フィールドバックとして上げておきたかったのが、

異硬積雪(いこうせきせつ)からの脱出法でした。

 

2017年2月12日 晴れ

秋鹿大影林道、東側からのスノーアタックでスタック。

まずは、走行不能までの発生報告。




林道は途中まで除雪されていた。

2~3kmは除雪されていたように思う。

後で知らされたのだが、その日、テレビの撮影かなにかで、

谷底にクルマが転落するシーンの 撮影が行われていたそうで、

大勢の撮影班が入る為、ある程度の距離を除雪していたとのこと。

この除雪により、我々は、けっこー奥まで簡単に進行することが可能であった。


走行途中から、除雪がなくなるものの、

クルマ(4WD) が進入した後のワダチがその先まで残っている。

そのワダチに沿っていけば、まだ進んで行けそうだ。

我々はそのまま進行を続けた。




先頭を走るのは私のJB43。

最低地上高は190mmをかけている。

3台の参加車両中、一番、最低地上高が低い。

走行中、何度か雪面に残された跡を確認する。

デフの引きずられた跡の確認だ。

自分のクルマの限界を知るには、

デフの引きずり跡を確認する方法しかない。






では、どのような確認が必要か。

まずは、デフがどの程度、雪面に接触しているか。

ホーシング全体が引きずり出していたら要注意。

もう1つ重要な要素が、どれ位の距離を

ホーシング全体で雪上を引きずってきたか。

今回は、この点を見誤った気がする。



フロントのホーシングで雪を押すということは、

ブルドーザーが、泥を前に押している状況と同じ。

どんどん、ホーシングの前に雪が溜まり、重たくなり、抵抗が増す。

雪上を削りとる深さにもよるが、

長い距離をその状態で進むことは難しい。

自分の経験では、その状態から1km進むことは難しい。




今回はその途中過程が欠落していた。

除雪により、その先もチェーンをかける必要はないだろうと

思い込んでいた。

私はチェーンをしなくても、他の方はチェーンをする人もいる。

以前まではそうだった。

が、今回はその手間をおしんで、

「まぁ~行けるだろう」と甘く見てしまった。




タイヤ・チェーンを装着するなら、入口付近で広めのスペースがとれる所。

すでに、中まで入ってきてしまうと、

道幅も狭く、かなり積雪もあり、足元も不安定。

歩くのも難しい場所で、チェーンを装着する元気がわかない。




まぁ~そんなところです。



もう1つ。

通常、我々が経験する危険領域は、走行中、徐々に高まってくると考えていました。

少なくとも今までは。

それは、入口から徐々に標高が高くなり、積雪も徐々に深くなっていく。

もちろん、これは単純モデルでの話。

実際には、これに地形の変化等、

状況の変化は唐突に来る場合もあることは分かっています。

北側は特に危険な要素が潜んでいることも。




今回は、初期ステージが除雪によってスキップ状態。

危険領域の中間ステージから1つ飛ばしでアタックする事になったのだ。

自分の考えていた安全領域の境界線は、

その時点で、すでに超えてしまっていたのかもしれない。


初期ステージでも、まだ積雪も浅いため、

その日の雪質とタイヤのグリップ状況を確認することが出来ます。

2WD走行してみれば、さらに分かり易い。

その林道の勾配で、どれくらい横滑りが発生するか。

一つ一つ確認してゆくことで、

心も体もなじんでいくような・・・・

それが、まず、無かったなぁ~





まぁ~、どこまで進行できるかという挑戦なので、

突き進めば突き進むほど高揚してくることも事実。

ゆっくり考えながら進んでゆく、

そんな、心のゆとりはなかったかですね。


それよりも、

「おや、今回はもしかすると、貫通できるんじゃね~か!」

という期待の方が先でした。







状況に気付いたのは、

いままであった4WDのワダチが消え、

その先へは、まだだれも踏み入ってないと知ったとき。

踏み固められたワダチが無くなれば、状況は一転。

自分達もここまでか。

転回の形跡も残されている。


しかし、その転回の跡を見る限り、今、この場で転回することも難しそう。

圧雪面から、すでに積雪も増し、たぶんその時よりは積もっている。

圧雪面から、300mmから400mmは あった。

もしくはそれ以上。

もちろん 、圧雪面の下も雪。

つまり地面から、実際の積雪がどれ位かは不明。

状況を勘案し、まずは少しづつ回りをクルマの車輪で踏み固めることにしたみた。

転回エリアを確保する為に。

この方法は、踏み固められる雪質の場合にはかなり有効。

今までもそうしてきた。






しかし、その作業を繰返しても、いっこうに

転回エリアを踏み固めることが出来なかった。

それどころか、状況はどんどん悪化させていくばかり。

最終的に、私が運転するJB43はスタックしてしまう。



この段階ではまだ、2号車のBank144さんに牽引してもらい脱出ができていた。

が、その繰り返し。気がつけば2号車もスタック。


えっ、




今回は3台でのアタック。

残された機動可能な車両は、1台。

つよポン号だけ。

そして、つよポン号もその後スタックしまった。



ヤバイ!


と、まぁ~ここまでが、

今回の3台一斉スタックの発生報告です。





異硬積雪(いこうせきせつ)

さて、転回できない以上、脱出方法はバックしてゆくしかない。

いわゆる”鬼バック”だ。

しかし、雪の上で鬼バックは非常に難しい。

理由ははっきり分からない。

が、兎に角、真直ぐ後退させることじたいが出来ない。

出来ない場合がある。といった方が正確か。



真直ぐ後退できないということは、帰れないということ。

真直ぐすら進めないのだから、コーナーなんてもっと無理。


まずは、最後尾のつよポンさんが後退。

すぐに道からはずでかかり、スタック。


??

最初は、「なんで真直ぐ下がれないんだ」と不思議に思った。

が何度も同じことを繰返している。


実は、説明が長くなるので、書いていなかった事が1つ。

私がこの林道の栓をしてしまった用で、

後方から地元のジムニー乗りの方達の足止めをしてしまっていた。

その方達の力も借り、つよポンさんは、

そちらの方達からの牽引で2回くらいはスタックから脱出している。



が、

そのような状況は、つよポン号だけにとどまらなかった。

気がつけば、一番先頭の私は、つよポン号、Bank144号まで、

50m以上はなされてしまったていた。

私は、その距離を2時間かけてスコップで整地。


始めは、1mくらい整地してみて、バックしてみるが、

1mプラスアルファくらいしか後退できない。

しかも、谷側に流される。ヤバイ。



それで、已む無く50mの整地を決断。

ところが、整地しても真直ぐには後退できなかった。

リアのホーシングの抵抗だけは無くせた程度。



原因として考えられるのが、異硬積雪。

そもそも異硬積雪なんて言葉はありません。

これも私が作った単語です。

積層積雪はあります。

硬さの異なった層を持つ積雪で、凍った部分や、解けて固まった部分やらが

積になっている状態。

ただ、これは平面的な積層のイメージ。

今回のは、その変形バージョン。


整地していて気付いたのですが、

硬い部分と柔らかい部分が混在していました。

また、凍っている部分も。




今年の冬は、強い寒気によりどかっと雪が降ったり、

急に暖かくなったりと、気温の変化が激しいのが特徴でした。

大雪のあとの、気温の上昇で解け、それがまた寒気で凍る。

きっと、そんなことを繰返すことで、積層積雪が生まれるのだと思います。


雪解けの水は融雪となり、地盤も緩めます。

また、シーズン中に何台ものスノアタ車両が踏み固めた部分にも

変化があったかもしれません。

スコップで整地していると、表面が凍っていても、その下はまた雪だったり。

氷が割れているところと、割れていない所など。



クルマの車体は、柔らかい側に傾き、

走行すると、ズルズルと傾いた方に滑り落ちてゆく。

続けて走行すれば、谷底に転落。

しかし、山側にはアンカーを取れる様な太い樹木もない。

こんな状況でした。



では、積層積雪と異硬積雪を区別する必要性についてですが、

4WD車両のスノーアタックで已む無く後退する時。

真直ぐ後退できない場合には、この異硬積雪を1つの要素として疑ってください。

積層積雪と区別する理由は、左右の硬度が違っていることを表現させる為。

「クルマが傾くんだから、そりゃ~ずり落ちるでしょ」ってイメージを

バディーに素早く伝達する為に、この単語を定義しておきます。

滑り易い場面で、傾いているクルマにできる対処方法は限られています。

判断を間違えれば、車は谷底に転落させてしまう可能性もあります。

慎重に判断する必要があることに違いありません。




では、異硬積雪か積層積雪か判断する方法は、ただ1つ。

数メートルの距離をスコップで整地してみてください。

左右の車輪が載るところの硬度が異なっていたり、

そこにクルマを傾かせる要素があるか、掘って調べてみてください。


凍った層と、そうでない層とが重なっている積層積雪の1種として定義します。

何らかの原因で、凍った層が割れたり、砕けたりすることで、

積層が崩壊している現象を異硬積雪とします。



単語設定者 : 月代英治
単語設定日 : 2017年2月17日





異硬積雪からの後退し脱出させる方法

今まで述べてきたように、真直ぐ後退することができません。

従って、無理をすれば、谷底へ転落します。

そこで、後方からウィンチ車両に引っ張ってもらいます。

これは、流れ落ちる後輪を、少しでも道路へ戻す力をかける為。

従って、牽引フックが左右に付いている場合、

谷側の牽引フックを使います。

牽引車両は、ウィンチの引く速度を超えないよう、弱いトルクをキープ。

さらに、ウィンチの不可を減らすため、

予め、ホーシング等に抵抗を受けないよう雪かき整地しておきましょう。





まとめると、

鬼バックできない場所もあるので、
十分な準備をして、入りましょう。








尚、毎度のことですが、少々呑みながら書いているものですから、

文章のおかしな点、誤字脱字はごようしゃください。

また、他の脱出方法や、ご意見感想等ございましたら、コメントいただけると嬉しいです。


4WDドライビングテクニック
二階堂 裕
芸文社
2010-06-30