは2001年に全面改装されたそうで、入り口から出口まですべて純粋アナログのマスタリング・システムと、逆にオール・デジタルのシステムが併存し、5.1chにも対応できるようになっている。

ATM_speakersこのマスタリング・ルームに入って驚いたのが、音が全く反響しない、超デッドな環境であること。四方の壁が吸音材でできていて、話し声まで吸い取られてしまう感じだ。機器の大半は、ケヴィン・グレイ氏が自ら設計したもの。モニター・スピーカーは壁に直接埋め込まれているのだが、これもケヴィンの自作で、サブウーファーとウーファーはJBL、ツィータはDynaudioのユニットを使用。アナログ系の機器は、テープ・プレーヤーがStuder A-80、肝心要のカッティング・マシンは1960年代に作られたNeumann VMS-66である。使用機器のリストはこちら

ATM_cutting_machineラッカー盤というのは、中身がアルミの円盤で、その表面にラッカー(マニキュア染料のようなもの)が塗布されている。そこにサファイアのカッティング・ヘッドで溝を切っていくわけだが、ヘッドは電気で熱されているため、バターを切るように抵抗がほとんどない状態だそうだ。溝を切っていく際には、溝と溝の間隔をリアルタイムで調整しなければいけないが、それはコンピュータで精密に制御されているとのこと。
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2006年07月01日

HEレポート16:レコードプレス工場見学記(1)

RTI_pressing_4管理人多忙のため更新が滞りがちだが、ご容赦いただきたい。さて、前回予告した「レコードプレス工場見学記」の第1弾をお届けしよう。まずは見学の経緯と、対象になった工場について説明しておく。

僕は6月の初旬にHome Entertainment 2006というオーディオ・ヴィジュアル見本市に参加したわけだが、その催しのひとつに「レコード・プレス工場見学」というのがあった。企画したのは、オーディオファイル向けソフト/オーディオ機器の通販会社Accoustic SoundsのChad Kassem社長である。チャド・カッセム氏はアメリカのオーディオ業界ではとても有名な人で、様々な活動を精力的に展開している。

通販ショップのAccoustic Soundsだけでなく、アナログレコードのレーベルであるAnalogue Productions、オリジナルのフォノ・プリアンプを製造するAccousTech Electronics、アナログ/デジタル双方のマスタリングを請け負うジョイント・ベンチャーAccousTech Masteringのほか、カンザス州の教会を買い取って録音スタジオに改造したBlue Heaven Studiosなどを運営している。

今回見学したのは、ロサンゼルスの西、車で1時間ちょっとのCamarilloという町にある、Record Technology Incorporated (RTI)である。オーナーのDon MacInnis(ドン・マッキニス)氏は、工場の敷地内に共同でAccousTech Masteringを設立するなど、チャド・カッセム氏との親交が深い。

ちょっと脱線するが、このCamarilloという町の名前にピンと来たジャズファンの方もおられるかもしれない。そう、天才アルトサックス奏者、チャーリー・パーカーがアル中治療で強制入院させられた州立病院があったのが、この町なのだ。病院自体は1997年に閉鎖されたようだが、この町はパーカーが作った"Relaxin' at Camarillo"という名曲によって、ジャズファンの記憶に刻まれることになった。のどかな丘陵地帯にあり、昔ながらの建物が残っている古ぼけた町である。なお、日本では「カマリロ」で定着しているようだが、スペイン語風に「カマリヨ」と発音するのが正しい。

さて、RTIオーナーのドン・マッキニス氏の話によると、アメリカに現存するレコードプレス工場は、彼が知る限り12箇所。そのうち、180g・200g重量盤といったオーディオファイル向けのレコードをプレスする技術力を持っているのは、RTI社のみだという。東海岸にもう1箇所有名な工場があったのだが、最近閉鎖され、競争相手がいなくなってしまった。

つまり、アメリカ産の「オーディオファイル向けアナログ・レコード」は、レーベルにかかわらず、すべてこの工場でプレスされているのだ。RTIの顧客リストには、チャド・カッセム氏のAnalogue Productionsを始めとして、日本の優秀なソフトをアメリカに紹介しているCISCO Music、以前ハリウッドの施設を訪問したClassic Records(訪問記はこちら)、Groove NoteMobile Fidelity Sound Lab, Mosaic Recordsなど、錚々たるレーベルが並んでいる。日本のオーディオ/アナログ/ジャズファンも、少なからずお世話になっているのではないだろうか。

次回からは、レコード・プレスの工程に添って見学した内容を書いていくつもりだ。プレス工程については、このサイトが参考になるので、興味のある方は予習しておくこと、なんちゃって^^。

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2006年06月28日

HEレポート15:mbl5

HE2006の「ベスト・サウンド」展示、いよいよ1位の発表!! って、もう表題に書いてるけど・・・^^;。mbl_1最初から最後までmblの機器で固められた、価格も大きさも超弩級のシステムである(ケーブル類は1ペア1万ドル級のTara Labs)。まず、「ラジアルストラーラー」という全方位型スピーカーを実際に聴いたのはこれが初めてだったのだが、その底知れぬダイナミクスと、聴感上果てしなく(上も下も)伸びているように思える周波数特性に唖然としてしまった。この音の良さはショックだった。

伝統的なピストンモーション型のスピーカーとは形も発声方法もまったく異なるので、音像定位や音場形成という点では「異質」な音がするのではないかと想像していたが、そんなことはなかった。そういう意味では「普通にいい音」である。ただし、スイートスポットが広いというか、スピーカーのど真ん中で聴かなくても音場が崩れないというのは、やはり全方位放射型のメリットだと思う。

mbl_2僕がこれまで見た中で、たぶん物理的にもいちばん大きいと思われるモノブロック・パワーアンプは、なんと5000ワットを叩き出すという。そんなパワーが必要なわけはないのだけれど、オーケストラの強大なダイナミクスを聴いてしまうと、もう「参りました」と言うしかない。mblというのは、本当に凄いメーカーだと思う。

笑ってしまうほど値段の高い超弩級システムを第1位にするのは多少安易な気もするが、自分で感じた音の優劣では、2位以下のシステムを大きく引き離す、圧倒的な「ベスト・イン・ショウ」だった。これはもちろん個人的な評価だけれど、現地で出会った知り合いにも、この展示を高く評価していた人が多かった。特に、DIYオーディオのRさんが、「あの部屋ではとにかく感動してしまって、涙が止まらなくなったんだ」と言っていたのが印象に残っている。

HE2006のレポート、実はまだ書きたいことがたくさん残っている。次回からは、HE2006の企画で訪れた、レコード・プレス工場の見学記をお届けしようと思っているので、お楽しみに。

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2006年06月27日

HEレポート14:Thiel CS3.75

個人的「ベスト・サウンド」展示の第2位は、Thielの新型スピーカーCS3.7に進呈したい。正確にはロス近郊にあるオーディオ・ショップVisual Soundの展示なのだけれど、やはりこのスピーカーのインパクトは大きかった!
  • Speaker: Thiel CS3.7(試作品)
  • Power amp: Audio Research Reference 210 monoblock ($19990/pr)
  • Preamp: Audio Research Reference 3 ($7900)
  • CD Player: Audio Research Reference CD7 ($8995)
Thiel_CS3.7最初に出会ったのは1月のCES。その時はまだ音を出せる状態ではないということで、サイレント展示だった。今回は、初めて音を出せる試作機が完成したので、急遽展示することにしたという。Visual Soundの担当者によると、ショウの前日に届いたばかりで、とにかく箱から出してアンプにつないだ状態らしい。

つまり、6月3日の時点では、これが世界でただ1ペア存在する「音の出る」試作機であり、Thiel社外の人間としては、このショウに参加した我々だけが、世界で初めてCS3.7の音を聴いたことになる。なお、組み合わされていた機器は、WilsonのSystem 8の展示で使われていたのと全く同じ、Audio Researchの真空管式リファレンス・シリーズである。

Thiel_CS3.7@CESスピーカーの概要については、1月に書いたCESのレポートを引用しておこう(左は1月の写真)。
---引用開始---
ファースト・オーダーのクロスオーバー、時間軸の整合性、10インチ・ウーファー、アルミ製ドライバー、3ウェイといった基本構想は継承しつつ、まったく新しいドライバーを開発したという。アルミのダイアフラムに折り目をつけることで強度が増し、より正確なピストン運動ができるようになったという。

スペック上特筆すべきなのは、能率が90dBと高水準になっていることだ。ダイアフラムの軽量化によりもたらされたものらしいが、過去のThiel製品は能率もインピーダンスも低いために、駆動するアンプにハイパワーが要求されるのが有名だった(というか悪名が高いというか)。CS3.7のインピーダンスは名目4Ω・最低3Ωらしいから高くはないが、変動幅が少なければ、真空管アンプでも十分駆動できるかもしれない。
---引用終わり---

さて、それから6カ月を経ているわけだが、1月の写真と比べてみると、ウーファーのダイアフラムの形状が変わっている。やはり色々試行錯誤しているんだなぁ・・・。

さて、ようやく聴けた音の方は、クリーン、クリアで、かつディテールが豊か。同軸型のツイータ/ミッドレンジ・ユニットがきいているのか、音像の定位感と音場の広がり感も申し分ない。思わず「ナイス!」とつぶやいてしまう上質の再生だった。真空管機器のおかげか、Thielのスピーカー(CS2.4)で以前感じた低温感はなく、かといってウォームでもなく、ちょうど良い温度感だった。

噂では、発売は夏とか秋とか(Thielのウェブサイトでは「2006年夏」とされている)、価格はペアで5000ドル程度とか、1万ドル程度とかいわれているが、結局どちらも未定だそうだ。「禿頭の一つ目入道」のようなデザインはどう考えてもいただけないけれど^^;、音の面では魅力的なスピーカーであることは間違いない。発売が楽しみである。

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2006年06月24日

HEレポート13:Reimyo, Harmonix5

Home Entertainment Show 2006の「ベスト・サウンド」シリーズも、佳境に入ってきた(引っ張りすぎという話もあるが・・・^^;)。いよいよ個人的評価の第3位の発表である。ドラムロール・・・ジャーン!!Reimyo_1アクセサリやケーブルも当然すべてHarmonixで固めた、コンバックによるオール日本製品の展示である。どれも特に新製品というわけではなく、1月のCESでReimyoのCDPやDACが使われていたシステムをいくつか見かけたけれど、オールReimyoのシステムは、僕は初めての体験だった。

とにかく、部屋に入った瞬間、音の情報量の多さ、解像度の高さに驚いた。ちょうどブラジルのフュージョン・グループAzymuthのCDがかかっていたのだけれど、ものすごくいい感じ。その持ち主の人も顔を上気させて、「このCDにこんな音が入っていたなんて、信じられない!」といっていたのが印象的だった。CDに記録されているどんな微細な情報も逃すことなく、完璧に再生している感じである。

微細な情報がきっちり描かれるから、3次元的な音場・音像がとってもリアル。プリもパワーも真空管式だけれど、暖かいモヤモヤした感じは一切なく、むしろクリアに澄み切った音色で、トランジェントの立ち上がりもいい。

スピーカーもコンバックの製品で、17cmのウーファーと2.5cmのツイータを使った同軸型のミニモニター。小さいし、密閉型だし、スペックを見てもきっちり出ている低域は80Hzくらい。でも、実際にはその下もある程度出ているのだろう。低域が寂しいとかサブウーファーが欲しいとか、そういう感想は一切抱かなかった。今考えると不思議なことだけれど、そのときはただすばらしい音楽に聴き惚れていたような気がする。

Reimyo_2コントロール・アンプもパワー・アンプも真空管式だ。特にウェスタン・エレクトリックの300Bを使ったパワーアンプはとても活き活きとしていて力強く、後で出力7W(8Ω)という数字を見て驚いたほどだ。WEの300Bは、Edさんのところで聴かせていただいて、すごい真空管だということを知ってはいたけれど、ここでもその力を再認識した。

ちなみにスピーカーは、能率は87dBと高くない。それでも7Wでこれだけ朗々と鳴っていたのは、定格8Ω、最低7Ωというフラットなインピーダンスがきいているのだろう。低出力真空管アンプとの相性のカギは能率でなく、インピーダンス・カーブのフラットさだとよくいわれるが、この展示でもそれが裏付けられていたように思う。

とても魅力的なシステムだけれど、値段が高いのが残念だなぁ。DACを除いて、僕には中古で半額になったとしてもまだ買えない、つまり夢見ることすらできない価格設定なのだ^^;。定価を半額にしてほしい・・・というのはやっぱり無茶なんでしょうねぇ^^。

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2006年06月22日

HEレポート12: Acoustic Zen, Red Dragon, ModWright4

Acoustic_ZenHE2006での個人的「ベスト・サウンド」同点4位、最後に紹介するのはケーブルで有名なAcoustic Zenの展示である。おそらく日本では知られていないと思われる、ユニークなメーカーの機器との組み合わせだった。Acoustic Zenが最近発売したスピーカー、Adagioは雑誌等で高い評価を受け、話題になっている。リボン・ツイータの上下に6.5インチのウーファーを配置した仮想同軸型で、低域はトランスミッション・ライン方式。ウーファーについては「長い磁気ギャップ中に配置されたアンダーハング・ヴォイスコイル」というのが特徴で、これによってヴォイスコイルの挙動の直線性を高めたとか。僕もTotem Forestを買ったディーラー宅で少し聴かせてもらったことがある。

プリアンプとプレーヤーを提供したのは、このブログでも紹介したことがある「改造屋」ModWrightである。自社製品のプリアンプは真空管式で、以前地元オーディオ同好会や、自宅で試聴した製品の後継機。ブルーのフェースプレートがなかなかいい感じを出していた。プレーヤーはソニーのSACDプレーヤー9100ESに、真空管式出力段を追加するなど徹底的な改造を施したスペシャル・バージョンである。同好会の会長でもある本格派オーディオファイル、B先輩宅で使われているものと似ているが、ベースになっているソニーのモデルがより新しくなっている。

Red_Dragon_Leviathanそして、今回特に目を引かれたのは、Red Dragon Audioのアンプである。前面と側面の3方は木製のパネルに覆われており、黒い天板の中央でドラゴンの意匠が赤く光っている! メーカー名そのままなわけだけれども、こういうデザイン・センスはちょっと僕には合わないなぁ^^;。外見はともかく、Adagioとの組み合わせで魅力的な音楽を奏でていたから、実力は相当なものだと思う。Bang & Olufsenが開発したICEパワー・モジュールを使ったデジタル・アンプで、出力は500W(8Ω)/1000W(4Ω)とハイパワー。

このシステムは、全帯域にわたって歪み感がなく、クリーンな音だった。ディテールの描写に優れ、音の質感が高い。しかも、デジタル・アンプのイメージとは反対に、とても艶やかで、色っぽい再生だ。この辺は真空管式のプレーヤーやプリアンプの味付けがきいているのかもしれない。

Adagioを聴いたのは2回目だが、このスピーカー、どうやらトランジェントの鋭い立ち上がりや強烈なダイナミクスよりも、しっとり艶やかな音色の描写が得意なようだ。ロックやオーケストラ曲はどちらかといえば苦手かもしれないが、ヴォーカルものや室内楽との相性は良さそう。実際、試聴時にかかっていた女性ヴォーカルの曲は、思わず聴き惚れてしまう妖しい魅力を放っていた。

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2006年06月21日

HEレポート11:Peak Consult, Berning, Continuum4

Signals_SuperFi同点4位の最後の展示はまだ続く。今回はSignals SuperFiという輸入商社のブースを紹介したい。1月のCESでもいい音を出していたPeak Consultのスピーカーと、10万ドルに迫ろうという超弩級アナログ再生システムContinuum Caliburnの組み合わせである。考えてみれば、デジタル機器を一切置かない、完全にアナログ・オンリー、のシステムである^^。しかも増幅系はすべて真空管式^^。個々の展示機器の写真は、ここで見ることができる。

デンマークのスピーカー・メーカーPeak Consultは1996年の創業。1月のCESではZoltanというスピーカーが、なかなかいい仕事をしていた。新製品のInCognito Xは、2ウェイ・ブックシェルフ型のInCognitoをフロアスタンディング型に拡大した姉妹機という感じだろうか。これも単純な2ウェイで、ウーファーも決して大きくないのに(7インチ?)、低域が驚くほどよく伸びていた。

Berning_ZH270Continuum Caliburnは凄いターンテーブルだが、僕はCESで見ているので改めて紹介はしない。むしろ気になったのは、見慣れない小さなステレオアンプである。David Berning Co.という、アメリカはメリーランド州にある小さなメーカーの製品で、なんと出力トランスのないOTL式の真空管アンプである。製品名のZHは、OTLのこだわりを示すZero Hysteresisの略だそうだ。

こんなに小さな筐体で、しかもOTL方式で、出力はステレオ70Wというから驚いた。ウェブサイトに詳しい説明があるが、特許出願中の新技術を投入して従来のOTLアンプの限界を突破したという。2系統の入力セレクターとボリュームがついているので、CDのように出力電圧の高いソースなら、そのままつないでインテグレーテッド・アンプのように使うこともできる。デザインは無骨だけれど、奇妙な魅力がある。一度見たら(そして聴いたら)忘れられない、強烈な印象のアンプだ。

かかっていたのは当然アナログLPばかりだが、繊細なディテールと力強さが共存し、驚くほど低音が伸びた、とても魅力的な再生だった。ここまで高次元のアナログ再生ができれば、たしかにCDはいらないだろうな^^。もっとも、僕にとってはBerningのアンプ以外手の届かない、雲の上のシステムではある。

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jazzaudiofan
ジャズとオーディオが好きで、アメリカに住んでます。Audiogon等を通じてアメリカからオーディオ機器を個人輸入したい方をサポートしています。詳しくはこちらをご覧下さい。