日本はなぜ、「基地」と「原発」を止められないのか」 矢部浩二著
10月24日、出版前の予約だけでベストセラーになっています。
国民を米軍に捧げる役人システムの証拠です。 

こちらが立ち読みサイト http://www.shueisha-int.co.jp/pdfdata/0236/nihonhanaze.pdf

 矢部氏「米軍の横田空域というものがありますよね。新原昭治さんという研究者の方が明らかにされていますが、日米行政協定に『所在地のいかんを問わず』とあります。空だけでなく、地上も100%が支配されているということです」

矢部氏「厚木、横須賀、横田と、巨大な米軍基地があり、上空に空域があります。これのポイントは、『国境がない』ということです。上空から直接横田空域に入ってきて、六本木にあるヘリポートに着陸したりするのです」

矢部氏「空域を飛んできて六本木に着陸してすぐ、ニュー山王ホテル(米軍センター)に向うことができます。ここで行われているのが、日米合同委員会です。ここが日本の、ハート・オブ・ダークネスですね」

矢部氏「ここで決められたことが、日本国憲法を超えてしまうんです。在日米軍との委員会なので、外務省や防衛省の官僚が入っているのは分かるのですが、法務省、財務省、農林水産省などの官僚も入っています。米側の代表は、基本的に軍人です」

矢部氏「公文書で明らかになっていることですが、日米合同委員会で決められたことは、日本の法体系の上位に来ています。ジラード事件というのがあるのですが、不自然なほど軽い刑で、検察も控訴しません。そういうことが、日米合同委員会で決められている」

矢部氏「鳩山政権時、普天間の移設について、徳之島案というものがありました。これについては、当時の鳩山総理が外務省に『絶対に漏らすなよ』と言っておきながら、翌日の2010年4月7日の一面に出てしまった。官僚が忠誠を誓っているのは、総理ではない」

矢部氏「1957年2月14日に、当時のアイゼンハワー大統領に出された、調査報告資料というものがあります。『数多くのアメリカの諜報活動機関の要員が、なんの妨げも受けず日本中で活動している』などということが、しれっと書いてあります」

岩上「沖縄の基地の話をしていただけますか」

矢部氏「米軍機は、基地も住宅密集地も関係なく、無茶苦茶な低空飛行をしています。しかし、驚くべきことに、米国人の住宅地の上空は飛ばないのです」

矢部氏「日米地位協定の上に日米安保条約、サンフランシスコ講和条約があります。さらにその上に、国連憲章があります。国連憲章については、これまでほとんど考えられてきませんでした。そして、この仕組が最も露骨に表れるのが、原発の問題です」

矢部氏「この問題の鍵にあるのが、砂川裁判です。1959年の裁判ですね。憲法9条2項に照らし、在日米軍基地は憲法違反であるという判決を出しました。これが伊達判決です。そうなると、米軍は撤退しなければならなくなりますね」

矢部氏「これに対し、駐日大使のダグラス・マッカーサー2世が、この伊達判決を無効化する計画を立てました。米国の公電によれば、当時の藤山外相に、大所高所から命令をくだすのです。県知事選に影響が出るぞ、ですとか。まさに命令ですよね」

矢部氏「米国は、同盟国に対する諜報活動をやり、自国に有利な方向に持っていく。伊達判決の翌日に、日本側ですらよくわかっていなかった跳躍上告を持ち出すのです。そして、最高裁で『日米安保は(略)裁判所の審査件の範囲外に位置する』という判決を出す」

岩上「野田政権の時、『2030年代に原発をゼロにする』というエネルギー政策を閣議決定しようとしました。しかしそれが、米国からの横ヤリによってボツになってしまいました。その頃から私は、脱原発の問題は、脱米国依存なしにはあり得ないと言ってきました」

岩上「多くの人は、基地と原発は別の問題だと思っています。基地は米軍の問題で、原発は東電の問題であり、エネルギーの問題である、と。しかし、基地問題と同様、日本は日米原子力協定により、米国によって縛られている、ということですね」

矢部氏「福井地裁により、大飯原発の運転差止判決が出ましたね。しかし、関西電力は何も同様していません。それは、システムとして、判決が最高裁で覆るのだということを、みんな暗黙のうちに知っているからなんですね」

矢部氏「日米原子力協定を見てみます。条文に『いかなる理由による(略)協力の停止の後も、(略)引き続き効力を有する』とあります。終了の後も効力を有する、本当に意味が分からない。徹底管理、ということです」

矢部氏「適用除外が設けられており、環境に対する放射性物質の放出は、違法ではないということになっています。これは、驚くべきこと」

岩上「つまり、米国のプロジェクトに関わることは、都合の悪いことは適用除外として法律に問われないことになっている」

矢部氏「2012年6月27日、原子力基本法が改正され、『わが国の安全保障に資する』という文言が入ります。これが、砂川裁判の最高裁判決につながる。日米安保に関するものは、法律のレベルでいじり、それに対する憲法の判断がなされない構造です」

矢部氏「原発に関する安全性について、憲法の判断がなされないということは、政府は原発に関して何をやってもいい、ということになるわけです。汚染地域に住民を帰還させてもいいし、SPEEDIの情報を隠蔽してもいい、ということになるわけです」

矢部氏「国連憲章には、敵国条項というものが入っています。53条によれば、日本とドイツが侵略政策を再現しようとすれば、攻撃しても良い、ということになっています。ですから、日本が核武装するようなことがあれば、この敵国条項が発動してしまうんですね」

矢部氏「国連憲章逐条解説書というものがあります。そこでは、敵国条項は永久に続く、とあります。ところが、ドイツに関しては、東方外交によってその法的地位を脱した、と書いてある。しかし日本に関しては、何の言及もありません。そのままだ、ということです」

矢部氏「日米合同委員会のような米軍の特殊権益が温存され、それと一部の官僚が結託するシステムが日本に温存されたのは、昭和天皇の存在が大きいのではないか。そのことを、この本の第3部で書きました」