夢の話を聞かされるのが嫌いである。

夢の話と言っても、「僕は野球選手になるのが夢です」とか、「私には夢がある。いつの日か、ジョージアの赤土の丘の上で、かつての奴隷の子孫たちと、かつての奴隷所有者の子孫たちとが、同胞として同じテーブルにつくことができるようになるという夢である」とか、そういう夢の話ではない。
そういう、夢のある夢の話であるなら、いくら夢であっても、聞かせていただくことは大歓迎である。

私が拒否反応を起こしてしまうのは、寝て見るほうの夢の話である。
「夢は寝て見ろ」なんてセリフがあるが、その後に、「そのかわり、その話を人にするなよ」と付け加えたいくらいである。

だってね、「ゆうべ、こんな夢を見たんだよ」と言われてですよ、いくら大スペクタクルな内容であってもね、「いや、所詮それって夢でしょ。だからどうしたの」と言いたくなるではないですか。
しかも、夢の話ってたいていオチがないじゃないですか。
夢オチにしようにも、すでに夢としてスタートしてるわけだから、夢としてもおとせないじゃないですか。
言ってみれば、夢の話を聞かされるのって、「これって、全部、河川唯ちゃんの空想なんですよ」と言われてから奇面組を読まされるようなもんじゃないですか。
まあ、奇面組はそれでもおもしろいかもしれないけど、まあ、夢の話って、「ふーん、それで?」という程度の内容であることが多いではないですか。

どうせなら、同じような内容でも「こんな夢を見た。」という出だしではなく、「こんな妄想をした。」と言われてから話を聞かされた方が、本人の趣向を感じられて好感が持てる気がする。

たとえば、「いやー、北川景子と深田恭子と俺の3人がルームメイトになるという夢を見たんだ」と言ってくる人と、「いやー、俺、いつも部屋に帰ってくると、北川景子と深田恭子が中で待っているって夢想しながらドアを開けるんだ。実際は一人なんだけどね。はははっ」と言ってくる人、どちらの話に惹きつけられるかということである。
これはもう、圧倒的に後者。
前者の話は5分後には忘れていること間違いないけど、後者の話を聞かされた暁には、その人の顔を見るたびに、「ああ、この人、相変わらず寂しい暮らししてんのかな」とか、「そういや、この人って、ジョン・レノンばりのドリーマーだったな」とか、こちらもかなりのイマジンを強いられること請け合いである。
インパクトに差がありすぎる。

そういうわけでね、夢の話を聞かされるのが嫌いなわけである。
だからどうしたと言いたくなるのである。
で、なんでこんな話をするのかというと、自分が見た夢の話を書こうと思うからである。

いや、あれよ、これは本当に誠実な手法だと思うわけよ、我ながら。
なんなら、「ゆうべ、こんな夢を見たんですが、みんなどう思いますか??」くらいの出だしで済むのに、さんざん夢の話が嫌いだと言いながら、自分が夢の話をしだす訳だから。
「筋金入りのアンチ巨人です」と謳いながら、「ジャイアンツの阿部慎之助選手が来店されました」と、笑顔満面のツーショット写真を掲載する居酒屋店主のブログのようなもので。
あれ?全然誠実じゃねえな。

まあいいや、自分に嘘はつけないというか、夢の話を聞かせるうえで、自分自身が聞かされる苦痛を認めたうえで語りだすというね、「みなさん本当にごめんなさい、つまらん話をしますが、僕もつまらんとわかったうえで話すので、どうかお怒りになりませんよう、かしこみかしこみ、お願いもうしあげます」というね、そういう気持ちを伝えたうえで話したかったわけである。

まあ、要はハードルを下げようとしているだけなのだが。

そろそろ、本題に入らないと、読むのをやめる人がいそうだから、夢の話をしよう。
数日前に、「こどもたちが成長して・・・」みたいな夢を見た。
で、息子が「お父さん、僕も大人になったよ」と、あごひげと胸毛を私に見せつけてきて、いたくショックを受けるという、ただそれだけのシンプルな夢であった。

問題は、どういう部分にショックを受けたかという話である。

「ああ、あんなにかわいかった私の赤ちゃんが、こんなおっさん化してしまって・・・」という、そういうノスタルジックな感傷にひたっていたわけではないのである。

そう、「畜生、俺よりも胸毛が濃いじゃないか。負けた。男性ホルモンで息子に負けた」という、そういう感情が湧き上がってショックを受けたのである。

なんたるマチズモ。
自分自身が、そんなに「男らしさ」に依拠していたとは・・・。
そう考えると、髭生やしたりしてるのも、そのへんを誇示しようと意識してないようでしている証ではないかと、妙に納得してしまった。
夢を通して自分の無意識的意識を再確認することになったのであった。

なんか、こうして文字にしてみると、内容の無い話だったなあ。
やはり、夢の話はくだらん。
もう人前ではしないことにしよう・・・。

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