http://blog.livedoor.jp/jg4okd/archives/51700009.html
4月25日にうpした詩をやたら長くして手直ししました。
『君の願いを言い当てよう。君の願いは神様になること。それならばこの屋敷に入るといい。さすれば君は君だけの世界を手に入れることができよう』
くちゃ顔の大男、皺くちゃ手の平少女に差し出した。彼女は迷わずその手を取って、白い屋根の立派な屋敷に足踏み入れる。その瞬間に彼女の手にあった本が姿を変えて、名前の書かれた板となった。そこに書かれた名前は“おもちゃ箱”、それが彼女の世界。
『あら? こんな素敵な場所があったのね。失礼、少しの間だけ居させて頂戴』
おもちゃ箱の管理人となって幾つかの時を重ねた少女に綺麗な黒のドレスを着たキツネ顔の女性が訪れた。少女はとても驚いた。自分だけの世界の来訪者、そのあり得ない存在に。
『吃驚させてしまったかな。でも君がここにいるということは、そういうことなんだ。理解してくれるかい?』
少女のセカイが3つほどに枝割れ、双子の傀儡産まれ出でた頃にはセカイはキツネ顔の貴婦人たちで溢れていた。貴婦人たちが訪れ、傀儡共がセカイを案内する。そんな変わり果ててしまった光景を釈然としない表情で俯瞰していた少女の隣に大男座り問いかけた。大男は問いかけの答えを聞くまでそこから動くつもりはなかったし、彼女は動くとしても他に行き場などないから動けない。終始不機嫌そうな表情を浮かべていた少女だったが、最後には小さく縦に頭を揺らした。
『このセカイ……、いまいち……』
『私はこのセカイは嫌いだわ……』
その言葉を受けた彼女は悲しくなって、手に握る金の万年筆思わず地に落としてしまった。なんでそんなことを言われなければならないのだろう。どうしたらそんなことを言われなくなるだろうか。以来、彼女はずっとそのようなことばかり考えていた。その結果、一つの解に辿り着いた。それ以来、彼女の世界に彼女がいないことが多くなった。
『あら! このセカイとってもとっても面白いわ!』
彼女の解は自身にとって良い方向へと向かっていった。彼女は地に伏していた万年筆を再び手にすると世界を広げていった。幾多にも枝割れたその先にあるセカイは数多のキツネ顔の貴婦人たちに受けがよく、賛辞の言葉を口にされるたび彼女は嬉しいような恥ずかしいようなむず痒い感覚に陥った。
『この調子でどんどん面白いセカイを広げて頂戴ね』
新たなセカイを求める声は少女にとって何よりも至福であった。その言葉をグッと噛みしめながら、彼女は万年筆を振るう。セカイの住民が彼女に語りかける。――サア、ボクタチノ伝説ヲ創ッテオクレ――
それが何度も、何度も続く度に彼女は万年筆を走らせることを止めることができなくなっていった。
『モット、モット、セカイを……』
――ボクタチノ伝説を……
彼女は寂れ切った一室でひたすらに万年筆を走らせていた。たとえ身体の至るところを断ち切ることなど出来ない鋼の鎖で繋がれ、唯一の自由は万年筆を振るうか細い腕だけであろうと。今でも彼女のセカイは好評だ。絶えずキツネ顔の貴婦人が訪れ、賞賛の言葉を贈る。その度に少女、メイラーは寂しい世界で呟くのだ。
「また……、伝説を書かなきゃね……」
4月25日にうpした詩をやたら長くして手直ししました。
『君の願いを言い当てよう。君の願いは神様になること。それならばこの屋敷に入るといい。さすれば君は君だけの世界を手に入れることができよう』
くちゃ顔の大男、皺くちゃ手の平少女に差し出した。彼女は迷わずその手を取って、白い屋根の立派な屋敷に足踏み入れる。その瞬間に彼女の手にあった本が姿を変えて、名前の書かれた板となった。そこに書かれた名前は“おもちゃ箱”、それが彼女の世界。
『あら? こんな素敵な場所があったのね。失礼、少しの間だけ居させて頂戴』
おもちゃ箱の管理人となって幾つかの時を重ねた少女に綺麗な黒のドレスを着たキツネ顔の女性が訪れた。少女はとても驚いた。自分だけの世界の来訪者、そのあり得ない存在に。
『吃驚させてしまったかな。でも君がここにいるということは、そういうことなんだ。理解してくれるかい?』
少女のセカイが3つほどに枝割れ、双子の傀儡産まれ出でた頃にはセカイはキツネ顔の貴婦人たちで溢れていた。貴婦人たちが訪れ、傀儡共がセカイを案内する。そんな変わり果ててしまった光景を釈然としない表情で俯瞰していた少女の隣に大男座り問いかけた。大男は問いかけの答えを聞くまでそこから動くつもりはなかったし、彼女は動くとしても他に行き場などないから動けない。終始不機嫌そうな表情を浮かべていた少女だったが、最後には小さく縦に頭を揺らした。
『このセカイ……、いまいち……』
『私はこのセカイは嫌いだわ……』
その言葉を受けた彼女は悲しくなって、手に握る金の万年筆思わず地に落としてしまった。なんでそんなことを言われなければならないのだろう。どうしたらそんなことを言われなくなるだろうか。以来、彼女はずっとそのようなことばかり考えていた。その結果、一つの解に辿り着いた。それ以来、彼女の世界に彼女がいないことが多くなった。
『あら! このセカイとってもとっても面白いわ!』
彼女の解は自身にとって良い方向へと向かっていった。彼女は地に伏していた万年筆を再び手にすると世界を広げていった。幾多にも枝割れたその先にあるセカイは数多のキツネ顔の貴婦人たちに受けがよく、賛辞の言葉を口にされるたび彼女は嬉しいような恥ずかしいようなむず痒い感覚に陥った。
『この調子でどんどん面白いセカイを広げて頂戴ね』
新たなセカイを求める声は少女にとって何よりも至福であった。その言葉をグッと噛みしめながら、彼女は万年筆を振るう。セカイの住民が彼女に語りかける。――サア、ボクタチノ伝説ヲ創ッテオクレ――
それが何度も、何度も続く度に彼女は万年筆を走らせることを止めることができなくなっていった。
『モット、モット、セカイを……』
――ボクタチノ伝説を……
彼女は寂れ切った一室でひたすらに万年筆を走らせていた。たとえ身体の至るところを断ち切ることなど出来ない鋼の鎖で繋がれ、唯一の自由は万年筆を振るうか細い腕だけであろうと。今でも彼女のセカイは好評だ。絶えずキツネ顔の貴婦人が訪れ、賞賛の言葉を贈る。その度に少女、メイラーは寂しい世界で呟くのだ。
「また……、伝説を書かなきゃね……」