2005年10月09日

オーブ自衛権の限界:「PHASE-48 新世界へ」

機動戦士ガンダムSEED DESTINY
第49話「PHASE-48 新世界へ」視聴メモ7

 本編の表現を見る限り、本作品においてオーブの軍事力は、他国の争いには関与しない専守防衛の国防軍といった感じに設定しているようです。集団的自衛権に関する表現もあることから、日本の自衛隊と似たような設定と考えて、まず問題ないでしょう。今後の物語の展開で、オーブへのザフト軍の軍事的進攻があれば、オーブ軍の軍事行動には自衛権の行使たる正当性が生じます。

 「PAHSE-48」現在のところ、プラントのギルバート・デュランダル議長の提唱する「デスティニープラン」は、政治的・外交的・経済的な側面から実行する計画のようで、軍事力を背景にしている点は否めないものの、軍事力行使そのものではありません。もちろん最終話までに計画をどう実行する表現になるかは、本稿執筆時点では不明です。

 しかしデスティニープラン自体が、軍事力行使によって反対国家に対して強制される性質の計画でない限り、オーブやアークエンジェル、エターナルの軍事行動は、防衛ではなくプラントに対して“戦争を仕掛ける”行為となり、主人公たちにいかなる理想があろうとも、「戦争を終わりにしたい」とか「戦いたくない」などと主張してきた彼らの台詞や思想とも、根本的に大きな矛盾が生じてしまいます。

 そのあたりについて、ラクス・クラインの戦う決意の表明以外の表現で、彼らの行為の正当性を補強しておく必要があるでしょう。例えば上述したように、「デスティニープラン」の実行について、反対するオーブやスカンジナビア王国について、「プラントが、軍事力行使による強制を公式に表明する」などといった表現です。

 こうすると少なくとも計画に反対するオーブは、国防のための軍事力行使もいとわない、という正当性を付与できます。しかしそもそもオーブ国民の同意の表現はありません。あくまでカガリの考える「オーブの理念を守ることが、国民を守ることにもつながる」という主張による独裁にすぎません。

 劇中にて「オーブ国民の意見は概ね反対でまとまっています」などといった、一言で済むような表現による配慮さえも見当たらなかったように思います。本来いわゆる“ご都合主義”は、「本編中のごく短期間で国民の総意など政府が把握することは不可能」なところを、台詞で都合よく補完したりと、このような箇所で利用する有効性が高いと思います。この点は置いておきましょう。


 仮にオーブ国民の総意でもある表現が劇中にあったとすれば、オーブの軍事力行使は、オーブ国民への計画自体の強制実行阻止という目的においてのみ、正当化されるものにすぎません。それ以上の“積極的な”軍事力行使は、プラントへの立派な“侵略行為”であり“戦争行為”です。そもそも今まで描かれたデュランダル議長の性質から考えてみれば、それら2国しか計画に対する反対国が無いならば、ほうって置いて他の反対しない世界について順次実行していけば済むだけだと思いますが、それも置いておきましょう。

 仮に、デスティニー・プランが軍事力行使によって、オーブに強制され、そのためにオーブ正規軍のアークエンジェルが、自衛のための軍事行動を行うとします。その際自衛として許容される軍事行動の範囲はどこまででしょうか。あくまでオーブ国家直接の防衛のための軍事行動として、限定的に解釈するのが適切でしょう。

 だとすると仮にアークエンジェルが、プラントのザフト軍「機動要塞メサイア」なる軍事拠点、もしくはプラント領の計画中枢施設に対して戦闘行為を行った場合どうなるでしょうか。機動要塞メサイアの役割や位置については、執筆時点ではデスティニープラン実行のために重要な施設がある、ということしかわかりません。しかし機動要塞メサイアの位置や性質次第では、ここにオーブが軍事力を行使することは、自衛権の範囲を超えた立派な他国への“侵略行為”となる可能性が考えられます。もちろん積極的自衛権の行使と解する余地もあるでしょうが、日本の自衛隊と同等の厳格な運用理念のありそうな、オーブ軍の表現が過去にある以上、積極的自衛権の行使として、ザフト軍の軍事拠点メサイアに対して軍事行動を行うことを認めるのは、オーブの理念上困難といわざるを得ないでしょう。それとも本作品は暗に積極的自衛権行使を肯定する主張を含んでいるのでしょうか。

 考慮すべき点について、脚本上の一文で済みそうな配慮を行っていないという結果を考えると、視聴対象年齢を考慮することとは別に、作り手である監督や脚本家が大人である以上、そのような点について思慮が及ぶのが普通であり、リソースの範囲内及び視聴対象者を考慮して難解さを創出する問題等が無い場合は、配慮した結果が生じてもいいはずです。にもかかわらず、本作品ではそのような点が見当たらないように思います。これは暗に作り手の思慮の深さの程度を示しているといえるかもしれません。


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1. ガンダムSEED DESTINY
  [ 私の考えていること ]   2005年10月10日 00:28
とうとう最終回となりましたね、DESTINY。 私は終了15分前から見始めたのですが(通常より30分繰り上がる事を忘れてた。そのあとまた見直しましたけど。)、なんか異様な空気でしたね・・・。 デュランダル議長とグラディス艦長、そしてレイが家族みたいにほのぼのと...

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印象とはいえ数値で一覧化すると自分でも疑問を感じる整合性のなさです。最高点順であり平均点ではありませんので、一部かなり奇妙な順序になっています。1話の評価しかない作品もあり、一律に序列化すること自体に無理があるのは承知です。並べてみるのもおもしろそうだったので試したまでです。管理人自身の今後の参考用とお考えください。平均点順に順次変更中。
【 2006/1/15 更新 】

  1. WOLF'S RAIN
    ウルフズレイン

     :110点
  2. 攻殻機動隊
    S.A.C. 2nd GIG

     :90〜107点
  3. 攻殻機動隊
    STAND ALONE COMPLEX

     :84〜104点
  4. SAMURAI 7
    サムライセブン

     :103点(シリーズ)
  5. かみちゅ!
     :103点
  6. 創聖の
    アクエリオン

     :103点
  7. 巌窟王
     :95点(シリーズ)
  8. ふたつのスピカ
     :94点
  9. ジパング
     :82点(シリーズ)
  10. バジリスク
    甲賀忍法帖

     :81点(シリーズ)
  11. 劇場版
    機動戦士
    Zガンダム
    星を継ぐ者

     :79点
  12. Rozen Maiden
    ローゼンメイデン

     :77点(シリーズ)
  13. BECK
     :77点(シリーズ)
  14. ぺとぺとさん
     :56〜77点
  15. 英國戀物語エマ
     :54〜73点
  16. 機動戦士
    Vガンダム

     :72点
  17. TIDE-LINE BLUE
    タイドライン・ブルー

     :72点
  18. 撲殺天使
    ドクロちゃん

     :70点
  19. NARUTO ナルト
     :54〜65点
  20. MONSTER
    モンスター

     :51〜64点
  21. ケロロ軍曹
     :57〜61点
  22. ONEPIECE
    ワンピース

     :56点
  23. ガン×ソード
    GUN SWORD

     :30点〜54点
  24. ハチミツと
    クローバー

     :53点
  25. 交響詩篇
    エウレカセブン

     :52点
  26. トリニティ・ブラッド
    Trinity Blood

     :50点
  27. IGPX Immortal Grand Prix
     :49点
  28. ピーチガール
     :48点
  29. SPEED GRAPHER
    スピードグラファー

     :32〜44点
  30. エレメンタル
    ジェレイド

     :39点
  31. SHUFFLE!
    シャッフル!

     :39点
  32. 奥さまは魔法少女
     :35点
  33. おねがい
    マイメロディ

     :33点
  34. 機動戦士ガンダムSEED DESTINY
    :32.8点(50話平均)
    22〜55点
  35. こみっくパーティーRevolution
     :26点
  36. 円盤皇女
    ワるきゅーレ

     :25点