元NY俳優が教える金融経済

元役者/元投資銀行マンが英語プレゼンや金融経済について教えるブログです。

20代にニューヨークで本気でハリウッドを目指していた少しイカれた日本人。夢半ばで断念するがお金がなく一日ハンバーガー1個を3等分する生活を数か月送る。ひょんなことから、ヘッジファンド社長の鞄持ちバイトをし始めたのがきっかけで、アホのように勉強してウォールストリートへ。米系投資銀行Gで株式トレーダー、Mで投資銀行(DCM)のフロントバンカー(アジア、中東、ヨーロッパ担当)、コンサルティングを経験するも、やっぱり先生になりたくてエリートコース脱落(笑)
国内J大学経済学博士課程中途退学、イギリスB大学MBA修了
現在、S-uprise代表。資格学校LEC/関東近辺の大学で経済学を、ビジネス英語を教えながら未来の国際人育成をおこなう。
好きな言葉:人生は一度だけ。やまない雨はない。



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質問:なぜ、あなたは非合理な行動をするんですか?


行動経済学の中にコンコルドの誤謬(Concorde Fallacy)という議論があります。これは「投資した金額があまりにも巨額だと、それを中途半端に投げ出すことができない」という人の心理なのですが、皆さんも普段の生活で経験があるのではないでしょうか?ここで質問をしてみましょう、二択です。


<状況設定>
今あなたは、英会話スクールMOVAが提供する英語学習プログラムへ通うのに分割で80万円(総額100万円だが途中でやめても構わない)までを支払ってきました。ところが、本日の新聞で「大手企業資本をバックに最近躍進するPOCOが提供する学習プログラムを日本の基準英語とする」と日本の政府機関が発表した場合、あなたはAと Bの選択肢どちらを選びますか?

A. 現在のMOVAに通い続ける
B. MOVAを辞めてしまう。


統計によれば、このケースだとほとんどの人がMOVAを続ける”A”を選択するそうです。
当人からすれば、自分達が今までかけてきた”時間”や”お金”は無駄だったのか。。。と思ってしまうのでしょうね。そんな気持ちのおかげで、続けることに意味がなくなったとしても人はズルズルと続けてしまいがちになってしまうわけです。
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-コンコルドの誤謬-そもそもの由来


コンコルドの誤謬の名前の由来ですが、コンコルドというマッハ2.0で飛ぶ超音速旅客機が20世紀に注目されたのですが、実際に収益が上がると予測できないのに投下資金(サンクコスト)の大きさを考えて開発を続けてしまったケースから名前を取ったようです。関係者も「ここまで多額の先行投資をしたんだから、少しでも元を取りかえす!」と言う気持ちになってしまったのでしょう。しかし、それではギャンブルと一緒ですね。。。因みにこの非合理な行動を別名で「サンクコストの過大視(Overestimate of Sunk Cost)」と呼ぶことがあります。

この非合理な行動は、みな誰もが経験するものなので全てを否定するつもりは全くありません。ただ、このサンクコストの過大視が、日本で長年発生しており、今でも継続して発生しているとなると、あまり気分の良いものではありません。



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今そこにある"第二のコンコルド"


リニア中央新幹線の話は、私が子供だった頃からになるので、すでに30年ほど前からの話になります。

非常に長い開発期間をかけて実用化実験が繰り返されているようですが、品川-名古屋間路線の90%近くをトンネル化するための複雑な工事、エネルギーが在来型新幹線の3倍(1座席単位)必要だったりと難題が多いためまだまだ先が長い気がします。また、発案当時は1日で東京大阪間を何往復もできるビジネスマンを想定してリニア構想を立てたわけですが、テレビ電話等テクノロジーの進化でそこまでの物理的移動をビジネスマンが必要としなくなっている現実もあります。

この理由から、十数年前に人々が抱いた期待値と現在の期待値のズレを感じざるを得ません。先日もJR東海の山田社長がリニアの収益性について「「(リニアだけで)採算はとれない。新幹線と一体的に運用して会社をパンクさせずにやっていく」と異例の発言をしていました。しかし、それでもやはり前に進めようとする合理的ではない行動を続けていくようです。もちろん、この十数年でリニア計画に携わってきた多くの関係者があるため「はい、やめ!」ということは難しいかとは思いますが、もう少し収益性のあるビジョンを持ってマイナーチェンジをしていく検討も必要かと感じます。

「ここまで多額の先行投資をしたんだから、少しでも元を取りかえす!」

コンコルドの開発に携わったAir FranceとBritish Airwaysの2社はそんな気持ちでコンコルドを飛ばしたのでしょうか?しかし、その気持ちは届かず2003年11月にコンコルドは退役をします。

コンコルドで起こったギャンブル的発想が、リニア開発でも起こらないようにしてもらいたいと願うばかりです。

 
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人は自分の都合で行動する


皆さんはゲーム理論という名前は聞いたことがあるだろうか?ゲーム理論の存在は知らないかもしれないが、「ビューティフルマインド」というアカデミー賞を受賞した映画なら知っている人は多いだろう。ラッセルクロウが演じるノーベル経済学賞を取ったジョン・ナッシュの生涯を綴った映画だ。

そもそもジョン・ナッシュが登場する前もゲーム理論は存在したのだが、彼が編み出した方法「ナッシュ均衡」によりゲーム理論が大きく発展した。ゲーム理論についての詳細説明は割愛するが、要するに自分と(競争)相手がいた場合、自分の得られる利得を最大にするような戦略を選択する行動を定義したものだと考えればよい。

そう、人とは自分の都合で行動する生き物なのだ。


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従来の経済学との違い


このゲーム理論から発展して最近では行動ファイナンスとか行動経済学(以下、行動経済学)という学問が注目されている。それは、人間の合理的行動を仮定する経済理論に真正面から対抗する学問だと言っていいだろう。

従来の経済理論の前提"合理的な行動"を簡単に言うと、価格が安ければ安いほど消費者は多くモノを購入する行動、また価格が高ければ高いほど生産者はモノを売ろうとする行動のことだ。つまり価格の高低レベルが両者の行動を決定していると言ってよいだろう。

一方でそんな合理的な行動は現実には存在せず「人は自分の都合で解釈して自分の都合で非合理的な行動する」と主張するのが行動経済学だ。非合理的行動を理解するために1つ例を挙げてみよう。

例えば、町に競合するスーパーが2つあり同じAという商品を売っていたとしよう。商品Aの前に以下の宣伝文句が貼り付けてあった場合、あなたならどちらのスーパーで購入するだろうか?

スーパーB: 「現金で払えば1000円で、クレジットだと30円加算」と表記
スーパーC: 「通常では1030円のところ、現金でのお支払いは1000円」と表記

この選択肢を見たほとんどの人がスーパーCを選ぶ。どちらもディスカウント後に支払う価格は同じなのにも関わらずだ。これは、価格を消費量の決定要因としていた従来の経済理論と矛盾する。それは、従来の経済理論では同じ満足度を得られる両者を区別することはなかった(必要がなかった)。

しかし、現実では同じ条件下であっても表現を少し変えただけで、人は非合理的な選好をしてしまうケースが頻繁にある。こういった人間の心理行動を経済学に当てはめたのが行動経済学だ。


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人の認識を狂わせるアンカーリング効果


しかし、なぜ人はこのような非合理的行動を選択するのだろうか?実はこの行動は心理学の一つ、アンカーリング効果(anchoring effect)が影響している。アンカーとは船のイカリを固定するという意味があるのだが、アンカーリング効果は、最初にイカリ(情報や数字)をおろした地点が、その後の人々の判断に影響を与えてしまうということだ。例えばアウトレットに行くと、その名前だけで“安い”とアンカーがおろされているため、初来場で他と比較したわけでもないのに安いと感じるこの感覚だ。

このアンカーリング効果が、日本の産業に対する人々の意識にも使われている。「日本は輸出中心の国で円高に振れてしまうと日本がダメになる」というフレーズを聞くことはまだまだ多い。「ダメになる」といった直接表現ではなくても、いつしか人々の頭の中に"日本は輸出国=円高は日本をダメにする"というアンカーがおろされてしまっていた。

ところが、人々の意識に反して、事実は全く異なる。

人々のアンカーは"日本は輸出国=円高は日本をダメにする"という点で担保されているとすれば、日本が輸出国でなければそのロジックは崩れることになる。

結論から言おう、日本は輸出に依存した国ではない。


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"円高"ではなく"円安"のほうが心配ではないか?


日本が輸出依存国でない理由は以下の3点でわかる。

1. 日本の輸出依存度は対GDPで約13%であるということ(韓国46%, ドイツ38%) データ出所:JETRO、財務省
2. 1の13%は1960年代から数字はあまり変わっていない
3. 貿易代金の受取/支払額は輸出より輸入した商品のほうが圧倒的に多い(「財務省の貿易統計」で通貨別の取引比率を参照)

我々が懸念すべきは行き過ぎた円安のほうだ。2のように約50年近く数値が変わらないのに人々の意識が変わらないのは、アンカーが深くおろされ人々の頭に深く浸透し過ぎててしまい、たとえアンカーを払拭するような(真の)事実が出てきても、頭から消し去る事は容易ではなくなっている。人々が日々目にする映像や活字が円高悪寄りの見解を示せば、さらにアンカーを取り除くのは難しい。

自分の知らない分野だとどうしても最初に出てきた情報や数字が判断のアンカーになってしまうのは仕方ない。アンカーリング効果の犠牲にならないよう、知らない分野であるがゆえ「なぜこの情報?」「なぜこの数字?」と自分の脳に問いかけ、客観的な視点を養っていくことが肝要だ。

もちろん、その分野についての深い知識を持っていくことが一番大事なのは言うまでもないことなのだが。

   
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(21/50)

前回お話した通り、固定相場は時に凶器に変わります。イギリスの場合、破綻までには至りませんでしたが、1997年-1998年に起きたアジア通貨危機で破綻してしまう国が次々で出てきてしまいました。
ヘッジファンドが大量の資金を成長著しいアジアに投資をして、最終的に資金を一気に引き上げたことが直接的な原因でした。
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しかし、なぜヘッジファンド達は成長著しい国々なのに投資資金を流出させてしまったのでしょうか?
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アジア危機の真実


アジア通貨危機が起こるまでの90年代のアジア各国経済は、非常に好調な状態でした。1985年のプラザ合意を機にアメリカはドル安政策に舵を切ったわけですが、以来その影響を受けた日本が円高を強みに海外に工場を移転させ、現地雇用や技術移転を進めることでアジア経済成長を下支えする形になりました。

新興国が経済発展をするときには、事業を立ち上げたばかりの成長期待のあるベンチャー企業を想像していただければよいでしょう。事業拡大のための資金ニーズが旺盛なので、スタート期はどうしても赤字になります。途上国で考えても、成長期にはどうしても経常収支(貿易収支+資本収支)が赤字になる傾向があります(中国を除いて)。国内需要が旺盛のため、海外からの輸入が輸出より多いわけです。ということは、資金不足状態を外部から借りて解消しなくてはなりません。通常、経営赤字の状態ではお金を借りることができませんが、新興国の成長期待を裏付けに海外投資家が貸していったわけです。そして、その資金の出し手である海外投資家の一部がヘッジファンドでした。

ただ、これでヘッジファンドが資金を引き揚げても、アジア成長の収益機会を逃がすことになるため得になりません。では、なぜヘッジファンドは資金引き揚げを決断したのでしょうか?

資金の引き揚げは、株式市場で考えると手持ちの株を売って現金に換金することを言います。市場で株を売る動機は大きく2つ。1つが企業業績が好調で株価が十分に上がったので利益を確定させたい もう1つが企業業績が将来悪化すると予想され早く損切をしたいと思うことです。そして、アジア危機の場合は後者に当たるわけです。では、好調なアジア成長を止める要因とは何だったのでしょうか?
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アメリカの政策転換


企業もそうですが、収益性が重要です。利益が将来的に見込めないと判断されれば投資資金は回収されます。アジア各新興国にとっての収益は、輸出による収益に大きく依存していたのでした。
90年代アジアの多くの国でドルペッグ制*1を採用しており、前述のプラザ合意からのドル安政策がアジア経済の後押しをしていたのは間違いありません。自国通貨が安いことで輸出からの収益を拡大させていきました。ところが、1995年、アメリカがプラザ合意以来取っていたドル安政策をドル高政策に切り替えてしまったのでした。
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今までドルペッグ制を採用していたアジア新興国の収益揺るがす事態。借金の返済はこの収益が将来も大きく成長していくだろうと予想したからこそ、海外から資金を集めることができていました。
ところが、経常収支は赤字のまま悪化するばかり。アジア新興国の将来成長に少しでも疑いを持ってしまうと、もうその売り圧力は止めることは誰にもできませんでした。
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儲けの手口


前回の話と変わらないのですが、条件は①固定相場であるということ②外貨準備がなくなるほうに賭けることです。タイバーツの例を取ると以下の通りになります。
タイはドルにペッグ(固定)を採用していたため、ドル高になれば、タイ政府はバーツを(買って)バーツ高にする必要(≒義務)があるわけです。

その義務に目を付けたのがヘッジファンド。タイ経済成長も鈍化、また通貨価値下落や不動産指数下落の状態ならば通貨安になるものをタイ政府が買うのを見て、バーツ空売り作戦を開始したのでした。

 * タイ政府はバーツを買って、外貨準備金を使って他通貨を売る。
 * 全世界の投資家がタイバーツを売れば
 * タイ政府が持つ外貨準備はあっという間に底をつく。
 * タイ政府がドルペッグから変動相場制度に移行を宣言→バーツは下落しつづける。
 * ヘッジファンドは空売りにより莫大な利益を確定させる。
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焼け跡


アジア通貨危機で影響を受けたのは、タイバーツ、インドネシアルピア、マレーシアリンギット等です。
ただ、変動相場移行後は通貨安が助けて輸出が伸び、再度経済成長をすることになりました。

因みに韓国もアジア通貨危機の一つとしてくくられています。しかし韓国のIMF救済はヘッジファンドとは直接関係ありません。韓国は、ドル建て国債を発行してドルベースでの借金が多い国でした。しかし、一旦ドル高政策になってしまうと、自国ウォンの価値が下がっているため、借金が額面以上になってしまい支払う不能に陥ってしまったのです。




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