3/26 コメントを受け、全体的に記事を修正しました。しばらく元記事のままで検証しようと思ったのですが、アクセスが多く、誤った情報が流れるのも嫌なので、不確かな情報と思われるものについては訂正・削除しました。
- 削除:「プルトニウムは重いから飛来しない」のか? の項
- 訂正:もちろん福島原発にも の項
他にも部分的に数箇所訂正しました。なお、今後も情報を得次第編集していくつもりです。
東電の会見を見ていると、ヨウ素やセシウムについては言及するものの、プルトニウムについては全く語らない。記者に問われるも、計測できていない、という。僕は東電の体質から言って、もうプルトニウムはある程度漏れている、と考えています。というかそう考えた方がいいです。そうしないと、後手後手になってしまうので。
今日の記事はほとんどが京都大学原子炉実験所小出裕章さんの論文からのまとめです。
プルトニウムって?
プルトニウムはウランから作られます。長崎原爆の原料でもあり、プルサーマル原発の燃料でもあります。その強い毒性は多くの学者に指摘されており、「かつて人類が遭遇した物質のうちでも最高の毒性を持つ」物質と言われています。なぜプルトニウムはそこまで危険なんでしょうか。まず生体への影響を考える上で重要なのは、
- α線を放出する
- 比放射能(Bq/g)の強さ
- 体内でのふるまい
の3つです(プルトニウムという放射能とその被曝の特徴より)
プルトニウムはα線を放出する放射性物質です。α線がなぜ危険かというと、「内部被曝」においてより甚大な影響を与えるためです。これについてはこちらを参照してください。
ヨウ素・ウランの数万倍危険なプルトニウム
比放射能というのは、物質が放射能を出す強さ、と考えてください。例えばヨウ素131の比放射能はセシウム137の数千倍になります。これはヨウ素は半減期が8日と短く、放射線を出す能力に長けていることが関係しています。セシウムは30年でやっと半減しますが、放射線はゆっくり出てくるんですね。
実はプルトニウムの半減期は24,000年と非常に長く、比放射能はヨウ素131と比べて一兆分の一くらい、非常に小さいんです。じゃあ安全じゃん、と思うかもしれませんが、ヨウ素が出すのはβ線、プルトニウムが出すのはα線です。
これがどれだけ違ってくるかと言うと、ICRPの勧告にて"内部被ばくに関する線量換算係数"で示されています。ようするに「吸入/経口摂取したら、物質によって人体にこれだけ影響が違うよ」という数値です(詳細 )。吸入摂取(呼吸で肺に取り込んだ際)においては、ヨウ素は7.4×10-9となっています。一方で、プルトニウムはどうでしょうか?1.2×10-4です。ではヨウ素はプルトニウムの何倍危険かと言うと、実に16,000倍なんです。この係数値はトリウムと並んで全物質中一番高い数字を示しています。
α線を出す放射性物質で代表的なのはウランですが、ウランとプルトニウムを比較すると比放射能は数万、数十万倍にもなります。僕は以前、ウランは微弱なα線を出すから危ないよーと書きました(詳細)。今回、プルトニウムは同じ時間で数万倍のα線を出すからより危険、ということになります。例えばウラン235は一年間で2mg摂取しても問題ないと言われています。しかし、プルトニウム239はたった0.000052mg摂取したらアウト!です。その比は38,000倍ですから、ほとんど比放射能の比と同じと言えます。
プルトニウムは肺に蓄積する
体内でのふるまいについては、こちらにも書きましたが(詳細)簡単に書きます。α線はとても近くの物体にしか届かない(ほとんど塵ぐらいの大きさです)。しかし、一般に被曝を想定する場合では、臓器や組織単位なんです。被曝された範囲にどれだけの影響が出るか、を考えた場合、実際の場合と臓器単位に換算モデルと比較すると、(放射性物質が体内を移動すること考慮しても)100万倍以上の開きがあるんです。
加えて、プルトニウムは肺に蓄積されます。肺の自浄作用によりある程度は除去されますが、非常に長い間人体を被曝し続けるものと思ってください。自浄されないプルトニウム量は1/4ほどで、徐々に血液の中に入り、リンパ節や肝臓、骨などに集まり、排泄されずに長くとどまると言われています。半減期は骨で20年、肝臓で50年と言われています。
またヨウ素であれば8日で半減期がきますから、体内に取り込む前の段階で減少が期待できるのですが、プルトニウムの半減期は24,000年です。体内で安定物質に変化するどころか、取り込んだ人が亡くなってもその周辺を汚染し続けるのです。僕らの世代だけでなく、孫やその孫まで害が及びかねない。これがプルトニウムの怖さのひとつです。
肺がんの原因は煙草ではなくプルトニウムだった?
信頼性に欠ける項・ソースです
「角砂糖何個で日本全滅」などと言われるプルトニウムですが、実は疫学的にプルトニウムがどれほど危険かは証明されていません。調査に何十年もの時間と莫大なコストがかかるためです(このことがプルサーマル原発の設立の一助となりました)。
しかし、眞鍋攝医師によって、核実験と肺がんの相関が指摘されています。こちらの「肺がん」の項を参照してください 。簡潔にまとめると、核実験を行った数十年後、肺がんが世界中で特異的に上がる。特に喫煙者に顕著である。喫煙者は肺に入った異物の排出機能が低下しているため、プルトニウムが排出できず蓄積し、肺がんを引き起こすのではないか。というものです。
僕は初めて聞いたときは「トンでも論」だな、と笑ってしまいました。普通、たばこの中の有害物質が肺がんを引き起こすと考えますし、僕もそう習いました。でもグラフを見るとどうも嘘とは言い切れないようです。
また、原発の漏洩とは違うので単純には比較できませんが、劣化ウラン弾の使用に伴い発ガン率が10倍上がったと言われています。
もちろん福島原発にも
福島原発の3号機にはMOX燃料が使われていて、数%のプルトニウムが含まれます。それ以外の1、2、4、5機は全てウラン燃料なのですが、こちらにもプルトニウムがある程度含まれます。
プルトニウムは一般的に「重いので飛ばない」と言われていますが、チェルノブイリ原発事故で発生したプルトニウムが、微量ながら日本の雨の中から検出されたという情報があります(気象研究所)。チェルノブイリと東京の距離は8000km以上ですから、容易に安心はできないようです。
「隕石が落ちて地球が滅亡するのと同じくらい」の確率
九州原発にプルトニウムを使ったプルサーマル原発を作ろうという話になったとき(事故前)、推進派と反対派のディベートが行われました。「格納容器がぶっ壊れたらどうするの?」という反原発派の意見に対し、東大のえらーい教授はこう言いました。「格納容器が壊れる可能性なんざ、隕石が落ちて地球が滅亡するのと同じくらいの確率だ。だから考える必要なんてないんだ」と(プルサーマル公開討論会議事録より)。
プルトニウムは漏洩したのか
しかし、今福島原発ではどうなってるでしょうか?16日の昼の段階で福島原発3号機の格納容器が損傷し、水蒸気が出ていると枝野氏ははっきり言いました。ぶっ壊れてるじゃん・・・。そして、「隠蔽らしき行動が16日午後~17日に集中している」という"いかにも"な情報があります。プルトニウム漏れちゃいました、と言ってるようなもんです。
さて、もうここから先は誰にもわかりません。考える必要がなかったから考えなかった、完全な「想定の範囲外」です。
執筆者様は静岡に避難されたのですね。
安全な場所へ移るのは正解だと思います。
お願いです。
そちらで生きるのでしたら、どうか将来たくさんの命を救ってください。
薬学を学んでおられるあなたなら、その先の道にきっと希望があるはずです。
この原発事故で将来甲状腺がんや肺がんが増えるのなら、それまでにどうか、予後のよい薬を作ってください。将来私たちを救ってください。