2005年10月06日

理念のために、対話でなく武力行使を容認するのか:「PHASE-48 新世界へ」

『機動戦士ガンダムSEED DESTINY』
第49話「PHASE-48 新世界へ」視聴メモ2

 デスティニープランに関する本編における解説によると、単に不平等をもたらす根源の社会的仕組みが変化するだけのようにしか思えず、それのみについて言えば案外現在のグローバルな不平等を是正して、既存の社会システムよりも、より多くの人間に公正をもたらす結果になる可能性も否定できないわけです。したがってこの計画の是非については、デュランダル議長の真意の究明や国際的な議論がまず必要なはずです。一部の国家や個人の主義主張によって、排除すること自体が正当化されるような問題ではありません。

 カガリ代表とラクスのメディアによるメッセージの表現がありましたが、それは単なるメディア戦略における一方的な意思表明であり、対話とは言えません。プラントとの十分な対話も外交手段の表現もなく、いきなりオーブやラクス個人の政治的主張だけで軍事行動を起こすとは、それはルール無視の性急な行動であり、自らの主義のために武力行使も辞さないという点で、デュランダル議長の行動とさして変わりはありません。

 以下は本編中のラクス・クラインの台詞です。

でも、私達も今は闘うしかありません。

夢を見る。未来を望む。

それはすべての命に与えられた、生きていくための力です。

何を得ようと、夢と未来を封じられてしまったら、私達は既に滅びたものとして、ただ存在することしかできません。

すべての命は、未来を得るために闘うものです。

闘ってよいものです。

だから私達も、闘わねばなりません。今を生きる命として。私達を滅ぼそうとするもの。議長の示す、死の世界と。

 以上がラクス・クラインの台詞を借りた作り手の主張です。脚本上は「闘う」という表記であろうと個人的に解釈して、以上のように表記しましたが、アークエンジェルが武力行使も視野に入れているのは明白ですから、以後「戦う」という意味も含めて考えて問題ないと思います。

 これによると、戦争により理不尽に命が奪われ続ける、有史以来の戦争と密接な既存社会を改革することよりも、人間が存在する活力である、夢や未来を望むことが可能な社会であることを、最重要事項として戦って死守すべきである、という主張のようです。そういえばこの論理は、アメリカ合衆国における銃器問題で、銃規制に反対する立場の論理と似たような論理であるような気もするのですが、気のせいでしょうか。

 確かにラクス・クラインの主張は心地よいですが、果たして皆が本当にそれを望んでいると言い切れるでしょうか。現実の世界各地では主義や国家による戦争・戦闘・テロによる悲惨な結果を強いられている人々が多数存在します。そんな人たちは本当に夢や未来のために戦う道を、望んでいるのでしょうか。

 私は当事者ではないので、そのような人々の思いを知る由もありませんが、夢や未来云々の前に、まず平和に生存できる世界自体を第一義に望むのではないでしょうか。人類の夢ともいえる、戦争の無い世界が実現できる計画であるならば、そのような平和や生存を脅かされ続けている人々にとっては、非常に魅力的な選択肢かもしれませんし、決して賛同は少なくないかもしれません。

 そのような点も考慮せず、人類全体又は国際的な議論やコンセンサスの手続きもなく、主人公らだけの価値観と理念によって、人類の一大プロジェクトを一方的に阻止するために武力を行使しようとする行為。これがテロ行為でなくて何でしょうか。

 主張の正否を論じても無意味なので割愛しますが、議長派にしてもラクス派にしても、所詮それは彼らの理念や主張にすぎません。問題は他の人類のコンセンサスがあるか否か、またそれを得ようとするか否かでもあります。その点について物語表現にてクリアしない以上、両者の行動は全く同じ次元です。議長のプランに特に反対が無い状態で、ラクスらが政治的・外交的努力をせず、ザフトに単に軍事力を行使するのならば、議長に比べてはるかに正当性に乏しい行動といえるでしょう。


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個人的な印象の数値化です。
(最低〜最高点。120点満点。)

印象とはいえ数値で一覧化すると自分でも疑問を感じる整合性のなさです。最高点順であり平均点ではありませんので、一部かなり奇妙な順序になっています。1話の評価しかない作品もあり、一律に序列化すること自体に無理があるのは承知です。並べてみるのもおもしろそうだったので試したまでです。管理人自身の今後の参考用とお考えください。平均点順に順次変更中。
【 2006/1/15 更新 】

  1. WOLF'S RAIN
    ウルフズレイン

     :110点
  2. 攻殻機動隊
    S.A.C. 2nd GIG

     :90〜107点
  3. 攻殻機動隊
    STAND ALONE COMPLEX

     :84〜104点
  4. SAMURAI 7
    サムライセブン

     :103点(シリーズ)
  5. かみちゅ!
     :103点
  6. 創聖の
    アクエリオン

     :103点
  7. 巌窟王
     :95点(シリーズ)
  8. ふたつのスピカ
     :94点
  9. ジパング
     :82点(シリーズ)
  10. バジリスク
    甲賀忍法帖

     :81点(シリーズ)
  11. 劇場版
    機動戦士
    Zガンダム
    星を継ぐ者

     :79点
  12. Rozen Maiden
    ローゼンメイデン

     :77点(シリーズ)
  13. BECK
     :77点(シリーズ)
  14. ぺとぺとさん
     :56〜77点
  15. 英國戀物語エマ
     :54〜73点
  16. 機動戦士
    Vガンダム

     :72点
  17. TIDE-LINE BLUE
    タイドライン・ブルー

     :72点
  18. 撲殺天使
    ドクロちゃん

     :70点
  19. NARUTO ナルト
     :54〜65点
  20. MONSTER
    モンスター

     :51〜64点
  21. ケロロ軍曹
     :57〜61点
  22. ONEPIECE
    ワンピース

     :56点
  23. ガン×ソード
    GUN SWORD

     :30点〜54点
  24. ハチミツと
    クローバー

     :53点
  25. 交響詩篇
    エウレカセブン

     :52点
  26. トリニティ・ブラッド
    Trinity Blood

     :50点
  27. IGPX Immortal Grand Prix
     :49点
  28. ピーチガール
     :48点
  29. SPEED GRAPHER
    スピードグラファー

     :32〜44点
  30. エレメンタル
    ジェレイド

     :39点
  31. SHUFFLE!
    シャッフル!

     :39点
  32. 奥さまは魔法少女
     :35点
  33. おねがい
    マイメロディ

     :33点
  34. 機動戦士ガンダムSEED DESTINY
    :32.8点(50話平均)
    22〜55点
  35. こみっくパーティーRevolution
     :26点
  36. 円盤皇女
    ワるきゅーレ

     :25点