
ジャズについてのブログを始めたのはいいが、「じゃあ、ジャズって何なんだ?」と酩酊状態の頭で俺はあらためて考える。
「二十世紀にアメリカで生まれた最も創造的な音楽のジャンルの一つである」
うん、教科書的な回答で肝心な事はちっとも分からん。
「黒人の霊歌から生まれた、彼らの悲しみを表現した物である。だから、ソウルを持った黒人のみが演奏をできる」「そんなことはない、何人でもジャズは分かる」「即興演奏が一番大事だ」「いや、歌心が大事だ」「フォー・ビートの基本を崩した物は駄目だ」「何でもありのフリーな状況がジャズだ」等々、それ自体、矛盾する定義づけは終りがない。
俺ごときジャズ・パッカーが説明するには無理な話だ。分かるのはジャズに麻薬のような魅力があるということだけ。
そして、ウイスキーのグラスを重ねながら、試しにこんな男を紹介したらいいんじゃないかと思った。ローランド・カーク。こいつは何でもあり、である。

まず見た目がすごい。巨体にサングラス、一度に何本も管楽器を口にくわえ、それでも足りずに鼻の穴でホイッスルやらリコーダーを吹いたりする。その怪異さから日本では『グロテスク・ジャズ』と呼ばれていたこともあった。
その音楽も自由で、オリジナル曲の他、オーソドックスなスタンダードからポップス、クリスマス・ソングまでを題材に、R&Bやブルース、フリー・ジャズの要素も加え、詩の朗読や合唱、カーク自身のわめき声も入ったりする。
恐らく奴は考えたに違いない。
オレはこの音が欲しい。よし、何でいっぺんに演奏したらいかんのだ? オレはこのノリが欲しい。調子良くファンキーにいこう、その後でゴスペル風にしよう。ジャズにこだわらなくてもいいじゃないか?そして出来上がるのは、悲しいくらいに美しかったり、ハッピーだったり、狂乱爆発やらが満載の刺激的なジャズ。
カークが活躍したのは1950~70年代だが、もし今生きていたら、クラブ系の音楽やらワールド・ミュージックやらを取り入れてただろう。尺八なんかも使っていたかもな。
この盲目のミュージシャンは、結局、ただ良い音楽を作りたかっただけなんだと思う。

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