ハイレゾ音源もかなり定着して来たようですね。最近ではCDの発売と同時にハイレゾ音源でも配信されるようなアルバム増えてきたようです。
しかしながらまだまだタイトル数は少ないのが現状です。私などはまだハイレゾ音源を20タイトル程度しか所有していないのであまり偉そうなことは言えませんが、高解像度で滑らかな音は素晴らしいと思います。
とはいえCDを全てハイレゾで買い直すわけにもいかないし、全てのタイトルがハイレゾ配信されるわけではないですし、とてもじゃないがお金が足らないのが現状です。
そこで手持ちのCDを何とかハイレゾ音源のような滑らかで聴き易い音に出来ないだろうかと考えたのが、アップコンバートでした。
アップコンバートについては異を唱える方もいますが、実際に音が変わるのだからどんな理屈を付けても意味が無いように思います。
そもそも音楽は理屈じゃなく、聴いて良いと思えるかが重要なのではないでしょうか。「CDでも理論上はジッタやリップルは無視できる」とか言われても聴感上全く違うのだから説得力はない。
まあお浚いの意味も含めてもう一度CD(CD-DA)と何か、ハイレゾの定義とは何かについて少し触れておきたいと思います。
1.音楽CD(CD‐DA)とは
CD-DA(Compact DiscーDigital Audio)とはデータ形式はリニアPCM方式で標本化ビット数(ビット深度)16bit、標本化周波数(サンプリングレート)44.1kHzのデジタルデータをCDに記録したもので、拡張子はcdaです。
この拡張子cdaのファイルはパソコンなどでは見る事が出来ず、基本的にはリニアPCMの実体データへのショートカットのようなものです。これをパソコン等で可視化したものがWAV(無圧縮・無損失)ファイルです。
2.ハイレゾ音源(High-Resolution Audio)の定義とは
ハイレゾ音源(High-Resolution Audio)とは直訳すれば高解像度な音源ということです。では何より高解像度なのかというとCD(CD-DA)/DAT・DVDよりも高解像度という意味です。数字で言えばCDは16bit/44.1kHz、DAT・DVDは16bit/48kHzなのでそのデジタルデータよりも高精細なものを言います。
またJEITA(一般社団法人 電子情報技術産業協会)のいうハイレゾ音源とは「CDスペック」を上回るオーディオデータのことを指します。JEITAのいうCDスペックとは、CD が採用している 16bit/44.1kHzのみならず、DVDやDATが採用するサンプリング周波数16bit/48kHzの音源も含みます。
つまり、24bit/44.1kHzなら量子化ビット数がCDスペックを上回るのでハイレゾになりますが、12bit/96kHzでは、量子化ビット数がCDスペックに足りず、ハイレゾではないことになります。
具体的な例は下のとおり。
・16bit/44.1kHz :CDスペック
・16bit/48kHz : DAT・DVDスペック
・24bit/44.1kHz : ハイレゾ(量子化ビット数が高い)
・24bit/48kHz : ハイレゾ(量子化ビット数が高い)
・16bit/96kHz : ハイレゾ(サンプリング周波数が高い)
・24bit/96kHz : ハイレゾ(両方高い)
・12bit/96kHz : ハイレゾでない(量子化ビット数が低い)
・24bit/32kHz : ハイレゾでない(サンプリング周波数が低い)
日本オーディオ協会はJEITAによる定義に加え、日本オーディオ協会が示す付帯項目である「録音、及び再生機器並びに伝送系」で以下の性能と、生産および販売責任での聴感評価が確実に行われていることが追加されている。下記の定義に示されるリニアPCM(WAV)およびその可逆圧縮フォーマット(FLAC、Apple Lossless、AIFFなど)以外にもDSDフォーマット(DSF・DSDIFF・WSD)によるデータもハイレゾ音源として扱われるとしている。また推奨ロゴはソニーのハイレゾ音源再生・録音対応機器に使われているロゴが使用できる。
・アナログ機器
1.録音マイクの高域周波数性能=40kHz以上。
2.アンプ高域再生性能=40kHz以上。
3.スピーカー・ヘッドホン高域再生性能=40kHz以上。
・デジタル機器
1.録音フォーマット=FLAC or WAVファイル、96kHz/24bit以上。
2.入出力インターフェイス=96kHz/24bit以上。
3.ファイル再生=FLAC/WAVファイル96kHz/24bitに対応可能。自己録再機は、FLACまたはWAVのどちらかのみでも良い。
1.信号処理=96kHz/24bit以上の信号処理性能。
2.デジタル・アナログ変換=96kHz/24bit以上。
ここで、皆さんは大きな疑問を感じるでしょう。日本オーディオ協会はハイレゾの定義に全く関係ないアナログ機器までもハイレゾ対応として扱うということです。
これはソニーが既にハイレゾ対応商品としてアナログオーディオ製品にハイレゾマークを付けて販売していたからなのです。ですから皆さんはハイレゾ対応商品じゃないとハイレゾ音源は再生出来ないと勘違いしている方もおおのですが、ここでハイレゾの定義をもう一度確認しておきます。
ハイレゾ音源とはデジタル音源のことで、リニアPCM方式24bit/48kHz以上のものとDSD方式2.8MHz以上の音源のことを指すだと覚えておいてください。
アナログ信号にハイレゾと言うものは無いのだということを忘れず、アナログ機器にハイレゾ対応などとふざけたマークを付けて商品を売ろうとしているメーカーの詐欺的な商法に騙されないように注意して下さい。
前置きはこのくらいにして本題に入りたいと思います。先ほどの説明でお解りいただけたとおもいますが、CD-DAのデータはリニアPCM方式16bit/44.1kHz、ビットレート1411.2kbpsです。このデジタル信号はDACによってアナログ信号に変換されるわけですが、再生可能高域周波数は22,050Hz迄ですが、この周波数は人間の可聴帯域を遥に超えたものです。これ以上の周波数の成分を補完するのが目的ではなく、ビット深度とサンプリング周波数をアップコンバートすることによって、リニアPCM録音のマスターに近い、滑らかで奥行き感ある自然な音へ変えるためのものです。
3.リッピング(Ripping)とは
CD-DAからデジタルデータを読み出しHDDなどにPCMデータを保存することです。基本的にはWAVファイルとして保存することです。リッピング時にFLAC(Free Lossless Audio Codec)やALAC(Appll Lossless Audio Codec)などの可逆圧縮ファイルでリッピングする事も出来ますが、これは一旦WAVで読み込んだものを変換して保存しているということなのです。
今回使用するソフトは「dBpoweramp CD Ripper」と「dBpoweramp Music Converter」です。このソフトはシャエアウぁですが、正確なリッピングとアップコンバートが出来るソフトです。というと「Exact Audio Copy」ではどうかと言われる方がいますが、EACは確かに良いリッピングソフトですが、WAVフォーマットが「Microsoft PCM Converter」で些か古いのとサンプルフォーマットが16bit/44.1kHzまでしか対応していないことと、メタデータがタイトル名だけしか埋め込めないからです。「dBpoweramp CD Ripper」はアルバム名・アルバムアーティスト名・タイトル名・アルバムアートなど全てのメタデータが埋め込めます。
またコンバーターについては「xrecodeⅡ」ではどうかと思われるかもしれませんが、「xrecodeⅡ」はアップコンバートは出来ません。確かにWAVファイルをリサンプリングできるのですが、リサンプリングであってアップコンバートではありません。その証拠に「xrecodeⅡ」でリサンプリングしたWAVファイルをFLACの無圧縮(Uncompressed)に変換してみて下さい。データは65%程度になってしまいます。
簡単に言えば01、03、05、07、09というデータをアップコンバートした場合に「dBpoweramp Music Converter」ですと、01、02、03、、04、05、06、07、08、09と補完されますが、、「xrecodeⅡ」ですと01、01、03、03、05、05、07、07、09,09というデータにしかならないのです。これはAACやmp3等の圧縮データをWAVに還元するとデータ容量は以前のWAVと同じになりますが、データの内容は圧縮ファイルのままだというのと同じ事なのです。「KORGのAudioGate 2.3.3」でもアップコンバートは出来ますが、こちらはメタデータが全く移行できないのと「dBpoweramp Music Converter」に比べ変換の品質がかなり低くなってしまいます。
それでもDSD変換機能とミュージックプレイヤーとしては便利で使い易いので「AudioGate 2.3.3」を使ってみたいという方は私のクラウドサーバーからダウンロードできますので、こちらからどうぞ⇒[KORG AudioGate 2.3.3]
「dBpoweramp CD Ripper」は「dBpoweramp Music Converter」とセットで僅か5,000円弱です。世界最高峰のCDリッピングソフトとAudio Converterがセットでこの価格ならCD2枚をハイレゾ化すれば元が取れますので是非お勧めします。しかも21日間は全ての機能が無料で試せますので悪くはないと思います。
インストール方法などの詳しい説明は<k本的に無料ソフト>の「dBpoweramp Music Converter」のページをご覧ください。また「dBpoweramp Music Converter」のダウンロードはこちらからどうぞ⇒[dBpoweramp Music Converter]それでは早速作業に入りたいと思います。
作業編
1.CDのリッピング(CD Ripping)
個々が最も重要なところなので「dBpoweramp CD Ripper」の設定を間違えないようにお願いします。ここでのミスはアップコンバートした際に致命的なエラーになりますので完璧なリッピングをしましょう。またPCのドライブはレンズクリーナーを使ってクリーニングをしておいてください。
①「dBpoweramp CD Ripper」を起動したら上段のタブの[Options]をクリックして下さい。すると画面中央にOption画面が表示されますので下図の赤枠と同じところにチェックを入れて下さい。
②Option画面を閉じずに今度はSecure(Recover Error)の行の最後の[Secure Setting]をクリックして下さい。
③[Secure Setting]を2回ほどクリックすると下の画面が表示されますので先ほどと同じように赤枠のところにチェックを入れてOKをクリックして下さい。
以上で[Secur Setteing]の設定は完了です。これでリッピングの際には[Ultra Secure]が適用されて正確にリッピングできた場合は[AccurateRip]が表示されます。
④それではハイレゾ化したいCDをPCのドライブに挿入して下図と同じように設定して下さい。[Path]とは保存先ですので、今後リッピングしたファイルを保存する場所を作成して下さい。Dドライブや外付けHDD等に[My Works]というフォルダを作ってそこを指定すると良いでしょう。
フォルダ内には自動的にアーティスト別・アルバム別にフォルダが作成されますので、後から変換するときやファイルを選んで再生するときにも分かり易いです。それでは取込の設定をしましょう。
[Profile]=default、[Rip to]=~Wave、Uncompressedにチェックを入れて24bit/96kHz、[Channels]=as source、[Choose Art]をクリックするとアルバムアートが幾つか出てきますのでその中から選択して下さい。好きなものが無い場合は自分のPCに保存した画像を使う事が出来ます。
[Review Metadata]をクリックすると3種類のアルバム情報が表示されるので相応しいと思たものを選んで後は編集画面で修正することも出来ます。
⑤各種設定が完了したら画面上段のタブの一番左の[Rip]をクリックするとリッピングが開始されます。[Secure Rip]は少し時間が掛りますが、その分正確性の高いリッピングになりますので楽しみに待ちましょう。
⑥私の環境ではこのアルバム[fripSide infinite synthesis 2]で約6分ほどでリッピングが完了しました。リッピングが完了するとトレイが自動的に開いて下の画面が表示されますので、問題が無ければOKを押して画面を閉じて下さい。
⑦これでWAV(24bit/96kHz)にアップコンバートされたハイレゾ音源の完成です。WAVファイルですから殆どの再生ソフトで再生出来ますが、このままですとソフトによっては下図のようにメタデータやアルバムアートが読み込みされないものもあります。
何故かというとWAVファイルはもともとメタデータの格納が出来ないので、ミュージックプレイヤによってメタデータを認識できないためです。AudioGate 2.3.3ですとこの程度ですがiTunesなどはタイトル名やアルバムアーティストなど全く表示されません。
また「JRiver Media Center 19」ですと全てのデータが表示されます。このようにWAVのメタデータについては規格が無いためミュージックプレイヤーによって表示の度合いはまちまちです。OTOTOYのハイレゾ配信の場合はWAVファイルではタイトル名しか入っていないのもこのためなのです。
ですが折角ハイレゾを聴くのにFLACやALACの可逆圧縮に変換するものもったいない。そこで私がお勧めするのがFLAC Uncompressed(無圧縮)です。このFLAC形式は無圧縮なのでWAVと同じ音質、同じビットレートで全てのメタデータやアルバムアートワークなどが反映されます。
実際にSONY moraのハイレゾ配信は全てFLAC Uncompressedで配信されています。下図がSONY moraからダウンロードした[frupSide infinite synthesis 2]のFLAC Uncompressedを「JRiver Media Center 19」で表示させたものですが、不思議なことにビットレートが4615kbpsになっています。
24bit/96kHzのPCM録音の最大ビットレートは96kHz×24bit×2ch=4608kbpsです。プレイヤーによっては4609kbpsと表示されるものもありますが、何故4615kbpsなのかというとメタデータやアルバムアートが入っているので転送速度が大きく表示されるのです。
さて、ここで登場するのが「dBpoweramp Music Converter」なのです。先程作成したWAVファイルをFLAC Uncompressedに変換すればFLACが再生可能なミュージックプレイヤーでしたら全てのメタデータとアルバムアートが表示され、尚且つ音質の劣化は全くありません。それでは先程作成したWAVファイルをFLAC Uncompressedに変換してみましょう。
2.WAVファイルをFLAC Uncompressedに変換する
①最初に変換したファイルの出力先にフォルダを作成しましょう。通常はライブラリ→ミュージックの中にフォルダを作成すれば、ミュージックプレイヤーのライブラリに自動的に反映されますが、ここでは後で比較試聴するために先ほどの[My Works]の中の同じアーティスト名のところに出力先を設定します。
②これで準備が整いましたので「dBpoweramp Music Converter」を起動しましょう。そして[Converting To]=FLAC、[Encording]=Lossless Uncompressed、After Encoding Verify Written Audioの前にチェックを入れて、先ほど作成した出力先のフォルダを指定して右下の[Convert]をクリックします。
③数十秒で指定したフォルダにFLAC Uncompressed(無圧縮)のファイルが生成されました。ファイルのサイズはFLAC Uncompressedの方が僅かに大きくなります。これは曲のタイトル毎にメタデータとアルバムアートワークが保存されるからです。
WAV ファイル
FLAC Uncompressed ファイル
さて皆さん、ここで一つ不思議なことに気付くと思います。FLACファイルの方がファイル数が一つ減っています。これはWAVファイルはアルバムアートが保存できないので、JPEGファイルが一つ有ったのですが、FLACの場合は各曲毎のファイル内にアルバムアートをそれぞれ保存していますので、一つファイルが減ったわけですね。
④それでは「AudioGate 2.3.3」に取り込んでみましょう。果たして全てのメタデータとアルバムアートは反映されているでしょうか。・・・完璧に反映されていますね。
メタデータやアルバムアートワークは完璧に保存されましたが、音はどうでしょうか?今日は皆さんにも是非お勧めしたいSENNHEISER HD598とFOSTEX HP-A4の組み合わせで比較試聴してみたいと思います。
3.比較試聴
アップコンバートした音源がどの程度なのか比較試聴してみましょう。比較の方法としてはまずCDをそのままWAV(16bit/44.1kHz)でリッピングしたものと24bit/96kHzにアップコンバートしたWAV、SONY moraから℃うんロードした本物のハイレゾ音源などを比較してみたいと思います。
①WAVとFLAC(Uncompressed)の音の差はあるのか。16bit/44.1kHzでリッピングしたものと24bit/96kHzにアップコンバートしたものをそれぞれ比較してみた。
結論としてWAVとFLAC Uncompressedの音質の差は全くなかった。これは16bit/44.1kHzの音源も24bit/96kHzの音源も両者の差は全く全く感じられない。
②WAVとFLAC Uncompressedの違いは全くなかったのでFLAC UncompressedでCDを16bit/44.1kHzでリッピングしたものと24bit/96kHzにアップコンバートしたものを比較してみた。
結論としてアップコンバートした方が明らかに音が良い。どのように良いかというとまず高音が滑らかになりハイハットにブラシが当たって行く様子が見事に再現されている。またボーカルのサ行もきつくならずに自然な感じでになり、奥行き感も出てきて透明感が増したように感じる。
CDをそのままリッピングするよりもアップコンバートした方が明らかに音質が良かった。これは主にアップコンバートによって高域の周波数特性が改善されたことによる影響が多分にあるようです。事実これに似た手法を行っているのがSONYのDSEE HXだ。こちらはアップコンバートではなくアップスケーリングすることによって圧縮音源やCD音源などの16bit/44.1kHzのものを24bit/192kHzまでアップスケーリングして高域特性を補正しているのですが、考え方は同じですね。
それでは最後にアップコンバートした音源とSONY moraでダウンロードした本物のハイレゾ音源を比較してみたいと思います。moraの音源はそれぞれの曲のファイル名が番号で管理されているのでAudioGateですと番号しか表示されないので本物のハイレゾ音源であることをファイルのプロパティでご確認下さい。
尚、「dBpoweramp Music Converter」はタグ編集機能が付いていますのでプロパティからAudio Propertiesを開くと全てのメタデータがの確認が出来ます。
③ハイレゾ音源(FLAC Uncompressed 24bit/96kHz)とCDを24bit/96kHzにアップコンバートしたFLAC Uncompressedの音を比較する。
結論としてやはりこの差は一聴して分かるほどの違いがあるようだ。ハイレゾ音源の方が滑らかで音数が多く空気感というか音場は広く感じるが、エネルギー感は下がったように感じる。人によっては大人し過ぎてつまらないと感じる人もいるかもしれない。
逆にアップコンバートした音源の方は音場は狭いが、音の密度は高く力強さを感じる。特にボーカルの位置はかなり近く感じるので、こちらの方が良いと感じる人も少なくはないのではなかろうか。
情報工学に詳しい方のなかには理論上どうのこうのいう方がいらっしゃいますが、実際に音が変わるのは事実であり、それを否定することはオーディオを否定しているのと同じです。オーディオとは所詮再生芸術なので、この程度の作業でCD音源をかなり良くすることが出来るのだからアップコンバートする価値は充分にあるのではないでしょうか。