2005年10月12日

テロリストに貶められた哀れなラクス・クライン:第50話「PHASE-49 レイ」

機動戦士ガンダムSEED DESTINY
第50話「PHASE-49 レイ」視聴メモ3

 『機動戦士ガンダムSEED DESTINY』第50話「PHASE-49 レイ」に関連する、前回までの記事で述べてきましたが、カガリ代表率いるオーブ軍と、オーブ軍第2宇宙艦隊所属アークエンジェル、及びラクス率いるエターナルらの軍事行動は、現実世界の独善的になりやすい一国主義の超大国顔負けの、筋の通らない違法な軍事行動ではないでしょうか。

 ラクス・クラインと、彼女が指揮するエターナルの正式な軍の所属の疑問についてですが、ラクス自身が「アスハ代表のもとにある」とメディアで言明しています。ですから作り手の中では、戦艦エターナルはオーブ軍所属のつもりなのかもしれません。こうしておけば正真正銘のテロリストのテロ行為としての可能性は、否定できそうです。しかし本編を見る限り、テロリスト化を忌避する配慮のために、エターナルの所属を明確にしている表現が見当たらないように思います。

 エターナルの戦闘時には、幸い直前にラクス・クラインに警告の通信をさせて、真珠湾奇襲攻撃について戦後も卑怯者呼ばわりされた旧日本軍よりは、ましな先制奇襲攻撃を構成したようです。しかしプラント政府に対する正式な宣戦布告ではなく、戦闘直前の警告にすぎません。逆にそれは戦術レベルの心理作戦の問題にしかならず、警告としての有効性は希薄です。強いて言えば戦術上相手の戦意を弱体化させるための、“卑怯な”心理作戦とも解釈可能なわけです。そのような警告場面は、所詮ラクス・クラインに正義があるように脚色するための、ご都合によるお飾りにすぎません。メタな視点でみた場合、ラクス・クラインの武力行使に効果的に正当性を感じることができるとは言い切れません。

 仮にラクス・クライン率いるエターナルが、正式なオーブ軍でなければ、どうなるでしょう。彼女らの行動は、プラントが連合軍より接収した財産に対する単なる破壊活動であり、立派な“テロ行為”であり“テロリスト”にすぎません。ザフト軍の艦隊司令官の「ラクス・クラインらの艦隊はオーブ軍である」というような趣旨の台詞によって、辛うじてテロリストでないことに触れていますが、そんな台詞ひとつでは、構成として全く不充分です。そのような表現構成の不充分さそのものが、そもそも作り手自身に私が述べているような問題意識さえない証拠です。

 ここでレジスタンスやゲリラという言葉も浮かびました。しかし本編にてそのような組織に感じさせられる効果的な表現は、みあたらないように思います。そういえば前作『機動戦士ガンダムSEED』においては、右派で主戦派のパトリック・ザラ議長に反旗を翻す地下抵抗組織としての、“組織としての色彩の強い”ラクス・クライン一派の表現がありました。ある程度適切な表現が前作の本編にあったため、組織・レジスタンスとしての位置付けを、効果的に印象付けることができていたと思います。

 前作でラクス・クライン一派について、テロリストやテロ行為という印象を払拭できたのは、“レジスタンス”という表現があったおかげです。前作では明確なレジスタンスの表現があったが、本作では見当たらない、この表現上の一貫性や配慮の希薄さも、本作にてラクス・クライン一派の“テロリスト”としてのイメージを強める、大きな理由になっているものと思われます。

 以上のように作り手は、本作品『機動戦士ガンダムSEED DESTINY』において、よりにもよって前作から生み出したヒロインの1人、ラクス・クラインを中心としたキラ、アスランら主人公らによる、“テロ行為”を肯定しているように誤解する余地のある、とんでもない構成をしてしまいました。もはやこの作品のアークエンジェル一派の主人公たちはもちろんのこと、作り手にも正義はありませんし、正義を語る資格もありません。全くもってあきれてしまいます。


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SIDE 6 管理人 ★ジャン

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個人的な印象の数値化です。
(最低〜最高点。120点満点。)

印象とはいえ数値で一覧化すると自分でも疑問を感じる整合性のなさです。最高点順であり平均点ではありませんので、一部かなり奇妙な順序になっています。1話の評価しかない作品もあり、一律に序列化すること自体に無理があるのは承知です。並べてみるのもおもしろそうだったので試したまでです。管理人自身の今後の参考用とお考えください。平均点順に順次変更中。
【 2006/1/15 更新 】

  1. WOLF'S RAIN
    ウルフズレイン

     :110点
  2. 攻殻機動隊
    S.A.C. 2nd GIG

     :90〜107点
  3. 攻殻機動隊
    STAND ALONE COMPLEX

     :84〜104点
  4. SAMURAI 7
    サムライセブン

     :103点(シリーズ)
  5. かみちゅ!
     :103点
  6. 創聖の
    アクエリオン

     :103点
  7. 巌窟王
     :95点(シリーズ)
  8. ふたつのスピカ
     :94点
  9. ジパング
     :82点(シリーズ)
  10. バジリスク
    甲賀忍法帖

     :81点(シリーズ)
  11. 劇場版
    機動戦士
    Zガンダム
    星を継ぐ者

     :79点
  12. Rozen Maiden
    ローゼンメイデン

     :77点(シリーズ)
  13. BECK
     :77点(シリーズ)
  14. ぺとぺとさん
     :56〜77点
  15. 英國戀物語エマ
     :54〜73点
  16. 機動戦士
    Vガンダム

     :72点
  17. TIDE-LINE BLUE
    タイドライン・ブルー

     :72点
  18. 撲殺天使
    ドクロちゃん

     :70点
  19. NARUTO ナルト
     :54〜65点
  20. MONSTER
    モンスター

     :51〜64点
  21. ケロロ軍曹
     :57〜61点
  22. ONEPIECE
    ワンピース

     :56点
  23. ガン×ソード
    GUN SWORD

     :30点〜54点
  24. ハチミツと
    クローバー

     :53点
  25. 交響詩篇
    エウレカセブン

     :52点
  26. トリニティ・ブラッド
    Trinity Blood

     :50点
  27. IGPX Immortal Grand Prix
     :49点
  28. ピーチガール
     :48点
  29. SPEED GRAPHER
    スピードグラファー

     :32〜44点
  30. エレメンタル
    ジェレイド

     :39点
  31. SHUFFLE!
    シャッフル!

     :39点
  32. 奥さまは魔法少女
     :35点
  33. おねがい
    マイメロディ

     :33点
  34. 機動戦士ガンダムSEED DESTINY
    :32.8点(50話平均)
    22〜55点
  35. こみっくパーティーRevolution
     :26点
  36. 円盤皇女
    ワるきゅーレ

     :25点