さきほどフランスの師匠ヴァルテール先生から、フランスで最も有名な中世史家ジャック・ル・ゴフ氏逝去の報が届きました。すぐさまネットで訃報を確認すると、ル・ゴフ氏は4月1日にパリのサン=ルイ病院で亡くなったようです。享年90歳。サン=ルイとはフランス王ルイ9世のことであり、ル・ゴフ氏には『聖王ルイ』という大著もあるので、偶然とは思えません。日本では多くの著作が翻訳・紹介されているので、西欧史に関心がある人は、一度は彼の著作を読んだことがあるでしょう。僕自身はお目にかかる機会は残念ながらありませんでしたが、2012年10月にPeter Lang社から刊行したヴァルテール先生の還暦を祝う論集『諸神話の声・諸文明の学』には、ル・ゴフ氏にも名誉顧問として参加していただきました(秘書の方から快諾の連絡をいただきました)。
 ヴァルテール先生は個人的にル・ゴフ氏とつきあいがあり、2人が最後に会ったのは2010年7月末にフォントヴロー修道院で開催された学会のときだったそうです。その時の写真をヴァルテール先生が送って下さいました。ル・ゴフ氏は車椅子のまま、ヴァルテール先生の「中世の鮭」についての講演を聞き、的確なコメントをされたそうです。そういえば、1992年から1993年の僕のグルノーブル留学中、ヴァルテール先生はル・ゴフ氏が担当するラジオ番組に出演されました。そのときは先生がグルノーブルからパリへ出張ということになったので、当時15歳だった息子さんの世話を僕がグルノーブルで任されたことを思い出します。ル・ゴフ氏とヴァルテール先生の交流の長さが分かるエピソードです。ル・ゴフ氏のご冥福をお祈りします。