フランスだけで60,000人の雇用が存在するコニャック業界。フランスの東南部には、コニャック国際専門家団体なるものまで存在する。

この団体がフランス政府とEUに対して、アメリカとのコニャック議論について早急にバイデン新政府に接触するよう求めた。これはどういうことか。


アメリカと
EUの間には貿易戦争が継続している。アメリカの貿易戦争というと中国をイメージしてしまうが、トランプ前政権はそれ以外の国とも貿易戦争を展開している。

 

例えばエアバスとボーイングに対する政府関与についての論争は、すでに数年にわたって繰り広げられている。


EU
はヨーロッパに本社を置くエアバスに資金援助している。
一方、アメリカは自国のボーイングに対して資金援助を行っている。


いずれも自国の航空機メーカーが倒産してしまっては相手を利することになるため、どうしても潰すわけにいかない。そこで資金援助を行う。


アメリカと
EUはお互いに、違法だ合法だとWTOを絡めて争っている。

 

そんな最中の2018年、トランプ前大統領は自国の鉄鋼業界を守るためとして、EUからの鉄鋼とアルミに追加の関税を設けた。
それに怒った
EUはアメリカからのバーボンに25%の追加報復関税を課した。

対するアメリカは北アイルランドからのシングルモルトスコッチとシングルモルトウイスキー、さらにEUからのリキュール、ウイスキー、ブランデー、ウォッカ、ジン等に25%の追加報復関税を課した。

その結果、スコッチのアメリカへの出荷量は39%減り、アメリカンウイスキーのEUへの出荷量は41%減った。


これにより、ヨーロッパとアメリカのアルコール飲料消費者は「高い価格」と「狭い選択肢」に直面している。

 

スコッチウイスキー協会のスポークスマンは「そもそも飛行機メーカーの補助金をめぐる論争に蒸留酒業界が引きずり込まれるのは全くおかしな話だ」と憤りを隠せない。

 

コニャックは、追加関税からかろうじて残っている酒類だった。

しかし昨年1230日に、アメリカ政府はコニャックにも同様に追加関税を課す予定と発表した。


フランスのコニャック業界関係者は、実行に移されては困ると戦々恐々。フランス政府と
EUへの要求に至ったというわけだ。

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