京都・伏見稲荷大社「白狐社」【重要文化財】


 
kitunekao ぼくのおばあさん家にあそびにゆこうよ。

hitokao2 おばあさんって、伏見稲荷大社にいるんだ。

kitunekao そうだよ、伏見稲荷の末社・白狐社にいるんだよ。

    もともとは、おじいさんとおばあさんは京都の北の船岡山に住んでいたんだ。






オススキアコマチ



kitunekao  平安京に都をつくったとき、都を守る備えとして、風水の四神で囲んだんだ。

   西に道で山陰道、白虎。
   南に池で巨椋池、朱雀。
   東に川で鴨川、青龍。
   そして北に山で船岡山、玄武の神さまが守ってるんだ。

   その船岡山からはなしは始まるんだ・・・



 平安のはじめ、船岡山に年老いた狐の夫婦が棲んでいました。

 全身が美しい銀の毛並みでおおわれた白狐でありまして、この白狐の夫婦、たいへん心が清く善良で、常々世のために尽くしたいと願っておりました。

 しかし畜生の身であっては、その願いも叶いません。

 そこで狐の夫婦、ある日意を決し、五匹の子狐をともなって、稲荷山に参拝し祈りました。

 「今日より当社の御眷属となりて神威をかり、この願いを果たさん。」と、

 すると、たちまち神壇が鳴動し、稲荷神のおごそかな託宣がくだりました。

 「そなたたちの願いを聞き許す。されば、今より長く当社の神使となりて、参詣の人、信仰の輩を扶け憐むべし。」と、

 これより白狐の夫婦、稲荷山に移り住み、稲荷神様の慈悲に応えるべく、日夜世のため人のために尽くす事となりました。



kitunekao  このとき、おじいさんは「オススキ(小薄)」、おばあさんは「アコマチ(阿古町)」の名前をお稲荷さまから授かって、それぞれ上社(一之峯)と下社(三之峯)に仕えることになったんだ。

   そしておじいさんとおばあさんは、「告狐(つげぎつね)」の役をいただき、人々の夢の中などに現れて神さまのお告げを伝えるようになったんだ。

hitokao2 ひょこタンのお母さんが、その白狐の夫婦の五匹の小狐のひとりなんだね。

kitunekao そうだよ、クズノハ母さんは長女で、上から平八郎、クズノハ、およし、白蔵主、源九郎とつづくんだ。

hitokao2 すごいな、有名な狐のオンパレードだ、ひょこタンは狐界のサラブレッドだね。



敬老の日α



kitunekao おばあさんは、白狐社で「命婦専女神」の位をいただいて神さまの列に加えていただいてるんだけど、これにはこういうエピソードがあるんだ・・・



 関白・藤原頼通に仕える女官に、「進命婦」の位をもつ祇子(ぎし)というものがおりました。

 じつは祇子、頼通とただならぬ仲になってしまい、行く末に不安をおぼえて、伏見の稲荷へ足繁くお参りにまいりました。

 すると、「阿古町(アコマチ)」という老狐が現れてお告げをしてくれ、そのおかげをもって祇子は一介の女官からついには関白・頼道の妻にまで上りつめることが出来ました。

 そこで藤原祇子は、「阿古町」に感謝して、自分の「命婦」の官位を「阿古町」に譲りました。



kitunekao このときに白狐社としてお稲荷さまの末社の列に加えていただくことになったんだ。

   「命婦(みょうぶ)」や「専女(とうめ)」とは狐の神さまの呼び名になったんだよ。

   もとに住んでいた船岡山でも、建勲神社(たけいさおじんじゃ)の末社の稲荷命婦元宮(みょうぶいなりもとみや)で祀られているんだよ。

   蒙古来襲のときにも、おばあさん「稲荷山の命婦」は、春日の神鹿、熊野の霊烏、比叡の猿たちの神使と共に馳せ参じて、蒙古軍に神風を吹かせたんだ。

   すごいだろ。

hitokao2 ほんとうにスゴイね。

   でも、ひょこタン、少しはおばあさんにあやからなくっちゃね。

kitunekao う~ん、それは言わないで・・・





2018年5月28日公開